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2016年1月11日

健康の青果だけでなく、花きで住環境を整える時代に舵を切った

 先週の9日(土)、(一社)帝国華道院主催『第89回全日本いけばなコンクール』の表彰式が、箱崎のロイヤルパークホテルで開催された。その懇談会で、各流派のお家元をはじめとする諸先生方に、今の切花チューリップは前処理をしているし、カスミソウも匂いを抑える処理をしているので、どちらも暖かい部屋に置いても間延びや匂いを気にせず使ってもらえるようになったことをお話しした。初めて聞いたという先生方が多く、市場や小売店が、産地それぞれが行っている改善努力を消費者へ情報提供出来ていないことを感じた。原産地表示まで含め、『この産地はこのような前処理をして花持ちを良くしています』といったような、業界人は知っていて当たり前のことを、消費者にも的確に伝えていかなければならない。

 さて、今年を占ういくつかの事象がマスコミで報じられている。まず、天候の話題、エルニーニョ現象である。エルニーニョ現象は現在、史上最大と言われており、今週は例年の寒さだそうだが、暖冬であることには変わりはない。天候異変が今年はこれからも続いてゆく。二つ目に景気だが、昨年の前半は、個人消費はしっかりしており、エコノミストが予測した通りの展開となった。しかし、年後半から食料品(生鮮食料品を含む)と中国産の衣料品等、買い物頻度の高い「食」と「衣」が値上がりし、いわゆる「体感物価」が上がって消費が控えられた。個人消費が振るわなくなったのである。花の場合、それに加えて暖冬の影響で、11、12月の安値市況展開となった。

 2015年の青果物は20世紀の単価水準となり、平成になって最も高い単価となった品目も多い。これは、天候異変による不作だけが原因ではなく、「健康」、「安心・安全」、「機能」を合言葉に、消費が確実なものになっていることを示している。花と同様、11月から現在まで、暖冬の影響で単価は失速気味だが、大きな傾向として、カット野菜まで含め、野菜の供給不足時に、原体価格が高値になっても、小売現場では家計に無理のない価格帯となる調達ルートが、2015年でおおよそ出来てきた。従って、青果の単価がこれ以上上がるのは難しいのではないかと思われる。一方、花の場合には、2015年の青果の高値につれて単価が上がった面もあるが、花の消費においては最悪期を脱しているので、小売価格を据え置いて、量を販売する時代になってきている。

 量を買ってもらうためには、一年間52週にフィットした花を提案しなければならず、その時々の天候に応じて若干修正を加える等、販売していこうとする花の品揃えと見せ方、価格を一にも二にも工夫しなければならない。ここ数年、青果物と同じ波長であった花の相場は、同じ地域で作られている農産物だから、天候の影響を受けて同じ流れの時もあろうが、20世紀の終わりから21世紀のはじめのように、青果物と別の動きをすることが予想される。それだけ、花きが農産物において主要地位を示しつつあることが、誰の目にもはっきりと映ってくる年になるといえるのではないか。

投稿者 磯村信夫 : 2016年1月11日 11:37

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