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2015年11月30日

次は景気だ

 昨日の11月29日(日)、地元の入新井第一小学校の140周年記念同窓会に出席した。140年というと半端なようだが、大東亜戦争終結前の70年、戦後70年の記念すべき年だ。戦後、日本は自国を護る力を長い間アメリカに委ねてきた。日米同盟、日米安全保障条約があるにせよ、今年は日本が独立国家として主体的にアメリカと組む、という普通の国になってゆく第一歩を踏み出した。

 一つの国の有り様は一人の人間の有り様と同様だ。人間には、体力(健康・腕力)、経済力、人徳の三つの力が社会で生きていくには必要だが、国で言えば軍事力、経済力、文化・文明の力の三つが、国際社会で生きていくために必要なものである。日本の経済力が衰えて20年も経ってしまったので、軍事力や国防力に目鼻がつきつつある今、それに次いで経済力をつけることが望まれる。

 東京オリンピック後の2025年には、今と比べて北海道に住んでいる人口と同じ600万人が、日本からいなくなっていると予測される。しかも、50歳以上の人が過半数を超える。そして、足元では人工知能やICTをはじめ、第二期の産業革命が進行している。その中で、諸外国では既に行われているレベルの国防、グローバリゼーションに基づいた観光産業と、中小企業の産品の輸出戦略を行うことが必要だ。そして、東京オリンピックまでのこの五年間で、世界から見たユニークな日本「クールジャパン」戦略で遅れを取り戻したら、オリジナリティに基づいた「ホットジャパン」で国内外の人達を喜ばせる芽をつくっていかなければならない。花で言えば、トルコキキョウやヒマワリは「ホットジャパン」の一つのシンボルである。このように、大中小の規模を問わず、日本の産業が変わっていくことが必要だ。もちろん、花き業界も同様である。

 抽象的な話になってしまったので、もう一つ、大田花きが使っている商売上の指数を皆様方にお知らせし、共有して使っていくことで、生活者に花のある生活をもっとしてもらうよう、業界全体で努力していきたいと思う。その指数は、アメリカの経営コンサルタント会社であるベイン・アンド・カンパニーのものから一つ※。ベインの調査によれば、顧客接点ミスを犯した場合、顧客の31%は取引をやめ、62%は取引の縮小を検討すると回答したそうだ。もう一つ、週一回の大田花き顧客分析会議資料の反省画面に載っている、「去った顧客の原因」指数をお伝えしたい。それによると、去った顧客の内68%は「大切にされていない、感謝されない」と思い去って行った。14%が商品やサービスに対する不満の為、9%が価格や商品を比べて他社へ行き、5%が友人や親戚に勧められて他社へ、3%が引っ越しの為、他社で仕入れるようになった。そして、1%が死亡した為である。また、売り上げ増進のページには、「満足している顧客は他でも買う。非常に満足している顧客は他社では買わない。現在の顧客を上方のカテゴリーに2%移動させれば売り上げは10%増え、収益は50%増加する。」と記されている。後半の二つは、もう古いデータなので出所は何所だったか忘れたが、一つの目安として読者の皆さんと共有し、どうやって消費者にもっと花と緑を買って頂くか、という土俵で競争して業界を活性化させたい。


※日本経済新聞出版社 『企業価値4倍のマネジメント』より

投稿者 磯村信夫 : 16:57

2015年11月23日

第二の産業革命下での宅配騒ぎ

 先月下旬から11月20日までの単価水準を見ると、大震災のあった2011年と同様、過去五年間で最も低い単価推移となった。今年は秋が早く彼岸後の天候にも恵まれ、個人消費全般は上向きだった。花も、小売店は「ようやくトンネルを抜け出しつつある感じ。ロスが少なくなってきている」と言っていた。しかし、11月に入ると、週末の度に天候が悪く、現況は過去五年間で最低の単価推移だ。花は三気商売で、天気、景気、やる気で構成されている。天気は芳しくないが、花の景気は最悪期を脱していると判断している。従って、花が売れるか売れないかは努力ややる気の問題であるから、是非とも売っていって欲しい。

 11月22日「いい夫婦の日」の小売店舗の売れ具合はまだ分からないが、今朝もいよいよクリスマスの飾り付け商材を買いにきている人が多数来場していた。アメリカではThanksgiving Day(感謝祭)が終わってからクリスマスの飾り付けをして、1月半ばまでその飾りを楽しむ。一方、日本では、勤労感謝の日が終わった後、冬支度と共にクリスマスの飾り付けをする。そして、12月20日くらいから徐々に正月の装いに入っていく。クリスマスの飾りは25日で終わりの所が多い日本だから、商店やレストラン等、早めに飾り付けをしていきたい意向は分かるが、正統派は新嘗祭(勤労感謝の日)まで秋を楽しむムードだろう。

