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2015年2月 9日

だからやっぱり、基本は六十歳代以上

 先週の土日、日本各地でフラワーバレンタインの催しが執り行われた。その中には、愛知県知事自らが先頭に立ち、六本木でフラワーウォークをした愛知県のキャンペーンがある。大村知事をはじめ、男性諸君が格好良かった。今まで様々な業界がチョコレートのバレンタインデーに挑んだが、失敗を重ねてきた。しかし、バレンタインデーの花は確実に拡大しそうな予感がする。男性から女性に花を贈るフラワーバレンタインデーと、3月8日の国際婦人デーは、男性のお客さんをターゲットとして世界の花き業界の稼ぎ時となっている。フラワーバレンタインに時代のうねりを感じた。

 さて、フランスの経済学者・ピケティ氏が先週来日し、700ページ以上からなる「21世紀の資本」がベストセラーになっている。また、国会答弁でも、安倍総理は「トリクルダウン(まず裕福な人々から、そして、徐々に富が裕福でない人に浸透し、全体が豊かになっていくという富の流れ)」という言葉を使っているが、世界200ヶ国のうち、相続税がある国は一割にも満たない。日本では相続税率が高いこともあるが、それでも資産家は労働による対価で得る富よりも、資産運用による富でますます豊かになって、それが格差となって表れているのも事実である。しかし、日本はオートクチュールのお客さんである人は誰もいないし、一着一千万円以上する服を身につける人がいるとも(すなわち、しょっちゅう世界の社交界に出席する人がいるとも)聞いていない。従って、日本では富の格差は確かに深刻だが、これも英連邦の国々に比べてみたら、資産による格差は少ないのではないか。

 「21世紀の資本」でそのような富の流れが語られているが、ピケティ氏が提唱する格差是正政策を先進諸国が取るようになるまで、時間がかかる可能性がある。先進国ですら、若年層で学校に行けなかったり、職につけなかったり、憤懣やるかたない30歳代以下の人達が非常に多い。ISILが、その不満の若者の受け皿になっているという事実を各国政府はよく分かっており、それゆえ、ピケティ氏の提案を真摯に受けとめているわけだが、それで格差是正の速度が確実に早まるとは思えない。となると、豊富な年輩者について日本の花き業界は、所得とライフスタイルで何通りかにパターン化し、彼ら、彼女たちにどのようにもっと花を使ってもらうかをさらに深堀する必要がある。さらに、この年代の人達は、友達三世代のおじいちゃん、おばあちゃんであるから、子供夫婦、また、孫への資金供給源となっている。二世代、三世代住宅が無理でも、子供たちの住まいへの関心、ライフスタイルの指導やお世話は、もう既に住まい、家具、洋服、政府の教育に関する税制措置まで行き届いてきたので、花も当然、その中に入ってきた。

 週末になると、お母さんと娘さんの二人で買い物をする姿をよく見かける。そこに花も入れてもらう。また、仏様の花ではない年配者の花、また、団塊ジュニアへの花を、もう一度、我々プロがお教えする時代になっている。「あなたの欲しい花はこれでしょ。」との作品作りだ。具体的にはそれぞれの現場で行うこととして、今日は考え方をお伝えするにとどめておく。

投稿者 磯村信夫 : 16:09

2015年2月 2日

四十年問題が顕在化

 一月の営業成果はどうだったであろうか。秋口からの天候に併せ、ここまで油の価格が下がるとは思っていなかったから、前年の収益から作付減となり、都合1割近く出荷量が少なくなった。お葬式で使われる白菊を中心に菊類は高値が続いたが、卸売市場によっては前年の売上に届かなかった所、また、届いたとしても少し増えた程度の所等、葬儀場以外に消費が活発にならなかったので、総合すると去年よりも消費のパイが縮んだのではないかと心配する。まだまだ寒い日が続くが、一月末からの愛妻の日や節分、フラワーバレンタインやアジア諸国の旧正月への輸出、そして雛祭り等、需要が本格化してくる。まず小売の取扱金額規模を前年よりも上回るように、花き業界を挙げてプロモーションを援護して行きたい。

