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2016年5月23日

今後の「経営見通し」で利益圧迫は心配していない

 妻が母の日に貰った自宅のダイアンサスは、小さな蕾まで咲いており、今でも十分に楽しめる。これは、大田花きの取引先である長野の荷主さんが作ったものだ。品質の良し悪しには外観と中身、そして、時代や季節を捉えた色や形状等が挙げられるが、ここまで中身の品質が優れている花はそうはない。永く楽しむには、まず、つくりが良いこと。次に、流通の過程で鮮度保持がきちんとされていること。そして、切花ならフラワーフード(切花栄養剤)を使うこと。こうすれば、美しく咲き続ける花は多い。

 今日は、卸売市場の一経営者としての考えをお話ししたい。生活者を失望させない為には、生産と流通過程において、鮮度保持に対する努力を惜しんではならない。その想いから、現在、大田花きでは、二年に亘って鮮度保持物流設備を建築している。今回で三つ目の投資だ。これは、生鮮食料品花き卸売市場が、社会より高度な機能を要求されている為だ。現在、国産の野菜の約9割、そして、切花は国産と輸入品まで含め、約8割が卸売市場流通している。中には、道の駅で売買されている物や、輸入品を輸入商社が直接販売している物もあるだろう。しかし、売るに天候、作るに天候で、需給が天候に左右され、また、季節や時代によって美しさや需要が変わっていく花きや青果を鑑みると、今後とも卸売市場の重要性は増えていくことはあれ、減っていくことはないだろう。生鮮食料品花き卸売市場の、流通上の責任は重い。すなわち、より幸せを求める消費者の負託に応えようと、進化させなければならないということだ。

 大田花きの最初の大きな投資は、20世紀後半、物流棟内を鮮度保持出来るようにしながら、自動で商品を分ける施設を場内に設置したものだ。この時は、施設と建物を作り、それをまるごと東京都へ寄付し、使用料を払って現在も使わせてもらっている(この施設を設置後、PFI※が卸売市場でも適用されるようになった)。そして、21世紀に入り、大田花きとFAJの共同出資で設立した花き施設整備(有)が、大田市場花き部の北側にある一万五千平米の土地を都から20年間でお借りした(約定では20年間の契約で、契約更新もあるが都の都合が優先される。返却する際には原状復帰をしなければならない)。一階には卸・仲卸の定温庫、作業場が並び、二階には花持ちの試験場や関連する事務所、そして、屋上には駐車場を設け、市場機能をより高めた。

 そして、三つ目の今回の投資では、ネット社会にあっても、生鮮食料品花きでは、商流、物流、情報流、お金の流れまで含め、卸売市場が経済効率上、最も高いパフォーマンスを今後とも発揮される機関である、という確証が小生は掴めたので、35年借地で都から大田花きに隣接する土地をお借りし、鮮度管理の出来る集出荷センターを、2年間の工事期間を設け作ることにした。ここも、約定では、35年経ったら元の姿に復元し、都に返すことになっているから、その分の経理処理をしなければならない。しかし、大田花きがなくならなければ、北側の花き施整備で都からお借りしている土地やその上に建てた施設も、メンテナンスしたり、増改築したりすることはあっても、卸売市場の機能を果たす為、これからも使わせて頂くつもりである。それと同じことが、今度の大きな設備投資についても言える。経営指標上、一時的に利益を圧迫する試算になっているが、それ以上に、何倍もの発展可能性が約束されていると小生は考えている。あらゆる業界において、「〇〇のことだったら☓☓へ」と仕事が集中する社会において、卸売市場の場合には、人と面積の大きさ、鮮度保持が必要不可欠な条件である。『サービスが先、利益は後』はCtoC業界のヤマト運輸元会長 小倉昌男氏の教えだが、BtoB業界の卸売市場も胆に銘ずる教えである。これをして初めて、会社の価値が上がり、利益を出せると小生は思っている。

※PFI(Private Finance Initiative):公共サービスに際して設備が必要な場合に、公共が直接施設を整備するのではなく、民間主導で施設整備と運用を行い、公共のサービスを提供するという考え方。

投稿者 磯村信夫 : 2016年5月23日 12:18

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