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2015年4月13日

ホルミシス

 もう二週間以上も前になるが、ラジオ番組で朝井まかて氏がインタビューを受けていた。1959年生まれ、関西出身の小説家だが、めっぽう花好きで、江戸時代の草木の商売を良くご存じの方との印象を受けた。20年以上も前、イギリス人の友人から「四十を過ぎたら、小説も読まなくっちゃね」と言われ、何冊かに一冊は小説も読むことにしているので、今回迷わず朝井まかて氏の本を手に取った。彼女の作品は、史実に基づいて文献を調べ、その文献の行間を読み小説化している。また、小気味よいリズムで、花き業者が知らないことが沢山描かれていた。朝井まかて氏の本は、まさに花き業界の必読書の一つのように思う。

 こうして休暇を頂き、空いた時間を利用して本を読んでいるが、これもマズローの欲求"ファイブF"の一つ、非日常性の楽しみである。休暇も小説も、非日常性の楽しみだ。マズロー博士は、人間の根源的な欲求を「ファイブF」=フィーデング(食欲)、フロッキング(群れる)、ファッキング(性欲)、フリーイング(逃走)、ファイティング(攻撃・征服)の五つと表した。この欲を上手に用いて社会に役立てていくのが、我々人間の理想の生き様ではないだろうか。

 ファイブFの一つ「ファイティング」では、目標を達成するということに尽きる。確かにプロレスもボクシングも観ていて面白い。もちろん、野球も面白い。しかし、「やった!!」という達成感のあるものは、目標を達成したときで、いずれも辛い時だろう。元来、人には恒常性がある。ホメオスタシスだ。ホメオスタシスは、傷がついたら元に戻ろうとする。また、社会の中においても、ケンカをしたら仲良くなろうとするホメオスタシスが働く。そういったホメオスタシスが我々にある。一方で、"ホルミシス"と言われる、何らかの有害な要因において、有害となる量に達しない程度に用いることで有益な刺激がもたらされるものがある。例えば、筋肉や脳細胞のように、目標に向かって無理をすると、実際に無理をした分だけその筋やシナプスが傷づく。そして、負けないような形に、さらに筋肉や脳は強くなるといったものだ。一つの目標が定まると、それに向けて無理をする。そういう風に人は出来ているのだ。ホルミシスを、ホメオスタシスと同じように、我々現代人も自分の身体を信じてやってゆく。「脳に汗をかく」という言葉もあるが、まさに、寝ているときや、散歩している時、あるいは、それとは逆に、「無」の境地になった時に、覚悟が決まったり、アイディアが形になったりする。

 今、私たち花き業界にとってやらなければならないことは、各自がホメオスタシスで収支ばかりを合わせ、縮小均衡になることではなく、ホルミシスで「もっと沢山作るんだ、もっと沢山売るんだ」。そうやって身体を動かすと共に、どうやって儲けさせて頂くか、それを考えることだ。目標は「少し無理をする」。そうすることによって、幾多ある人の幸せに通じる職業の内の、花きという仕事で、無理をした分だけ力がついてくるのである。そのように人は出来ている。

投稿者 磯村信夫 : 17:14

2015年3月 9日

3月17日、みどりの日

 様々な需要で、3月のお花屋さんは本当に忙しい。今日9日から、いつも在宅ゼリで買っているお客さんもセリ場に来ていて、本格的な仕入れの日々となってきた。私ども大田花きでは、セリの師範が定期的にセリ人を指導している。当日のセリが終わった後、セリの良し悪しを、円陣を組んで師範が指摘していく。玄人のセリ人でなければ、目利きの上に空気も読むことが出来ない。そして、世は「一物多価」の時代というが、スイスをみて分かる通り、「一物一価」が作り手、売り手、そして買い手にも好ましいことは言うまでもない。一物多価となった時、少なくとも、同じものであるのに何故価格差が生じるのか、セリ人は理論づけなければならない。さらに、セリで最初に買う人は、花販売のプロだ。よく花を売る人ほど最初に買う。あまり売れない店ほど、どうでもいいからと待ち続けていると、たとえ1箱でも安く買えてしまうことがある。これはセリ人が下手なのである。大田花きではそのようなことを日々指摘し、徹底的にトレーニングしてセリをさせている。それは、日本の相場は大田花きのセリ場から生まれると自負しているからだ。

