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2016年6月27日

セリ前取引での価格設定

 日本農業新聞では、花の市況欄とは別に、札幌花卉園芸・仙台生花・大田花き・名港フラワーブリッジ・なにわ花いちば・広島花満・福岡花市場の計7社の取引の生データが掲載されている。市況欄は、各社によって高値と中値の取り方が違う為、どこの卸売会社が売れているかどうか、一概には比較できない。しかし、7社の生データは、プロの花き業者であればおおよその推測がつく。このように、大変貴重なデータを日本農業新聞は我々に提供してくれている。そして、我々が知りたいのは、もっと踏み込んだセリ前・セリ取引の数量単価と、その取引価格が買い手ごとにどう違っているのか。また、セリ取引の実態はどのようになっているのか、セリが活きているか、残品処分になっている市場なのか、ということだ。どこの卸売会社も、その市場を利用し運営する全ての人は、真実の相場はセリ値であると思っている。一体全体、セリ前で買った買参人は得をしたのか、損をしたのか。また、産地はセリ前で売ってもらった方が良いのか、それとも、セリ取引で売ってもらった方が良いのか。そこを知りたいわけである。

 前回、青果物卸売会社の取引の現状から、花の卸では、もう一歩踏み込んで、サプライチェーン全体を考えた取引を3割程度すべきだと提案した。本日は、今起きている価値の混乱を避けるセリ前・セリ取引のあるべき姿を提案したい。まず、青果卸売市場流通の実態として、産地は委託出荷の商品も、希望価格を伝えて卸が販売するのが通例となっている。卸売会社は希望価格で売れない時、残品相対処理・事故処理等をして、産地に希望価格で仕切りを返すことが多いと聞く。一方、花の場合は嗜好性が強い為、品目のバラエティに富み、品種も多い。担当品目の部署でないと、新品種まではとても覚えきれないので、大手の卸売会社はその品種の輪の大きさ、色、香り等、索引に近いものをデータとしてPC上に公表している。こういった特性があるので、産地の御担当者は、指値委託しようにも全ての知識をカバーすることは難しく、時間的な余裕も無い。よって、花き卸売会社に出荷する場合には全面委託となることが多いのだ。

 昨年から花き卸売市場業界で問題視されているのが、買参人数の減少、特に、花屋さんの廃業である。量販店が生活者の花のお買い場の中心になってきていることや、高齢化等で、花屋さんを辞める人たちが目につく。辞めないまでも、出来るだけ経費をかけないように、ロスを出さないようにと細かいロットで仕入れをしたり、家族だけで出来るように、時間のかかるセリを利用せず、仲卸や、場合によってはセリ前取引を利用する小売店が多くなってきた。このままだと卸売市場はセリ参加人数が少なくなり、安値になってしまうのだ。そうすると、花き市場でのセリ前取引に拍車がかかる。しかも、青果なら指値委託があるが、花は全面委託だ。社長である小生の耳にも、セリ前価格の値段が入ってくることがあるが、「あの市場があんな価格でセリ前に売っている」等、他社より早く売ろうと、用意ドンで安売り競争をしているかのような時がある。5月の20日、6月の10日・20日、10月の10日・20日、11月の10日、以上の6回が、花が安くなってしまう時だ。この因果律ははっきりしているが、ここでは紙面の関係で割愛させて頂く。この安い時に、花き卸売会社では、産地から全面委託されているので、品物の価値を無視してセリ前に安売り競争になる可能性があるのだ。

