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2015年4月27日

オランダ花市場の役割

 先日、エチオピアからの直行便が敷かれたので、フローラホランド市場のエチオピア担当が、組合員であるエチオピアのバラ生産者たちと、エチオピア国の貿易担当の方、在日本大使館の方を伴い弊社大田花きに見学に来られた。1989年ベルリンの壁崩壊、91年ソ連邦の崩壊により、まずケニアがヨーロッパのバラ産地として台頭し、次いで社会主義国であったエチオピアが自由主義体制を取るようになって、オランダのバラ生産者がエチオピアで農場を作ったり、他国の農業者がバラやサマーフラワーを作り、オランダ・フローラホランドの組合員になったりして、オランダを通じ全ヨーロッパに出荷されている。

 ディスカッションの中で、弊社大田花きという会社が中央卸売市場の卸売会社となった経緯や、この場所で仕事を行う権利と責任、卸売市場法という法律のこと、そして、委託販売手数料率、また買付差益も自由化されているが、その中でどのように営業利益を上げているか等、日本の花卉卸売市場について知ったことは、彼らの大きな驚きであった。トロリー(台車)やバケツの借賃、また、大きな箱で市場に送った際、市場が水揚げをする代金等、オランダの市場は委託販売手数料は5%未満だが、他の代金を徴収する。従って、サマーフラワー等で日本と同じやり方をするとすれば、販売手数料率は30%にも、相場が安いときには40%にもなってしまう。せっかくジンバブエからエチオピアにサマーフラワーの銘柄産地としての地位が移ったのに、生産者手取りとなるとなかなか大変だ。フローラホランドの組合員は他国と取引する時も、わずかな率だが花市場は手数料を頂くのは当然のこととされている。このように、日本とオランダでは同じ市場でも随分と違う。

 さらに、日本とオランダの市場が際立って異なる点は、仲卸の商売の仕方だろう。オランダの仲卸は徹底した在庫主義だ。専門店チェーンや、ロンドンのニューコペントガーデン、パリのランジェスの仲卸から二、三日前に「いつ、何を何本(何鉢)欲しい」と注文があっても容易に対応できる。それに対して、日本から輸出するとなると、原産地証明や輸出検疫、その国の輸入検疫、もちろん、飛行機での移動時間がかかるので、一週間程前の予約相対が必要になってくる。オランダはそうではないのだ。まさにアドリブと同じ要領で前日でも発注を受け、オーダーに間に合わせて発送しているのだ。しかし、これは大変なことなので、日本円にして百億円以上の年商がなければ仲卸業はやっていられない。結局、日本の輸出の花が競合するアメリカの東海岸では、日本のオリジナルともいえる、日本で品種改良した花々しか切花輸出は出来ていない。ヨーロッパで魚の塩焼きを食べるのは、ポルトガル位だそうだ。ポルトガルからニューヨークの魚市場に出荷された鰯を塩焼きにして、ニューヨークに住んでいる親戚の家でご馳走になったが、こんな感覚で、オランダと東海岸の都市の花輸出入商売はあるのだろう。ヨーロッパへの輸出の難しさは、ヨーロッパを知る我々にとって、どうすればオランダの既存の業者と協業出来るか。これに尽きると思う次第である。

 さて、エチオピアは大変良いバラの産地なので、今後はケニア共々、日本の消費者に受け入れられていくと思う。ですから、国内バラ生産者は、中身の品質を充実させ、綺麗に咲ききるバラ、咲いて長持ちするバラを作ってほしい。ケニア・エチオピアにはフラワーウォッチがついているといえども、棲み分けは十二分に可能だと信ずる。

投稿者 磯村信夫 : 17:30

2015年4月20日

今までの習慣を断ち切る

 自宅の近所に新しいマンションが建った。"グリーンベルトに面した全館南向き"という売り出しが当たったのであろう、さっそく完売になっていた。バイオフィリアは住むときに当然に必要とするもので、広く自然に接することが出来るというのは売りの一つだろう。自然にも新陳代謝があるから、排泄物がゴミになる。今、壁面緑化や室内の観葉植物等が見直されているが、よく見るとフェイクが混じっていることが分かる。テレビのニュースやバラエティーショーでも、フェイクの中に生きているものがある。生き物が面倒なのは分かるが、人はコミュニケーションの中で自分があるのであるから、面倒がらずに、本当に生きているものを使用して欲しい。