 一月になって、いわゆる「四十年問題」の話が地元市場で持ち上がっており、相談が寄せられている。花き市場が公設市場に入場したのは青果より後だが、それを考慮しても二十年は経っている。青果は四十年問題で建物の老朽化による建て替え時期にきており、営業しながら立て替えるのか、それとも移転するのか意見が分かれるところだ。営業成績が良いなら話は別だが、多くの市場が業績悪化とともに家賃の減額措置や、場合によっては家賃を支払っていない所もある。関東の一部では、「メンテナンスは卸売会社がやってください。その代り、向こう五年間は無料で使用してもらって結構です。」というような公設市場がいくつか出てきている。そこに入っている花市場も、どうしたものかと相談にいらっしゃった。消費対象の人口はどのくらいですか。今いる市場は、昔開発したわけですから、今では町の中心部になっていますか。新しいところに建てる場合、青果と花は同じ場所で営業できますか。こういったいくつかの質問をさせて頂き、日本花き卸売市場協会会長として、第10次卸売市場整備計画の話し合いで小生がお話しした内容をお伝えして、参考にしてもらっている。

 ただ一つ、当事者でないとどうしようもないのは、社風や人材の問題である。それは、自社の花き市場にしても、お隣さんになる青果市場にしても、専門店はもとより量販店や加工業者と取引し、今後とも地域の消費者の為に役立てるだけの資質があるのか、仲卸制度があるなら仲卸と敵対していないか、という点である。花はそうでもないが、野菜では、産地はより安定価格を求めるので、四割近くは契約取引、それ以外は産地も買い手も納得する価格で販売するのが卸と仲卸の役目だ。その為、あらゆる知識や情報をその市場の販売担当者は持とうと努力しているか、持って仕事をしているのかに、産地との取引の有無がかかっている。卸売市場は地の利と人がモノをいう。それは、花や生鮮食料品は生ものだからだ。時期や生産者、品種や天候により、同じ商品などない。これを一定の規格をつくり、枠内に収める。絶えず代替品を、代替産地を用意しなければならない。管理が難しく品質数量が安定しないから、卸売市場が流通の本流なのだ。卸売市場があるから市場外流通が出来る。

 今、四十年問題による建て替えコストや移転コスト、自治体の財政問題。また、マスメディアなどから流れる卸売市場無用論。合併ではなく、卸売市場そのものが三十万都市にすら無くなる可能性がある。卸売市場経営に見通しが立たないとする、自信のない経営者が少なからず居る。今後とも、どのように数の集約を図っていくか。そして、早急に国や県レベルで卸売市場のあり方を、また、どういう卸売市場を作っていくかを検討しなければならない。

投稿者 磯村信夫 : 16:54

2015年1月19日

花の生産、まだ増えない

 加工食品メーカーに勤めている方にお聞きしたのだが、大手外食チェーンの鶏肉消費期限切れ問題から、「うちみたいに万全の態勢で生産・出荷している業者まで、多数の取引先から『中国工場のものはやめて欲しい』と言われ、中国と全く同じような工場をベトナムで立ち上げる算段をしている」と彼は言っていた。大手衣料品メーカーの品質を見ると、素晴らしい品質で、中国の方々の仕事に対する姿勢が伝わってくるが、食品については悪いイメージになってしまった。同じ大手外食業者からいくつもの商品の不具合が出てくると、今度は料理されたものの素材が、どこの産地のもので、どこで料理され、製品化されたものであるのかと、安心して食べたい消費者の希望は国内産の農産物に関心が来ている。大手外食チェーンでは、"当店の野菜は国内産です。"と宣伝文句にしている所もあるし、さらに、"自社農場です"ということを売物にしている業者も出てきた。

 国産野菜の卸売市場経由率は、農水省の発表によれば約9割とのことだ。とある仲卸さんに話を伺ったところ、「伝票だけは通っているものを入れたら8割近くあるかもしれないが、9割はどうですかね。」ということだった。しかし、日本列島は縦長で、桜前線、紅葉前線が春、秋にこれだけ足早に移動する立地条件だから、天候によって大きく影響を受ける農産物は、特定の地域と契約していたのでは、質、量とも計画通りには確保出来ない。卸売市場は契約取引の仲介を今後とも本格化させるだろう。

