大田花き 大田花きコーポレートサイトへ
 

« 2016年8月 | トップ | 2016年10月 »

2016年9月26日

花き産業は生活者のお金で成り立つ

 「顧客は未来」という言葉が示す通り、顧客のニーズに合わせて花やサービスを供給していくことは、中間流通の卸・仲卸・小売の役目である。そして、卸は「もう何も欲しくない」という生活者に対し、「あなたの欲しいものはコレでしょう」と、生産者と一緒に新しい花を提案したり、デザイナーと一緒にスタイルや見せ方の提案を小売店に行う。青果マーケットでは当たり前の"マーケットイン"の仕事の仕方が花き業界にも必要だ。生活者からお金を貰って生活している訳だから、買ってもらうことに焦点を合わせ、仕事を組み立てなければならない。しかし、花の場合、青果より嗜好性が強いと言うのに、生活者主義、或いは、お客様主義で仕事をすることが徹底出来ていない。

 「顧客は未来」の反対語に、「業界は過去」という言葉がある。業界は過去の成功事例が基準のビジネスモデルになっている。そして、日本のように高齢化をしていくと、いつの間にか内向きになる。国内ばかりに目がいき、業界内だけに目がいく。いわゆる"ガラパゴス化"である。これは悪いことだけではない。「クールジャパン」で提供されるモノやサービス、社会のしくみ等は、このガラパゴス化のおかげで、世界から「さすが日本」と評価されている。しかし、企業側から見ると、家電製品を作っているメーカーや携帯電話のメーカー等は、結局、進化しながら独自に生き残りをすることは出来なかった。業界全体で、生活者が欲しがっているコトを可能にするモノや仕組みを作る必要があるということだ。「業界が過去」なのではなく、業界の各社が生活者主義に立ち、新しく生まれ変わる。これが出来れば良いわけである。こうなると、それを実践している日本の食品卸やコンビニ業界に、我々卸市場を含めた流通業者は学んでいかなければならない。

 世界は現在、政治経済・軍事の点において、大変不安定な時代となっている。そこへいくと日本は相対的に安定している。だから、世界政治における安倍首相のプレゼンスも高くなり、円も高い評価を受けている。生鮮食料品花き流通業界も、この安定した政治経済の基盤の上にあるわけだから、生活者の為に思い切った改革と、少なくとも、生活者に役立つよう改善する必要がある。漫然と昨日と同じことを繰り返さない。業界ばかりに目をやって、価格競争だけに走らない。昨日よりも良い一日を送りたいと思っている生活者に向け、自分の仕事で何が出来るかを考え改善する。或いは、イノベーションをおこす。そのことが、出荷者に富を渡せることに繋がるのだ。政治は一寸先は闇だと言うが、日本は安心して、それぞれの業界が変化出来る安定国家であるということを知って、実行をしていきたい。

 花き業界は大きなニーズを抱えている。人に優しい、心地よい社会とは、スペースで言えば、人に相性の良い自然がある生活空間ということだ。生物、特に植物や、少なくとも植物のデザインがある生活空間を作り、花き産業を発展させていく。

投稿者 磯村信夫 : 15:30

2016年9月19日

彼岸の時期に今後の中堅花き市場の生き方を探る

 宅急便のヤマトが日本企業で好感度NO.1に選ばれ、私たち物流業者からすると嬉しい限りである。生産者の視点と心持ちで宅急便を届けてくれるセールスドライバーの方々と接していて、このeコマース時代、まさにラストマイルの物流が大切で、しかも、いつも親切にしてくれている。そんなヤマトという企業の存在を有難いと思っているし尊敬もしている。そんな気持ちが日本中で高まっているということだ。物流業の市場の人たちも、ヤマトのセールスドライバーの人たちの気配りや対応を学び顧客視点に立って納品活動を進めていきたいと思う次第である。

 eコマースでは物流費が13%弱となるのが一般的である。これは、売上高別物流コストの比率である。アマゾンでラストマイルのヤマトや、アメリカではUPSに支払っている金額が売上高別コストの10%だというから、実際の物流量は売上高に対して12~15%、eコマース会社は占めているのではないかと思う。eコマースがますます発展すると、個別の配達する人たちの数が足りなくなる。2015年で運転手は15万人不足と言われている。今後、ますます運転手は足りなくなって、結局生産物流である纏めた荷物を産地のハブから消費地のハブに運ぶ運転手すら不足がちになる。現に、福岡-東京は、大阪に営業所のある運送会社がそこで運転手を代えないとワンマンで関東まで運ぶことはできない。そういう国のルールだ。卸売市場では、基本的に500~600km圏内はトラック運送のひとつの商圏になってきて、そこでの商売がある。しかし、それでは日本列島のように縦長で、季節ごとの最適気象条件の一級品は中核市場にしか集まらない。そうしたときに、どうしても地元産地のものは格落ちになる可能性がある。

