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2013年7月15日

雨降り

 猛暑の中での東京のお盆の需要期であった。暑いのでバラは安くなったが、菊類は数量が不足して盆に入った13日のセリまで高かった。こんなことは21世紀に入って初めてだ。

 食品スーパーの競争が激しくなって、今まで花を扱っていなかった食品スーパーも本年度から物日には扱うようになったところが多い。そんなこともあり、卸の段階では盆用の花は良く売れた。
 しかし、小売店はよく売れたところと売れなかったところがはっきりとしており、立地条件よりむしろ日頃から一生懸命花店として商いしているかどうか、その姿勢が商売繁盛か衰退していくかの分かれ道のように思う。
 駅中や駅周辺の好立地でなくとも一生懸命やっているかどうかの姿勢で応援してくれるお客様が増えたかどうかわかる良い時代になっていると思う。

 さて、来週は日帰りだが、神奈川の丹沢三景の大山阿夫利神社参拝登山をする。阿夫利神社は五穀豊穣の雨降り神社であり、関東地方は干ばつ気味であるので穏やかな天候で商売繁盛をお願いして来るつもりである。
 同じ先導師のところに東京青果卸の講もある。江戸時代の神田のやっちゃばの頃から続いている青果の仲卸の講で、こちらはここ70年の講だから弟分として何かあると協同歩調をとっている。
 この大田花き大山講のメンバーのお一人に花幹 水口会長がいらっしゃる。創業者である水口会長は、社員を社長にし、現在会長を務めている。ご子息は立教大の助教で『渡航僧 成尋、雨を祈る』という本を出版された。いただいたので、通読した。
 
 成尋は平安後期(1072年)62歳で宿願の宋にわたった天台宗の僧で(1081年)、69歳で中国で没した。成尋が有名なのは、時の皇帝に3日間の祈りで雨を降らせますと約束し、台密で法華経を唱え、見事に3日目に雨を降らせ、皇帝から称号をいただいたという大人物だ。
 どこまで成尋和尚が降雨を祈ったかことが天に通じたかはわからないが、人は思ったことしか実現しない。やったことしか実現しない。それは真実であるから、雨降りが偶然であったにしても、成尋の威徳だったことは間違いない。

 「感動する」とは"気とリズム"がまさに動いていることを感じた時である。それは、芸術には欠かせない。古いものでも魂は生きている。今でも生きているように見えるし思える。これは、絵や彫刻や文だけではなく、神社や仏閣など大きな建造物に対しても我々は感じることが出来るし、富士山という山、大山という山にも感じることが出来る。
 「気韻生動」という言葉を思いながら、水口氏の成尋の本を読み終えた。人間が我欲の為にでしゃばったことをし過ぎて、神である自然からしっぺ返しをされて今暑さで唸っているが、もう一度宇宙と一体化しリズムを整え自然としての自分を知り、そして科学を使い、良き花の仕事をしたいと真夏の今日考えている。

投稿者 磯村信夫 : 16:34

2013年7月 8日

2010年度県民所得が発表されたが・・

 東京は例年よりも早く梅雨入りし、早く梅雨が明けた。昨日今日の暑さは凄まじく、今日から盆の仕入れが本格化するはずであったが、とある小売商曰く、「もう夏バテです。暑さで人の具合が悪く、店にある在庫の花も具合が悪いので、明後日の10日で花を揃えます」という仲卸・小売店が多い。
 首都圏は高齢化している。それはそうだ。子供の数が多かった団塊の世代では長男は田舎で後を継いでいるが、それ以外の兄弟は集団就職で首都圏に来たり、嫁ぎに来たり高齢化率は高い。ただ他府県と違うところは、団塊ジュニア始め、若い人たちも多くいるということだ。7月のお盆は昨日の七夕とお施餓鬼は日曜日だった。今年は曜日巡りで週末土曜日の13日からハッピーマンデーの15日の海の日までがお盆で3連休なので、7月盆も久しぶりに実家に家族全員集う家も多いだろうと思う。だから花は売れる。