 さて、今日の立ち会いは、上(相場)はやや重いが順調で、大変活気のあるものとなったが、昨日の日曜日は国際婦人デーで、週末の店頭は賑わったところもあったのだろう。年に一回、新年の抱負を語り合う会を開催しているが、その男性陣から家内に花が届いた。都心の花店では、イタリアと同じように、ミモザを贈る日としてキャンペーンを行っている店があったが、自動車メーカーのFIATが大々的に宣伝していた通り、よく売れたそうである。

 皆様方は、イギリスのウィリアム王子が来日された時、横浜の外人墓地で、彼がバラの花のリースを捧げているニュースをご覧になっただろうか。横浜市は日本で第二位の人口の「市」であり、なんといってもお洒落な都市である。その外人墓地のすぐ側に、いくつもの人気商店街があるが、元町が「セント・パトリックスデー」にちなんで、みどりの日のパレードを開催するそうだ。「セント・パトリックスデー」は、東京では、表参道のパレードが有名だが、アメリカでは、シカゴやニューヨーク等、アイルランド移民カトリック系の人達が中心になって、みどりの洋服を身にまとい、みどりの食べ物、黒ビールではなく、みどりのビールを飲んで、アイルランドにキリスト教を広めたセントパトリックの命日(3月17日)に、みどりを大切にすることを訴える。元町では土曜日、14日のホワイトデーにパレードを開催するそうで、どんな仕掛けをして、花やみどりを楽しむのか、大変見ものだ。

 花や緑といえば、皆様方は「バイオフィリア」という言葉を御存じだろうか。生物や自然への愛情を指す言葉で、生物学者のE.O.ウィルソンが提唱した。例えばマンションでも、海や緑が見える向きの部屋が高いのは、我々人間が持っている「バイオフィリア」からである。この快適さというものは、脳内物資のエンドロフィンによるもので、中毒性のあるものではない。甘いお菓子や、たばこ、お酒は中毒になり、こういった欲に基づいた追い求めるものであれば、簡単に売れる。しかし、バイオフィリアからなるこの欲は、みどりの日や、あるいはホワイトデーのように、敢えてイベントをする。みんながやるから行う。こういったことをしていかないと、売れていかない。ここに、みどりや花の産業が今一つ大きくならない点がある。 「衣食足りて礼節を知る」であるので、文化的なもの、そして、環境の事を、あって当たり前でないことを前提に取り入れていくことで、現代社会の人間生活に欠かせないという知識と感覚を備える必要がある。

 3月のグリーンの日「セントパトリックスデー」を、花き業界人は是非とも注目してもらいたい。

投稿者 磯村信夫 : 16:53

2015年1月12日

ドーパミンとエンドロフィン

 今日は成人の日。新成人達の自覚は昔と同様変わらぬものだ。今までお世話になった社会に、今度は自分が役立とうとする気持ちが表れていて大変頼もしい。そして、週末は家族の団欒、友人同士のホームパーティのような集まりで花が飾られた。スイートピーやチューリップなど、春の花がよく売れていたそうだが、花束としては、枝物や葉物、あるいは、グリーン系の花も一緒に使われたものがよく出ていたそうだ。この辺が、お洒落感覚のある世代がいよいよ成人していくのか、といった花飾りである。

 年末は、どんなお店がどのようにして花を売っているか拝見したが、人通りのある賑わいゾーンの花店がよく売れていた他、消費税増税の影響であろうか、ディスカウント的に花を売っている店がよく売れていたのが特徴的であった。我々人間は、ITが発達しても脳や身体は未だ狩猟民族の頃とあまり変わらないのではないかと思う。止まっているものは風景として捉え、動いているものに注目する。また、「欲しい」というのは英語で"Wanting"で、食べるものであれば1日3回お腹が空く。お腹が空くから、「何を食べようか」、こう思って考えるだけでも楽しくなるが、腹が減りすぎていれば、人と争っても先に食べようとする。例え夫婦の間でも、おかずが大きいか小さいかということは大問題だ。脳内ホルモンでいえば、ドーパミンが働くのである。また、食べるものを探している間、つまり、食べる前がむしろ楽しいという事はままある。食べた時、あるいは、やりたいことを行った時、楽しかったり美味しかったりすると、"好き"や"Liking"等の脳内ホルモンである「エンドロフィン」が出てくる。しかし、中毒性のある"Wanting"のドーパミンと違い、エンドロフィンは中毒を誘発するものではない。ドタキャンをしがちな人は、"Liking"よりも"Wanting"がとても強く、洋服を買ったけれど一度も袖を通さない人や、お腹が減った時に買った食品を冷蔵庫に入れっぱなしで忘れてしまう人である。それくらい、"Wanting"は強い欲なのである。

