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2015年2月23日

少子高齢化を嘆かず、グローカル*に生きる

 昨日、東京の花き市場は連休だったので、湯沢の岩原スキー場でスキーを楽しんできた。そして、家に帰ってきて洗面台のフリージアを見たら、二番目の花まで綺麗に咲いていた。木曜日に家内が花屋さんで買ってきて、コップに活けてくれたのだと思うが、その時は、蕾でちょっと硬いなと思った。しかし、フラワーフードを入れていた所為もあるだろうが綺麗に咲いていて、香りも本当によく、見ているだけで清々しく、嬉しくなった。きっと、体力のあるフリージアだったのだろう。

 この旧正月に、様々なものを買い物してくださるアジア圏からのお客様、特に中国からの観光客がいらっしゃっているようで、新聞紙上での、その買い方や内容等の記事は大変面白い。スキー場でも、中国か韓国の方かは分からないが、正月休みでスキーを楽しみに来ている人がいた。多分、日本に来る前に教育を受けているのだと思うが、以前より割り込みは少なくなったし、列を作って順番に行動していた。しかし、湯沢駅では他の人の迷惑にならないように荷物を引っ張るとか、スキー用具を担ぐ等はしていない。自分が持ちやすいように持っているので「あの人、違う国の人だな」と思う。その視点から見ると、湯沢近辺のスキー場では、JRが経営している「ガーラ湯沢」だけが、日本語の他、英語、中国語、韓国語でアナウンスがある。しかし、駅のホームや掲示では英語と日本語だけの場合がある。まして、駅のホームで「黄色の線より内側を歩いてください」という係員の方は、日本語だけだ。昨日の湯沢駅の新幹線ホームでは、大きな荷物を持った人達で溢れかえっていた。案内をする係員の方は、最初は穏やかに、最後は怒った声で対応されていた。日本語だから伝わらなかったのかもしれない。このように、日本は既に国際化していて、外国の旅行者におもてなしの準備が出来ていない所があるのではないかと思われる。レストランや日本料理店で、料理の説明はしているが、活けて有る花の説明をしている所は稀だ。ホテルでも、活けこんだ人がフロアの人に、お客様に尋ねられたら応えられるよう、品目や産地を教えている所は一流のホテルしかない。

 日本は観光立国になることが出来ると思う。その為には、公共の場所や案内表示には、少なくとも日本語以外、英語と中国、韓国語が必要だ。そして、日本の特徴である、花きや生鮮食料品は、文化を反映した素材であるから、ぜひとも説明が必要だ。また、地方都市の素晴らしさは、中華圏の人達も大好きな筈だ。東京に来て、高層ビルなど、なにも中華圏の人達はびっくりしない。嬉しくなるのは、そのすぐ側の路地裏で、漬物桶や魚箱等で、園芸を楽しんでいる生活を発見した時だ。そこに日本の良さを見出す。従って、地方に行った時のその感激たるや大変なものだろう。ぜひともお買いもの旅行が中心の日本の観光ブームが終わったら、次に来る日本の地域独特の文化を楽しむ観光旅行に来てもらいたいと思う。

 地域の市場も、生産者と小売商と一緒になって頑張って、自分の地域の良さを引き出して欲しい。あらゆる産業がそうである通り、その場に留まるのではなく、前進させる。そうすれば、ここ2、3年で必ず消費が追い付いてくる。地元の人達による消費も、内外の観光客による消費も、必ずくる。湯沢の岩原スキー場では、スキーやスノーボーダー達の減少を嘆いてばかりはいられないと、利用者がリピーターになってくれるように、ゲレンデも、リフトも、宿も一体となって努力している。改善し、努力していることが分かるから、また、些細なことで気を配っていてくれることが分かるから、またそこへ行きたいと思う。そういった改善が、日本人は得意な筈だ。それを、花き業界のそれぞれの分野の中でやっていきたいと思った。