 さて、話は変わるが、花市場業界では宮崎中央花き、青果市場業界では大分大同青果の伸びや利益率に注目が集まっている。
 2010年度の県民所得(※)では、花市場業界で最も伸び率の高いうちの1つ、宮崎中央花きは47都道府県の中、県民所得45位の宮崎県で頑張っている。県民平均所得は、221万1000円だ。青果市場で、堅実経営、利益率が高い卸売会社として注目されている大分大同青果が位置する大分県は33位で、平均所得は247万5000円だ。東京は大会社も多く首都圏の中心だから、県民所得は430万6000円と2位の滋賀県の326万9000円より100万円も多い。
 
 東京には大会社も多く、会社の経費需要も当然あるので、例えば胡蝶蘭の消費量から単価水準が大輪・ミディーとも他都市と当然違ってくる。なので、例えば大田花きの売上げが大きいのは、地の利の為で、決して努力の賜物ではない。小生はもっと頭を使って努力しなければ恥ずかしいと考えている。
 
 今注目されている2社は何が違うのであろうか。それは、端的に言って経営だ。市場の機能を徹底的に磨き、産地指導やリテールサポートを徹底している。設備投資を絶えず行うので、その原資である利益に対しても貪欲で、品揃えの為とはいえ、買い付け品の利幅をきちんと取る。
 こう見ていくと、確かに県民所得や民力は花き・青果市場の取扱額を決めて行く。しかし、それだけではない。日本各地ではこの2社の質の高い経営が求められており、地域の活性化の一端は一流の市場人が地域にいるかどうかに掛かっている。

 現代の日本では、ゆとり世代が成長し"本物を求める求道精神"に欠ける人材が多数輩出されて来ている。一方では、"切って捨てる""自己責任"の考えが蔓延した時期もあった。
 しかし、ようやく日本そのものがどのような国の在り方が最も日本らしいのかを真剣に考え、それに向かって進んで行くようになって来た。
 花で言えば宮崎中央花き、青果で言えば大分大同青果、このように日本の卸売市場としてあるべき方向を実現化してくれている。大いに見習うべきである。


※参考サイト
都道府県別統計とランキングで見る県民性より
"県民所得ランキング"

投稿者 磯村信夫 : 15:52

2013年7月 1日

株主総会で質問

 定点観測をしていると、ブルーの比率が花でも高まっているように見える。サッカーのサムライブルーから始まって、洋服の黒はすっかり定番になったものだから、ブルーの洋服やらアクセサリーなどが人目を引く。
 
 花は暑さを楽しむヒマワリの黄色やオレンジ、ジンジャーやヘリコニアなどの赤に代表されるものが人気だが、その他にも季節を表す白やブルー、そして葉物のグリーンがある。この中でもブルーの花は比率が上がっており、カーネーション、リンドウ、トルコギキョウ、スイレン等、時代の色として持てはやされて来ている。NFD(※)の"花ファッション"のトレンドの通りだ。

 さて、今日はもう一つ。先週の第26週は株主総会のピークの週だった。弊社大田花きはその前の週の土曜日だったが、株主の皆様から総会でいただいた質問の一部をご紹介したい。
 輸出についての質問をいただいた。農産物の輸出は日本の大きなテーマであり、可能性は十二分にある。
 
 大田市場 青果の仲卸で現在衆議院議員として活躍されている平議員は、産地がリンゴやみかんを輸出するのも良いが、卸売市場の仲卸が輸出業務をすることの方が先方のオーダーも受け易いし、日本農業の得意な傷み易いが生でいただく物(桃やびわ等切花含む)が継続的に輸出され、トータルの金額からすると、輸出金額が多くなると考えられ、この方向で政策決定され、植物検疫を市場ですることなどの実行対策も具体化されて来ている。
 
 今後、大田市場としては、韓国(ソウル圏)、中国(上海圏)、台湾(台北圏)、香港、シンガポールのそれぞれの市場か仲卸と商売したいと考えている。
 スポットの話では、パリやオランダの花市場に日本の花を輸出しているが、商売として成り立たせる必要がある。目処が付きつつあり、質にこだわる仲卸と良い物を作る生産者が一緒になって輸出業務に本格的に取り組んで行くことを簡単ではあるが説明させていただいた。