 青果の相場、花の相場はどこで決まっているのか。それは、青果と花きで東洋一と言われている大田市場の、東京青果と大田花きのセリで日本の台の相場が決まるのだ。セリとセリ前取引の比率は、両社とも他の青果花き卸売会社と同じだが、セリにかける時間と数量、金額は圧倒的に多い。証券取引では、今は基本的に東京証券取引所の1つが日本の指標だが、青果・花きの国内相場においては、プロの間では、大果大阪青果となにわ花いちば、東京青果と大田花きのセリが日本の指標となる。他の青果・花き市場は、ここの建値と、日本農業新聞に掲載されている全国各地の7つの拠点市場、そして、自社のセリ値、これを絶えず勘案しながら、セリ前取引を進めていくことが必要となる。そのうち、花き卸売会社も、指値委託中心の荷物を扱っても、赤字にならないで済む体制を整えていく必要があるだろう。

投稿者 磯村信夫 : 17:47

2016年6月20日

特定サプライチェーン三割

 昨日の父の日では、黄バラやヒマワリ等、花き業界が"お父さんの花"とPRしている花が、期待通りの売れ具合であった。日本は母系社会だから、母の日みたいに飛ぶように売れた訳ではない。しかし、専門店やスーパーでも、父の日の花として用意したものがよく売れた。父の日の花は確実に前進しているように思う。

 本日は"契約取引"について話をしたい。青果市場では、荷不足から卸売市場が値段を決めて注文するが、結局、大手買参人や仲卸に無理を言ったり、最終的に残ってしまったり、残品相対や値段を下げての販売、そして事故処理をすることがあると聞く。農協合併で産地も大きくなり、小売店も、野菜・果物の専門店が少なくなり、スーパー主体の売場になった。しかも、スーパーも寡占化が進む中にあって、仕入れも販売も大手の間に小さな卸売市場がある。こういった状況が、現在の青果市場の取引状態を生み出していると想像出来る。

 薬卸や食品卸は合併を繰り返し、仕入れ先・販売先に負けない規模となって、価格競争だけではない能力を身につけて卸業を営んでいる。しかし、生鮮食料品花き流通の太宗を担う卸売市場は、最大手といっても、買い手の小売会社の規模からするといかにも零細だ。また、公共性を重んじる為、差別的取り扱いの禁止を実行しており、日頃は市場外流通をしている産地も、捌けきれなくなると卸売市場に出荷出来るし、同じく市場外流通している買い手も、足りなくなると市場に買い出しに来たりする。従って、卸売市場は相場の乱高下の振れ幅が出きてしまう傾向がある。卸や仲卸は極力、安定価格で仕入、販売をしようとしているのに、買い手より事業規模が小さい卸売市場は、入荷数量や相場に振り回されて、利益を確保出来ない状況になってきているのだ。このような中で、第10次卸売市場整備計画では、卸売市場に対し、多面的な機能が必要であると指導をしている。花き卸売市場の場合、まだ青果取引のようには業界全体はなっていない。しかし、生産減でその方向に進んでいる所もちらほら出てきている。

 では、どうすれば良いか。産地の生産部会、卸・仲卸会社、販売する小売店が一気通貫でチームを組むことだ。無理のない範囲で、即ち、産地の販売量からすると、普段の市場流通の三割ほどの量を別枠で取り扱うのを基本形とするのが良い。三割以上は、「作るに天候、売るに天候」で天候に左右される為難しいのではないか。これなら、ある意味で特定関係のサプライチェーンとなるが、卸売市場を利用する多数の産地や買い手に変に悪影響を及ぼさないで済む。こういった取引を、嗜好性の高い花きで実現をする。そうすれば、「あの市場はあの産地、あの小売店と」と、サプライチェーン同士の競争になる。競争の在り方は、地域ではなく、言葉は悪いが、サプライチェーン系列下の競争、または、サプライチェーンの取組みの競争となってくる。このやり方は、「何でもいらっしゃい」という、平等だがややもすると責任が雲散霧消してしまい、それぞれが利己的になっていく弊害がある生鮮食料品花き流通業界において、新しい活性化の方向にいくのではないかと小生は期待している。日本中の花き市場が、そちらの方向に進んでいくことを祈っている。

