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2016年8月29日

新しい大人たちへ、まずバラから提案する

 日テレの24時間テレビが終わり、大田花きの『大田バラ会議』が終わって、花き市場は今日から本格的な秋物商戦に入る。あいにく、台風10号が接近しており「さあ、秋だ。これから売るぞ!」という訳にはいかない。しかし、夏を振り返り、これからの秋の需要期の作戦を練る週となる。

 今年はリオオリンピックがあり、「真善美」の感動を、普段の夏より多く頂いた。しかし、一方で、素晴らしい働きをした方々の訃報に悲しんだりもした。例えば、その中の一人で、新しい現代音楽を創ったアメリカのミュージシャン・プリンス氏がいる。モーツアルトやラフマニノフの系譜を継ぐ、「自分で作り、自分で演奏」をしたミュージシャンであった。「真善美」に関するモノは、人種や国境を超え、強く我々に訴える。

 日本は農耕地帯を取り巻くように森があるので、江戸時代でいえば、藩ごとに封建制が敷かれ、文化が花開いた。この風土から、ヨーロッパと同様の民主主義や国家が生まれた。しかし、世界には、この農村地帯の背後も牧草地帯にしかならない平原のところがある。そのような風土のところは、部族国家を束ねる部族長が一部族で世界を広げ支配し、多様化を認めない。日本やヨーロッパは、農業で言えば、大面積で均一的な作物を作らなくとも、高品質の作物がつくれる範囲内の面積で、それぞれの農家が農業を行うことが出来たのだ。

 「真善美」を見る時、バラを美しくないという人は、よほど可笑しい人であろう。バラの咲き姿や香りをかいで、因果律は分からなくとも人は感動する。日本のバラ生産は、「真善美」を極めようとするなら、海外の生産者の1/10の3ヘクタール以下でも充分やって行ける。もっと小面積の場合は協同出荷が欠かせない。

 次いで現代の花き消費だが、我々、日本の花き業界は、ドイツと同様、1970年代生まれの人達に対して、また、それよりも若い1980年代以降の人達に対して、花の素晴らしさを伝え損なってきた。豊かな時代に育った今、社会の中核を担っている新しい大人に、否定できない美しさを持つバラから、花のある生活を味わってもらい、忙しい仕事人生の中でも、判断も、身体も健全になってもらえるよう助力したい。精神の背筋を伸ばす「真善美」の中で、バラは、本物しか持ちえない力を持っている。煩悩で行動しても、あまり人から注意を受けなくなりつつある現代において、我々花き業界は、花き草木の真と美で、社会が良くなっていくことを願い、仕事をしていきたいと思う。かつての平原でつくられた、大規模栽培のケニア・エチオピアのバラと、日本の様々な国内需要を丁寧に拾った日本のバラと、棲み分けながら消費を拡大していく。

投稿者 磯村信夫 : 15:39

2016年8月22日

不足を補う市場間連携

 お盆の需要は、値段は抑えられているが確実に大きくなっている。こんなに暑い時に花を使ってもらえるなんて、日本の伝統文化は本当に有り難い。確かに、田舎から東京に出てきてお墓を守れなくなったといったこともよく聞く。しかし、急速にお墓参りに行かなくなる、或いは、花が売れなくなるかというと、そんなことはない。今年の小売店やスーパーマーケットの花売り場との競合は、直売所であった。場所によって、直売所と競合し思ったより売れなかったとする量販店や専門店があったが、どこかで花を買ってくれれば問題なしである。

 今年のお盆のポイントは、手不足から花束の供給が間に合わなかった点である。素材では、芽かき等の手間のかかる一輪菊や一輪のカーネーションが足りなかった。また、物流では、とくに、ジャストインタイム物流と消費地での個配物流に手不足感があった。物日のたびに日頃の何倍以上も売れる花の特性を考えると、今後どのように需要に合わせて品物を調達するか。必要なのは、前から買っても質を落とさない定温庫や、需要のピークに対応できる荷捌場だ。花き業界の成長は、この鮮度保持物流と人手不足問題にかかっている。これらを解決するためには、物流網の発達により、拠点市場と地元市場との連携でリテールサポートをすること。これをまず行っていくことである。

投稿者 磯村信夫 : 11:22

2016年8月15日

世界基準で仕事をする

 8月14日(日)の日本農業新聞の一面に、奈良県農研センターの実験の記事が掲載されていた。菊の挿し芽を46度の湯に3分間漬けて殺菌し圃場に植え付けを行ったところ、植え付け1ヶ月後の白さび病発生率が1割以下に抑えられたという。昨年の11月に実施され、植え付け21日後、34日後の無処理のモノと比べた結果だ。11月だから、20度位が白さび病の適温だと聞くから、この研究結果は大変素晴らしいものである。