 何故こんなことをお伝えしたかというと、花は"Liking"であり"Wanting"ではないと私は思っているからだ。花は無かったら寂しくなって買うが、食品と違い、食べて無くなるものではないので、切花であれば週に一回、鉢物でも平均月一回買えば事足りてしまう。また、身近に無いことに慣れれば、散歩の時に山茶花や椿、日本水仙が咲いているのを見て、「いいなあ」で済ませてしまうのである。花を買ってもらうのは大変難しいのだ。従って、花中毒にさせることは出来ないが、人通りの多い所に花屋さんを開店させて「花って素敵」とお客さんに訴えかけて欲しい。また、効能を謳って頭で買ってもらう。さらに、「物日に文化として使うものだ」ということを教える。これらが、需要を確実にするために必要である。私自身は、花の効用は全てを受け入れる素直な気持ち、そこから出発しようとする勇気を与えてくれると思っている。私自身が思っているだけでは駄目で、事実として我々は科学的に花の効用を消費者に説明しなければならない。

 愛犬ルークは賢くて良い奴だが、散歩をしていてもいつも匂いばかり嗅いでいる。頭もよくて、人とは見つめ合うのに、綺麗な花に感動しない。こちらが花を見て立ち止まっていると、先へ行こうとする。この辺が、いつもルークと気が合わない所だ。どうも人間というのは、真善美ではないが、そういうものに心を打たれるものらしい。花のある生活をしてもらうために、供給サイドでは、ドーパミンとエンドロフィンのことを考えながら流通させていきたいと思う。

投稿者 磯村信夫 : 10:38

2014年11月17日

NFD展示 凄い

 11月15日は七五三でお天気が良かった。車窓からだが、「友達三世代」で若夫婦とお孫さんに日本文化の伝承がきちんとされているご家族が多いのを見て嬉しく思った。この日、横浜みなとみらい展示場で開催されていたNFD(公益社団法人日本フラワーデザイナー協会:以下NFD)のイベント「日本フラワーデザイン大賞2014」へ足を運んだ。みなとみらいの駅に着くと、構内の多数の液晶パネルでNFDの祭典広告をしていたので、イベントが行われていることがすぐに分かった。キレイな画面がそこらじゅうにあるので、NFDの存在はもちろんのこと、花の消費宣伝にも一役買っていたのではないか。この画面を見ただけでイベントや花に興味が湧くだろうし、花活けを習ってみたいと思った人もいただろう。実際、パシフィコの場内は、部門ごとの分かりやすい展示や参加型のイベント等、和やかな雰囲気が漂っていた。デパートの催事場で行う花の展覧会は、人込みの中で観ているようで、堪能するという域まで達しない。しかし、今回のパシフィコでは、ほどよいスペースと通路を取っていたので、じっくりと鑑賞出来た。

 同時開催で、高校生のデザインコンテストも行われていた。スポーツがそうであるように、今の若者たちは中々優れている。自分を通じて上手に花の良さを引き出しており、造形的な美しさに思わず唸ってしまう作品もあった。公益社団法人としてのNFDは、アジアのフラワーデザイン団体と交流し、ネットワークを創りながら成長している。そして、グローバル社会の中で、フラワーアレンジメントの多様な造形美を構築しようとしている。花の団体で外国と共に成長しようとしているのは、他にJFTD(一般社団法人 日本花通信配達協会)があるだけだ。