 今朝、顔を洗った時に見た洗面台のフリージアは、いい香りを出しながら、3輪目の花を咲かせていた。

*グローカル:グローバル+ローカルの造語。グローバル社会の中で、地域のアイデンティティを背負って生きること。

投稿者 磯村信夫 : 17:22

2015年2月16日

フラワーバレンタイン定着の兆し

 13日の金曜日、農林水産省の第十次卸売市場整備計画の案を練っている藤島廣二先生(東京聖栄大学 教授)を囲む勉強会が、東京で開催された。何だかんだ言っても、生鮮食料品花き流通の中心を担っている卸売市場は、少子高齢化の中にあっても、その重要性は変わらない。しかし、仕事内容をどのように変化に適応させるか。藤島先生の会は、そのような卸売市場流通を考える会である。卸売市場には、中央と地方の名称の区分があるが、機能は変わらない。安倍政権の農業改革、また、農協改革で、どのように卸売市場は変わらなければならないかを、魚、花、野菜の卸売市場の経営者たち三名が講演した。基本はマイケルポーターの「競争の戦略」を前提に、その中でサプライチェーン全体を考え、誰と取り組むか、また、ライバルともどのように地域分担し、協業していくか。出来た料理や出来た花束が、時間節約の為に、本物嗜好の好みに合わせた消費者の為にも必要になっている今日、現在の役割の中において、優れた実力を持っている人との連帯を呼びかけるものであった。

 勉強会が終わり、秋葉原から東京駅、自宅のある大森駅まで、花屋さんを時間が許す限り覘いてみたが、都内ではフラワーバレンタインが確実に花屋さんの商売になっているようだった。また、14日(土)の昼と、午後の9時前にも花屋さんを数軒回ったが、どこも売れていて、異口同音に「バレンタインが土曜日なのでどうかと思っていましたが、予想したよりもよく売れました」と言っていた。きっとこのまま「女性から男性へ」チョコを贈るのと同様に、「男性から女性へ」と花を贈るフラワーバレンタインが定着していくだろう。

 バレンタインデーが終わった15日(日)、チョコレート売場や花屋さんを再び見て回った。花屋さんでは、すっかり桃の花を前面に出している店や、今が旬のチューリップやラナンキュラスを前面に出して販売している店等、様々であったが、フラワーバレンタインを物日として販売していった店ほど、ガラッと雰囲気が変わって、店自体が新鮮な感じがした。一方、デパートや専門店のチョコレート売場は、なにか閑散としていて、虚脱感のようなものを感じた。花の国日本協議会では、愛妻の日とバレンタインデー、そしてホワイトデーの三点セットでPRしているが、的を射たものだと思った次第である。

投稿者 磯村信夫 : 17:01

2015年2月 9日

だからやっぱり、基本は六十歳代以上

 先週の土日、日本各地でフラワーバレンタインの催しが執り行われた。その中には、愛知県知事自らが先頭に立ち、六本木でフラワーウォークをした愛知県のキャンペーンがある。大村知事をはじめ、男性諸君が格好良かった。今まで様々な業界がチョコレートのバレンタインデーに挑んだが、失敗を重ねてきた。しかし、バレンタインデーの花は確実に拡大しそうな予感がする。男性から女性に花を贈るフラワーバレンタインデーと、3月8日の国際婦人デーは、男性のお客さんをターゲットとして世界の花き業界の稼ぎ時となっている。フラワーバレンタインに時代のうねりを感じた。

 さて、フランスの経済学者・ピケティ氏が先週来日し、700ページ以上からなる「21世紀の資本」がベストセラーになっている。また、国会答弁でも、安倍総理は「トリクルダウン(まず裕福な人々から、そして、徐々に富が裕福でない人に浸透し、全体が豊かになっていくという富の流れ)」という言葉を使っているが、世界200ヶ国のうち、相続税がある国は一割にも満たない。日本では相続税率が高いこともあるが、それでも資産家は労働による対価で得る富よりも、資産運用による富でますます豊かになって、それが格差となって表れているのも事実である。しかし、日本はオートクチュールのお客さんである人は誰もいないし、一着一千万円以上する服を身につける人がいるとも(すなわち、しょっちゅう世界の社交界に出席する人がいるとも)聞いていない。従って、日本では富の格差は確かに深刻だが、これも英連邦の国々に比べてみたら、資産による格差は少ないのではないか。

 「21世紀の資本」でそのような富の流れが語られているが、ピケティ氏が提唱する格差是正政策を先進諸国が取るようになるまで、時間がかかる可能性がある。先進国ですら、若年層で学校に行けなかったり、職につけなかったり、憤懣やるかたない30歳代以下の人達が非常に多い。ISILが、その不満の若者の受け皿になっているという事実を各国政府はよく分かっており、それゆえ、ピケティ氏の提案を真摯に受けとめているわけだが、それで格差是正の速度が確実に早まるとは思えない。となると、豊富な年輩者について日本の花き業界は、所得とライフスタイルで何通りかにパターン化し、彼ら、彼女たちにどのようにもっと花を使ってもらうかをさらに深堀する必要がある。さらに、この年代の人達は、友達三世代のおじいちゃん、おばあちゃんであるから、子供夫婦、また、孫への資金供給源となっている。二世代、三世代住宅が無理でも、子供たちの住まいへの関心、ライフスタイルの指導やお世話は、もう既に住まい、家具、洋服、政府の教育に関する税制措置まで行き届いてきたので、花も当然、その中に入ってきた。

