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2015年9月21日

花の消費に直結する住宅政策

 遅れていた小菊類の出回りが多くて値を下げたものの、27日の日曜日がお月見なので「お彼岸の花束にススキを添えればロスは無し」と、彼岸用の花も順調に取引されている。

 今日は敬老の日だ。団塊の世代も65歳以上の高齢者になり、日本で四人に一人以上が高齢者となっている。私も昨日、孫から彼女の大好きなガーベラの花束を貰い、一日早い敬老の日となった。都市部にいると、高齢者の住まいや行動が否応なしに目につく。首都圏は、若い人たちの比率が他の地方よりも高いが、その実、田舎には長男が残り、二男や妹たちは都会に行った訳だから、高齢者の数は地方の何倍も多い。家の周りの居住空間を見てみると、家を建替えたり新たなマンションが出来ているのが目につく。そして、新築マンションのすぐ側に、今では住んでいるのが殆ど高齢者になってしまったマンションがあり、空き室が目立つ。大規模修繕をしているマンションは、空室をリフォームして売り出してはいるが、廃墟になりそうなマンション等もある。日本全体では、二人に一軒の割合で家があるにも関わらず、年間百万戸もの新築の住宅が出来上がる。新しいマンションが分譲されているが、20年も経つと資産価値は新築のおよそ三分の一以下になるのが普通だ。従って、駅から少し遠い所では売れ残りが出来ている。今後の都市計画をどうするのか。早く手を付けてもらいたいと思う。家だけを見ても、もうこのままでは日本は立ち行かない。何らかの改革が必要である。

 高齢化と人口減少で、コンパクトシティの動きが首都圏でも加速化してきている。若者世帯は、通勤時間や利便性の観点から都心に近い高層マンションに好んで住もうとしている。郊外の両親の家やマンションに住まずに街の中心に住んでいくスタイルだ。もちろん、首都圏だけでなく、日本中の県庁所在地もこういう動きをしているだろう。花屋さんにしても、ニコライ・バーグマンがCM出演している、三菱地所レジデンスのマンションのような、"こだわりの住まい"が出来れば花が売れるだろう。しかし、どこのスーパーでも置き花が売られている今日、古いマンションがある地域の商店街の花屋さんでは、高齢化や所得減から花が売れなくなってきており、店の品揃えや花の鮮度の点から見て、諦めていると感じてしまう花屋さんが多くなってきている。だが、三軒に一軒、あるいは、五軒に一軒程の比率で、駅周辺の花屋さんと十二分に競争できる位やる気のある花屋さんが必ずあって、スーパーの置き花で済ませられない、花をよく知っている消費者はそこで買っていく。後継者のあるなしで花屋さんのやる気を判断することが多いが、それだけでなく、花の専門店としてのプライドがあり、店頭売りを一生懸命やろうとする気構えがご主人や奥さんにあれば、お客さんは必ずついてきてくれる。それが、花の小売店という商売だろう。

 空き家は今後とも増える。これをどのように、今風の仏壇が置けて、お線香をあげても匂いが気にならないような住まいづくりに出来るか。住宅ローンで首が回らなくなるような生活をするのではなく、可処分所得を確保し、家族のサイズに合わせた、豊かな生活空間を確保できるだけの住まいと家賃を日本は作り上げなければならない。散歩をしながら、夜のマンションの明かりを見てつくづく思う次第である。

※2013年時点、日本の空き家率は13.5%、一番多い東京では81万7千戸、二番目の大阪で67万9千戸。首都圏の神奈川では48万7千戸、千葉と埼玉で35万戸以上に上る。このまま古い家を取り崩さないと仮定すると、20年後の2035年には、空き家率は32%にもなると言われている。
文春新書『2020年 マンション大崩壊』より

投稿者 磯村信夫 : 2015年9月21日 16:01

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