 今は野菜から食べ、メインディッシュ、そしてごはんという様に、炭水化物を最後にする食べ方が定着してきたので、去年は新米価格も戦後初めて下がった。このような潮流の中で、野菜は必要不可欠になったので、花から野菜生産へ変わった人もいるし、併用して野菜と花を作っている人も、野菜のウェイトが高くなった。そして2014年、そろそろ野菜の需給バランスが取れて余りだした。2015年、私は花が足りなくなっているので、その単価が上がるとみていた。そして、単価が上がるので、2015年後半ないし16年には花の生産がまた増えていくと想定していた。しかし、お総菜や外食まで国産野菜が優位になってくると、花の生産は増えないことを前提に花き流通をしなければならない。今年はどうすれば予算内で美しい花束、装飾を作ってもらえるか。また、花のある生活を消費者に楽しんでもらえるか。今しばし、業者の知恵の出しどころが重要な時となってきた。

投稿者 磯村信夫 : 15:41

2014年12月15日

寒波で相場戻る

 衆議院議員選挙が終わった今朝、胡蝶蘭が沢山出ていた。また、通常の切花・鉢物は今週から荷動きが普段の年の瀬に戻っていくと思う。なにせ、ディナーショーや、少しお値段の張る赤坂や銀座での交際費を使った忘年会等が、衆院選のためここ二週間本当に少なかった。それが今週からあるのだ。

 先週の12日(金)から、花も青果も単価が上がった。それは、需要が少なかったよりもさらに供給が少なかったからだ。これから3月までの基調をいうと、石油価格が高止まりして、円安もあったので、作付けが少ないのだ。まさか、この12月の初旬、ニューヨークの石油先物価格が1バーレルあたり60ドルはじめの安値を付けようとは予測出来なかった。石油輸出国機構(以下、OPEC)がアメリカのシェールオイルにシェアを奪われるのを嫌がって、価格が下がっても減産しない決定を出すとは思わなかった。「アラブの春」で危機感を持った産油国は、いずれも国民の生活の質向上の為に、国家支出を引き上げてきた。従って、サウジアラビアでもアメリカ同様、ペイラインが1バーレル当たり80ドルを少し超えた所と言われている。いつのまにかアメリカは、シェールオイルで世界第2位の産油国になってきた。カナダまで含めると、その影響は大きい。

 そういった最中のOPECの減産措置見送りである。こうなると、石油価格は今後そんなに高くならないと予測される。私たち花き業界では、良い花を作る為には、冬場、油を焚いて温度を保つことがどうしても必要だ。それは、漁師の巻き網漁船と同じ比率で油代がかかる。漁師さん達が石油代の補助を訴えデモをするのと同じ状況が、冬場の花き業界にあるのだ。現在、油代が下がってきたといえど、作付けを予定していなかったこの冬の花は、生産量が去年に比べてマイナス幅は1ケタ代だが明らかに少ない。また、今年は9月に涼しかっただけで暖秋であったから、前に回ってしまった花は山形のストックだけではない。

 需要はまだだが、本格的な暮れ相場に本日15日から突入と言ってよい。エルニーニョの発生が75%の確率で確実視されているが、偏西風の蛇行が例年とは違い、寒い雪の12月を日本は迎えている。そして、雪による延着・未着を考えると、早めの仕込みが安全である。一定量を押さえておきながら鮮度管理をし、28、29、30日の三日間に消費者へお正月の花を届けてもらいたいと思う。

投稿者 磯村信夫 : 17:37

2014年11月24日

花の良さを知ってもらう。花の名前を知ってもらう

 今年最後の三連休となり、東京では消費拡大の為のイベントが、小生が関わっているだけでも4カ所で展開された。酉の市からいい夫婦の日、勤労感謝の日もあった今回の週末・三連休はお天気に恵まれ、プレゼントされた花も各家庭で綺麗に飾られていることだろう。終わったら今度は花売り場で花を手にしてもらい次の消費に繋げたい。

