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2016年7月18日

『言ってはいけない』一極集中の魚市場と青果市場

 この夏は、地方分権が機能していた江戸時代のことを勉強している。なぜなら、花は文化の産物であり、江戸時代の旧藩によって現在の花の使われ方も違うからだ。従って、その地域に根ざした専門店や花市場が必要だと小生は思っている。江戸時代、幕府の本拠地・江戸の周りには小藩や天領地が多く、反対に、江戸から遠く離れた場所に大きな藩が多かった。幕府は参勤交代などをさせて藩の蓄えを消耗させたが、一方で、独自の通貨を作ることを許可する等、幕府から権限移譲された藩により、それぞれの地域が活性化してきたわけだ。たとえ商い額が多くなくとも、地域の花市場が活躍する手立てとしては、数年前は政党・日本維新の会が唱える「道州制」のような、少子高齢化の中でも地域の中で地産・地消を中心に花き生産と流通が行われれば良いと考えていた。しかし、「道州制」は実現しそうにない。

 総務省が発表した2015年の人口動態でも明らかなように、生産年齢人口は全体の約60%になり、今後も減っていく。そんな中、2015年は日本人の個人消費のマイナス分を、インバウンド消費が補う形となった。来日する観光客は地方都市にも広がり、観光が重要な産業だとクローズアップされるようになった。観光はいつも地元の文化や農産物を大変高く評価するから、観光立国になるということは、その地域の文化が伝承されることであり、花きでは、その地域の生産者と専門店との仲介役の花市場がますます重要となるということだ。県に一つ、或いは、文化圏が違えば県に二つの花市場が必要だが、今のところは地産・地消に価値がある観光産業が拠り所である。しかし、現実は地元の花き消費+観光業の反映だけで持ちこたえることが出来るとは思わない。今、新刊でベストセラーとなっている『言ってはいけない 残酷すぎる真実(橘玲氏著・新潮新書)』ではないが、時代の流れはこのようになっている。(一社)日本花き卸売市場協会としては、これに逆らい流れを変えたいのだ。

 日本は成熟社会として、少量多品種の生産・消費となっている。それを評価する人達は、一定の知識水準が必要だ。事実として、知力は所得に相関するから、知識の高い人たちが多くいる所が、少量多品種の商品を生み出し、消費する地域となる。大学がその地域にいくつ位あるか。また、知識産業がその地域にどの位あるか。これらによって、その地域が活性化するのだ。また、2015年の人口動態で明確になったことだが、若い女性が都市部に流出している。日本はG7の中で女性の社会進出が少ない国だ。人手不足の中で若い女性たちが社会進出しようとすると、東北であれば仙台へ、九州であれば福岡へ、東京圏や大阪圏へと移住することとなる。

 グローバリゼーションの中で、青果卸売市場の活性化をみていると、例えば、トマトを出荷するにしても、多種多様なトマトが存在する。昔のように「桃太郎」一辺倒ではないのだ。これを適切に評価できる市場、また、多種多様な品種を量的にも扱える青果市場は何所か。運転手不足の中、コストを落とす為にも出荷先を絞りたい。食は文化なので、魚市場まで含めると、現在の日本では、東京・大阪のその中でも、大田・築地・大阪の本所に集中する流れが止まらない。この格差事実を「言ってはいけない」ことだとは言わずに直視し、その上で、手が打てるものなら打とうと考えることだ。

 例えば、秋田は人口が減っている。また、農家は米作中心だが、米の消費も少なくなっている。しかし、世界に目をやれば、知力で新しいモノやコトを作り出すことが出来る。花き業界の成功例で言えば、知力と技術、感性を高めて勝負した物が「ダリア」であり、これに続けと夏に花持ちの良い花を取り入れて進もうとしている。また、秋田は日本で一番、人口当たりの美容院が多い県で、お洒落な生活をエンジョイしようとする県民性がある。さらに、秋田の子どもたちの頭が良いのは有名だ。秋田県には日本で一番優秀な大学と評判の大学もある。人口が少なくなることを嘆いてばかりはいられない。知的レベルを上げて、そして、若い女性が十分活躍できる職場を用意し、その地域の文化を継承しながら生きていく。秋田の日本酒業界を見よ。秋田の花き業界を見よ。人口減の日本で、頭が良い努力家でスマートな秋田を、地域活性化の手本にしたい。

投稿者 磯村信夫 : 2016年7月18日 15:52

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