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2015年4月13日

ホルミシス

 もう二週間以上も前になるが、ラジオ番組で朝井まかて氏がインタビューを受けていた。1959年生まれ、関西出身の小説家だが、めっぽう花好きで、江戸時代の草木の商売を良くご存じの方との印象を受けた。20年以上も前、イギリス人の友人から「四十を過ぎたら、小説も読まなくっちゃね」と言われ、何冊かに一冊は小説も読むことにしているので、今回迷わず朝井まかて氏の本を手に取った。彼女の作品は、史実に基づいて文献を調べ、その文献の行間を読み小説化している。また、小気味よいリズムで、花き業者が知らないことが沢山描かれていた。朝井まかて氏の本は、まさに花き業界の必読書の一つのように思う。

 こうして休暇を頂き、空いた時間を利用して本を読んでいるが、これもマズローの欲求"ファイブF"の一つ、非日常性の楽しみである。休暇も小説も、非日常性の楽しみだ。マズロー博士は、人間の根源的な欲求を「ファイブF」=フィーデング(食欲)、フロッキング(群れる)、ファッキング(性欲)、フリーイング(逃走)、ファイティング(攻撃・征服)の五つと表した。この欲を上手に用いて社会に役立てていくのが、我々人間の理想の生き様ではないだろうか。

 ファイブFの一つ「ファイティング」では、目標を達成するということに尽きる。確かにプロレスもボクシングも観ていて面白い。もちろん、野球も面白い。しかし、「やった!!」という達成感のあるものは、目標を達成したときで、いずれも辛い時だろう。元来、人には恒常性がある。ホメオスタシスだ。ホメオスタシスは、傷がついたら元に戻ろうとする。また、社会の中においても、ケンカをしたら仲良くなろうとするホメオスタシスが働く。そういったホメオスタシスが我々にある。一方で、"ホルミシス"と言われる、何らかの有害な要因において、有害となる量に達しない程度に用いることで有益な刺激がもたらされるものがある。例えば、筋肉や脳細胞のように、目標に向かって無理をすると、実際に無理をした分だけその筋やシナプスが傷づく。そして、負けないような形に、さらに筋肉や脳は強くなるといったものだ。一つの目標が定まると、それに向けて無理をする。そういう風に人は出来ているのだ。ホルミシスを、ホメオスタシスと同じように、我々現代人も自分の身体を信じてやってゆく。「脳に汗をかく」という言葉もあるが、まさに、寝ているときや、散歩している時、あるいは、それとは逆に、「無」の境地になった時に、覚悟が決まったり、アイディアが形になったりする。

 今、私たち花き業界にとってやらなければならないことは、各自がホメオスタシスで収支ばかりを合わせ、縮小均衡になることではなく、ホルミシスで「もっと沢山作るんだ、もっと沢山売るんだ」。そうやって身体を動かすと共に、どうやって儲けさせて頂くか、それを考えることだ。目標は「少し無理をする」。そうすることによって、幾多ある人の幸せに通じる職業の内の、花きという仕事で、無理をした分だけ力がついてくるのである。そのように人は出来ている。

投稿者 磯村信夫 : 2015年4月13日 17:14

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