 ICT※を携帯まで含め誰もが利用するようになって、物流の大切さが、宅配業者の活躍と共に国民の共通認識となってきた。大田花きは新しい物流棟を建築中で、一年目の工事が終わろうとしている。12月の繁忙期には工事を中止し、1月からまた一年をかけて建設する予定だ。なにやら昨今、インターネット物販会社が、その日に受注した品物をその日のうちに届けるとか、はたまた、会員であれば1時間以内に届けるとか、大手アマゾンの仕掛けから宅配業者は大変なことになっているようだ。花の宅配便の場合、横に出来ないし、一つ一つ手渡しでないと傷んでしまうので、宅配業者にとっては扱うのは厄介な品物だろう。常温で済むものはまだいいとして、不在の時は生ものだから傷んでしまう。また、コンビニやマンションの宅配受取ロッカーには入らない大きさのものが多い。もう一度、JFTD等、花屋さんの間での宅配業務を見直して、花き業界をあげてこの物流業務の利便性と安全性を訴えていく必要がある。そこへ行くと、B to Bの弊社 大田花きが作っている物流棟は、売り手と買い手の出会いの場を提供する場所で、鮮度保持物流や、コンビニ業界であればそこへ卸す専門商社が行っている物流機能を担うとするものだ。

 オランダの市場のように、販売による手数料収入は20世紀の三分の一となっている日本の卸売会社が多い。オランダはその対策として、その国が近代国家としての証である「所有権」の概念から、1/3台車・バケツ貸賃、1/3市場の使用場所代等、1/3販売手数料の収入で埋めている。日本の花市場も、今までと同じことをやっていれば、赤字にならないのはまだマシで、青果卸にいたっては、大手の所でも赤字になっている所がある程だ。こういった業界の停滞状況の中では、意志決定をする際、どうしてもいつもと同じ、昨日の繰り返しになりやすい。だが、食っていけないのなら違うこともやらなければならない。もう一度、原理原則に則った商売に戻し、その上で仕事を再定義し変化させる。そういう問題意識を持ったワンマン型の経営者と35~45歳位の中堅社員が、その会社や業界を変えていかなければならない。

 イーコマース業者や宅配業者が、そして、諸条件から卸売市場も、消耗戦とも言える、利益を第一に考えない流通を行っているが、現在の日本においても「キャッシュアンドキャリー※」で売り上げを伸ばすアメリカのコストコやドイツのメトロは、売上高営業利益率を10%以上確保している。また、日本ではかつて、上野御徒町の「二木の菓子」は、お客さんが一定のロットのお菓子の代金を現金で支払い、自分で持って帰るキャッシュアンドキャリー形式を売り物にした。こうすれば、販売者はそんなに利を乗っけないでも販売できる。

 人手不足の折、ロボットの導入や自動化を行わない限り、今のイーコマース業者と宅配業者が利益をあげてゆく方法は、取扱数量を増やし、損益分岐点を上回るようシェアを獲得することである。シェアを高めて他を排除することで、今は我慢の時期でも、今後利幅を上げてゆくだろう。そうなると、将来、消費者はどこを通じて買うかと言う選択肢が狭まってくる。インターネット販売であれば、どんなに小さい店舗でも、ユニークな商品であれば、大手販売業者が放っておかない。花き業界の小売業者まで含めた我々物流業者も、そして、消費者も、オムニバスのチャネルの販売まで含め、産業革命に次いで、今起きている第二の産業革命の流通部門の実態を見て、冷静に判断をしなければならない。原則はキャッシュアンドキャリーが最も安いことを認識して、どういう物流を使い消費者に届けるか、自分で責任を持ち意思決定していかなければならない。


※ICT:Information and Communication Technology(情報通信技術)
※キャッシュアンドキャリー:現金で商品を購入し、お客自身が商品を持ち帰る制度のこと。

投稿者 磯村信夫 : 15:52

2015年11月16日

新しい生活習慣を団塊ジュニアはつくる

 外の会議に出席する為に電車に乗っていると、ネクタイをしていない人たちが大変多くなったと感じる。私も、式典やこだわった会議でないとネクタイをすることは殆どない。スーツの人が少なくなっているのも、今の時代を反映している。