 NFDの素晴らしさをもう一つご紹介しよう。NFDから申し出があり、私が会長を務める一般社団法人 日本花き卸売市場協会が少しお手伝いさせて頂いている事業がある。それは、盲学校の子供たちに花を触ってもらい、花の良さを知ってもらおうというものだ。花を触ったら怒られるかもしれないので、実際花がどうなっているか分からなかった人に、自分の心の中だけではなく、実際に活けてもらうことで楽しんでもらおうという事業である。こういうことを思いつくだけでも、同じ花の仕事をしていて、なんと素晴らしい方々だろうと感ずる。

 団塊ジュニアがフラワーデザイン学校を卒業するようになってから少し経つ。スクールとしては、生徒さん募集をどうしていくか。こういった大変な問題もNFDにはあるだろう。しかし、広島の花満さんがセラピストの方々と一緒に、花活けの体験事業を通して年配者一人一人に喜びを感じてもらっているように、この角度からの「お教室」というものがあるのではないかと思う。昨日、小学校のクラス会で恩師がお住まいの茅ヶ崎へ行ったが、男もリタイアした人たちがほとんどで、何か楽しみを探していた。ちょっとした仕事と、趣味や新しいことに対するチャレンジ。例えば、男の料理教室だけでなく、男性のフラワーアレンジメント、あるいは、華道教室、ガーデニング等もあるのではないかと思った。

投稿者 磯村信夫 : 15:25

2014年10月27日

横浜に似合う花

 横浜の大桟橋で行われた、創業125年の横浜花松さん主催・フラワーデザイン発表会へ足を運んだ。大桟橋の橋のふもとにはシルクセンターがあり、明治時代から絹を輸出していた歴史的な建物がある。その前にはユリの碑があって、生糸と同じように、鉄砲百合・カノコユリの球根を欧米に輸出し外貨を稼いでいた。鹿児島の沖永良部島は、花松さんの歴史と同じく、球根の輸出を始めてもう120年以上経つ。また、ユリの輸出を手掛け、ヨーロッパ、アメリカから種苗を導入して来たのが、横浜の(株)新井清太郎商店や、横浜植木(株)等である。(株)サカタのタネとともに、この二社は現在に至るまで、日本の花き園芸に貢献している。この大桟橋でフラワーデザインの発表会をすることは、江戸時代の園芸とまさに明治から始まった西洋の園芸のハイブリットの地・横浜にふさわしいものだろう。

 横浜の地は不平等条約で、治外法権の居留地であった。そこでは、イギリスやフランス、アメリカの商館や住宅地に庭園が造られ、富岡や鶴見の農家の方たちが庭師として働いた。東京であれば、三田の育種所から大森、山王、荏原にかけて、カスミソウやシクラメン等、当時はまだ目新しい花々が導入された。それと同時に、横浜の園丁たちが自分でも花を作り、切花や鉢物にして出荷していった。そうして、横浜は洋花の一大花き産地となったのである。また、バラを横浜の地に導入し、ガーデン・切花とも着手したのは、自由民主党・フラワー産業議連の顧問、山東昭子先生の曽祖父様だ。

 花松さんのフラワーデザインの他に、新しい横浜の顔・みなとみらいのクイーンズスクエアで、JFTD神奈川支部の花の祭典が行われていた。こちらも素晴らしい力作ぞろいで通行人の足を止めさせていたし、このイベントを目的に来場している方も多かった。横浜は、ウォーターフロントとしての一面と、桜木町、伊勢佐木町から野毛にかけての港町としての一面がある。港町の顔としての都橋周辺では、夜の街に向けて花の需要が盛んであったが、今はその需要は往事の三分の一にも満たないという。花の使われ方は、港・横浜も確実に家庭需要中心になっている。

 新しく綺麗になったハマのウォーターフロントでは、切花・鉢物とも必要不可欠である。しかし、人の生活の匂いのする街や、まさに家庭の中では、花はどのように生活を支えるのか。そこを見出して花を提案し、花のサプライチェーンを再構築していく必要性を横浜で強く感じた。野毛にある私の好きな店では、いつも綺麗に赤バラを飾ってある。こういう装いがこの街に合う。是非とも、その地に合った街や生活のシーンに似合う花を確実に提案し、流通させることが必要だと感じて帰ってきた。