 また、為替の質問があった。円安に傾いたドル、ユーロの為替水準で日本の小売価格、或いは生産費または輸出において、どのような影響が出ているのかというものであった。1ドル95円~105円、1ユーロ125円~140円の間であれば、努力の範囲内で収益を落とすことなく生産・販売・輸出の3つが出来るであろう。
 
 しかし、今までのやり方では収益を落としてしまうので、生産者であれば製品化率を上げる。流通業者であれば、より価値のある物を扱う。ロスをなくす。輸出であれば、その地のマーケット調査をしっかりと行い、クールジャパンの一環として格好良い花のデザインを含めて素材を輸出して稼ぐということである。
 一定の円安なら、"やれば出来る"ということをお伝えした。どこの株式公開会社でも一般の株主がその会社の進むべき道を示唆してくれている。
  
 参院選挙前で、マスメディアは政局や経済活動について色々と言っているが、園芸分野の花き農業、卸売市場と仲卸、そして小売店を見ている限り、自分の花の仕事に社会的意義を見出してやる気になってやっている人は成長している。
 花き業界は泣き言を言わず、やる気を持って行えば、必ず成長していくと自信を持って言うことが出来る。

 ですから皆さん、チームを組んで一生懸命花き業界を前進させましょう。


※NFD・・・公益社団法人日本フラワーデザイナー協会

投稿者 磯村信夫 : 15:57

2013年6月24日

このような現状の中で花や青果業界が活況となるには

 先週17日の月曜日、東京都花き市場協同組合の会議で、花き生産者代表者2名と県の花き担当者の方、全農群馬県本部の花き担当者の方と、花き生産活性化の為の話し合いをした。

 民主党 野田政権に続き、自民党 安倍政権もTPP参加を発表した。全中がTPP参加に反対しているので、日本農業についての在り方が、かなり突っ込んだところまで国の産業の在り方として日々議論は展開されている。
 世界最強の農業国である(農業貿易上は第2位の)オランダを一つの手本にしたいとする動きが活発化してきている。それに向けて、農業政策を策定・実行して行こうというのである。
 一言で言うと、知財としての園芸分野の発展である。もちろん園芸分野の中に花きも含まれる。それプラス農業専門の不動産業。
 そして、所得保証やエネルギー助成などの政策的なものである。

 群馬県の方々と話していて産地サイドが声を大にしていたのは、農家が生産コストを割らずに利益を出していける価格での"販売力"だ。産地は花き生産を維持し活性化させるには、更なる販売力が必要だということであった。

 少し横道に逸れるが、青果物流通の話をする。とある産地会議で青果卸会社の社長さんが「長い間作り続けている作物を自分の思う時期に好きなだけ作付けて、この価格で売ってくれ、と言っても青果市場には蓄えが尽きて無くなってしまっているのです」とおっしゃっていた。
 マーケティングをするのであれば、作付けの段階から関わって行かないと、天候等により予期せぬ量が出た時、その青果物は行き場所がない。もう店頭売り用もカット野菜用も安く売ったから量が売れるという訳ではないのだ。需要構造が変化してしまった。農業も当然だが、マーケティングをし、消費者が好むものを世に出さなければならない。
 何も検討をしないで、昨年は良く売れたからその分今年も作ろうというのでは、あまりにもリスキーな時代となっている。
 
 産地において安定して生産をする為には次の機能が必要である。花作りがいるから花を作り続けることが出来るという訳ではない。消費者に購入してもらうこと。花の小売店さんが多少でも儲かることが必要だ。

1.インプルーバー(花き産業を進化させる人)
①マーケッター ②育種家 ③試験普及所

2.プロデューサー(生産する人)
④苗供給業者 ⑤生産者 ⑥出荷調整前処理(商品化する人)