 さて、株価が二万円を超えるまでになり、経済問題を語ることが多くなってきた。業種によって、また、会社の規模によって、ベースアップも行われている。しかし、一般論として、団塊世代が六十五歳以上になり、嘱託で働いているとしてもお給料は下がっているのだから、上がる人もいれば、下がっている人もいる。トータルからすると、可処分所得が減ったところがあるのも事実だ。しかし、気持ちは確実に前向きになってきている。

 遡りますが、花の場合、業務需要では、少子化で先に結婚の組数が少なくなった結果、二十世紀に入り葬儀需要の比率が大きくなった。しかし、ここ二、三年で、五人、六人兄弟等の戦前の人達はお亡くなりになっており、戦中の二、三人兄弟、戦後の長男、長女の子供は二人の人達が、今後の葬儀需要の中心となる。従って、葬儀の件数そのものが少なくなってくるので、葬儀の花を手掛けているお花屋さんたちも、さらに整理と統合が必要になる。これは当然、お彼岸やお盆の時の仏花束の需要数、一日、十五日のお供え花の需要数にも変化が見られ、一昨年辺りから誰の目にも仏花需要が少なくなったと理解されたのである。一輪菊を中心にした相場は、路地菊の産地が高齢化の為少なくなり供給減。周年作型の菊の産地は、利益は少なくなったが、まだまだ頑張ってくれているので、需給は縮小しながらもバランスは基調としてとれている。市況は季節や生産コストによって量の増減があり、ある時期は余り、ある時期は足りないということが起きている。ただ一つ言えることは、戦前の五人、六人兄弟等の人たちはもう残り少ない。これからは、多くて三人、そして二人兄弟、一人っ子世代の葬儀需要の花を賄うだけで足りる、と言うことである。

 切り花においても、鉢物においても、家庭需要やオフィス需要、公共の場所での植栽など、新しい需要を定着させていく。そうしないと、十パーセント近くの生産・出荷が減ってもおかしくない現況に、花き業界があることを再認識してほしい。明日は昨日の続きだが、その明日はみじめな明日が待っているだけだ。さあ、努力して、過去を断ち切っていこう。

投稿者 磯村信夫 : 16:45

2015年4月13日

ホルミシス

 もう二週間以上も前になるが、ラジオ番組で朝井まかて氏がインタビューを受けていた。1959年生まれ、関西出身の小説家だが、めっぽう花好きで、江戸時代の草木の商売を良くご存じの方との印象を受けた。20年以上も前、イギリス人の友人から「四十を過ぎたら、小説も読まなくっちゃね」と言われ、何冊かに一冊は小説も読むことにしているので、今回迷わず朝井まかて氏の本を手に取った。彼女の作品は、史実に基づいて文献を調べ、その文献の行間を読み小説化している。また、小気味よいリズムで、花き業者が知らないことが沢山描かれていた。朝井まかて氏の本は、まさに花き業界の必読書の一つのように思う。

 こうして休暇を頂き、空いた時間を利用して本を読んでいるが、これもマズローの欲求"ファイブF"の一つ、非日常性の楽しみである。休暇も小説も、非日常性の楽しみだ。マズロー博士は、人間の根源的な欲求を「ファイブF」=フィーデング(食欲)、フロッキング(群れる)、ファッキング(性欲)、フリーイング(逃走)、ファイティング(攻撃・征服)の五つと表した。この欲を上手に用いて社会に役立てていくのが、我々人間の理想の生き様ではないだろうか。