投稿者 磯村信夫 : 16:48

2014年10月20日

お見舞いの花は何ら問題なし

 残り十日となったのに、ハロウィーンのカボチャはまだよく売れている。団塊ジュニアとその子供たちが中心になって、ハロウィーンは盛り上がりを見せているようだ。また、大人の部でも、六本木だけでなく鉄道会社もハロウィーンの仮装をしたイベントを開くという。ハロウィーンでカボチャと似合うのは、黒の花だ。チョコレートコスモスや、色の濃い紫のササ系リンドウ等、紅葉の花に合わせて生けるとハロウィーンのムードが盛り上がる。来年のこの時期は、さらに多くの黒系の花を流通させたいと思う。

 さて、九月の下旬から十月に入り、新聞やテレビ、ラジオ等で話題になったのが、お見舞いの花についてである。病院で切花や鉢植えの植物を禁止にしている所があるのだ。一般社団法人日本花き卸売市場協会の会員である(株)なにわ花いちばの大西社長は、どの位受け入れ拒否を行っている病院があるか調査し、その実態をまとめて公表したのだった。それによると、2005年の大阪の新聞で、切花の花瓶の中の細菌が感染源になるリスクがあるとの記事から、特に大阪では四割もの病院がお見舞いの花を院内に持ち込みさせないようになっているそうだ。私は、某ラジオ番組で、切花や鉢物を病院で飾ってよいか、飾らないべきかのトピックスを聴いたが、何かリスクがあるような事でその話題は終わっていた。患者さんの気持ちに対して、もちろん花き業界の私からしても、何か私たちの気持ちに反しての終わり方だったように思う。そこで、正式に大田花き花の生活研究所が出している見解をここでお話ししたい。

 大田花き花の生活研究所の見解として、大阪で新聞の記事になる前の2003年、アメリカ疾病予防管理センターの≪医療施設における環境感染制御の為のガイドライン≫によると、「移植患者や重症エイズ患者の病棟以外であれば、制限は不要です。」「免疫不全が無ければ、花瓶の水や鉢植え植物は感染源にはなりません。」という正式コメントがある。医学は絶えず発展途上だが、その後、花瓶の水や鉢植えの中の土に存在する菌が原因で疾病を招いたという事実は、2003年以降も、現在もない。

 心身共に病んでしまった時、花はその人を見舞う。水の取り換えや水やり等、あるいは、枯れてしまった花の処分や手入れ等、切花も鉢物も生き物だから、面倒なことはあるだろう。しかし、安房鴨川の亀田病院では、青山フラワーマーケットさんに是非とも院内にショップを開いて欲しいとお願いし、井上社長はショップを作った。買わなくても、院内にある青山フラワーマーケットさんのショップの前を通るだけで、見ていて気持ちが和み、素直な気持ちになる。病気を良くしようとする意欲がわく。ぜひとも、特別な病棟を除いて、お見舞いの花やロビーでの観葉植物等、日本中どこの病院もホスピタリティをもって、花を受け入れて欲しいものである。

投稿者 磯村信夫 : 10:56

2014年7月14日

コーディネートで売れ方が異なります

 東京は、お盆でよく売れている小売店と、売れなかった小売店がはっきりしていた。また、物日というと日頃の評判が物を言うが、商品構成によっても売れたり売れなかったりしていることがはっきりした。今や、仏間のある家は少数である。仏壇を含め、盆用のしつらえをしている所は少なくないが、室内装飾全体はおしゃれな色調になっている。それは、家具や小物がこれだけ売れていることでもよく分かる。そういう中でお盆の花も飾られるわけだが、今までと違うのは、お盆の花も白を求める比率が少なくなっているということだ。それは、品の良さが必要だが、色々な色があってよい。ということであろう。
 もう約20年前だが、日本で初めてインテリアコーディネーターのキャリアを提唱した方から「家は、畳や絨毯からフローリングになってきますから、暖色系の色合いを多くしたらいかがでしょうか」と、今までどちらかというと花の色は黄色やオレンジ、緑は売れにくかったが、その比率を増やしてもらうように産地さんにお願いしたことがある。今は、ウッディ、白、黒、シルバー、アクリルやガラスの透明が主体だから、仏様の花も室内の雰囲気に合わせて、つい2、3年前まで主流だった白のおしゃれから、はやりのブルーやオレンジ、黄色、赤などを使ったものが好まれているようだ。そういう素材を売っている所や、組合せで売っている所は、古典的な、あるいは保守的な今までの仏花もよく売れている。
 今回のお盆で、小売店において、コーディネートによって売れ行きがはっきり違っているのが分かったので報告する。