 週末になると、お母さんと娘さんの二人で買い物をする姿をよく見かける。そこに花も入れてもらう。また、仏様の花ではない年配者の花、また、団塊ジュニアへの花を、もう一度、我々プロがお教えする時代になっている。「あなたの欲しい花はこれでしょ。」との作品作りだ。具体的にはそれぞれの現場で行うこととして、今日は考え方をお伝えするにとどめておく。

投稿者 磯村信夫 : 16:09

2015年2月 2日

四十年問題が顕在化

 一月の営業成果はどうだったであろうか。秋口からの天候に併せ、ここまで油の価格が下がるとは思っていなかったから、前年の収益から作付減となり、都合1割近く出荷量が少なくなった。お葬式で使われる白菊を中心に菊類は高値が続いたが、卸売市場によっては前年の売上に届かなかった所、また、届いたとしても少し増えた程度の所等、葬儀場以外に消費が活発にならなかったので、総合すると去年よりも消費のパイが縮んだのではないかと心配する。まだまだ寒い日が続くが、一月末からの愛妻の日や節分、フラワーバレンタインやアジア諸国の旧正月への輸出、そして雛祭り等、需要が本格化してくる。まず小売の取扱金額規模を前年よりも上回るように、花き業界を挙げてプロモーションを援護して行きたい。

 一月になって、いわゆる「四十年問題」の話が地元市場で持ち上がっており、相談が寄せられている。花き市場が公設市場に入場したのは青果より後だが、それを考慮しても二十年は経っている。青果は四十年問題で建物の老朽化による建て替え時期にきており、営業しながら立て替えるのか、それとも移転するのか意見が分かれるところだ。営業成績が良いなら話は別だが、多くの市場が業績悪化とともに家賃の減額措置や、場合によっては家賃を支払っていない所もある。関東の一部では、「メンテナンスは卸売会社がやってください。その代り、向こう五年間は無料で使用してもらって結構です。」というような公設市場がいくつか出てきている。そこに入っている花市場も、どうしたものかと相談にいらっしゃった。消費対象の人口はどのくらいですか。今いる市場は、昔開発したわけですから、今では町の中心部になっていますか。新しいところに建てる場合、青果と花は同じ場所で営業できますか。こういったいくつかの質問をさせて頂き、日本花き卸売市場協会会長として、第10次卸売市場整備計画の話し合いで小生がお話しした内容をお伝えして、参考にしてもらっている。

 ただ一つ、当事者でないとどうしようもないのは、社風や人材の問題である。それは、自社の花き市場にしても、お隣さんになる青果市場にしても、専門店はもとより量販店や加工業者と取引し、今後とも地域の消費者の為に役立てるだけの資質があるのか、仲卸制度があるなら仲卸と敵対していないか、という点である。花はそうでもないが、野菜では、産地はより安定価格を求めるので、四割近くは契約取引、それ以外は産地も買い手も納得する価格で販売するのが卸と仲卸の役目だ。その為、あらゆる知識や情報をその市場の販売担当者は持とうと努力しているか、持って仕事をしているのかに、産地との取引の有無がかかっている。卸売市場は地の利と人がモノをいう。それは、花や生鮮食料品は生ものだからだ。時期や生産者、品種や天候により、同じ商品などない。これを一定の規格をつくり、枠内に収める。絶えず代替品を、代替産地を用意しなければならない。管理が難しく品質数量が安定しないから、卸売市場が流通の本流なのだ。卸売市場があるから市場外流通が出来る。

 今、四十年問題による建て替えコストや移転コスト、自治体の財政問題。また、マスメディアなどから流れる卸売市場無用論。合併ではなく、卸売市場そのものが三十万都市にすら無くなる可能性がある。卸売市場経営に見通しが立たないとする、自信のない経営者が少なからず居る。今後とも、どのように数の集約を図っていくか。そして、早急に国や県レベルで卸売市場のあり方を、また、どういう卸売市場を作っていくかを検討しなければならない。

投稿者 磯村信夫 : 16:54

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