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2016年10月10日

これからもお花屋さんのあるまちをつくる為に―本屋さんの流通に学ぶ―

 国は、農業政策について将来を見通し、卸売市場についても抜本的な改革を行おうとしている。人口が増えてきていた20世紀の「公正に生鮮食料品花きを分配する」という、現行の卸売市場法である必要が無くなったと判断し、法の規制緩和をする方向で結論付けられそうである。卸売市場に必要なことは、既に行っている多面的な機能の強化を図った上で、生産者の所得向上に繋げ、消費者や小売店にメリットを与えられる仕事を実行することだ。

 どうすれば日本中に今まで通り花屋さんが営業し続けることが出来るか。どうしたら地元の花き市場が存続し得るか。小生が考える、小生がやるべき仕事の参考になるのではと、弊社大田花きが広報等でお世話になっている(株)パラフの小林さんから、本屋さんの存続と流通についての本『本屋がなくなったら、困るじゃないか(2016年、西日本新聞社)』を貸して頂いた。この本を二週間しっかりと読み、考えがかなり煮詰まってきた。本日は、花き業界人として、今後の仕事を「このような形でやっていきたい」ということをお話ししたい。

 本が書店に届くまでには、「取次」と呼ばれる卸が介在している。主にトーハンと日販の大手二社が中心となって、卸売市場的な役割を担っている。取次店は、本の小売価格の65%から70%位で出版社から仕入れ、書店に納品するのは平均で78%位だそうだ。物流費が割安に済む大手書店へは、仕入れ価格に少し上乗せした価格から、ものによっては仕入れ価格を割ることすらあるという。そして、大手の取次店に直接取り次いでもらえない小さな出版会社だとすると、地元にある第二の取次店、ここが小売価格の5~7%をとり、第一次のトーハンか日販の取次店に出すことになる。そこから、それぞれの店舗別に割当制のような形で本を置いてもらうのだ。

 現在の本屋さんは、多数あるコンテンツの中から売りたいものは何か、限定したものを販売する"セレクトショップ化"してきている。それが、街の本屋さんの生き残る道だ。またセレクト化してくると、現在の日本のような、再販価格は決められているが委託取扱い・返品可制度ではなく、ヨーロッパのようにリスクを冒して買取りをしながら、直接出版会社と取引する。さらに、直接取引だけだと限定されて、自分の売りたい本が売れない。また、地域の生活者を満足させることが出来ないことがある。セレクトショップ化した本屋さんが多くなると、受注先の小さな出版社に集まってもらって、事務代行・物流代行的な取次店を作ってもらい、そういう取次店からも本を揃え、品揃えを充実させていく必要がある。

 ヨーロッパの本屋さん業界でも、一人一人の生活者が買ってくれるのは一冊で、トータルでも少ない数量だ。だから、まちの本屋さんからすると、直取引しても、一定の手数料を払って取次店の物流や決済機能を使う方が安く済む。このように、取次店が物流・決済の代行をして、出版社と書店の直取引をスムーズにする仕組みが、日本でも必要だ。これを花で置き換えると、地元の卸売市場は、そういう市場外取引も物流と代金決済は市場内で行うと安く済み、出荷者と小売店に役立って手数料をもらうことになる。

 また、ご主人自らが営業している本屋さんでは、月販で350~500万円、年5,000万円の売上が一つの目標だ。優秀なパートさんがやめてしまうと、売り上げが下がってしまう。それが今の本屋さんの悩みだ。これは花店も一緒である。日本がオランダやドイツと違うのは、本屋さんの資格、花と緑の小売店の資格が、国家で明確にされていない点である。試験を受けて資格を持った人たちが、本屋さんや花店を経営すれば、あるいは、働いてくれれば、店は必ず繁盛する。今後、日本はここにも力をいれていかなければならない。

 さて、出版社の方も、中小がこれだけ多いというのは、世界の中でも日本だけだ。トーハン・日販に代表される取次店だけでなく、それなりに取次店の数があったからで、再販価格制度と委託出荷で、アイディアと資金があれば出版社をつくることが出来る。アメリカ・ヨーロッパの中小の出版会社は、基本は「取次」はないから、大手の系列化に入っている所が多い。そうしないと、消費者に届かないからだ。一方、日本の中小の出版社は、そのまま独立会社のままでも良いが、活動を活発化するには、自分の地域か、あるいは、自分が得意とする分野の取次店、即ち、花で言えば、農協や専門農協をイメージして貰えればよいが、そのような機構をつくり、集金、物流、そして情報を他の大手の出版社と同様のレベルで仕事が出来るようにする必要がある。

 情報革命がおこっている最中の本屋さん業界。それよりも、生存競争は緩やかだが、同様に街から花屋さんが消えてきている日本の花き業界。同じ規制業種として、卸売市場や取次店の機能を考えると、今までの卸売や取次店の役割を超えて、商流以外でも、小売店支援、出荷者支援を行っていくということが、生活者にとって、花店のあるまちづくりに、本屋のあるシックなまちづくりに欠かせないのではないかと思う次第である。この方向性で、卸売市場の規制緩和を歓迎し、花き市場はやっていきたい。

投稿者 磯村信夫 : 2016年10月10日 17:55

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