3.ディストリビューター(流通させる人)
⑦定温物流させる人 ⑧セールスする人
⑨マーケット情報をフィードバックする人

 以上の9つの要素が園芸産地には必要である。一人何役の場合も可能だが、これらの機能を果たして行かない限り、産地が継続発展することはない。
 
 ようやく日本の農業界もオランダと同様、産業人としての意識になってきた。これからが楽しみである。

投稿者 磯村信夫 : 12:44

2013年6月17日

カトレアと胡蝶蘭

今年は、南カリフォルニア花市場創立100周年記念の年である。ハワイ、カリフォルニアのサリーナス中心に広島や鹿児島、沖縄の人たちが移り住んで花を作った。その人たちが、より公正に取引が出来、生産者も仲卸や小売が良いようにと市場を作ったのだ。
20世紀の後半には、父ブッシュが麻薬の代わりに花を作ることを奨励し、関税をゼロにするなど、コロンビアとエクアドルがカリフォルニアに代わってアメリカ国内向けの花の産地になって行った。
今では、日系人たちが作ってきたハワイの花、カリフォルニアの花の足跡は、意識して見ようとしないと見えないが、カリフォルニアでは21世紀になって日系人に代わってオランダ系アメリカ人が花き生産の分野では南米に伍して活躍している。

 戦後、アメリカ人が好きであったアンスリウムやカトレアは日系人たちが深く関わっている。日本向けのアンスリウムの輸出基地は現在台湾となっているが、20世紀の最後の10年ではハワイが中心で日系移民のオザキさんが品種改良した赤の品種"オザキ"、里芋の葉に似て混色にもなる品種"オバケ"など、オランダの育種が進む前は日系人が育種したアンスリウムの品種が世界を席捲していた。

 カトレアの切花と言うと、年末のレコード大賞を思い出す。TBSがキー局になってレコード大賞を発表していた。胸には大輪のカトレアをブートニアとして入賞者の胸に付けられ、いかにこの賞が素晴らしいのかをテレビの前の視聴者に強く印象付けた。
カトレアは一番豪華な花、ランの女王様であるので、花持ちが一週間以内のものがほとんどであったが花持ちよりもその気品と豪華さで十二分に価値があった。カトレアの生産が増えるとともにブートニアやコサージュというよりも、むしろ花を最も多く使う人生の通過儀式・葬儀にカトレアが使われるようになった。

 一輪白菊とカトレア、この時代が続いている。人生の通過儀式は団塊の世代と団塊ジュニアの世代によって変革され続けている。既に成熟国家になった日本とヨーロッパでは結婚式だけではなく、葬儀も自分のライフスタイルに合ったものにしてほしいと亡くなる場所まで含め、本人が希望するようになって来た。
葬儀の話をすると、一輪菊を多く使用する葬儀から、棘があるので今まで使われなかったバラを使う葬儀、故人が好きだったり見送る上で遺族が好きな花で送ることが多くなってきた。個人的には一輪菊とカトレアは、シンプルで尊厳があり素晴らしい装飾だと思うが、「わぁ、綺麗。花に囲まれて送ってあげたら故人は幸せでしょうね」というような美しい花に囲まれた幸せを演出するようになって来た。これが、洋花と切花胡蝶蘭の需要が増えている理由である。


 カトレアは主体的な花形の上に持ちがあまり良くない。又、傷みなく輸送するのは中々難しい。その為、国産に限られる。しかし、胡蝶蘭は上手に荷作りすれば、現在全出荷されているベトナムのものも良い品物だ。十二分に使える。持ちも良い。
 こうなると、胡蝶蘭の品種改良は現在台湾で盛んなので、アンスリウムの産地がハワイから台湾に移ってしまったように、切花胡蝶蘭の産地も台湾に移って行くかもしれない。
 消費者の好みはその方向に向かっているとすると、ファレノの国内生産者は鉢物だけではなく、良い切花も出荷する必要がある。そして、高品質マーケットでシェアを取っておく必要があるのだ。

生産協会の洋蘭部会でカトレア部門とファレノ部門の会議に先々週、先週とこのような話をした。
育種はカトレア、胡蝶蘭に関わらず、新しい時代を作っていく源であるから日本発の新品種カトレア、ファレノでなければならない。これを洋蘭部会の活性化のルネッサンスの基礎に埋め込んでおいてほしい。

投稿者 磯村信夫 : 00:00

2013年6月10日

リテールサポート

 東北、北海道の産地からいよいよ出荷が始まってきた。先週末から北は関東と変わらない気温で、今日の荷物の到着は遅れ気味。普段より一時間以上も入荷が遅くなって、仲卸さんたちは相対品の分荷が出来ず手持ち無沙汰で、現場巡回していると早い到着を要請された。