 農業でも法人農業、あるいは企業が参入することが盛んになってきた。自分が経営しなくてもサラリーマンとして農業法人に就職する。有給休暇は取れるが、まだ所得が安いことが問題だ。月給ベースで18万円以下と地元の一般企業より2割安い。だから、より儲かる工夫をして給料を上げることが必要だが、現状は外国からの研修生労働者に頼っている。茨城の園芸農業が北海道に次いで国内NO.2になったのは、外国から研修生に来てもらい、周年一定規模で農業をまわす周年作型に成功しているからだ。法人で農業をすると雇用が発生するから、農閑期を作らずに運営しなければならない。いつも適地であれば良いが、日本は赤道直下の高地ではない。となると、品質に妥協することが必要だ。花の場合、もう一度昔に戻って、ケイトウやらアスターやら菊類やら夏でもできるグラジオラス等を茨城にお願いしている。もちろん高冷地より夏の品質は劣ることが多いが、産地名を言い、中~中の上で攻めてもらっている。生産技術の革新で、あるいは品種改良の技術で、海水浴場が近い千葉の館山で上級のトルコキキョウが作られている。こういう可能性もあるのだ。

 今一度、納期ということを重点に、そして、質は一般的に専門店チェーンや駅ビルで扱うレベル。つまり、ピンでもキリでもなく、中~中の上で通常の真ん中のもので産地を選び出荷いただく。そのようにするのが、日本の花き市場で最も数が多い20億円未満の地元の花き文化を支える市場の生き方となる。

 どの産地と組むか、またトラック輸送状況についても申し上げたが、今後とも物流コストがますます高くなり、さらにトラックも鮮度保持ができる装置を付けていくことが必要となるので、運賃をいただく、あるいは運賃を必ず意識して商品に添加して販売していく。このことを適切に行ってほしいと思う。

投稿者 磯村信夫 : 14:33

2016年9月12日

トルコ アンタルヤ国際園芸博覧会

 9月7日(水)、トルコのアンタルヤ国際園芸博覧会で「ジャパンデー」が開催された。このイベントに、6つの花き団体で構成されている全国花き振興協議会の会長として、また、(一社)日本花き卸売市場協会の会長として出席してきた。オランダの花博とは違い、ランドスケープや庭造りが多く展開されていて、切花に力を入れている国は日本が中心であった。切花のロジスティックに大変苦労している日本館であったが、フラワーデザインコンテスト元チャンピオンの村松文彦さんや假屋崎省吾さん、そして、東北花き園芸復興協議会の金沢大樹さん、いけばな芸術協会 草月流の大久保有加さんご協力の下、ドーダンツツジやオンシジュームもさることながら、リンドウやトルコ、菊など、東北の復興を印象付ける花が日本ブースに飾られ、また、パフォーマンスにも使用された。国際花博に「日本は花を添えたなぁ」という印象を人々に与えていた。

 当日はレセプションの前に、岐阜大学の福井教授が議長となり、トルコ側の園芸植木業界と日本側との話し合いが行われた。トルコと日本には友好の歴史がある。それは、昨年12月に公開が始まった、日本とトルコの合作映画の題材にもなっている、1890年の「エルトゥールル号事件」だ。遭難したトルコの方を、和歌山の方達が自分を顧みず救援に力を尽くし、治療を行い、日本が生存者を送り届けた出来事だ。そして、1985年、イラン・イラク戦争でイランに日本人が取り残されてしまった時、日本からは救援の飛行機が飛ばなかった。そこへ、「エルトゥールル号事件の恩返し」にと、トルコから来た2機のうち1機を日本人に提供してもらい、無事イランを脱出できたのである。この事件を両国で知る人は多く、また、知らなくとも、お互いに友好国だと認め合っている。しかし、実際に輸出入をするとなると、もっとお互いを知り、交流を深めなければならない。さっそく、トルコの方々に、2017年に横浜で開催される緑化フェアにいらっしゃって頂き、日本の園芸業界の実情、そして、日本の文化を知ってもらおうということになった。

