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2016年5月30日

問題解決はFlower Biz、Flower Friday・Weekend Flowerだ

 5月25日(水)、全国花き振興協議会(以下、「全花協」という。) 第28回通常総会が、JR大森駅に直結している東急REIホテルで開催された。平成28年度は(一社)日本花き卸売市場協会から会長が選任される順番であった為、予定通り小生が平成28年度の全花協 会長へ就任した。トルコ のアンタルヤ国際園芸博覧会をはじめ、全花協で行っている事業について花き業界を代表し、会員団体を取りまとめ、率先垂範しなければならない。

 総会後の懇親会には、国会の自民党の先生方で組織して頂いているフラワー産業議員連盟代表の河村健夫先生に、都心から少し離れたこの大森の地まで駆けつけて頂いた。(一社)日本花き生産協会 副会長の星井さんは、河村先生の出身地である山口県でカーネーションを生産している。そんなご縁だろうか、50%まで輸入品にシェアを奪われた国産カーネーションにおいて、「国産カーネよ、頑張ろう」と、河村先生にフラワー産業議員連盟の会長になって頂いている。また、宮崎県選出で、フラワー産業議員連盟幹事長の江藤拓先生、更に、安倍内閣の中枢から花き産業を応援して頂いている大分県選出の参議院議員 衛藤晟一先生にもお越しいただいた。残念ながら、フラワー産業議員連盟 事務局長の佐藤ゆかり先生は、ご自身の後援会と重なってしまった為欠席とのことだった。そんな中で、先生方の心強い応援やご発言は大変有り難いものであった。

 専門店が減り、その売場面積を補う形で、スーパーやホームセンター等の量販店の売場が生活者のメインのお買い場となってきた。専門店をこれ以上減らさないようにする為に、家庭やオフィスに花や緑を入れてもらう活動をしよう、腕さえあれば、目利きであれば、夫婦でも花屋さんはやっていける。多数の専門店が品質を見極め、花市場で良い花を仕入れてくれる。しかも、質や持ちが良いことがリピーターを増やすことに繋がる。こうなると、量ではなく、質を追求することが得意な国内生産者は、結果として生産拡大を行うことが出来る。こういう風に、先生方も応援してくれるという。農水省 花き室のブリーフィングが効いているのかもしれないが、まさに全花協が行おうとしていることを、先生方も抱負として挙げてくださった。これに向かって、花き業界が一丸となっていく必要がある。

 その翌日の26日(木)、全花協が国の「国産花きイノベーション推進事業」を受け、JFTD主体に活動している「くらしに花を取り入れる新需要創出事業」の平成28年度第一回検討委員会が開催された。会社やデスク回りに花を取り入れてもらう「Flower Biz」、週末に花を買ってもらい、自宅に飾ってもらう「Flower Friday・Weekend Flower」を普及させる。また、普段あまり花を購入しない人が多い若年層をターゲットに花を飾ってもらう。この需要を検討する会議である。当日、お隣に座った企画検討委員長の上原征彦氏(昭和女子大学 特命教授)と小生との2人だけの会話の中で、以下のような話をした。全世界で社会が壊れ、家庭が壊れている。そこに、パーソナルユースの携帯電話が普及してきた結果、衝動的にあらゆることを行うようになってきてしまった。そんな事件が本当に目につく。このような状況の中、花文化の普及はなかなか難しいかもしれない。しかし、「花のある生活はカッコいい」というメッセージであったり、伝統や文化をSNS等も使って情報発信することで、昔は親や先人たちから教わっていた文化を取り入れてもらう。時代に合わせたツールを使用して、花のある幸せな生活を送ってもらう。ここに向けて、花き業界は努力する必要がある。というのが、先生と話したエッセンスであった。

 「くらしに花を取り入れる新需要創出事業」は、まだ第一回目と始まったばかりだが、具体的・効果的にどうするのか、外部委員の先生のアドバイスを聞きながら、全花協の会員自ら動く。また、情報を受け取るだけでなく発信する側に回って、「Flower Biz」、「Flower Friday・Weekend Flower」を行っていく必要があると強く感じた次第である。

