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2015年12月14日

需要はある。足りないのは潜在成長率

 因果律が分かれば、解決に向け努力をすれば良い。
 例えば、先週の10、11日と季節外れの暖かさで、しかも強い雨だった。そうなると、店はきかないし、暖かさで前進している作柄から咲いていってしまう。本日月曜日は予定した大量入荷だったが、売れ行きは良くない。従って、まだクリスマスやお正月には早すぎるので、柔軟な値付けをしている限られた小売店に大量に売ってもらうしかないだろう。17日の木曜日から陽気が冷え込むというので、今日から三日間くらいはぱっとしない市況が続く。

 昨日、東京は松市だった。スーパーマーケットが生活者の花のお買い場になったので、スーパーは量も質も花売り場を充実させてきた。しかし、専門店の花の取扱いは6割以上あるので、相場のリーダーシップは専門店が決めて良さそうなものだが、筋ものと言われる若松や門松は、量販店が価格決定権を持ってきた。一方、華道やアレンジ等の基礎知識が必要な根引き松他は、専門店が価格のリーダーシップを相変わらず持っている。また、現在は、タワーマンションが示す通り、居住空間は縦長が主流だ。天井も高くなっているものの、決して横に広くなっているわけではない。そうなると、松を飾るといっても、まっすぐなものが邪魔にならない為に多く使われよう。

 トレンドは変わるが需要がしっかりしているといえども、松の生産は減ってきた。何故か?松の場合、需要はしっかり見えるのだが、年に一回のお正月用に合わせて畑から切り出し、選別し、市場へ出荷する等、11、12月は日頃の従業員にプラスして、一時的に沢山の人を集めて働いてもらわなければならない。この労働力確保に見通しが立たないのだ。トラックの運転手さんも同様で、運送の場合には常時仕事があるが、それとても人手不足である。この原因は、経済的に言えば、この仕事には潜在成長率アップが期待できない為だ。

 問題は、潜在成長率の低さだ。松だけではない。日本経済全体をとってみても、需要がないのではなく、少子高齢化による潜在成長率の低さによる不安が、設備投資や投資意欲の減退、後継者不足に繋がっているのだ。まずは、機械化やロボット化、一部専門分野の人の移民等により、生産性を上げる必要がある。人口が増えなくとも潜在成長率を向上させる。そうすると、期待される成長率が上がってくる。また、非定型的な仕事の分野でイノベーションが起こり、期待成長率が上昇してくると、この分野の仕事は機械に置き換えることが出来ないわけだから、賃金が上がってくる。こういう循環を作り出す。農業で言えば、オランダは農業以外の会社が農業に参入して成功したわけではない。農業者が事業家農家として、園芸農業を活性化させてきたのだ。EUが広がった分、人件費が安い人達に働きにきてもらったり、機械化したり、MPSの指導により最適な農薬やエネルギーでの生産を行うことによってトータルの生産コストを下げ、社会的にも評価される農業にしていく等、成長率を上げてきた。これを行えばよいのだ。

 需要がもし足りていないとすれば、増やせばよい。花の場合、男性が女性にプレゼントをするフラワーバレンタインでアピールし、男性が女性に花を贈るのはカッコいいようにしていく。また、いつのまにか造花に変わった観葉植物をもう一度、CO2の除去やリフレッシュな環境を売り物に、生きているものへと代えてもらうプロモーションして行けば良い。さらに、子どもたちと一緒に過ごす週末に、花のある生活を提案する。公園の散歩もいいだろうし、切花を卓上にそっと飾って、楽しい会話をしながら食事をするのもいいだろう。どの分野を増やしていくのかは、花の場合、努力目標は決まっている。このように、因果律や目標がはっきりしている中では、仕事の生産性アップによるペイラインの引き下げと潜在消費量の掘り起こしによって、その産業は活性化する。需要が足りないのではない。潜在成長性に疑問があるから尻込みしてしまう。この潜在成長性を確実に引き上げることが、今必要なことであろう。作業のICT化、後継者を含む優秀な人材のリクルートがその第一歩だ。

投稿者 磯村信夫 : 2015年12月14日 15:36

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