 卸売市場では、商品にサビやボトがあると単価が極端に下がる。しかし、日本のよさは花の卸売市場が沢山あることで、サビの程度のよって、仏様の花は白さび病のある菊でも良いという人もいるが、いけばなの伝統のある日本では、花はもちろん、葉も良くないと商品価値が下がってしまう。葉っぱの品質が上がるということは、生産者の手取りを増やすことに繋がる。日本では、生産地からそんなに遠くない場所(国内)で、菊を好きな生活者が沢山いる。しかし、海外の産地であるオランダやマレーシア、ベトナム、南アフリカやコロンビア等では、輸出出来ないと花を作っても収入が殆ど無くなる。もう20年以上前のことだが、オランダのウェストランド地域で菊の生産が盛んになり始めた頃、視察した農場の担当者へ「さびが出始まったらどうするのか」と聞いたところ、「輸出出来ないので、出荷前にハウス一面、全て焼却します」という答えが返ってきた。その時、小生が温室で見たのは、ほんの少しのサビで、日本ではちょうど夏だったが、国産のサビのついた菊が市場へ出荷されていることに比べたら、今見ている温室の中の菊を全て捨てるというのは、なんと徹底した仕事をするのだろうと驚いた。彼らの仕事に対する取組みに頭が下がる思いであったし、日本の生産者は、例え菊にサビがあってもお金に代わるという有り難さを強く感じた次第である。この経験の他にも、コロンビアが日本にカーネーションを輸出し始めた時や、マレーシアからSP菊の出荷が始まった時等、それぞれ現地の農場を視察すると、オランダと同様、彼らの品質に対する覚悟の際立った強さを感じたものだ。

 日本も、生鮮食料品花きを輸出しようとしている。その為には、海外の世界標準になっているその国の植物検疫に受かり、その国の生活者に受け入れられる花持ちと規格を提示し続けなければならない。輸出というと、世界一の品質の日本の花とか、新しい花の色や品種に目をとらわれがちだが、決してそれだけではない。14日(日)の日本経済新聞に掲載されているが、農業分野では、知的財産の保護が甘く、アジア地域では日本の模倣品が横行している。日本が苦労して作った品種がこっそり作られていて、同じ名前であったり、名前だけ変えて販売されていたり、パテント料を払わず育成されている花きや青果が多くあるのだ。TPP締結国に義務付けられている、植物の新品種を保護するユポフ条約だけでなく、産地名ブランドによる特産化を謳い、名前を使用させないのも大切な方法だろう。

 日本の農業者、或いは、農業関係者は、国内だけに目を向けてやってきたので、世界の荒波に揉まれても十二分にやっていけるだけの施策を打たなければならない。そして、農業や農産物流通等、あらゆることに対しルール化している世界標準を最低限の基準とし、環境に優しい、社会の健康をクリエイトする生鮮食料品花き業界を目指して行かなければならない。

 今、最も気が重いことは、神棚に中国産の作り榊が多く供えられていることである。少なくとも小売店で、国産・中国産と選べるよう表示してもらう努力を、我々、花き卸売市場はやっていくべきだ。まず、輸出・種苗まで含めた世界標準に配慮が行き届き、「守り守らせる」業界へ。そして、日本の生活者に世界標準の姿をお知らせする。これを、これから急ぎやっていかなければならないと思っている。

投稿者 磯村信夫 : 15:43

2016年8月 8日

人手不足で需要が満たせない8月

 リオオリンピックが始まっている。表彰式を見ていると、ビクトリーブーケではなく、記念品がメダルと共にプレゼントされていた。何か物足りない感じがする。東京・お台場のヴィーナスフォートでは、今月6日(土)、7日(日)で、東京オリンピックのビクトリーブーケを「こんなブーケはいかがでしょうか」と提案する、『ビクトリーブーケコンテスト』が開催された。主催は東京都花き振興協議会で、今年で3回目になる。シンプルだが、そのレベルの高さは思わず人を唸らせるものばかりだった。さらに、東京都花き振興協議会では、どんな苗物だったら暑い屋外でも元気に咲いて、お客様をおもてなしすることが出来るか、最寄り駅の東京テレポートで植栽トライアルの花庭も設置し、遊びに来ているお客さんたちの目を楽しませていた。

 人口動態を考えると、東京オリンピック後、花き業界だけでなく、日本全土にわたる発展の礎を、この4年間で確固たるものにしたい。2021年以降も、前向きで平和に、心豊かに生活をしたい。それが出来る日本の産業や家庭生活の仕組みづくりを、今やっておきたいのだ。東京の花き業界は、おかげさまでビクトリーブーケやお盆、敬老の日、さらに、フラワービズ、ウィークエンドフラワー等、花のある生活の素晴らしさをアピールする活動を迷わず行っている。しかし、地方において、また、他の産業において、具体的に何を今やっておかなければならないか分からずにいたり、分かっていても、"ゆでガエル現象"で、同じことの繰り返しの日々を送ってしまっているところもある。ここをどうにかしたいと思う。