 この度の消費税増税先送り判断は、花き業界にとっても大変有り難い。それは、今の花き業界は時代に合った商品の提供や売場づくりが決して上手くいっているとはいえないからだ。今年4月に消費税が上がってから、花では高齢者向けの需要が少なくなった。

 よく言われる消費税増税とアベノミクスであるが、私は切り離して考えている。アベノミクスが無ければ、失業率も企業投資も、株価も国際収支も、さらには観光産業も、プラスに向わず世界の先進国の平均的なレベルに近づこうとする諸活動が阻害されていたに違いない。ようやくそのアベノミクスによってデフレがストップしつつあり、株価も上がって景気がよくなろうとしていた時、約束だからと4月から消費税が上がってしまい、嗜好性の高い花は、数量が少なくても単価が上がることはなくなってしまった。その理由は、新しさを感じさせる売場や、今を感じさせる商品群の提供が少なく、せいぜい季節に合わせた商品作りしか出来ていなかったからだ。それは特に量販店の売り場において顕著である。消費者に欲しいという気持ちを起こさせることが出来なかったのだ。

 少子高齢化でGDPは縮むという論調があるが、私はそうは思わない。確かに、耐久消費財等余るものもあるし、胃袋が小さくなっているので食品も余るだろう。しかし、高齢者に向けた介護やアンチエイジングのサービス、化粧品、健康になる食べ物等、新たな需要が出てきた。私は64歳だが、父と母が亡くなっても仏壇は家にはない。実家には妹が住んでいて、普段は妹が仏様を守ってくれている。私みたいな60歳代はかなりいる。アメリカでは、50+(フィフティプラス)といって、50歳以上は生き方に違いが出てきている。そういった新しいニーズに花は使われているだろうか。デイケアの場所でのアレンジメントスクールや、定年後のガーデニング教室、あるいは市民農園の貸出等、時代に合ったモノやコトを供給出来ていないから、消費税が上がってこのような体たらくになっているのだ。

 12月に衆院選が行われるので、慌ただしい上にさらに慌ただしさがプラスされるようで、何も12月に......という気持ちも少しある。しかし、新年を迎えるにあたり、増税とアベノミクスを一緒くたにしないこと。また、少子高齢化であってもGDPを伸ばすことは可能であること。そして、人口においても、今後とも1億人を割らないよう出生率を確保し、女性だけでなく高齢者も生きがいを持って働けるようにすること。失われた20年を主に団塊ジュニアたちがしっかり取り戻せる経済政策を打ってほしいと思う。

 花き業界は、景気によって消費が増減するが、4~11月の体たらくは自助努力が足りなかった所為である。友達三世代に向けた的確な売場作り。商品開発を「モノ」と、お教室や生けこみ、学校での花育のような「コト」との2つの分野で行っていきたいと思う。また、2017年の4月から消費税が10%になるとしているので、それまでに沢山の消費者に花の良さを分かってもらえるようにしたい。この三連休中、それぞれのイベントをしていて、花の名前や品種についての質問がお客さんから出てこなかった。もっと興味を持ってもらい知ってもらう。そうしなければ、花の需要はヨーロッパのように高位平準化されてこない。さらに私たち花き業界は、国や都道府県から後押しをして頂きながら、業界自体で花のプロモーションを行っていきたいと思った。

投稿者 磯村信夫 : 15:26

2014年11月10日

雨予報が光射す

 東京は昨日、昼前は一時陽の射す時もあり、七五三でおじいちゃん、おばあちゃんに囲まれた子供たちが両親と晴着を着ていた。ちょうどこの世代は、団塊の世代、団塊ジュニア、団塊ジュニアの子供たちと、「友達三世代」といわれる人達である。千歳アメの袋を持っていなかったので少し不思議に思ったが、二か所の神社でそんな微笑ましい姿を見ることが出来た。