 市場によって、役割は違うが大田市場のようにハブを役割としている市場は、遅くとも午前0時前に入ってもらう必要がある。そうでないと、手待ちが増えたり大田市場を出発する時間が遅くなるので、取引がキャンセルされたり、また遅いのが恒常化するとその産地はセリ取引以外では取引出来なくなるので、結局産地は全国規模に渡る買い手大手との取引がなくなる。花持ちの良い花ならば、定温管理し一日前に出荷して貰うことが必要となる。

 さて、公益財団法人食品流通構造改善促進機構の理事会で、隣に座った日本スーパーマーケット協会専務理事との雑談の一コマを紹介したい。
 挨拶をし終わると、彼は"磯村さん、花はこれからですね"と、嬉しいことをおっしゃる。
 彼の話をまとめると、以下のようになる。

 スーパーは売場構成によっても違うが、全体売上額の3分の1が魚・肉・青果だ。"魚離れを少し甘く見ていたのではないか。歳を取れば、また魚に戻ってくると思っていたが、そうならず歳を取っても肉を食べると言うことになっているのではないか。もう一度、食育や魚の調理法等の提案をしなければならない"と彼は言う。
 
 ここの所、週末に丸物が売れるようになって来ており、おばあちゃまが娘や孫を連れてスーパーへ買い物に行き、教育の為に旬の魚を買っていくそうだ。良い魚売場は遠方からも買いに来てくれる。
 季節物である魚介類は種類も多く、もうスーパーでも最寄品ではなく買回り品となっている。そこへ行くと、肉はだいたい牛・豚・鳥の3種類なので、調理方法の提案やちょっとしたお惣菜など、提案力のあるスーパーがお肉の良く売れているところだ。
 又、野菜や果物は毎日の食生活で欠かせないので瑞々しさが売りとなり、青果売場が良いと来客数がかなり安定するそうだ。なので、生鮮品では、まず青果売場をキーにしなければならない。  
 
 しかし、ここ1~2年どこのスーパーでも青果に力を入れ、宅配業者やコンビニまで青果を扱うようになって競争が激しくなり、利益がなかなか確保出来にくくなっている。
 それではと生鮮4品目の花を扱うところが増えて来た。スーパーで花を売るとすれば室内なので当然切花が多くなるが、これもしっかりとお客様へ商品説明や産地説明などお知らせする。組み合わせやアレンジメントはちょっとした料理と一緒で提案する。単品でも美しいので、提案によってどうとでもなるのだ。

 日本フローラルマーケティング協会の小川会長がおっしゃる通り、生鮮4品目の花でまだ0.5%程の売上シェアしかないので、まずは1%にするにはすぐに出来そうだ。次は3%を目指して行く。
 まず、売場を作り、次にそれに合った商品構成をする。こういった順にスーパーの花の売り方も考えて行く必要がある。
 
 今年の西武ドームで開催されたバラ展では、昨年よりも若者が多く、お母さんとお嬢さんの二人でいらっしゃる方も多かったと聞いている。売場作りは、そんなに難しく考えなくとも実行すれば売上が伸びると思われる。

 こういう状況だとすれば、我々卸売市場はリテールサポートに力を入れなければならないということだ。花の小売店は、専門店・量販店・ホームセンター、カタログ或いはネット販売、この4つが消費者の為に必要であるが、それぞれに合ったリテールサポートをする必要があり、それが消費を伸ばすことに直結すると思えてならない。

投稿者 磯村信夫 : 16:42

2013年6月 3日

黒字の会社は業績を知り、責任を取っている

 第22週の先週は、一般社団法人日本花き卸売市場協会の総会が仙台で行われた。3.11の復興とともに、花き需要そのものを卸売市場がリーダーシップをとって復興して行こうと決意した。同様に、22週から花き市場や仲卸会社などいくつかの総会があり出席してきた。