投稿者 磯村信夫 : 15:51

2016年6月13日

昨日の続きが今日ではない場合がある

 先週の8日(水)、一般社団法人 日本花き卸売市場協会(以下、「市場協会」という)の定時総会が九州で行われた。行きの飛行機の中、小生はこんなことを考えていた。世界には70億を超える人口があるが、その人口の半数以上が都市部に集中している。人口が増え都市化が進むと共に、それまでのその国の伝統的な社会や家庭が壊れてきた。そこに、更にインターネットと携帯電話が入り込み、「アラブの春」や「イスラム国(IS)」ではないが、今までと違った社会運動や生き方が展開されてきている。リアルな社会を運営しょうとする為政者や官僚、実業界は、漠然と「ネット社会」と呼んでいるこの実態を見極めることは難しい。しかし、ここと敵対しては、国や秩序、事業が成り立たない。こう実感するようになった。

 花の消費で言えば、携帯電話で何でも済ませてしまう20代・30代の人達が、日本とドイツであまり花を買わない。これをどうすれば良いのかが、先進国花き産業の課題となっている。結論を言えば、SNSを使って花のある生活を「イイね」と言ってもらうことだ。生活空間の味付けとして、花や緑を手軽に楽しめるレシピを作って利用してもらう。科学的な、とりわけ、大脳生理学的に植物が及ぼす影響をエビデンスとしてお知らせする。また、空気中の有害物質を浄化する等の、医学的な、あるいは、CO2問題解決のような倫理性に訴える消費を促す。こういった事が必要だ。

 では、具体的に現在の花き業界で困っている、歴史的に※シンギュラーポイントが突き抜けた状況になっているものは何かというと、葬儀や法事、先祖に対するお参り等の宗教的慣習が、今後さらに少なくなっていくということだ。これを何故、8日の市場協会の総会へ向かう途中に考えていたかと言うと、九州の地で1637年、16歳の天草四朗がリーダーとなって起こした「島原の乱」を思い出したからだ。天草四朗は、国に徹底的に抵抗した。キリシタン農民のあまりの強さに徳川幕府は恐れおのき、その後に宗門改役を設置した。また、寺院に檀家制度を布き、冠婚葬祭の行事は全て檀家制度に基づいて寺院が行うこととした。それ以来、儀式の慣習が日本で続いてきたが、2015年を境に、団塊世代で喪主となる方が少なくなり、それより若い世代が喪主となることが多くなった。また、お亡くなりになる方が「自分の葬式はこうしてくれ」と規模を小さくしたり、伝統的な社会や家庭の崩壊が理由で、お通夜と葬式をワンセットに、葬儀1日の儀式で済ませるところも増えてきている。これにより、今まで冠婚葬祭を中心とした小売店でも、ギフトや店頭販売等、他の需要を求めて出て行かなければならないということになっている。

 物事にはシンギュラーポイントがあり、いつもここを見ておくことが欠かせない。これだけ世界の人口が増えて、インターネットで繋がっていることを考えると、人類初めての経験であるから「歴史は繰り返す」などとのんびりしたことばかりは言っていられない。歴史に学ぶが、それをいったん忘れてゼロベースで現実を見据え、その中から文脈を探ることが花き業界でも必要になっている。仮に、一割の出荷・消費量が少なくなっても、一割余分に花もちすれば、消費者にとって観賞コストは安いし、花に対する愛情は湧く。自己都合ではなく、どのように地球の生きとし生ける人々が地球と共生出来るか。その視点で、効率的な花き業界を見つめ直していきたい。福岡の市場協会 定時総会でお会いした熊本の花市場の社長さん方は、地震にもめげず、一日も休まず開市し続けた。生産者の為、そして、小売店・消費者の為に花市場を開き、社会的な役割を果たしたのは市場協会として誇りである。今後とも、その心意気に花市場業界は学んでいきたいと思っている。

