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2015年1月12日

ドーパミンとエンドロフィン

 今日は成人の日。新成人達の自覚は昔と同様変わらぬものだ。今までお世話になった社会に、今度は自分が役立とうとする気持ちが表れていて大変頼もしい。そして、週末は家族の団欒、友人同士のホームパーティのような集まりで花が飾られた。スイートピーやチューリップなど、春の花がよく売れていたそうだが、花束としては、枝物や葉物、あるいは、グリーン系の花も一緒に使われたものがよく出ていたそうだ。この辺が、お洒落感覚のある世代がいよいよ成人していくのか、といった花飾りである。

 年末は、どんなお店がどのようにして花を売っているか拝見したが、人通りのある賑わいゾーンの花店がよく売れていた他、消費税増税の影響であろうか、ディスカウント的に花を売っている店がよく売れていたのが特徴的であった。我々人間は、ITが発達しても脳や身体は未だ狩猟民族の頃とあまり変わらないのではないかと思う。止まっているものは風景として捉え、動いているものに注目する。また、「欲しい」というのは英語で"Wanting"で、食べるものであれば1日3回お腹が空く。お腹が空くから、「何を食べようか」、こう思って考えるだけでも楽しくなるが、腹が減りすぎていれば、人と争っても先に食べようとする。例え夫婦の間でも、おかずが大きいか小さいかということは大問題だ。脳内ホルモンでいえば、ドーパミンが働くのである。また、食べるものを探している間、つまり、食べる前がむしろ楽しいという事はままある。食べた時、あるいは、やりたいことを行った時、楽しかったり美味しかったりすると、"好き"や"Liking"等の脳内ホルモンである「エンドロフィン」が出てくる。しかし、中毒性のある"Wanting"のドーパミンと違い、エンドロフィンは中毒を誘発するものではない。ドタキャンをしがちな人は、"Liking"よりも"Wanting"がとても強く、洋服を買ったけれど一度も袖を通さない人や、お腹が減った時に買った食品を冷蔵庫に入れっぱなしで忘れてしまう人である。それくらい、"Wanting"は強い欲なのである。

 何故こんなことをお伝えしたかというと、花は"Liking"であり"Wanting"ではないと私は思っているからだ。花は無かったら寂しくなって買うが、食品と違い、食べて無くなるものではないので、切花であれば週に一回、鉢物でも平均月一回買えば事足りてしまう。また、身近に無いことに慣れれば、散歩の時に山茶花や椿、日本水仙が咲いているのを見て、「いいなあ」で済ませてしまうのである。花を買ってもらうのは大変難しいのだ。従って、花中毒にさせることは出来ないが、人通りの多い所に花屋さんを開店させて「花って素敵」とお客さんに訴えかけて欲しい。また、効能を謳って頭で買ってもらう。さらに、「物日に文化として使うものだ」ということを教える。これらが、需要を確実にするために必要である。私自身は、花の効用は全てを受け入れる素直な気持ち、そこから出発しようとする勇気を与えてくれると思っている。私自身が思っているだけでは駄目で、事実として我々は科学的に花の効用を消費者に説明しなければならない。

 愛犬ルークは賢くて良い奴だが、散歩をしていてもいつも匂いばかり嗅いでいる。頭もよくて、人とは見つめ合うのに、綺麗な花に感動しない。こちらが花を見て立ち止まっていると、先へ行こうとする。この辺が、いつもルークと気が合わない所だ。どうも人間というのは、真善美ではないが、そういうものに心を打たれるものらしい。花のある生活をしてもらうために、供給サイドでは、ドーパミンとエンドロフィンのことを考えながら流通させていきたいと思う。

投稿者 磯村信夫 : 2015年1月12日 10:38

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