 10月、11月、12月の第3四半期に、鉢物類の売上が近年、期待したほどでもなくなってきている。それは、シンビジュームの鉢、ポインセチア、シクラメンの大型商品が、いずれも30年前に登場した商品だからだ。団塊世代の方達は毎年楽しみに買ってくださるが、団塊ジュニアの方々は、シクラメンならガーデンシクラメンで済まし、ポインセチアならピンクのプリンセチアがお好みで、このように、単価の張らないものを買っているのだ。どうすれば、団塊ジュニアの方々に気に入ってもらえる花きを提供出来るかが、今、業界のポイントになってきている。

 ところで、政令指定都市を除く地方自治体では、収入の30%が年金になっている。消費税の増税で、年金者の支出も増えている。消費税が5%から8%に上がり、1%は約3兆円の税収だから、9兆円ほど日本国内で消費税をプラスして集めた。働く年金者も各所多いと思うが、支出が3%分だけ増えた。地方の景気が今一つなのも、光熱費とガソリン代の値上がり、そして消費税UPが効いているのではないか。少なくとも、ムードを悪くしているのではないかと思う。そして、花はムードに影響され荷余り感がある。積極的に打って出ようとする小売店が少なく、平均単価が5~10%下がっているのは生産者にとっても痛い。

 したがって、花の消費動向はこの年金世代の高齢者の方だけに影響されてはならない。日本の人口の次のボリュームゾーンである団塊ジュニアの方々にも買ってもらえる商品を開発しよう。

 三世代そろって七五三をしている姿。いつも街で見る、おじいちゃん、おばあちゃんと遊んでいる子供たちの姿。これを見ていると、我々花き業界も、もっと買ってもらえる花を提供しなければならないと思う。流行が続く多肉植物以外にだ。

投稿者 磯村信夫 : 16:49

2014年11月 3日

地域独特の園芸農業に貢献する

 皆様方の地域では、ハロウィーンのイベントは如何だっただろうか。昨日、日本橋高島屋で開催されている生け花草月流の展覧会へ足を運んだが、その会場でとある先生とハロウィーンのイベントの話題になった。その方はマンションにお住まいだが、近くの幼稚園から子供たちが来たという。また、近くの渋谷の交差点でも、コスプレ姿の若者たちが朝まで騒いで楽しそうだったので見に行った、ともおっしゃっていた。やはり、若い人たちの力は凄いものだと思う。そして、ハロウィーンのイベントで盛り上がった後、街は急にクリスマスの装いになっていく。しかし実際は、紅葉の秋本番であるから、アメリカと同様、日本でも、勤労感謝の日までは十二分に秋を楽しむ様相が必要だ。年末商品の生産が多い鉢物類は、クリスマスを早めに演出することもあるかもしれないが、切花類・食べ物も秋本番の演出をして楽しみたい。

 28日の火曜日、国賓として、オランダ王国国王ウィレム・アレキサンダー陛下及び同王妃陛下がいらっしゃった。歓迎会場では、大田市場でオランダから輸入された花と、日本の花を調達し装飾がなされた。総理ご夫妻主催の迎賓館での歓迎晩餐会では、オランダの象徴であるチューリップやアマリリス、ライラック等を中心とした花が、大きなオブジェとして飾られていたが、テーブルの上では、オレンジ、赤を中心にチューリップ、ダリアやアルストロメリア等のテーブル花が活けられていた。返礼として、ホテルオークラで開催された国王陛下主催のコンサート・レセプションでは、ドーダンツツジとアマリリス、アルストロメリア、そして、オランダから持ってこられた赤芍薬等、大きな正面のオブジェだけでなく、コンサート会場外の通路までスタンド花の形で花が活けられていた。また、会場では参加した多くの日本人が花の前で写真を撮っていた。オランダに関係する仕事をしている方々だから、ことさら「オランダ=花」のイメージを持っている所為かもしれない。その期待を裏切らないだけの花のおもてなしがあって、私も流石、と感じた。