 平成24年度は、1・3月期が予想外の厳しさで赤字や大幅な減収の会社が多く、業績の良かった会社はほとんどなかった。
 その中で、ある会社は安倍総理がリーダーシップを持って日本再生を行おうとしている今、日本が二等国に陥らない為の最後のチャンスであり、花き産業においても同様だとして、グローバルな視点で自社と自らの役割を再度見直し、財務体質の強い新たな取引先を開拓する。そして、自社で描いたストーリーを以って開拓するなど今までと異なった営業活動を展開して行くとした会社があった。

 また、ある会社では社外取締役からのアドバイスで顧客・小売カテゴリーについて偏りが指摘され、量販店との取り組みの在り方を再考させる話があった。このような会社は、総会後の取締役会においても活発な意見が出て、社員数は少ないものの人が育っているとの印象を得た。社員の数ではなく、結果にこだわり、花で食べて行こうとする意欲が強い社員たちがいると、その会社は活性化する。少なくとも赤字にはならないように思う。
 
 とある小規模だが優秀な会社は、花付き花木、実付き花木について勉強し、取扱量を増やして季節の味わいを付けたホームユースを展開しようとしている。枝物の勉強から始めてホームユースを本格化する営業活動を行う。
 また、ある会社では水遣り、水揚げなど基本中の基本を社員が正しく知り、持ちの良い高品質な物をリーズナブルな価格で提供できるようにしようと講師を招いて勉強を始めている。やはり大切なのは"人"である。
 
 今年の母の日を見ても、ご主人が団塊の世代で後継者がいないところも頑張ってはいるが、時代とずれてしまっている店舗が多いように感じる。現役でやっているのなら時代とともに変化しなければならない。何も時代を創れとは言わないが、少なくともコンビニエンスストアの発展から学び、我々花き業界人であれば、どのようにしなければならないか分かる筈だ。
 自分を変え、会社を変えていくことが必要であると株主総会に出席し、強く感じている。

投稿者 磯村信夫 : 12:19

2013年5月27日

今の潮流

 昨日の日曜日、日本橋の高島屋で開催されている"公益財団法人日本いけばな芸術展の展示会"と銀座松屋で開催されている"マミフラワーデザイン展2013"を見に行った。満員御礼、人の波をかき分けてしっかりと拝見したが、花材の活かし方はもちろんのこと、器は作者の身体と化していて、先のパリでの世界卓球大会やプロゴルフのトーナメントのように道具そのものが実際に身体となって花を活かしている。
 集中してみると、人ごみの中に自分がいることすら忘れてしまう。たった一振りでも宇宙の表情を表す交響曲やオペラのような味わいを魅せてくれて、時が経つのをしばし忘れた。
 ちなみに道具が身体化していることを脳科学ではプリパーソナルスペースというそうで、まさに現代は使いやすさだけではなく、道具を身体化して表現していくことが必要なのである。
 
 次にまだ水なし川だが、表面化するだろういくつかの潮流をお話したい。

 今言ったプリパーソナルスペースのように脳科学の進歩で、良く生きることについて革命が起きている。脳の仕組みが男女・国籍・年齢別により分かりつつあり、今流行のビッグデータを利用した傾向値分析にも役立っている。

○宅配便で送れない

 「取り扱えません」と、イーコマースの一般化により宅配便が増え、業者は大変忙しくなって洋ラン鉢のような規格外の大きさの物を断るようになってきた。
 また、縦にしていないと品傷みが起きてしまう花のような物も、会社によっては取扱いして貰えないところが出てきた。大手の中で一部宅配便を行っている運送会社は運賃の値上げを言ってきた。そうなると、自社ないし、友好な外部の輸送業者を持たない生産者や流通業者たちは、ラン鉢をはじめ花を送れないところが出てくる。流通チャネルの変更である。

○卸売業に参入

 葬儀関係の仕事花を行っている規模の大きい会社は、同業者や葬儀社の為に卸売を営むところが大変多くなった。花束加工の大手も卸売業を営むようになって、同業の花束加工業者に荷を卸したり、量販店や専門店に荷を卸すようになってきた。全国卸協会のメンバーは200社余りだが、日本中で専門店の数が少なくなる一方、卸売業者の数は増えている。こういったアンバランスな状況が出てきて地方市場の売上が下っている。自ら仲卸業をやっていくことが必要だということだろう。