投稿者 磯村信夫 : 16:24

2014年1月20日

もう後へは引けない

 文庫本になった池井戸潤氏の「下町ロケット」を読み終えた。舞台は大田区でも大森の隣町、上池台だ。私は生まれも育ちも大森で、明治の大老たちが住んでいたお屋敷町の大森・山王と優れた町工場が多い海側の下町の両方に友達がいるが、町工場の社長をしている友人が言っているのとほぼ同じようなことを主人公の佃社長は言っていて、時間を忘れて読みふけった。
 佃社長のように格好良い社長は私の友達にはいないが、中小企業の悲哀をなめている人たちも多い。だが皆、寅さんに出てくるタコ社長の会社と同じように楽天性を持ち合わせている。小さい会社ならば、山椒は小粒でもピリリと辛くないとやっていけない。技術もそうだが、人格もそういう輩が多い。
 中小零細企業というのは、農家の方々と接していてもそうだが、本当に素晴らしい人が多い。とある町工場の友人から言われ、私も仁徳を積む為、バーでは必ずジントニックを飲む。

 さて、仕事の話をする。ここ2ヶ月で、西南暖地と言われる産地に行った経験からだ。
 東日本大震災が起きた2011年3月、昨年の2013年3月。
3年間のうち、2回3月市況は暴落し、生産者はお金が取れなかった。なので、例えば切花チューリップ。4月からは商品の魅力が少なくなってくる。新潟、富山、埼玉ともに作付けは本当に少ない。チューリップほど種苗費が高くないものでも、暮れから3月までをメインにしている品目を作っている産地は作付けそのものが少ない。
 この1月、なぜ出荷量がこんなに少ないのかと産地に問うと、「寒さが厳しく、油代が高くて」と言うが、それよりも3年間のうち、2回も収入が得られなかったので、作付けそのものが少ないのだ。だが、確かに他の花よりも少し低温でも収穫できるスイートピーはそれなりに出回っている。
 また、沖縄県のように主要2団体が農家の赤字救済の為、低利融資や国や県の助成金を使ったりして限られた範囲だが、花き生産農家に何らかの支援策をとっている所は、生産をやめないでくれていて頑張って今年も作付けている所もある。
 しかし、これは例外といって良い。関東の近辺であれば、南房総や伊豆を見たら良い。我々花き市場はエールを送っているが、過去3年のうち、2年間も丸っきり取れなかったから、生産を減らしたことで産地を責めるわけにはいかない。
 
 今現在、寒くて需要も減退しているが、それよりも入荷が少ない状況が4月の入学式の頃まで続く見込みだ。今出荷をしている生産者の荷を適切に販売し、お花屋さんや花束加工業者を通じてこんなに消費者に喜んでもらっていることを伝えていきたい。
 今年は消費税が上がるので楽観視は出来ないが、悲観的になり過ぎる必要もない。何せ節分から特にバレンタインから母の日までは花と緑の商品価値が最も高い時期だ。お花屋さんたちに頑張って売ってもらって生産者にこの冬は花を作っていて良かったと言ってもらえるよう、花き市場は頑張って行く。

投稿者 磯村信夫 : 16:24

2013年11月11日

花持ち保証販売は、不満を少なくする販売方式

 先週の土曜日、アップル社の創立者であるスティーブ・ジョブズ氏の映画を観た。パソコンはずっとアップルで通してきたから、初期の頃、またマッキントッシュになってからもずっと愛好している。家では家内もマックを愛用している。スティーブ・ジョブズ氏は、徹底的に顧客志向で私たちの生活が豊かになる為にモノやコトをイノベーションしてきた。

 そして昨日、夕飯は鍋物にしようというので、生鮮品の品質が大森一だと思っているスーパーマーケットで買い物をした。
 しかし、そこで買ったうちの一つ、キノコのセットが、そこの店らしからぬ鮮度だと家内は言うのだ。これから家内は買い物をするとき、失望しないように疑いの目を持って吟味して買い物をするようになるだろう。
 