 オランダは独立以来、歴史的に各州で独特の花の特産がある。確かに、オランダには大学、研究所、農業関連会社等、農業を進化させるための先端的なモデル地域があるが、それ以外にも、北からベルギー近く、また、ドイツに近い2012年に花博が開催されたフェンローまで、地方には独特の園芸生産がある。オランダの面積は九州とほぼ同じだが、それでも地方分権は行き届いており、産業もそれぞれの地域でバランスよく配分されている。文化・文明を宗教の観点からみると、確かに日本とヨーロッパは異なっているが、土地と民衆の統治の仕方によって形成された文化・文明の観点からみれば、中国やロシアのような公地公民の中央集権制ではなく、トップが間接的に土地と人民を統治する間接統治の封建制を近代までとってきたので、地方分権が最も好ましいようにヨーロッパと日本では考えられている部分は同じである。そこで、日本では東京一極集中から地方再生となる。オランダは、国土は決して広くはないが、その意味で、花き園芸ひとつとってみても大変優れた農業がオランダ各地にある。花市場は、企業体としてはフローラホランドとなり一つになっているが、支所の形で、花市場としては四カ所が元気に活動している。EUが大きくなり、量販店で花の扱う率が高まった為、分割して統治されないように会社としては一つになったのだ。しかし、地域色、あるいは、それぞれの役割を明確にした花市場は、残すべきところは残すと健在である。日本もそうしなければならない。

 封建制度というと、古臭く、全て価値がないように思われるかもしれないが、封建制度が布かれた平安期、また、封建制度によって如実に栄華がもたらされた江戸期を見てみれば、現在の政治体制通り、間接統治の在り方は素晴らしいことではないだろうか。グローバリゼーションに耐えうる日本の園芸農業を、今まで以上にどう発展させていくか。その中で、私ども卸売市場がどんな仕事を通じて園芸農業と地域の消費者に貢献できるか。これを真剣に考えなければならない。オランダ農業が成功しているのは、農家の子弟が企業家農業を行っているからである。植物工場を除いては、企業が園芸農業を行って成功したとする事例を私は知らない。一方で、農家が事業家になり、事業家農業を行って成功している所は、オランダをはじめ、日本でも多く知っている。農業は、難しいが先端的なやりがいのあるカッコいい商売であること。花屋さんや我々市場は、生き物相手で大変だがやりがいがあり、素敵な商売であること。このように、自分の仕事を自慢することからやっていきたいと、オランダ国王主催のパーティーで友人に語った。

投稿者 磯村信夫 : 16:22

2014年9月 8日

水面下では再編が始まっている

 今日は中秋の名月。天気予報によると、東京では月が見えないようだが、日本各地ではお月見を楽しめるところも多いようだ。花屋さんでピンポン菊とススキのセットを是非とも買ってもらいたいものである。また、明日は重陽の節句だ。今年はお彼岸の小菊や菊、リンドウ等も前進開花しており、早めに量がまとまってきた。しかし、年末の出荷物まで、天候不順で不作気味であるのはお分かりの通り。7、8月と、個人消費が振るわなかったのも、増税が一因として挙げられるが、やはり異常気象の影響も大きいだろう。消費地だけでなく、産地ももろに影響を受けているので、小売店の皆様は消費者に上手く説明をしながら販売をして頂きたい。

 さて、2015年から横浜市中央卸売市場南部市場は、横浜駅そばの本場に事業を集約し、市場関連用地となる。ただし、花き市場は横浜市唯一の中央卸売市場であったので、地方卸売市場として残すことが決まっている。主として青果流通を扱う農経新聞によると、産地が出荷する市場を絞り込む時、中央市場から地方市場になった市場には出荷を控える傾向があるとしている。そうあってはならないと、秋田市の中央市場花き部は、青果部が取引の自由を求めて地方卸売市場になったのに対して、中央市場のままで実績を残している。しかし、横浜では当初の取扱計画を大幅に下回ってしまい、農水省の指導により、このまま市場を続けるのであれば、市ではなく県が認可する地方卸売市場に、ということになった。地方の市場の場合、その役割を果たせるのは地産地消型の地元市場で対象人口が30万~50万人の市場である。そして、やっかいなことに卸が仲卸業務も行うので、既にある仲卸と共存できればいいが、現実には競争する。それより大きい道州制の中心にある地域拠点市場は、公設や第三セクターの地方卸売市場であることが多いが、この規模の場合、仲卸と協業する。

