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2015年3月30日

送別需要の語るもの

 桜が咲き、常緑樹の冬の葉も春の葉に替わり、すっかり春らしくなってきた。そして彼岸が終わり、会社員の送別需要等が多くなってくると共に、地域によって洋花相場の強弱がはっきりしてきた。また、東京特区では、千代田区、中央区、港区を中心に上場会社の本社も多く、美味しくて割安なレストラン等の予約がこの時期取れないという話をよく聞く。大田市場のある大田区大森近辺でも、団塊の世代のリタイアやそれに伴う大幅な人事異動が目につき、駅ナカの花屋さんは大忙しである。

 団塊ジュニアが中心になって会社を切り盛りしていく時代になっているが、この世代は都市によって多い市と少ない市がはっきりしている。東北や九州が際立った例だが、仙台市と福岡市に団塊ジュニアが集中している。今後の花き市場経営を考える時、どのような特徴を出しながら運営していくのか、今ある自分の花き市場は交通網が発達した現在、ここにある必要があるのかないのか等、検討しなければならないのは、団塊ジュニアの層がいるかいないかがポイントになる。彼岸後、洋花の相場が堅調であったエリアは、送別の花束と結婚式需要があった所で、そこには事業所や工場まで含め、若い人達の職場が多数ある市であった。花き業界はそこを見て、産地から小売りまで、誰とサプライチェーンを作っていくべきかを明確にしていかなければならない。そうでない市に位置する市場は、地域の拠点市場とネットワーク化を更に進めなければならない。

 五年に一度、大田市場花き部では買参権の更新作業を行っている。大田花きと売買契約を結んでいる買参人のうち、11社が弊社との契約を更新しなかった。実感は、「この程度で済んだか」というものであるが、それは小売店をまだ営業していて、更新しなかった会社の数だ。理由は、遠隔地であったり、他の市場を利用するので大田からは仲卸さんにお願いすればいいと考えていたりと様々だ。実際に小売店を廃業していく人達は、一ヶ月に一、二件はある。人口が増えている東京の大田市場でもそんな風であるから、団塊世代の社長が七十歳になった時、後継者がいないとしたら多分やめていくだろう。五年以内に大量の花小売店が閉鎖する可能性もある。新年度になるこの時期に、もう一度、2025年までを見据えて小売りまでの花き流通について、専門店の花屋さんはどういう店であるべきか、スーパーの花売り場はどういう花売り場であるべきか。ホームセンターは、あるいは、ネットやカタログ、更に、雑貨屋さんの花やみどりの売場等、新しく方針付けをしていく必要がある。

 景気が上向きつつあり、新卒予定者は就職戦線では売り手市場になっている。花き市場は相対売りの比率が高まり、優秀な社員の必要性が叫ばれている。そんな中、その市場を退社し、他業種に行く例を少なからず聞いている。これでは駄目で、市場の経営者は生きがいを持って働いてもらえるよう、理念の徹底、諸待遇を整え、花き振興法にあるように、まずはオリンピックまで、花のルネッサンスを、生産消費のルネッサンスを図らなければならないのである。これが新年度の目標だ。

投稿者 磯村信夫 : 15:56

2015年3月23日

来年度へ向けての注意事項

 今日の日本経済新聞の社説に、第十次卸売市場整備計画を睨んで、卸売市場に関することが書かれていた。鮮度保持サプライチェーンは勿論のこと、市場法による取引手法の規制緩和や、買い手・出荷者が大きくなっており、卸売市場ネットワークによる規模拡大などの期待が中心であった。

 2014年度の国内農産物は、やや生産減となった。青果・花き卸売市場の動向について、取扱金額は消費税増税もあり、前年より少し足りない所が多く、良くても前年比100そこそこの所が多いと聞いている。1999年と2004年の卸売市場取引手法の法改正により、セリと相対は同じ位置付けとなり、卸売市場は自己の計算のもとによる買付も許可された。そして、買付においては、現行支払われている出荷奨励金は適用外となる。全農県本部や経済連において、出荷奨励金は例年通り予定される収入であるので、卸売市場から支払われる出荷奨励金が無くなるというのは痛い。従って、産地側には、希望価格を言って委託出荷とし、価格を通しながら出荷奨励金の対象にしてもらうという力学が働く。

 仲卸が三分の一も赤字なのは、卸から押し付けられたから...、卸が赤字なのは、産地から押し付けられたから...、そうしないと荷姿が整わず、小売の要望に応えられないという現実がある。しかし、弊社 大田花きでは違った考え方をしている。消費者から頂いたお金から、小売の取り分を約50%、卸・仲卸で5%、運送店や農家の出荷経費で10%。そして、35%が生産者。おおよそこのような取り分でチームを組んでいると考えている。従って、値決めされた予約相対品も前日の相対品も、当日のセリ品も、全てリアルタイム、24時間インターネット上に「この産地の○○は、誰々がいくらで仕入れた」という情報を開示している。もちろん全てが見られるわけではなく、生産者や買い手は自分が大田花きに出荷したもの、買ったものしか見ることは出来ない。しかし、取引結果は24時間インターネットでお知らせしている。つまり、相対がセリと同等の取引と位置づけられた時、セリ前に品物の値段と行先が決まるわけだから、どの品物を誰が買ったか、少なくとも当事者間では分かるようにしておく。こういう透明感が必要だと弊社は判断した。このため、不透明感のある取引は弊社には無い。

