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2014年12月29日

止市で荷がそろう所とそろわない所

 12月29日の月曜日、本日の止市は良い荷姿で、切前は固いものが多かったが、全体はスムーズな取引が行われた。来場された買参人が、土日で売れたので嬉しそうに「思ったよりも荷があるね」と小生に声をかけてきたので、「止市で今日は月曜日だから、まとまって荷を受けてくれる市場に出荷したからじゃないですか」。と答えた。

 今年、輸送問題は生鮮品・花き流通にとって大きな話題となった。大型車で600㎞までがワンマン運転の限界だろうか。そうなると、福岡・大阪の双方に営業所がないと、バトンタッチをしながら九州から東京まで、というわけにはいかない。また、北海道の場合には、苫小牧~八戸のフェリーを使いしっかりと休息時間を入れれば、ワンマンで走れないこともない。しかし、今年の秋、青森からの荷を運ぶ運送会社は、二人で大型を交代で運転しながら来ていた。

 今までは、高速道路網によって、また、帰り荷のある・なしによって出荷市場の絞り込みが行われたが、今年からは、運転手確保、労務管理も意識して出荷先を絞るようになった。そして、Eコマースが本格化し、宅配便が増加し、今後の人手不足まで考えて、箱の規格化、仕分けの自動化、さらに鮮度保持化を行う物流施設の大型投資が盛んになってきた。また、花き業界にも影響があった運送事情として、宅配便は規格外の大きさのものは扱えなくなってきた。この中に、花鉢や大きな枝物等が入る。

 産地は地域の大手花き市場に出荷先を絞るようになってきているが、輸送事情が更に厳しくなると、花のボリュームが三分の一以下のことが多い園芸産地にとって、花き市場単独だけでは契約運賃が上がってしまう。そうなると、青果市場と同じ場所に花き市場がある公設市場や中央市場が選ばれる条件になっていく可能性が高い。

 青果市場は30日まで営業している。花は今日が最終日だが、今日の大田花きの荷姿から平常の月曜日のような気配が感じられた。花はどこのスーパーでも扱われるようになって、日常的な生鮮品となったようだ。花の産地も市場も、もう一度生鮮食料品と花きを同系列に捉え、より大衆的な"モノ"として流通させていくことを考えていく必要がある。その為にも、ピラミッドの先端を売るこだわりの花を取り扱う専門店が、ますます重要になってきており、カッコ良くないといけない。従って、今年の年末の売場を専門店・量販店ともチェックしていく必要がある。若い方々に向けて、少しでもアピール出来ているか。大の花ファンである高齢者の方々が、もっと多くの花を買ってくれるようにアピール出来ているか。改善して消費を拡げる。そういった来期に向けてのチェックをしておくのが今年の年末だ。


 皆様、どうぞ良いお年をお迎えください。

投稿者 磯村信夫 : 15:01

2014年12月22日

成熟社会の仕事のやり方をする

 今年も、今日を入れて月曜日はあと2回となったので、花き業界の1年の反省を、弊社 大田花きの企業活動も含め述べていきたい。一昨年の12月に安倍政権が誕生して、3月までの間はアベノミクスで花き業界の逆風は無くなり、無風状態となった。関東地方の降雪や油高で、花き業界は逆風を受けたが販売は好調になり、全体としては的確に仕事をした人はそれなりの実績が出た。しかし、今までと変わらないやり方の企業体は時代に流されるという結果となった。年度が新しくなり、4月からの増税で花き業界にはアゲインストの風が吹いた。特にパパママストアの小売店は、せっかく財務省が外税方式を期限付きで認めたのに消費者に転嫁が出来なかったのも一因で、価格が下がった。そして、4月から9月までは、花き市場全体では前年比95%、予算未達の月が続いた。この間、特に目立った傾向が、3、40歳代の消費者の気持ちを上手く捉えることが出来ず、相変わらず60歳以上の方々に花を買ってもらっているという事実である。これでは先行きが危ないと、国会の与野党の先生方にフラワー産業議連を立ち上げて頂き、法律として2014年12月1日から花き振興法が施行された。そうしたら、12月15日過ぎになってようやく陽の光が見えて来た。