○アジアの白一輪菊は儲からなくなっている

 この為替水準だとアジア産一輪白菊は生産減となり、中国、マレーシアの一輪菊は減る。白菊の"神馬"や"優花"を中心に日本に出荷してきたが、日本での単価安もあって、生産を見直そうとしている。円安に振れてからはや5ヶ月。アジア産地の一輪白菊生産にメスが入り始めた。マレーシアや中国では、立地条件の良い畑ならば今後チャンスがあるかもしれないが、悪い畑は作付けを止める判断をしたようだ。
 為替は小泉政権時の1ドル124円まで行く可能性もある。今後はマレーシア、ベトナムのスプレー菊の出方がどうなるかだ。

○最低価格保証をした花き栽培
 
 岩手県の安代のリンドウは自分たちで資金プールをして、天候による集中出荷の暴落時には、最低価格保証制度を用いて安心して花作りが出来るようにしているが、今伸び盛りの秋田県でも、全ての品目ではないが推奨品目に最低価格保証制度を取り入れ、生産振興をしている。
 今年は暑くなることが予想されているが、秋田県が得意とする菊類やリンドウ、トルコギキョウなど花持ちの良い物をしっかりと植えてくれれば上々の評価を受けて、更に面積拡大が出来るだろう。野菜と同様、伸ばして行く花の品目の最低価格保証制度導入は、北越・東北各県にとっては踏み込む価値がある制度だと思われる。

投稿者 磯村信夫 : 16:12

2013年5月20日

ただいま菊安く、バラ良い

 今日20日は支払いの締め日と小雨が重なり、やや重たい雰囲気だが、母の日が終わり一週間が経ち、小売店も積極的にやらなくてはと先週の空気とは変わっている。
 高冷地もようやく平年並みの気候になり花が咲き始めたが、しばしの間は今までの寒さで高冷地への産地移行がスムーズに行かず、品物によっては少なくなるものが多くある。

 果菜類と花は市況の波長が似ており、20日悩みの21週目だが、団塊ジュニアの好む、野菜類や葉物そしてバラやカンパニュラなどを中心に一定水準の相場が期待できそうである。
 
 一輪菊の相場が低調なのは、現在、電照菊や夏菊などがだぶって出荷されている為であるが、構造的にはスーパーマーケットなど量販店の花売場がいつの間にか仏花に特化してしまった為、ここが動かなければ菊が安くなる。
 こういう流通構造になってしまっている為、1ヶ月以上も一輪菊が安いということになった。そうさせない為には、量販店の売り場を多彩なものにして行く必要がある。それは今期の我々の重要な仕事だ。

 また、お彼岸以降、スプレー菊の安値が続くという、ここ20年間なかった傾向が見て取れる。理由は昨年の台風被害で沖縄県、鹿児島県の小菊類が壊滅的打撃を受けた為、昨年のお正月に小菊に代わってスプレー菊を使ってみたところ、「いけるじゃないの」と言うことでスプレー菊の需要が拡大したためだ。
 
 しかし、3月彼岸はスプレー菊も小菊も多く、価格は安値となったが、4月以降もスプレー菊は国産とマレーシア、ベトナム産等がシェア競いをしている。海外産は日本に購入してもらわなければ安定した生産基盤を失いかねない。
 特にマレーシアの生産者は、安値でも我慢して出荷する。赤字でも今シェアを落としてしまうと、自分の行き場所がなくなる。通年で利益を出せば良いという考えから、国産品と輸入品がだぶって出荷され続けている。これは、カーネーションのコロンビアや中国の生産者そして輸入商とは違うところだ。
 現在、起きている現象は一輪菊とスプレー菊は安値であり、小菊の値段はまあまあ堅調ということだ。ここ20年以来、初めての現象だ。

 もう一つ、団塊ジュニアの人たちが好む花、団塊世代の人たちが好む花、どちらか一方の世代だけだと市況は決して良いとは言えない。この2つの世代が好きな物でないと、良い相場にならないのだ。
 
 今年の西武ドームで開催された"国際バラとガーデニングショウ"は、押すな押すなの大盛況。入場者もお弁当屋さんも花売場も本当に結果は良かったと主催者は言う。
 アベノミクスのおかげもあるだろうが、この2つの世代がバラとバラのある庭を格好良いと思っているからであって、今年は昨年より30歳代の人たちの数が目立った。量販店の花売場が仏花に特化してしまったのとは、逆の現象で大盛況であった。