 現在、花き生産を増やしてもらうよう産地に呼びかけているが、現実問題として、果菜類や葉物が増え、花き生産は良くて横ばいが本年度、来年度と続く。そうなった時に、花き市場も買付集荷や産地からの指値委託が多くなることが懸念される。市場法上、適法なら良いが、経営が圧迫されたりするのは、卸、仲卸で構成される卸売市場の信用問題となる。まず、健全経営。次に社員教育と賃金UP。3番目に売り上げを取っていく。こういう順番に現在の花き市場はある。

投稿者 磯村信夫 : 12:42

2015年3月16日

同一労働、同一賃金

 日本の小売流通業は2月末の決算がほとんどだから、3月下旬に株主総会を開催する所が多い。胡蝶蘭のお届けや会場でのスタンド花等、結構需要があるようで、離任式や定年退職の花束需要と併せて、オフィス街の花店は忙しい日々となりそうだ。

 また、今週の水曜日18日は彼岸入りだが、私はお中日に墓参りに行くことにしている。入りと明けの両日に墓参りに行く熱心な人もいるようだが、若い人達はお中日だけがお彼岸と思っている。お彼岸の意味、そして、入りと明けがあることをきちんと伝えていきたい。

 さて今日は、年度末なので、人事異動や給料についてお話する。公正であること、フェアであることが、取引所である卸売市場の最も重要な価値観だが、人事や給料を決める場合にも同じことが言える。具体的には、同一労働・同一賃金の職務給制度の賃金体系を敷くことが必要だ。例えば、上司と部下が同じ仕事をしている場合、やり方や改善方法を指導するのであれば、同じ仕事をしていても良い。しかし、それを毎日しているということは、その上司は同じ仕事をしている間は部下と同じ賃金にならなければいけないということである。長い間同じ職位にいたり、降格する人を見ていても、もっと部下の教育や取引先の説得、需要の創造等、仕事そのものの取り組みと成果を出さなければならないのに、していない、あるいは、無関心だったり出来ない人が多い。すなわち、ライスワーク(※註)になっているのである。職位に対する責任感が期待値より低いのだ。昔から同じようなことばかりやっている人がいる中で、「変わる」為に、花き市場だけでなく、青果市場も人材育成が叫ばれている。

 日本社会では、同じ業種であるにも拘らず、中小企業の社員は能力が低く、大企業の社員は能力が高い、ということがある。本当は逆でなければならない。「山椒は小粒でもぴりりと辛い」という言葉があるように、小さな会社ほど、能力が高く、特定の分野に優れているといった社員がいてしかるべきなのである。我々花市場の販売手数料は、中央卸売市場が9.5%、地方市場は10%である。従って、日本で一番取扱いのある大田花きでも、手数料を売上とすれば売上高は25億円程度の会社だ。この規模の会社は世の中にごまんとある。我々はより楽しく、生きがいを持って働き、勉強しなければならないわけだ。卸売市場の場合であれば、公正を一義に、昇級、賃金を職務給制にすることがどうしても必要だと思う。業種、仕事が同じなら会社の大小に括らず賃金は同じであることが、職務給制度だ。

 4月からは、ほとんどの日本の会社は新年度である。年功序列になっていたり、パート・アルバイトの給料が安かったりしている会社があれば、この機にさっそく直してもらいたい。


※ライスワーク
ceo_20150316.png

投稿者 システム管理者 : 16:14

2015年3月 9日

3月17日、みどりの日

 様々な需要で、3月のお花屋さんは本当に忙しい。今日9日から、いつも在宅ゼリで買っているお客さんもセリ場に来ていて、本格的な仕入れの日々となってきた。私ども大田花きでは、セリの師範が定期的にセリ人を指導している。当日のセリが終わった後、セリの良し悪しを、円陣を組んで師範が指摘していく。玄人のセリ人でなければ、目利きの上に空気も読むことが出来ない。そして、世は「一物多価」の時代というが、スイスをみて分かる通り、「一物一価」が作り手、売り手、そして買い手にも好ましいことは言うまでもない。一物多価となった時、少なくとも、同じものであるのに何故価格差が生じるのか、セリ人は理論づけなければならない。さらに、セリで最初に買う人は、花販売のプロだ。よく花を売る人ほど最初に買う。あまり売れない店ほど、どうでもいいからと待ち続けていると、たとえ1箱でも安く買えてしまうことがある。これはセリ人が下手なのである。大田花きではそのようなことを日々指摘し、徹底的にトレーニングしてセリをさせている。それは、日本の相場は大田花きのセリ場から生まれると自負しているからだ。