投稿者 磯村信夫 : 15:59

2016年5月23日

今後の「経営見通し」で利益圧迫は心配していない

 妻が母の日に貰った自宅のダイアンサスは、小さな蕾まで咲いており、今でも十分に楽しめる。これは、大田花きの取引先である長野の荷主さんが作ったものだ。品質の良し悪しには外観と中身、そして、時代や季節を捉えた色や形状等が挙げられるが、ここまで中身の品質が優れている花はそうはない。永く楽しむには、まず、つくりが良いこと。次に、流通の過程で鮮度保持がきちんとされていること。そして、切花ならフラワーフード(切花栄養剤)を使うこと。こうすれば、美しく咲き続ける花は多い。

 今日は、卸売市場の一経営者としての考えをお話ししたい。生活者を失望させない為には、生産と流通過程において、鮮度保持に対する努力を惜しんではならない。その想いから、現在、大田花きでは、二年に亘って鮮度保持物流設備を建築している。今回で三つ目の投資だ。これは、生鮮食料品花き卸売市場が、社会より高度な機能を要求されている為だ。現在、国産の野菜の約9割、そして、切花は国産と輸入品まで含め、約8割が卸売市場流通している。中には、道の駅で売買されている物や、輸入品を輸入商社が直接販売している物もあるだろう。しかし、売るに天候、作るに天候で、需給が天候に左右され、また、季節や時代によって美しさや需要が変わっていく花きや青果を鑑みると、今後とも卸売市場の重要性は増えていくことはあれ、減っていくことはないだろう。生鮮食料品花き卸売市場の、流通上の責任は重い。すなわち、より幸せを求める消費者の負託に応えようと、進化させなければならないということだ。

 大田花きの最初の大きな投資は、20世紀後半、物流棟内を鮮度保持出来るようにしながら、自動で商品を分ける施設を場内に設置したものだ。この時は、施設と建物を作り、それをまるごと東京都へ寄付し、使用料を払って現在も使わせてもらっている(この施設を設置後、PFI※が卸売市場でも適用されるようになった)。そして、21世紀に入り、大田花きとFAJの共同出資で設立した花き施設整備(有)が、大田市場花き部の北側にある一万五千平米の土地を都から20年間でお借りした(約定では20年間の契約で、契約更新もあるが都の都合が優先される。返却する際には原状復帰をしなければならない)。一階には卸・仲卸の定温庫、作業場が並び、二階には花持ちの試験場や関連する事務所、そして、屋上には駐車場を設け、市場機能をより高めた。

 そして、三つ目の今回の投資では、ネット社会にあっても、生鮮食料品花きでは、商流、物流、情報流、お金の流れまで含め、卸売市場が経済効率上、最も高いパフォーマンスを今後とも発揮される機関である、という確証が小生は掴めたので、35年借地で都から大田花きに隣接する土地をお借りし、鮮度管理の出来る集出荷センターを、2年間の工事期間を設け作ることにした。ここも、約定では、35年経ったら元の姿に復元し、都に返すことになっているから、その分の経理処理をしなければならない。しかし、大田花きがなくならなければ、北側の花き施整備で都からお借りしている土地やその上に建てた施設も、メンテナンスしたり、増改築したりすることはあっても、卸売市場の機能を果たす為、これからも使わせて頂くつもりである。それと同じことが、今度の大きな設備投資についても言える。経営指標上、一時的に利益を圧迫する試算になっているが、それ以上に、何倍もの発展可能性が約束されていると小生は考えている。あらゆる業界において、「〇〇のことだったら☓☓へ」と仕事が集中する社会において、卸売市場の場合には、人と面積の大きさ、鮮度保持が必要不可欠な条件である。『サービスが先、利益は後』はCtoC業界のヤマト運輸元会長 小倉昌男氏の教えだが、BtoB業界の卸売市場も胆に銘ずる教えである。これをして初めて、会社の価値が上がり、利益を出せると小生は思っている。

※PFI(Private Finance Initiative):公共サービスに際して設備が必要な場合に、公共が直接施設を整備するのではなく、民間主導で施設整備と運用を行い、公共のサービスを提供するという考え方。