 売るに天候、作るに天候で、花き業界は機会を捉えて販売してきた。1日、15日の仏花と榊が必要になる時に、他の切花・鉢物も一緒に販売してきた。このように、需要の機会を捉えて成長してきた花き業界。あるいは、季節の物日需要に合わせて成長してきた花き業界及び弊社 大田花きであったが、日本社会が成熟社会になると共に、この花き業界や大田花きの在り方では、成長はおろか、現状すら維持出来なくなっている。では、どうすれば良いか。一般論として、各社は自らが大切にする価値観を前面に出し、品物やサービスを創造して、具体的に世に問うことだ。日本のアパレル小売企業でいえば、ユニクロやBEAMS、UNITED ARROWS LTD.等の価値創造型の企業でないと、また、業界でないと成長出来ないことを、消費税増税によるアゲインストの風を受けてしみじみと痛感した。

 2014年12月の現時点では自公が衆院選で大勝し、地方創生まで含め、アベノミクスに対する期待があり、花き業界はアゲインストが止んだ。しかし、これからもフォローの風は吹かないと思う。他力では花の需要は作れないと思って、日本の食品流通業界、自動車業界等の価値の出し方を参考に、花き業界は自社のサプライチェーンにより創造した価値を前面に押し出して提案し、取引先や消費者に受け入れて頂けるようにしたい。弊社 大田花きでは「モノとコト」、この2つで価値を創造したり、お取引先の問題のソリューションをすることによってお役立ちしていきたいと思う。

 花き業界それぞれの企業が創造する「質」を、消費者や取引先に受け入れてもらおう。そういう価値を提供する業界でないと、花き業界は成熟期を迎えることなく、成長期から衰退してしまう可能性があることが分かったのが今年である。だから、弊社 大田花きは先頭に立って必ずやるのだ。可能性のある花き業界をこのまましぼませてなるものか。

投稿者 磯村信夫 : 16:48

2014年12月15日

寒波で相場戻る

 衆議院議員選挙が終わった今朝、胡蝶蘭が沢山出ていた。また、通常の切花・鉢物は今週から荷動きが普段の年の瀬に戻っていくと思う。なにせ、ディナーショーや、少しお値段の張る赤坂や銀座での交際費を使った忘年会等が、衆院選のためここ二週間本当に少なかった。それが今週からあるのだ。

 先週の12日(金)から、花も青果も単価が上がった。それは、需要が少なかったよりもさらに供給が少なかったからだ。これから3月までの基調をいうと、石油価格が高止まりして、円安もあったので、作付けが少ないのだ。まさか、この12月の初旬、ニューヨークの石油先物価格が1バーレルあたり60ドルはじめの安値を付けようとは予測出来なかった。石油輸出国機構(以下、OPEC)がアメリカのシェールオイルにシェアを奪われるのを嫌がって、価格が下がっても減産しない決定を出すとは思わなかった。「アラブの春」で危機感を持った産油国は、いずれも国民の生活の質向上の為に、国家支出を引き上げてきた。従って、サウジアラビアでもアメリカ同様、ペイラインが1バーレル当たり80ドルを少し超えた所と言われている。いつのまにかアメリカは、シェールオイルで世界第2位の産油国になってきた。カナダまで含めると、その影響は大きい。

 そういった最中のOPECの減産措置見送りである。こうなると、石油価格は今後そんなに高くならないと予測される。私たち花き業界では、良い花を作る為には、冬場、油を焚いて温度を保つことがどうしても必要だ。それは、漁師の巻き網漁船と同じ比率で油代がかかる。漁師さん達が石油代の補助を訴えデモをするのと同じ状況が、冬場の花き業界にあるのだ。現在、油代が下がってきたといえど、作付けを予定していなかったこの冬の花は、生産量が去年に比べてマイナス幅は1ケタ代だが明らかに少ない。また、今年は9月に涼しかっただけで暖秋であったから、前に回ってしまった花は山形のストックだけではない。

 需要はまだだが、本格的な暮れ相場に本日15日から突入と言ってよい。エルニーニョの発生が75%の確率で確実視されているが、偏西風の蛇行が例年とは違い、寒い雪の12月を日本は迎えている。そして、雪による延着・未着を考えると、早めの仕込みが安全である。一定量を押さえておきながら鮮度管理をし、28、29、30日の三日間に消費者へお正月の花を届けてもらいたいと思う。

