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2016年6月13日

昨日の続きが今日ではない場合がある

 先週の8日(水)、一般社団法人 日本花き卸売市場協会(以下、「市場協会」という)の定時総会が九州で行われた。行きの飛行機の中、小生はこんなことを考えていた。世界には70億を超える人口があるが、その人口の半数以上が都市部に集中している。人口が増え都市化が進むと共に、それまでのその国の伝統的な社会や家庭が壊れてきた。そこに、更にインターネットと携帯電話が入り込み、「アラブの春」や「イスラム国(IS)」ではないが、今までと違った社会運動や生き方が展開されてきている。リアルな社会を運営しょうとする為政者や官僚、実業界は、漠然と「ネット社会」と呼んでいるこの実態を見極めることは難しい。しかし、ここと敵対しては、国や秩序、事業が成り立たない。こう実感するようになった。

 花の消費で言えば、携帯電話で何でも済ませてしまう20代・30代の人達が、日本とドイツであまり花を買わない。これをどうすれば良いのかが、先進国花き産業の課題となっている。結論を言えば、SNSを使って花のある生活を「イイね」と言ってもらうことだ。生活空間の味付けとして、花や緑を手軽に楽しめるレシピを作って利用してもらう。科学的な、とりわけ、大脳生理学的に植物が及ぼす影響をエビデンスとしてお知らせする。また、空気中の有害物質を浄化する等の、医学的な、あるいは、CO2問題解決のような倫理性に訴える消費を促す。こういった事が必要だ。

 では、具体的に現在の花き業界で困っている、歴史的に※シンギュラーポイントが突き抜けた状況になっているものは何かというと、葬儀や法事、先祖に対するお参り等の宗教的慣習が、今後さらに少なくなっていくということだ。これを何故、8日の市場協会の総会へ向かう途中に考えていたかと言うと、九州の地で1637年、16歳の天草四朗がリーダーとなって起こした「島原の乱」を思い出したからだ。天草四朗は、国に徹底的に抵抗した。キリシタン農民のあまりの強さに徳川幕府は恐れおのき、その後に宗門改役を設置した。また、寺院に檀家制度を布き、冠婚葬祭の行事は全て檀家制度に基づいて寺院が行うこととした。それ以来、儀式の慣習が日本で続いてきたが、2015年を境に、団塊世代で喪主となる方が少なくなり、それより若い世代が喪主となることが多くなった。また、お亡くなりになる方が「自分の葬式はこうしてくれ」と規模を小さくしたり、伝統的な社会や家庭の崩壊が理由で、お通夜と葬式をワンセットに、葬儀1日の儀式で済ませるところも増えてきている。これにより、今まで冠婚葬祭を中心とした小売店でも、ギフトや店頭販売等、他の需要を求めて出て行かなければならないということになっている。

 物事にはシンギュラーポイントがあり、いつもここを見ておくことが欠かせない。これだけ世界の人口が増えて、インターネットで繋がっていることを考えると、人類初めての経験であるから「歴史は繰り返す」などとのんびりしたことばかりは言っていられない。歴史に学ぶが、それをいったん忘れてゼロベースで現実を見据え、その中から文脈を探ることが花き業界でも必要になっている。仮に、一割の出荷・消費量が少なくなっても、一割余分に花もちすれば、消費者にとって観賞コストは安いし、花に対する愛情は湧く。自己都合ではなく、どのように地球の生きとし生ける人々が地球と共生出来るか。その視点で、効率的な花き業界を見つめ直していきたい。福岡の市場協会 定時総会でお会いした熊本の花市場の社長さん方は、地震にもめげず、一日も休まず開市し続けた。生産者の為、そして、小売店・消費者の為に花市場を開き、社会的な役割を果たしたのは市場協会として誇りである。今後とも、その心意気に花市場業界は学んでいきたいと思っている。

※シンギュラーポイント:水であれば沸騰点や氷結点のことをいう。徐々に 徐々に加熱され、100度に達した時点で水は煮えたぎり、水蒸気となる。シンギュラー・ ポイントを過ぎた時点で、誰の目にも明らかになるが、こうなってしまうと、火を消し ても、水を注ぎ足しても暫くは手の付けられない状態が続く。

投稿者 磯村信夫 : 2016年6月13日 15:46

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