 仕事着のダウントレンドの波がようやく日本にも来て、クールビズからカジュアル化が進んだ。私の息子も、外資系の会社で一定の役職についているが、その恰好たるや大変カジュアルな感じがする。また、娘の亭主は、私が尊敬する水産会社のオーナーの会社に勤めているが、こちらもノーネクタイだ。だが、少し業界が保守的なのだろうか、無難なスーツ姿で通勤している。団塊世代がリタイアし、サラリーマンの制服であるスーツが売れなくなった時、団塊ジュニアは「あの恰好は嫌だ」と、替え上着と替えズボンの姿が主流になった。このように、日本の男のドレスコードを団塊ジュニアが変えてきた。だから、スーツというと、着る方もこだわったものを身に着けたいと思うし、売る方も団塊世代マーケットが無くなってきたために、高級品を売ろうとする。男性ファッション誌を見ても、スーツの値段は高くなっている。

 話は変わるが、CNNやBBC、NHKワールドと同様、中国の国営放送も日本で観ることが出来る。そこに出てくる中国人たちのスーツや替え上着の質といったら、本当に皆良いものを着ている。貧しかった時代の反発から、社会的に一定以上のレベルの人達はこんなに良いモノばかり身に着けているのだろう。今では一般の人たちも観光に来ているから、爆買いされるものも随分と変わってきているが、相変わらず質の高いブランド品は、彼ら中国人が好むものだ。一方、日本もようやくヨーロッパと同様、仕事をする時も質の高いモノを身に着けるようになってきた。ただ、中国や韓国と違うのは、日本はファッションでも先進国なので、仕事をする時と遊びの時の心構えと服装に中国よりも格差がなく、見せるためばかりに着ているのではない、ということである。これは豊かさからであって、車を例にとっても、軽で十分な時は軽を買い使用するという、成熟した考え方がそこにはある。

 G7で他の先進国との差をドレスコードで埋めたように、団塊ジュニアが内外格差を埋めている。それと同様に、男の花贈り、花の買い方の差も無くなって欲しいと思っているのが花き業界である。その為のプロモーションとして、今週末のいい夫婦の日、クリスマスやお正月、愛妻の日やバレンタイン、国際婦人デー(ミモザの日)、ホワイトデー等で展開出来たらと思う。

投稿者 磯村信夫 : 15:30

2015年11月 9日

店員にその気にさせる突然の祭りとフェア

 8日の日曜日の雨は非常に残念だった。大安だからと一週間早く七五三をした家族もいるだろうし、私の場合だと、「大田臨海部まちづくり協議会」で、東京オリンピックに向けて、大田市場前に水上タクシーの船着き場を作ったり、場外店や水辺レストラン等を作る為のイベントを日曜日に計画していた。しかし、朝からの雨で9時に集まった朝礼は解散式となってしまった。こんな風に、昨日の雨に泣いた人が日本中でいたのではないだろうか。本日は暖かい。鍋物や漬物にしないので、近所では四つ切100円の白菜が売れ残っていた。ここのところの暖かさから花も誤算で、ストックやスナップ等、冬の商品が安値に泣いている。品物は良いのだから、こんな時にこそ小売店に頑張ってもらいたい。

 この頃の小売店の実態はこうだ。1990年代は、安売りと言われようが、何と言っても量を売る花屋さんがいた。負けじとばかりにホームセンターでも量を売った。それが、21世紀になって、特にリーマンショック以降生産が減って、品揃え重視、量よりも質と言いながら、ロスを出さない少量の販売になってきた。何店舗も抱えている店では、店の販売責任者が仕入れ担当の人に発注する。従って、仕入れ人は受注したものしか買わないから、天気の具合で量的に出回る品物が極端に安くなってしまった。それでは困るので、卸はセリ前取引をしようとする。量を販売しようという意欲のある花店が本当に少なくなっている。要するに、「素敵な花屋さん」で、固定客に合わせる花屋さんが圧倒的に多くなってきてしまった。

 こうして、青果も魚も花も縮小均衡してきたわけだが、今注目されてきている花屋さんや魚屋さん、八百屋さん、あるいは、それらの生鮮品の売り場は、仕入れ人が各店舗の品揃えから販売総額まで考慮し仕入れた商品を、販売の責任者が何としても売らなければならないと創意工夫して売り切ってしまう、こういった店だ。消費者から"面白い店"、"楽しい店"、"覗いてみたい店"と言われている店である。量を売る店が無くなって、素敵だが、いつもお行儀良く販売するような店ばかりになった昨今、お客さんの主体が団塊ジュニアの世代になって、なおさら、荷は偏るが、どかーんと、それで勝負するような地元密着の店が人気になってきているのだ。