 東京の中央卸売市場五つの花き部は、いずれも県境にあり、一都六県を広域首都圏と考えた時、東西南北に延びる交通の要所にあり、東京以外の県の花き市場にここ20年、甚大な影響を及ぼしてきた。道路網が発達した上に、運賃高、そして今後とも続くと思われる運転手不足。また、トラックの平均積載稼働率は往復の2WAYで38%弱という事実を考えても、帰り荷がとれ、交通に便利で、量を多く取り扱い、そして顧客が多く相場が安定する市場に、産地は出荷してくる。横浜は、大阪市よりも人口が多く、国内第二位の"市"であるにも関わらず、花市場の場合、海側が大田市場、東名側は世田谷・砧市場、そして、川崎北部市場があり、もはや、中核市場としてはやっていけない所まで追い込まれた。これを、どう地産地消型の地元市場として、産地と買参人に喜んでもらえる市場にしていくのか。もうあと半年。南部市場の花き業者の英知が求められている所である。

 人口が減少し、市場再編が余儀なくされる花き市場は多い。可能な限り、産地も買参も共通する青果市場に隣接し合併をしながら、規模を拡大し、人材を揃え、人件費も含めランニングコストを削減し、地域の為、消費者の為、地元の生産者の為に、今まで以上に役立つ市場になってもらいたい。それを決断するのは、本年度と来年度であるように思われる。

投稿者 磯村信夫 : 12:04

2014年9月 1日

輸入花は増えそうにない

 新学期の9月に入り、ススキがたくさん出荷されるようになってきた。待ちに待っていた秋だ。今年は9月8日がお月見で、9日が重陽の節句、翌週が敬老の日と、いよいよ本格的な需要期になってきた。8月の盆と同様、小菊・菊の前進開花で菊生産者共々、市場は頭を抱えている。西日本はもちろんのこと、高冷地の産地は日射量が足りず、秋菊は日長で開花するから早く咲いてしまうのはやむを得ない。どういう風に上手に使ってもらうか。定温庫があり、しっかりとした処理が出来る業者の人に、前から仕入れてもらえるようお願いをしている所である。菊類はそういうわけだが、2月の2回の大雪で被災し、ハウスの再建をしようとしている産地は、まだ生産は軌道に乗らない。そうなると、主にカーネーション、ユリ、トルコキキョウ、バラやスプレー菊等の主要品目が不足することになる。

 輸入品が少ないのは、1ドル80円の時代からすると円安で、3割もコストが上がり、輸入花の単価が横ばいなので、採算が合いにくいからだろうと思っていた。しかし、それも一因だが、実態はもっと根源的なものであった。先月、安倍総理は外遊でコロンビアを訪問した。コロンビアは政治的にも安定してきており、経済成長が著しい。首都ボゴタ周辺のカーネーションの面積はピークの3分の1になっている。それは、一次産業以外での経済成長が著しいためである。お隣のヒペリカムやバラの産地であるエクアドルも、花の生産面積はピークの半分になっている。アフリカのケニアでも、ヨーロッパ資本や、ヨーロッパ人が大農場をつくっていたが、どんどん現地化してきている。この地球で貧しい国があり、そこで花をつくってもらい、日本に輸入して販売する。その差益を輸入商社の方が得る。こういう時代ではなくなってきているということだ。一国の中で、貧しい人と富める人がいる。その比率の差はあるものの、世界中同じように経済的に発展しつつある。そうなると、日本に輸出してくれる国で増えていく可能性が高いのは花き生産の適地があるベトナムだけになってしまう。国内で今後とも花き生産量が減らない、増えていく可能性があるのは沖縄県、長崎県、そして秋田県である。また、道州制のエリアで見た時、地域で果樹をつくっている産地に花きが導入されると、新しい産地になってゆく。