 交流を重ね、良く知り、お互いに花き園芸の分野でも良いモノを交換し合う。このようにやっていきたいと思った次第である。

投稿者 磯村信夫 : 12:45

2016年9月 5日

もう一度、高齢者の生活者に合わせた需要の掘り起こしを

 秋の需要期に向けて、切花・鉢物ともに出荷が本格化してきた。しかし、トルコギキョウやリンドウ、そして、小菊は需要期の前に咲いてしまい、調整が必要なようだ。特にリンドウは、花腐れ菌核病が出やすいので、箱に入れたまま定温庫で保管することは出来ないと考えてよい。箱から出し、水揚げをして管理すれば、低温で10日間保管した後に消費者の手に渡っても、10日間はもつ。定温庫やスペースのない買い手もいようが、調整作業は小売店までの流通供給サイドの仕事である。また、9月になり、結婚式や披露宴に使用される花が売れ始めている。結婚する人は年間約60万組、そのうち挙式する人は半分の30万組、さらに、その中の1割はハワイ他、海外で式を挙げる。このように、結婚式や披露宴をする人たちが限られてきた。従って、セレクトされた納品業者に活躍して貰わないと、素晴らしい花のある結婚式が出来ない。

 少しおおざっぱに言って、日本は現在、年間125万人が亡くなり、100万人が生まれている。このような人口減の中で、「あらゆるものが需要減で、縮小均衡の日本産業界だ」と思うのなら、それは悲観的過ぎる。我々が取り扱う生鮮食料品花きは、消費されてなくなる商品で、需要のチャンスが何度もあるからだ。また、鉢物でも、母の日にプレゼントされたアジサイの鉢を庭に地植えして毎年楽しんでいるが、もっとあっても邪魔にならない。だから、来年もお母さんにアジサイの鉢をプレゼント出来る。花はそういう意味で、普通の物財の商売よりも楽観的にみて良い。

 ドイツと同様、花き産業は1970年代・1980年代生まれに上手にアプローチしてこなかった。ここの消費を増やすよう、現在もプロモーションを行っている。さらに重要なことは、日本は男女平均でみると、世界最高位の長寿国だということだ。従って、健康寿命とクオリティオブライフに目を向けた消費拡大を図ることが必要だ。イノベーションで、より健康で質の高い生活をしてもらう。そういうものを生み出していく。

 関西は薬・繊維産業や弱電業界が多かったので、団塊ジュニア世代の人口比率が少ない。従って、関西の花市場は、地方に向けての転送需要を獲得する必要がある。しかし、国は、アンチエイジング等の健康寿命とクオリティオブライフの産業を、関西地方に集中させようとしている。従って、人口が増え地域は活性化する。関西だけでなく、日本人誰もが生活者の目的に合わせたイノベーションをする。花もそこに向けて行く。例えば、身体は病気でも精神は病気にならないよう、病院でもっと花を飾ってもらう、病院生活でのクオリティオブライフ。また、認知症予防の為の高齢者のフラワーアレンジメント等が挙げられよう。

 その国の素晴らしさの証である長寿。日本は世界のどの国よりも先に長寿社会になった訳だから、今は、介護やケア付き施設、葬儀にイノベーションが起きている訳だ。花も"ピンピンコロリ"の需要に合わせた花やみどり、クオリティオブライフに合わせた「オフィスに花を」等、日本の生活者、特に、65歳以上の生活者に合わせた需要に合わせ、花のサービスを供給する。花で、そのニーズを満たすイノベーションを今後行っていく。「日本で成功したら、他の先進国にも輸出出来る」という意気込みで、我々花き業界も、日本の高齢化社会に合わせた花でのイノベーションを、仏花の組み合わせや大きさ、色、香り等で行い、我々の所得の向上につなげていく。これが欠かせないことと思う次第である。

投稿者 磯村信夫 : 16:30

Copyright(C) Ota Floriculture Auction Co.,Ltd.