※シンギュラーポイント:水であれば沸騰点や氷結点のことをいう。徐々に 徐々に加熱され、100度に達した時点で水は煮えたぎり、水蒸気となる。シンギュラー・ ポイントを過ぎた時点で、誰の目にも明らかになるが、こうなってしまうと、火を消し ても、水を注ぎ足しても暫くは手の付けられない状態が続く。

投稿者 磯村信夫 : 15:46

2016年6月 6日

卸売市場の第一の仕事はリテールサポート

 農林水産省の統計によると、平成27年の切花・鉢物出荷量は前年に比べ2%減少している。しかし、これは国産の花のことであり、円安で輸入切花の出荷量が減っていることを鑑みると、実際の流通量はこの2%より更に減っている。菊・バラ・カーネーションとも、国産のあと輸入品を売るのが日本の花市場の通例なので、輸入業者は高く買ったのに安く売られてはたまらないと、市場外流通を開拓し、卸売市場への流通量が減った。そして、市場に通う仲卸や花屋さんは「毎年5%以上、少なくなっているのではないか」という感じを持っている。また、卸売市場は、入荷も確かに減っているが、一週間あたりの延べ買参人数の減少を問題視しなければならない。廃業するお花屋さんが出たり、営業を続けていても月・金しか仕入れに来なかったり、「メインの市場の荷が少ないから品揃えが出来ない」と仕入れ先を増やして、市場に行く回数が減ったり等、買参人数の減少が経営上の問題となっている。これでは縮小均衡だ。花き振興法を作って頂き、予算を付けて頂いたのにも拘らず、これでは本当に申し訳ない。日々の業務を通じて、もっとどうにかしたい。

 卸売市場は、地元の生活者に花を供給する為に存在している。中央卸売市場、公設市場、第三セクター等は土地や施設を用意してもらい、卸・仲卸は家賃を払って営業する。一方、地方卸売市場は自分で土地を用意し開設しているが、産地に対する奨励金等は税法上、営業経費で計上することが出来る。このように、様々な便宜を図って貰っている。いずれも、「地元の生活者に花で幸せに感じてもらうことを仕事とせよ」と国や地方自治体から役割を仰せつかっているからだ。だからこそ、卸売市場は地元の小売・花売り場でもっと花が売れるように、仕入代理業に徹するべきである。

 花き卸売市場の役割も、リテールサポートの分野から様々なことが必要となってくる。例えば、先月、日本でも設立されたフラワーウォッチジャパン社の仕事だ。世界基準に合わせたMPSの安全・安心の花作り、流通に対する指導、また、生産者に対しては、何時にどのような開花ステージで採花すべきか、前処理をどのように行っていけば良いか等の指導とチェック。更に、輸送途中の鮮度保持においては、日本では小生が確認出来た限り、JA北空知広域連殿しか適応していない「温度×時間」という科学的な事実に基づく鮮度保持物流方法の確立。また、加工業者や小売店の後処理と水質等の適切な作業環境と販売環境。こういった管理が、日本の花き産業の中では、当然に中間物流業者の仕事にあろう。小売店や産地がフラワーウォッチジャパン社にお願いするのか、或いは、それと同等の機能を卸・仲卸が持つのか。それぞれ、経営方針によって分かれるだろう。しかし、現在、日本の花き消費・生産を拡大する為には、毎日の花き生産流通小売の仕事として、ここに挙げたフラワーウォッチ社のような指導やチェックが欠かせないのである。

 切花・鉢物とも、購入した人が「損をしたな」と感じさせないようにしなければならない。本当は出来るのに、残念ながら今は失望させかねない状況が、花き業界に少なからずあると小生は思っている。まず、バケツの水を綺麗にすること。これはすぐにでも出来るはずだ。一刻も早く、花き業界全体で、花もちを重要視したサプライチェーンとはどんなものか、良く知ることがまず必要だと思う次第である。知ったら実行だ。

投稿者 磯村信夫 : 15:31

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