投稿者 磯村信夫 : 17:37

2014年12月 8日

フラワー・オブ・ザ・イヤーOTA 2014

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 第10回フラワー・オブ・ザ・イヤーOTAの表彰式が、本日セリ前の6時50分より開催された。今年選ばれたのは、時代を先取りした花々ばかり。最優秀賞には、リバイバルのカスミソウが選ばれた。リバイバルと言っても、匂いが抑えられており、一輪一輪の花がしっかりしていて、咲いても花型がくずれない福島県 昭和花き研究会様のアルタイルが選ばれた。また、優秀賞には上州の蘭2011様からシンビジュームが、特別賞には、品種と作りが素晴らしいJAひまわりバラ部会様のコンキュサーレ、千葉県大野重雄様のジニアが、そして、新商品奨励賞には、佐賀のファインローズ様のアートリークローズが、それぞれ栄誉に輝いた。

 シンビを除くとナチュラルな草花の系統ばかりだが、「これは本物だ」と感じられる花々である。シンビは黄色なのに、花が整っており、凛としていて、フォーマルな場所で飾られるのが似合う品種であった。ナチュラルで動きがあり、ドレスダウンをしながら草花化していく。しかし、フォーマルな場所でも、固くならずエレガントで育ちの良さが漂う。そういったものが、この次に来る社会なのだろう。トップフローリストやトップデザイナーが「これが良い」と指名して受賞した2014年のフラワー・オブ・ザ・イヤーOTAから、時代の最先端、あるいは、次に来る時代をそのように感じた。

(追記)
 昨日7日の日曜日は松市だった。枝物ではサンゴミズキ等、直幹の枝物が現在のアレンジメントには欠かせないように、年数をかけて作った根引きや五葉松よりも、若松に人気が集まった。今までは、扱いやすいから若松を、という風であったが、新しいアレンジメントが直幹の枝物を使うことから、不作だった若松類が、予想していたよりも高値で取引された。これも時代であろう。

投稿者 磯村信夫 : 16:29

2014年12月 1日

だたいま4回目のスランプ中

 この二十年で、4回目の消費後退劇が花き業界で起こっている。一回目は、1999年から始まったサラリーマン世帯の所得の減少で、特に法人需要が減り単価が下がった。この傾向はデフレと言われ、花き業界では未だストップしていない。二つ目は、2007年のサブプライム問題、2008年のリーマンショックにより高額所得者も節約ムードとなった結果、切花・鉢物ともに消費量が減り、単価が下がった。特に鉢物業界ではダメージが大きかった。三つ目は2011年の「3、11」で花どころではない状況が、お彼岸の需要期の最中に起きた。卒業式等も延期され、春だというのに約一か月間、全くと言っていい程花が売れなくなった。しかし、"絆"消費で母の日から回復に向かった。そして、第4回目の2014年4月、消費税が上がると共に消費が低迷し、特に10月以降は3、11の復興でお金が入ってきている仙台地域でも消費に手ごたえがなくなった。今回の場合は、消費税を転嫁出来ない程販売に苦心している街のお花屋さんがいること、生産・小売ともに花き業界人の高齢化が進み、また、21世紀に入って研究開発が資金的にも人材的にも出来なかったことによる構造的な花き業界の不振が原因である。

 業界の誰と話しても、「真綿で首を絞められているようだ」と言う人が多い。その原因として、商品開発と時代に合った売場作り(インターネット販売も含め)、そして販売方法、話題作りにある。消費のターゲットを高齢者に置く一方、団塊ジュニアにも狙いを定め、時流に合ったおしゃれな花を買ってもらおうとする努力が必要である。それだけ分かれば、各県の各振興協議会で頑張ったり、「花の国日本協議会」のように、マーケティングや上手な業界組織に資金提供をしてやってもらう事が近道であろう。

 日本も花き業界も成熟化してきて、面白がる人が少なくなってきた。花き業界がここまでこれたのは、育種・素材付加価値生産・目利きの評価・スピーディーな物流・技術とセンスで商品化・売り場つくりを時代に先駆けやってきたからだ。何も難しいことをやろうと言うんじゃない。これら取引先や消費者を驚かせたりしながら、今まで面白がってやってきたのをやろうというのだ。おんなじことをやるんじゃない。何か変わったことをやって、社会から「花屋さん(花き業界人)は時代の鏡」「花屋さんは未来の占い師」と言ってもらえるように我々は面白がってやってゆこう。ずいぶんと余裕はなくなってきたが、それでも面白がってやってゆこう。そうすれば消費は必ず付いてくる。

投稿者 磯村信夫 : 11:21

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