投稿者 磯村信夫 : 12:10

2013年5月13日

復興の為に花き生産も欠かせない

 3.11で被災に遭われた地域に安倍総理は休みを返上して行っている。なかなか出来ないことだが、昨日は仙台平野に行かれ、農業の復興具合をご覧になった。
 オランダは、被災した仙台平野の復興をいち早く援助しようと長い間干拓で培った技術で塩分濃度を下げたり、オランダで成功している大規模な施設園芸のハードとソフトを使ってもらおうと、特命農商務官を派遣するなどしている。
 
 復興で大規模温室栽培される作物は花も有力候補だ。地元の流通業者は、地元の生産者が主体になって「第6次産業」(※①)政策で花の大規模栽培しているチームがあると聞く。長崎県の諫早干拓で、中国海南島の菊にも値段の点でも負けない白菊生産の協業に弊社のグループ会社は取り組んでいるが、この規模を更に大きくしたものになると復興事業として素晴らしいものになると期待している。
 
 農業は米・麦など土地利用型、果菜類・軟弱野菜・花・果物の園芸型、そして畜産の大きく三つに分けて、それぞれ戦略的に日本農業の強みを更に磨くべきである。日本の農業者の最も優れている点は、技術力やマーケティング力まで含め人の価値にある。本当に日本の農業者は人材揃いなのだ。心技揃った農業者にしか出来ないのが、生鮮食料品花きの園芸作物と果樹などであり、この分野の中で更に一歩も二歩も世界で抜き出でたものになって行かなければならない。

 日本の園芸農業は国内の良いものを分かってくれる消費者に恵まれていたので、素材としての農産物に関わるマーケティング力と製品化する力は群を抜いているが、農場をマネジメントする力や農場のシステム化など農業を進化させて行こうとする力がここ20年少なくなってしまった。
 これをもう一度蘇らせて日本の農業を政治の力も借り、本格的に強くさせていかなければならないと私は花き産業に身を置く者として考えている。

 安定出荷や財力などで不安な花き生産者は、チームを作って花き生産をしてもらいたい。農協の花き部会や自分たちだけの法人化など、色々な手法はあるだろうが、組織体が必要だ。
 是非とも、組織体を作り、資金を確保しスケールアップして消費税が上がるであろう2014年4月からの消費減退局面を乗り切ってもらいたい。

○全花協(※②)では
 軽減税率と既に話題になっている時限立法の消費税がスムーズに転嫁される為の価格表示に関する法制化の2つを議員の先生方にお願いし、実現させるべく頑張っている。
 EUでは、27カ国中、13カ国が卸売市場で取り扱われている食肉、魚、青果、花きのうち、花きも軽減税率適用となっている。(※③)
 
 花は、消費者にとって心のビタミン・ミネラルであり、生活に欠かせないものなので、農業においても日本を活性化させる重要な品目であることは国民誰もが理解していただけることだろう。また、表示方式は仲卸や花束加工業者、そして小売業者が量販店や式場等に納品する際、消費税を的確に転嫁出来るよう、本体価格+消費税=総額としてもらうことだ。
 
 当初、財務省は総額表示の原則を曲げるわけには行かないとしていたが、3%から5%に消費税を上げた時、納品した生鮮食料品花き業者が消費税分を認められなかった為、結局その分相場が安くなってしまったことの経験に基づくものだ。
 この2つを全花協が先頭に立って是非実現させたいと考えている。卸売市場で扱う生鮮4品目は、消費者にとっても日本の農業者にとっても絶対に必要なものである。
 
 是非、読者の皆さん方も地元の国会議員の先生方、行政府の長、そして役所の農林部に働きかけてもらいたい。宜しくお願いします。


※①第6次産業・・第1次産業×第2次産業×3次産業の連帯事業
※②全花協・・「全国花き振興協議会」の略。花きの生産、流通、販売等の団体で構成
※③軽減税率に関する資料(PDF)

投稿者 磯村信夫 : 15:20

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