 さて、今日の立ち会いは、上(相場)はやや重いが順調で、大変活気のあるものとなったが、昨日の日曜日は国際婦人デーで、週末の店頭は賑わったところもあったのだろう。年に一回、新年の抱負を語り合う会を開催しているが、その男性陣から家内に花が届いた。都心の花店では、イタリアと同じように、ミモザを贈る日としてキャンペーンを行っている店があったが、自動車メーカーのFIATが大々的に宣伝していた通り、よく売れたそうである。

 皆様方は、イギリスのウィリアム王子が来日された時、横浜の外人墓地で、彼がバラの花のリースを捧げているニュースをご覧になっただろうか。横浜市は日本で第二位の人口の「市」であり、なんといってもお洒落な都市である。その外人墓地のすぐ側に、いくつもの人気商店街があるが、元町が「セント・パトリックスデー」にちなんで、みどりの日のパレードを開催するそうだ。「セント・パトリックスデー」は、東京では、表参道のパレードが有名だが、アメリカでは、シカゴやニューヨーク等、アイルランド移民カトリック系の人達が中心になって、みどりの洋服を身にまとい、みどりの食べ物、黒ビールではなく、みどりのビールを飲んで、アイルランドにキリスト教を広めたセントパトリックの命日(3月17日)に、みどりを大切にすることを訴える。元町では土曜日、14日のホワイトデーにパレードを開催するそうで、どんな仕掛けをして、花やみどりを楽しむのか、大変見ものだ。

 花や緑といえば、皆様方は「バイオフィリア」という言葉を御存じだろうか。生物や自然への愛情を指す言葉で、生物学者のE.O.ウィルソンが提唱した。例えばマンションでも、海や緑が見える向きの部屋が高いのは、我々人間が持っている「バイオフィリア」からである。この快適さというものは、脳内物資のエンドロフィンによるもので、中毒性のあるものではない。甘いお菓子や、たばこ、お酒は中毒になり、こういった欲に基づいた追い求めるものであれば、簡単に売れる。しかし、バイオフィリアからなるこの欲は、みどりの日や、あるいはホワイトデーのように、敢えてイベントをする。みんながやるから行う。こういったことをしていかないと、売れていかない。ここに、みどりや花の産業が今一つ大きくならない点がある。 「衣食足りて礼節を知る」であるので、文化的なもの、そして、環境の事を、あって当たり前でないことを前提に取り入れていくことで、現代社会の人間生活に欠かせないという知識と感覚を備える必要がある。

 3月のグリーンの日「セントパトリックスデー」を、花き業界人は是非とも注目してもらいたい。

投稿者 磯村信夫 : 16:53

2015年3月 2日

世界標準で日本の良さを見る

 先週、日本花き卸売市場協会の鉢物部会の総会が三重県桑名市であった。ナガシマリゾートの「なばなの里」を見学した後、泊まって温泉を楽しんだ。外国人が日本に観光に行きたいと思うと、最初に見るインターネットのサイトはジャパンガイドだ。ジャパンガイドでも、中部地区のおすすめの一つがナガシマリゾートのジェットコースターと温泉と「なばなの里」だ。私自身も十分堪能したが、なるほど、ジャパンガイドで是非とも訪れたい日本の観光地であるとしていることが良くわかった。

 二月に行われた東京ドーム世界らん展も、まさに世界に冠たるらん展だ。ここも蘭好きの人のみならず、国内は元より海外から来ていただいて損はないと思う。世界らん展に合わせて国内の洋蘭生産者は色々な種類を咲かせる。らん展が開催される二月のこの時期、一年で一番花き市場でも蘭の種類が多い時期だ。

 今日から三月の営業である。花き市場は繁忙期を迎えた。漸く凍ることもなくなってきた陽気だ。せり前取引の洋蘭を二月までは寒さで品傷みが出ないよう分荷せず、買参人や搬出を頼まれている運送店の運転手さんに、保温してある部屋まで取りに来てもらっていた。このように、どのようにすれば適温で花を小売店のもとに届けられるか、卸売市場は鮮度保持体制につき、寒い時も暑い時も考えて行動するようになってきた。

 現在、弊社ではMPSの認定を受けているが、鮮度管理を流通業者として適切に行うことは、消費者のため、生産者のため、必要であると思う。今後、家庭内需要が高まっていくことを期待しているが、そのためには、どうしても家庭で一週間切花がもってほしいと思う次第である。農協の集出荷場での鮮度管理、運送中の鮮度管理、卸売市場での鮮度管理など、花の体力が消耗しないようにして、家庭で一週間切花がもつようにしていきたい。

投稿者 磯村信夫 : 16:23

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