 海外の産地に目をやって、ベトナムが増える可能性があるといっても、一朝一夕に質の高い菊やカーネーション、トルコキキョウ、バラをつくれるというわけではない。ここベトナムでも経済的に伸びていった時、いつまで農業に人手が回ってくるのか疑問でもある。もう一度、新しく出来た日本花輸出入協会の方たちと、国内需要を満たし、消費を拡大する為、実際に検討を重ね、卸売市場は協業する必要がある。実際、スプレー菊やカーネーションは、高品質の物を輸入商社の方々が市場に出荷することにより、市場の中では国産と輸入品が激しく競合したことは事実だ。しかし、買参人や消費者からすれば、競争の中でますます良くなるスプレー菊やカーネーションを見て、欲しいと思い、消費が拡大しているのだ。日本の消費者の懐は深くて広い。国産も輸入品も、消費者は良いものを待ち望んでいるのである。しかし、当面の間、輸入花の増加も厳しいものがある。

投稿者 磯村信夫 : 14:02

2014年8月18日

ホームユース主体の鍵は小売店社員の質

 8月18日、今日も荷が少ない状態が続いている。生産者もお盆休みをしていたので荷が少ないのは致し方ないが、ようやく消費税UPによる買い控えの傷も癒え、普段の買い気が戻ってきた所なのに荷が少ないとなると、小売店での販売は会社や社員の質によって変わってきてしまう。ここが家庭消費中心になりつつある花き業界の泣き所である。

 8月16日の日経新聞によると、消費税UPを消費者に転嫁出来なかった小さな企業は多いという。そしてセリ相場を見ていると、まさにその通りだと実感する。今後、財政の健全化の為にもう一段消費税が上がっても良いよう、我々花き業界、特に小売店の皆様方は現場でより人間力を発揮し、しっかりと消費税を転嫁し買い控えがおこらぬ接客や商品作りの工夫をしてもらいたいと思う。その工夫の一つに、アメリカやEUの専門店がやっているように、ドルやユーロのマークを金額の前につけない金額提示がある。ファッション衣料の店では、セレクトショップの店が最初から金額を全面に出さず、質を前面に出し、金額タグを胸元などに入れて展示してある。お客さんは質を吟味し、最後に金額を見て自分の予算内であればその商品を買う。そういう風に、まずブーケや一鉢そのものの品質を見てもらい、すなわち右脳で判断してもらい、最後にyenがない数値、これが金額だというのは何となく分かるので、予算内だったら買ってもらう。もう一つのやり方は、プロの小売店として、そして、プロの花屋さんの従業員としての接客である。

 日本では大学に進学する人が50%を切るなど、OECD加盟国の中で半分より下の教育投資の国になってしまっている。花き業界も半分位は高卒の人で占められているのではないか。私ども大田花きでは、学歴は問わないが学力は問う。特に高卒の人には、植物、政治経済、マーケティングの三つと、NHKラジオの続基礎英語レベルの英語は必須と言い渡しているが、入社10年もすると、自分自身に引け目が薄れてきて勉強をしない社員も出てくる。もう一度研修を受けさせ、仕事は取引先に役立つためにあることを教え自分を発展させる。

 セリ場を見ていると、ドレスダウンなら良いのだがあまりにもだらしない格好で仕入れに来ている小売店がいる。これでは駄目で、もう一度しっかり社会人として普通に仕事人生が送れるようにしなければならない。花き振興法が国会を通り国産の花が増えてくるようになるには、まだ数年かかる。それまでの間、天候により生産は大きく影響を受ける可能性があるだろう。トラックの運転手さんも不足しているから、市場により荷の偏在も目立つ。そういった中で、実質所得が上がっていない消費者を相手に花を買ってもらう努力をする。結局、人間的にも好かれる花屋さんの店員さんになってもらわないと花は売れてこない。もう一度、JFMAやJFTD学園、あるいは、フローレンスカレッジなど、社会に出てから再度学び直す。また、自分でも自習する。このことが必要ではないか。やはり、何をするにもまず教育。そこからもう一度始めなければならない。

投稿者 磯村信夫 : 10:42

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