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2016年2月22日

社会性を一義に考えながらも弱点を補強する

 第10次卸売市場整備計画の骨子が、2月17日に開催された日本花き卸売市場協会の理事会で、卸売市場室より説明があった。少子高齢化の中で、社会インフラ業である花き卸売市場の流通量がこのままでは減ってしまうと想定し、従来の市場機能にプラスして生産者へ、あるいは、小売業者へ、一歩も二歩も踏み込んで協業することによってこそ、既存の卸売市場を利用させうるというものである。

 元来、卸売市場は市場法により策定された"社会性"を第一に考えた流通業である。しかし、それ故市場法によって役割や手段を制限してしまう面があった。これを、第10次卸売市場整備計画では、生活者視点での機能の強化をし、役割を多角化していこうとしている。「規制緩和」という言葉で表されることもあるが、一般企業のマーケティングを参考に説明するとこうなる。コトラーのマーケティング手法を使い事業を伸ばすためには、まず「マーケティング1.0」で企業の生み出すモノやコトの機能や品質を争う。次に、それにプラスして「マーケティング2.0」で消費者視点での他社との差別化を図る。さらに、現代では「マーケティング3.0」で、モノやサービスの社会的価値や、企業としてのミッション、ビジョンを社会に示すことが必要だ。これをブランドとして販売する。衣料品業界で言えば、ユニクロの社会性、また、個人の良心に価値をおく「これがいい」ではなく、もっと生き方そのものを表現した無印良品の「これでいい」等、世界では社会性の高い価値を生み出している企業が、貧富の差を問わず人々に選ばれ利益を出している。

 卸売市場に話を戻すと、差別的取扱いの禁止や、受託拒否等、社会インフラとしての成り立ちから、社会性は良しとするが、あまりにも少ない利益であったり、赤字の事業体もあるなど、必ずしも自らの力で社会を良くしていくということが出来ていない。開設者である地方自治体に助成金を依頼したり、国にも援助をお願いしている実情がある。しかし、これではいけない。NPO法人は、風がなければ空には羽ばたけない。一方、企業は自走することが出来る。利益を出すことが出来るからこそ、自走エンジンを健全に保って社会を良い方向に進めることが出来るのだ。当然、考えてモノ、コトを商いしているので、世界の一流企業はチップ以上(※チップは15%が目安)の利益を出そうとしている。自走する為に15%以上の営業利益を出すことが、社会性を一義に考えた私企業の在り方だとグローバルスタンダードでは言われている。日本では考えられないことだ。そんな高い営業利益率を卸売市場には求めないが、卸売市場(卸売会社と仲卸)は、より価値の高いコトやサービスを提供することにより、出荷者や輸送会社、小売店に対し、強い働かきかけをして自社の働きを買ってもらい、自走エンジンを健全に保ってもらう必要がある。

 卸売市場は東京オリンピックまでのここ5年、生き残りと自社の繁栄を考える時だ。社会性を一義に考えながらも、もう一度、「マーケティング1.0、2.0」で自社の強み、弱みをしっかりと把握し、消費者視点での差別化を図った営業活動を行っていかなければならない。それが、第10次卸売市場整備方針が施行される2016年度である。

投稿者 磯村信夫 : 2016年2月22日 16:33

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