 ファイブFの一つ「ファイティング」では、目標を達成するということに尽きる。確かにプロレスもボクシングも観ていて面白い。もちろん、野球も面白い。しかし、「やった!!」という達成感のあるものは、目標を達成したときで、いずれも辛い時だろう。元来、人には恒常性がある。ホメオスタシスだ。ホメオスタシスは、傷がついたら元に戻ろうとする。また、社会の中においても、ケンカをしたら仲良くなろうとするホメオスタシスが働く。そういったホメオスタシスが我々にある。一方で、"ホルミシス"と言われる、何らかの有害な要因において、有害となる量に達しない程度に用いることで有益な刺激がもたらされるものがある。例えば、筋肉や脳細胞のように、目標に向かって無理をすると、実際に無理をした分だけその筋やシナプスが傷づく。そして、負けないような形に、さらに筋肉や脳は強くなるといったものだ。一つの目標が定まると、それに向けて無理をする。そういう風に人は出来ているのだ。ホルミシスを、ホメオスタシスと同じように、我々現代人も自分の身体を信じてやってゆく。「脳に汗をかく」という言葉もあるが、まさに、寝ているときや、散歩している時、あるいは、それとは逆に、「無」の境地になった時に、覚悟が決まったり、アイディアが形になったりする。

 今、私たち花き業界にとってやらなければならないことは、各自がホメオスタシスで収支ばかりを合わせ、縮小均衡になることではなく、ホルミシスで「もっと沢山作るんだ、もっと沢山売るんだ」。そうやって身体を動かすと共に、どうやって儲けさせて頂くか、それを考えることだ。目標は「少し無理をする」。そうすることによって、幾多ある人の幸せに通じる職業の内の、花きという仕事で、無理をした分だけ力がついてくるのである。そのように人は出来ている。

投稿者 磯村信夫 : 17:14

2015年4月 6日

買参人の偏りを示す今週の相場

 今日から相場が一、二割安くなった。これは、特別な需要が入学式しか無くなったからで、例年通りである。4月8日のお釈迦様の誕生日、花祭りが終わると、すっかり雪解けのように相場も緩んでくる。しかし、今年は春の嵐のごとき暴落市況は無いと読んでいる。もちろん、作るに天候売るに天候で花は天気商売ゆえ、悪いことが重なれば暴落もあるだろう。

 今年は曇天続きが作柄に影響している。しかも、作付けが前年より少ない。従って、デザイン力で価値を感じてもらうこと、また、日持ちの良さで割安に感じてもらうこと。この二つを前面に出すことで、消費者の心を捉えてリピーターを作り出していく。このことが、本年度作付けが増えない花きの出荷状況の中で、我々が小売店にお願いすることである。

 "疾風に勁草を知る"と言うが、今まで専門店中心の花き小売業界であった時には、日本中の市場の相場の出方も、池に石を投げた時のような波紋の状況だった。しかし、今日では、相対的に専門店の販売力が衰え、スーパーの花売場やホームセンターの売場、あるいは、インターネットサイトでの売場の力が増したことで、市場間で相場のバラつきが出ている。弱り目に祟り目の相場下落時の今週、専門店の市場と言われる市場の相場はバランスを逸し、崩れる傾向にある。花束の店頭売価は一緒だが、安くなった分本数を入れられるスーパーの花束売場は、売り先が極端に鈍るということはない。ガーデニング素材を買いに行くホームセンターも、苗物・鉢物、切花とも、荷動きはそれなりに活発だ。インターネットでは週末に向け様々な需要を取っているし、早い所では、コンビニのカタログ販売と同様、母の日の注文をとっている。そういう受注活動が活発な中、ついで買いのものも売れている。こういった消費実態を反映した買参人のバランスが、卸売市場には必要なのである。

 産地や買参人は、自分が取引している卸売市場のサプライチェーンを良く知る必要がある。今までは、ただ単に相場が高いとか安いとか言っていたが、それでは駄目で、消費者までお届けする、買って頂く。その為には、花の種類や規格、鮮度保持の仕方を責任を持って行い、売れる店づくりを卸・仲卸、産地はお手伝いしなければならない。また、 鮮度保持流通について、国は"国産花きイノベーション事業"で物心とにも援助をしてくれている。売ってお終いではなく、消費者にお届けすること、リピーターになってもらうこと、これを各花き業者の共通の目標にして、花きを流通させる必要がある。また、花き市場では、自社を利用する小売チャネルに偏りがあるようであればバランスを整え、専門店50~60:量販、ホームセンター、カタログ・インターネット販売40~50になるよう努力すべきである。それが相場の安定を促し、生産者に安心して作ってもらえるのである。

投稿者 磯村信夫 : 16:28

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