 以前、このコラムで書いた「不満要因と満足要因(※)」を思い起こした。
 昨日のキノコの鮮度は、「不満要因」だった。価格はともかく、そこの店と私たちとの人間関係が崩れたのだ。一方、アップル社は、iphoneにしてもipadにしても、自分の生活インフラを情報の面から支えてくれる。格好良いし、自分のライフスタイルもスマートになった気分だ。気分だけではなく、少し自分を律してスマートに生きることが出来る。これは、大きな満足だ。

 そういえば、大田花きの品質カイゼン室で、花持ち保証販売を随分前から行っている屋号「オランダ屋」(株式会社ブルーミスト)の蓑口社長にお話を聞かせてもらったことを思い出した。

「花持ち保証でお客さんが増えるのではありません。花持ち保証は不満を少なくさせるものです。ですから、皆が行えばお客さんは当然だと思うでしょう。しかし、我々はもっと沢山の人に花のある生活をして欲しいのです。そうなると、もう一度、満足してもらうことを考えなければなりません。」
 
 彼はそのようなことから、潜在需要を顕在化させる為、「試飾」を思いついたのだ。花持ち保証販売は、性善説の立場を取る人が多い日本人の不満を少なくすることを目的に展開されている販売方式であって、決して優先的に店を選んでもらおう、その花を選んでもらおうという方式ではないことを確認して実行してもらいたい。
 ただしスーパーマーケット等では、売れ残りが少なくなるという意味で、有効な販売方式であることを付け加えておく。


(※)フレデリック・ハーズバーグの「二要因理論」
不満要因①給与 ②対人関係 ③作業条件
満足要因①達成すること ②承認されること ③仕事そのもの

投稿者 磯村信夫 : 11:31

2013年11月 4日

質が高いから顧客が増える

 「今年のハロウィーンはどうでしたか。」というと、読者の皆さんはカボチャやアレンジメントが売れたかどうか聞かれているのではと思うかもしれない。しかし、お孫さんや若い人が身近にいる人は、10月31日の仮装パーティーを早速イメージする。人によっては、素敵なお洋服を着て花束を持ったお嬢さんになった仮装や、デビルの仮装など、さまざまな格好をして"Trick or Treat"でキャンディを集めて楽しんだ。我が家も商売柄、カボチャを早速下げて、ポインセチアを飾り始めた。

 今月は、11月22日"いい夫婦の日"をキャンペーンしている。それは、アメリカも日本も勤労感謝の日、サンクスギビングデイまで、実りの秋を十二分に楽しんで生かしていただいていることの感謝をするのだ。それが終わってから冬になるので、クリスマスの飾り付けをする。日本では11月、さまざまな発表会で花束やアレンジメントの需要がある。七五三、いい夫婦の日と、紅葉の秋色の花以外にこういったシーンでの花々を提案しやっていかなければならないと思う。
 
 なぜ、今そんなに思いを強くするのかと言うと、日経ビジネスではないが、会社の寿命を30年として、ピークは18年、そして会社が生きながらえる、或いは活発に活動するには、創業者視点、顧客視点、共創の視点の3つが必要だとしている。
何やら、週末のたびに台風が来た今年の10月を思うと、"こんなことではいけない。もう一度創業者の思いに立ち返って基本を考えなければいけない"と花き業界全体が思っているのだ。創業者の視点で一番多かったのは何かと言うと、生産から流通まで「質」へのこだわりと探求だったように思う。

花そのものにしても、流通サービスにしても、生け花やアレンジメントの技にしてもそうだ。「質」を追求し顧客のことを想って価格を考える。今は楽して売る為に価格のことを考える業者も多数いる。これではいけない。まずは「質」だ。質を落とさない物やサービスをすることこそ、身体の栄養ではない、心の栄養の花き業界の姿勢なのである。

 今朝、東北方面に荷物を運んでいる運転手さんたちに東北楽天ゴールデンイーグルス優勝の印象を聞いた。オリンピックの招致もそうだったが、楽天イーグルスの勝利は東北の人々に勇気を与えてくれたようだ。  

 花き産地の復興もまだ思うように進まないが、そして漁業や海産物加工も復興途中だが、東北の人は何かやってくれそうな気がする。期待をしている。

投稿者 磯村信夫 : 11:30

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