 具体的に言うと、本日9日の月曜日は暖かい。例年の気温に戻るとしても水曜日以降だ。花の場合、切花は2日ですっかり売ってしまう。鉢物なら3日~5日で売ってしまうのが理想だ。こんなに品目と品種が多い花を扱っているのだから、この位で売り切る気持ちがないと、次々と違った種類の花を売れないし、お客さんに持ちの良いモノを楽しんでもらえない。例えば、ストックだったら、店の販売担当は、この陽気でストックは売りたくない。12月から本格的に売っていきたい。こう思うだろう。これを、品質の良いモノが多くて安いから、仕入れ担当は大量に買う。それを売り切る為、お祝いカゴの注文が来たら急遽一足早いストックを入れる。葬儀の注文でも花祭壇にストック入れる。七五三の花にも、何でもストックを使用していく。ちょうど、魚のブリを沢山売らなくてはならないとなった時、刺身や照り焼きだけではなく、しゃぶしゃぶやブリ大根等、なんでもかんでもブリを使うのと同じように。さらに、店は突如ストック祭りやブリフェアなど、なんでもいいからイベントにして売り切ってしまう。こういう気概が、生鮮食料品花き産業の人たちには必要だ。天候により採れすぎたストックやブリ、白菜は必要量以外は捨ててしまう。などと言ったら、ストックやブリや白菜に申し訳ない。消費者に飾ってもらい、食べてもらう。その為に全力を尽くす。こういったことが必要だ。そして、PDCAサイクル※が必要なのは言うまでもない。しかし、売るに天候、作るに天候の生鮮食料品花き産業は、消費者が欲しない時でも欲するようにさせて売り切ることが必要なのだ。

 今、"売り切る"人たちが、そういう店が消費者にウケている。しかし、この「利益は薄いが量を売る」という人があまりにも少ない。是非とも、今申し上げた時代になっていることを、生鮮食料品花き業者は肝に銘じてほしい。そして、計画していない、急な○○祭り、○○フェア等、突如行う祭りやフェアであれば、社員も「売るしかない」とやる気になって、一生懸命売るだろう。こうしてもらいたいのである。


※PDCAサイクル:
  Plan(計画)・Do(実施、実行)、Check(点検、評価)、Act(処置・改善)を行い、業務改善を図る手法

投稿者 磯村信夫 : 15:43

2015年11月 2日

新需要創造には業界人の覚悟が必要

 ハロウィンが土曜日にあたった今年は、9月末からハロウィンムードが盛り上がりをみせていた。しかし終わってみると、期待が大きすぎたせいか、黄色やオレンジのハロウィンカラーの花、観賞用かぼちゃは120%弱の伸びに留まった。一方、仮装用の衣装は、渋谷や六本木の様子がTVでも報じられていたが、3割以上の伸びがあるのではないか。海外からもこの仮装イベントに参加する程であるから、おおよそこの数字に間違いはないだろう。

 新しい需要を作りあげようと、農水省の国産花きイノベーション推進事業の予算を頂いて、各団体が取り組んでいる。先月末も、経過報告や課題討議の会議が行われた。例えば、東京都花き振興協議会では、日本の伝統的な花飾りを羽田国際線ターミナルで展示したり、テーブルデコレーションフェアでホームユースとしての花の楽しみ方を提案、さらに、治療に役立つ花きの効用のセミナーを開いたり、花育の実証結果を報告している。また、とある団体では、オリンピックのビクトリーブーケに向けて、安定的な花のサプライチェーンをどう構築するかを議論したり、夏の暑い時期で海に面した地域なので、植栽をするにはどの花のどんな品種が良いのかコンテストをしたり、「フラワービズ,フラワーフライデー」、あるいは「ウィークエンドフワラー」のプロモーションの具体化について検討をしたりしている。いずれもかけ声倒れに終わらないよう、種苗から生産、卸売と仲卸、小売の各団体のリーダーたちが率先して実行に移し、業界全体を巻き込んでいかなければ、消費者まで巻き込むことは出来ない。せっかくこのように外に向かって活動を始めたわけだから、この活動を本物にしていくことを決心するところから始め、消費の拡大を期することが必要だ。少子高齢化の日本において消費が減らない可能性があるのは「花き」だ。農業の中でさらに重要な位置づけとなる「花き」を、我々は消費サイドから支えなければならない。

 話は変わるが、先週末、オランダ花市場・フローラホランドの2020年までのプログラムに則り、「World Flower Exchange」の催しが中国で行われた。BtoCのアリババグループや、BtoBが中心であるテンセント等、中国の優良イーコマース大企業と接触し、来年からオランダ花市場の花でイーコマーストライアルを始めるという。このようにグローバリゼーションは進んでおり、オランダは隣国ドイツと同様、中国を大切なマーケットだと考えている。日本の花き業界よりも中国に対して構えるところがない。オランダは中国マーケットに対して政治力を持って上からいくが、日本は民民の関係で下から行く。明らかに取り組み方が異なってきたということであろう。

投稿者 磯村信夫 : 15:43

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