 今年の8月盆は鬼灯が凶作だったり、切花リンドウが前進開花してしまったものの、他のお盆用の花は天候にも恵まれ、また、生産技術により欲しい時に欲しい数量が見通し通りに生産されている。問題は、人口動態による花き業界人の人手不足である。実際、物流上で混乱してしまい、納期に荷が揃わないのだ。もう3年前とは違うのである。生産から輸送、卸売市場、花束加工、小売りの各分野で、赤字を無くすことが第一だったので、人をカットして、人材的に余裕のあるところは殆どない。その間、ここ3年で切花も鉢物も、スーパーやホームセンターが花売り場の主力となってきた。例えばスーパーなら、物日には通常の12倍以上売れるので、売り場面積を広くする。しかも、売っているのは置き花だから、お客さん一人一人を接客する必要はなく、レジで精算して終了だ。スーパーの人は花き業界人ではないが、花束加工までは花き業界人だ。花束加工業者は、物日には通常の12倍のオーダーを抱えるので、人を集めようにも、なかなか満足するほど集まらない。それは卸も仲卸も、輸送業者や荷受センターも同様だ。

 大田花きに入ってくる荷物を見ていると、パレット輸送・台車運送ではなく、一つ一つ直積みしているトラックが多いことに驚く。物日は入荷が何倍にもなっているのに、人手が増えていないから、一個ずつ積んでいれば当然、遅れるに決まっている。人手が足りず、作業スペース(トラックの車両スペース)が足りない。時間がかかって遅れてしまうので、結局消費者が欲しいときに荷物を間に合わせることが出来ないことになる。出来たとしても、業界人は徹夜作業でコストも上がりフラフラだ。

 去年は天候の具合で前進開花したから、肝心の時には花が足りないだけだった。花が足りないから値段は高くなったが、荷が少なかったので物流上は問題なかった。しかし、今年は、需要に合わせて荷が出てきたので、手が足りないから、結局、遅れ遅れでみんなへとへとになって、それでも需要を満たすことが出来ない。こんなことは最初から想定されていることだ。労力が増えないのだから、頭を使って合理的に考える以外方法がない。それは、パレット輸送や一日で処理できる量が限られているわけだから、定温にして毎日物流させる。これを来年からやることだ。花はそれに見合った物量を納品する。鮮度が必要だから、間際にというのが理想だが、量販店では通常の12倍売れるわけだから、適切な品出しの為には、どういう段取りで仏花を納品するか、もう一度、きちんと考えなければならない。

 今年、花き業界は物流上の課題を頂いた。将来に向けての改革をせよ、という天の声なのであろう。まず、物流の合理化を急がなければ、需要を満たすことが出来ず、花の需要は他のモノにとってかわられてしまう。そんな恥ずかしいことは出来ない。必ず物流改善を行って、業界全体が良くなるようにしたい。

投稿者 磯村信夫 : 15:38

2016年8月 1日

花き業界のカギは小売業。花き卸と仲卸はリテールサポートせよ!

 花の消費が活発化する為には、小売店の頑張りが欠かせない。小売店には、新しい花との生活を提案する専門店、買い物コストの削減の量販店。そして、玄関や出窓、庭等の、人の生活空間に似合う花を販売するホームセンター、花の買い物時間を削減するインターネット販売やカタログ販売の、以上四つが生活者にとって必要である。

 専門店が新しい需要を創り出し、人々に広くその花が「素敵ね」と認知されるようになると、生産量が増えるので、量販店が取り扱うようになる。従って、フランスやドイツのように、専門店が仕事花も含み、全体の半分の花を販売し、その中でも、チェーン店が全体の三割を販売、活躍するということが起こっている。チェーン店がフランスやドイツでここまで取扱シェアを伸ばしてきたのは、パパママストアの個人経営の店より、やる気が高いことに起因する。社内でも研修を行い、社外の勉強会にも赴く。また、他業界の良い所も取り入れる。店舗の社員が有給休暇を取得しても店が廻るようにする。顧客カードを作り、お客様の好みを良く知る。こういったことを、個人経営のお店よりもしっかり行ってきているからだ。繁盛の秘訣は、何てことはない。当たり前のことだが、時代と伴に生きてゆく、お客様と伴に生きてゆくことだ。一部の優良店を除いて、専門店ではチェーン店よりも努力が足らなかったのだろう。何か残念だ。
 
 今、大田市場花き部でも、団塊世代の専門店がリタイアの話をしている。それならば、例えば、人を雇って店員さんに店舗をやって貰ってはどうだろうか。行きつけの小料理屋さんがあるように、行きつけの花屋さんがあるということは、地域の住民にとっては有り難いことだ。

 小売店の数は、これから減っていく。これは人口動態上、やむを得ないだろう。そして、若い経営者や頑張っている花店が、行場を失ったお客さんを吸収する。それは商店街のお花屋さんであったり、駅周辺やショッピングセンターに出店したチェーン店であったりする。今、ちょうどこういった、チェーン店が活躍する現象が日本でも起きている。フランス・ドイツでは勝負がついた。日本では、この方向に向かっていることが分かっていない小売業界の人たちが多い。花屋さんの力が、花き業界に大きく影響する。花屋さんたちは、自分が頑張らないと花き業界が萎んでしまうという事実を知らない。花き業界の発展は、小売店の肩にかかっているということを自覚してもらいたい。だから、卸・仲卸についても、まず小売店のリテールサポート、次いで、産地サポート。これらの重要性を再認識し、実行して欲しい。

投稿者 磯村信夫 : 15:49

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