投稿者 磯村信夫 : 12:18

2016年5月16日

サプライチェーンで考えると、発展途上国の日本

 5月26、27日に伊勢志摩サミットが開催されるが、その議題の一つに「食品ロスの問題」が取り上げられる。今後、世界の人口が100億人を突破することが予想されており、無駄にしている食べ物をどうするかは大切な課題である。フランスでは、今年の2月はじめに「賞味期限切れ食品」の廃棄禁止を大手スーパー等で義務付ける法律が成立された。日本の場合、鮮度を重んじ、しかも一人、二人世帯が全世帯の半分以上となっている現在、どのようなルールを決めて、我々の習慣を変えていくかが問題となる。また、消費期限内であれば良いのか、製造年月日はどうなるのか、という問題もある。例えば、おにぎりやお弁当でも、製造年月日が大切になるとすれば、夜中の12時を過ぎてから作るようにしようとする業者がある。しかし、これは何か本末転倒のような気がする。生ものが大好きな日本人も、労働条件まで含め、ヨーロッパ諸国に学んで良いルールを取り入れ、農家や加工食品メーカー、花束加工業者まで含めて、世界的な承認基準を設け、自称ではなく、チェックを受けてもらい、嘘のない生産・流通をする必要がある。

 この11月から豊洲市場が開場するが、いよいよ、卸売市場も、鮮度管理が出来ない市場は消費者や小売店から選ばれなくなる。これは、青果の見た目だけでなく、中身についても鮮度への関心が高くなり、市場流通の質のレベルが上がるということだ。

 西武プリンスドームで開催されている「第18回国際バラとガーデニングショウ」のバラを見た時、趣味で作った方が出品しているバラには無かったが、恥ずかしいことに、プロの生産者の出品物や小売店が販売する商品の中に、ボトリチスで傷んだ花弁のものがあった。「国際バラとガーデニングショウ」は、「世界ラン展」と同様、日本の生産技術を世界に誇り、国際的評価を得ているものだが、生産する温室の中や、農協の集出荷場の中、輸送トラックの中、卸売市場、小売店の作業場の中のどこかにボトリチスの菌がいたから、花弁が傷んだのだ。花びらを剥けば販売している時は分からないが、翌日にまた出てくる。これでは、どこの国にも輸出出来ない。従って、生産者だけでなく、輸送会社、流通会社においても衛生管理を徹底していかないと、世界の花の生産国にはなれないのだ。それにも関わらず、日本はお客様が自国内にいることから、長い間輸出しなくても済み、従って、脇の甘い国内流通をしてきた。もう一度、生鮮食料品の有効利用、ロスを少なくすること、また、輸出に取り組むことによって、日本が世界レベルからするとやりそびれていることを早急に行い、科学に基づいた、身体や環境に害のない食べ物や花を流通させていく必要がある。また、病気がなく、虫が付いていないとチェックされた元気な花や青果を輸出するだけでなく、国内でも当然生産流通させるのだ。

 今、我々、少なくとも花き業界がやっていることは、消費者に手渡しするまでの、世界レベルの花の流通基準からして、甚だ劣るものであり、世界に通用しないことを知ること。この事実認識から始めなければならない。その意味で、輸出や農業改革等は、我々がレベルアップする大変良いチャンスなのだ。

投稿者 磯村信夫 : 13:36

2016年5月 9日

母の日も"質"の日本

 昨日はGW中の母の日であった。本年の母の日は、生活者の気持ちがレジャーの方に向いてしまい、花き業界全体からすると、過去の経験から予想した通り、需要量は少し少なくなっていた。生活者がどこのお花屋さんを通じてお母さんに花をプレゼントしたのか。「疾風に勁草を知る」ではないが、母の日のギフトに強い花屋さんを知るには、今年はもってこいの日めぐりだったと言える。

