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2016年7月11日

鮮度保持投資はペイする

 台風1号の余波もあってか、集中豪雨となったり、梅雨の晴れ間で真夏日となったり、とにかく、ムシムシして堪らない。大田花きでは、バケツの水を綺麗にしておくのに切花鮮度保持剤を使用したり、バケツの内側をごしごし洗う等、基本を忘れずに作業を行っている。この手間は当然のことながら大変だ。水バケツを使っている世界の花き業界では、大変大きな投資をしてバケツの洗浄を行い、また、使用の際には、水+クリザール等の専門溶液を入れている。

 流通している水バケツやソフトバケツに触ってみると、日本では低温流通が行き届いていない為、水温は生ぬるい。また、朝早くセリ前取引されたバラ等の切前を見ていると、定温庫にいれておけばまだしも、そうでないものは、お店で販売するのにはちょうど良い切前まで咲いていて、これからこれをセリにかけるとなると「ちょっと咲き過ぎだなぁ」と思う物が多くある。どうすれば良いか。まず、低温輸送がどうしても必要だ。低温でないなら、むしろ乾式が良い。その方が、花が咲いてこないからだ。こう仲卸さんたちに指導している。

 大田花きでは、低温物流を行うための花ステーションを二年間かけて建設している。本年は二年目で、もうあと半年でスロープが出来て完成だ。今は荷物のリフターが稼働しているが、昇降機というのは安全を優先する為、せっかちな市場人からすると遅く思えてならない。これから完成するスロープでの搬出入により、鮮度の良い花を市場物流させることが出来る。また、スペースが広がるため、荷物をいっぱい入れることが出来る。需要が増大する物日でも、スムーズに出し入れすることが出来る。これらの効率の良い物流、鮮度保持で一番喜んでくださるのは、消費者や専門店、そして、仲卸さんや品揃えの為に弊社を利用している地方卸売市場、大手買参人、また、セリやセリ前取引を利用する買参人の人達だ。

 ヨーロッパやアメリカでは、働く人が早朝や深夜労働をしないでも鮮度を損なわないようにと、定温施設に投資をした。その結果、鮮度保持上の価値が上がったのだ。今まで、日本の花き業界は定温庫を上手に利用してこなかった。しかし、今後、人手不足が本格化する中、産地は職員や運送店の効率を考え、大きなロットでも省力機器を使い早く降ろすことが出来、しかも低温なので鮮度上問題がない。そういう定温荷扱い場を持つ市場とサプライチェーンを組んでいくことだろう。

 農業者が早起きして、身体が充実している時に収穫し、産地の集出荷場に持って行く。集出荷場では、早朝手当や残業手当、休日手当等、不要な賃金支出をしないで、人が働きやすい時間に働いてもらう。そして、生鮮食料品花きの運送店の場合には、どうしても午後から22時までに市場に届けなければならないが、これも定温施設によって、日中走っても品質は劣化しない。荷を受けた地域中核市場は、その日の業務を終えて、遅くとも終電までには自宅に帰れるようにする。市場の交替勤務の一部社員は、引取りトラックや他の支援サービスの為に夜間に勤務するが、これとても、運送店や卸売市場の運営効率化を図る為である。今、最も不足感が強い運転手問題では、労働時間の規約の範囲内で行わなければならないので、さっと検品し、さっと積み込み、地元の市場に届ける。花き業界全体でこのようになっていかなければならない。そして、低温でこれらを行うことによって、人件費とロス率を中心に、サプライチェーン上の損益分岐点を各所でさげ、しかも、消費者にお金を頂くわけだから、花の鮮度を落とさないようにする。その為に、産地の集出荷所や輸送のトラック、卸売市場・小売店は、鮮度保持の投資をするのである。ここを間違えてはならない。

 鮮度保持は、バケツの内側を綺麗にするだけでも手間暇がかかる。この当たり前のことにどう投資をするか。不必要な出費、特に、一番高い人件費をリーズナブルなものにして、優秀な人に働き続けてもらうか。人材ロスの低減と、商売上の花のロス低減。ここが投資のポイントになるのである。


※現代では、花が産地から店頭まで運ばれるまでの「温度×時間」で、花にどれだけ負担をかけるかを計ることが出来る。

投稿者 磯村信夫 : 2016年7月11日 15:40

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