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2015年9月 7日

人口減、少子化を前提に卸売市場の統合を考える

 9月の需要期であるお彼岸や敬老の日、お月見などの物日については、首都圏では荷はしっかりあり、8月盆で消費者の期待に応えられなかった分、早めに生産状況を消費者に伝え、安心して花を楽しんでもらえるようにしたい。農産物全般に言えることだが、第二四半期から価格もしっかりしてきて、サブプライムローン、リーマンショック、そして、3.11以降、低調に推移していた生鮮食料品花き市況も、ようやく堅調になってきた。

 花き産業では、国内生産減を海外の生産物で輸入商社を通じて補給してもらうという構図が崩れ、絶対量不足が誰の目にも明らかになってきた。国産では、特に鉢物類と露地の切花においてそれは大きい。出荷者は卸売会社を絞ることで物流コストを軽減、また、出荷先に定価で買い取ってもらうことで所得を上げようとしている。しかし、買取り取引の場合にはリスクがあることを考えておこう。世界には、日本やオランダのような卸売市場がない国が殆どだから、基本的に契約や買取りである。生産者は気ままに作るというわけにはいかない。買い手と運命共同体になるよう、買い手の意向を反映させなければならないし、次の作付けで契約が出来ない場合がある。こういうリスクを抱えながらやるのが契約取引だ。よって、ヨーロッパでは、卸売市場が介在した方が良いと生鮮食料品花きの分野においては考えられている。必ずしもセリ市場でなくて良いが、行政府のチェックの下、透明感のある取引を、生産者・消費者の為に行っているのである。現在、出荷量不足の生鮮食料品花きで、買取りこそ生産者の手取りを増やす方策として、その方向性を産地が探ろうとしている気持ちは分かるが、この比率を高め過ぎると、長期的にみて必ずしも生産者や消費者の為にはならない。

 では、長期的に見て、日本の生鮮食料品花き市場はどのように合併をしていけば良いか、という論拠についてお話したい。中国の一人っ子政策ではないが、日本でも国の政策により、現在三つの人口のピークがある。戦中の「生めよ増やせよ」の世代、戦後の団塊の世代、そして、その子どもたちである。女性がお子さんを生む年齢は、一般的には25歳~39歳までが多いので、その年代をとると、2010年~2040年までの30年で、子供を産む女性の年齢の人口が今より37.1%少なくなる。さらに、2010年~2060年では、55.1%少なくなる。国の政策で人口をいじると、5、60年は不自然な動きをするが、日本は今後50年、少し不自然な動きのまま人口が減ってゆくものと思われる。若い人達がその分少なくなるので、首都圏も当然、今ある「地方で育てて頂いた若い人たちを東京に送り出してくれる」といった余裕はなくなってゆく。どこの地方でも、地域での有効求人倍率は当然に高くなり、人口減にはなるが、地方都市も十二分に若い人が活躍している筈である。グローカルで地域は絶対に消滅しない。そうなると、地域の文化である食や花飾り等、独特のものを調達してプロ向けに販売する卸売市場が合併して残っていないといけない。

 旧江戸時代の藩で一つの市場があるのか、あるいは、県で一つの市場があるのか。または、道州制にした際に、その地域で一つにするのか。どのような形にするにせよ、地域文化を継承し、地域のアイデンティティに即した花きや生鮮食料品を創って作って売る。その拠点の市場が必要となる。今後10年、2025年まで、東京オリンピック後の本格的な人口減と、少子化の未来を踏まえ、良い地域合併、良い大手市場との連携、花き市場と生鮮食料品市場との合併等、形態はいくつもある。大切なのは、収支が合う事、地域の文化、立地条件に根差していることである。

投稿者 磯村信夫 : 2015年9月 7日 16:34

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