 小生が尊敬するお花屋さんの一人が、次のようなことを言っていた。「年末と母の日は、お店の通信簿のようなものです。そのお宅に尽くしたら、お嬢さんやお孫さんは買いに来てくださる。もし来てくださらないとしたら問題ですね」。先週の始め、セリ場上の通路でのことだ。本年の流れは、お母さんにプレゼントするのだから、数量や金額はもとより、より本物を求め、信頼の置けるところで用意をするというものであった。カタログやインターネット販売でも、信頼のある花店が自分の贈る花を担当するのかといったところに重点が置かれた。また、初めて見る生産者の「私がつくりました」という写真がついたカーネーションやアジサイの花があっても、「この人のことを知らないから止めておこう。それより、信頼の置けるフローリストが担当するものを贈ろう」。という人が多かったのではないか。すなわち、専門店かどうか、そして、日頃から値段ではなく、品質がしっかりしていて、贈った時、貰った時も、「良かった」と得心の出来るものであることが大切であった。そうなると、限られた店が繁盛し、母の日だからと出てきた、いわゆる「物日販売業者」は、今年は総崩れだった。例えば、ペットボトルのお茶なども、信頼のある会社が監修・チェックをしたか、あるいは、その茶葉を納品した等でないと選ばれなくなってきている。まさにそれと同じ流れとなった。

 花き市場においては、国産のカーネーションが圧倒的優位であった。そして、国産しかないカーネーションの鉢物では、「この人なら大丈夫だ」と思わせる、つくりの良いブランド生産者の鉢は予定価格で通ったが、それ以外は安値に泣いた人もいる。仏花の物日の時は、量販店の花売り場が優位になっているが、母の日は、素材ももちろん、質の確かな、綺麗にデザインされた切花、また、全体のバランスだけでなく、いかにも「根っこも健全です」ということを全体で表している鉢物を扱う専門店が、今年の生活者の負託に応えていた。

 今後とも、お客様として大切にしたいお父さんと子どもたちが、店頭で並んでいる姿を見ると、我が花き業界は、総出で母の日を応援しなければならないと思った次第である。

投稿者 磯村信夫 : 13:54

2016年5月 2日

自分の所属する組織体がこの世で何を実現すべきなのか理解する

 三菱自動車の燃費試験データ不正問題が話題となっているが、三菱自動車が信頼を回復するには、かなりの時間を要するのではないかと推測する。問題点の一つは、チェックをせずに当事者の発表に任せるという、性善説に基づいた方式では、日本ではもはや通用しなくなっていることだ。アメリカと同様の、オーソライズされた調査機関が日本でもあるべきである。農業分野で言えば「エコファーマー」や、「有機」は誰がチェックしているのか。人は自分のことを現実よりも2~3割は甘く見る習性があるので、オーソライズされた機構がチェックをしない"自称○○"の場合、あらかじめ割り引いて、あるいは、最初から信用しないで、そのモノやコトを買ったり使ったりする必要がある。

 もう一つ、今回の三菱自動車の起こした問題で小生が思うのは、自社が何のためにこの世に存在しているのか、その理念や夢が社会のお役立ちの下にあることを忘れてしまったのではないか、ということである。いつも競争の中で他社と比べて優位になることしか、即ち、相対価値しか頭になかったのではないか。古い話になるが、カリフォルニアで厳しい排ガス規制が設置された時、本田宗一郎は新興自動車会社として名を挙げる絶好のチャンスと捉え、この問題に取り組んだ。一方、社内の技術者は、子どもたちに綺麗な空、空気を残したい為に排ガス規制に取り組んだ。他者との相対的優位に心が奪われていた本田宗一郎だったが、CVCCエンジンを作った社員たちが「夢を追い求めた」ことを受けて反省し、ホンダイズムが会社の資産になったことを喜び、会社を「任せた」とリタイアしていった。ホンダは相対価値をつくる会社から、「真・善・美」の絶対価値をつくる会社となったのである。

 三菱自動車は、何をやりたいと思っていたのか。GE(ゼネラル・エレクトリック)のように、「市場」、「競合」、「自社」を分析(3C分析)、競争に勝つことにより、有名企業となっている会社がアメリカには多い。しかし、3Mやgoogleのような会社もある。競争が激しくなる中、会社では監査役や公認会計士、あるいは、業務の上ではオーソライズされた認証機関が、今の日本、そしてもちろん、花き業界の生産、流通、小売の分野においても必要だ。さらに、自分が働く企業は何の為に生まれてきたかを理解し、その為に進化をすることだ。三菱自動車が再起を図るには、もう一度、自分がやりたいことを確認し、それを行う一つの種として進化することである。我が花き業界でも、甘いことがあまりにも多い。もう一度チェックシステムを見直して、心を引き締めてコトにあたるとしよう。

投稿者 磯村信夫 : 16:17

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