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2013年4月29日

少し端境期です

 今年のゴールデンウィークは、曜日の並びが平日を挟む為か、関西や首都圏に出来た新名所を尋ねる人も多く、都心部のお花屋さんもしっかり営業するという会社が多い。また、ゴールデンウィーク中だというのに、結婚式もあり何か時代が変わっているように思う。

 切花・鉢物ともに堅調相場は、向こう一ヶ月位続きそうだ。直接の要因は、天候不順による端境期で、産地リレーがスムーズに行かない為だが、構造的には昨年は単価でおよそ10年前の2001年並の切花。1ケースあたりの入り本数は少なくなってケース数は2割増えているので、1口あたりの価格は10年前の2割安。鉢物類も同様で1口あたり10年前の2割安となっており、しかも運賃が高くなっている。
 こうなると、利益が薄いので生産を増やすと言うのはなかなか難しく、スムーズに荷を運べる集出荷施設があるところでないと、消費地への出荷に不具合が出る。宅配便を利用すると運賃コストが売上高の2割を超えてしまう。これでは、ロットや品物によって手取りがなくなってしまう。

 21世紀に入り、鮮度保持の為、一定の温度をコントロールが出来る集出荷施設の投資やIT化など生産に関わる設備投資だけでなく、選別・集出荷に関わる投資が行われたところでないと花き生産は少なくなって、もはや花の産地と言えなくなっている。もちろん地元の"道の駅"や"ファーマーズマーケット"で稼ぐ花農家はいる。しかし、それはほんの一部だ。
 このような状況だから、3月のように急に平均気温が暖かい日が続くと荷がどっと出て安値になるし、4月の中旬以降、今度は朝晩は寒く、高冷地はまだ冬のように冷えているとなると、限られた中での産地リレーなので荷が薄く空いてしまう。
 
 供給において輸入花まで含め、こういう状況になっているのだ。ここを抑えておかないと良い花き流通が出来ない。卸売市場から、市場間ネットワークをして各市場の役割の多様化が必要なのである。
 
 最後にもう一つ。4月~3月の年度で見た時に売上が伸びている、今後も期待の切花と鉢物を3品目紹介したい。
 まずは、ご存知の切花のダリア。今後、鉢や苗、ガーデニングでも良いものが出てくるであろう。2つ目は世界中で注目されている切花のアジサイ。3つ目は鉢物のバラである。いずれも2桁以上の伸びがあり、今後とも期待されている物だ。
 
 我々が安く買おうとするのは既に知っている物で、我々が高くても買いたいものはブランド品と新しいものだ。新しいものについて私たちはもっと取り組んで行かなければならない。


〈推選図書〉
①東京農業大学 教授 藤島廣二 監修
『くわしくわかる!食べもの市場・食料問題大辞典1 市場からみえる食の流通・販売』 教育画劇社

②法政大学経営大学院 教授 小川孔輔 著
『フラワーマーケティング入門』 誠文堂新光社

投稿者 磯村信夫 : 15:44

2013年4月22日

胡蝶蘭の切り花

 寒さが続き、供給が少なくなって切花の相場が2ヶ月ぶりに上がってきた。まだ白菊は安いが、それ以外の花は概ね例年通り、ものによっては平均相場のプラス10~20%高になっている。

 今年の東京は、桜の時期にちょうど高冷地のように、一度に様々な花が沢山咲いた。そういう状況だったので、この寒さで例年並みの季節の進み具合になって穴が開き、供給が少なくなったということであろう。昨年までと違うのは、国産品の出荷減を輸入花で補うことが為替の問題もあって単価的に難しくなったことだ。又、国内産地も更に出荷先の絞り込みを行い、大手市場に荷が寄ってきている。
 
 品目的にもその傾向がバラやトルコギキョウに顕著に表れており、1965年~1975年生れの広い意味での団塊ジュニアの世代が多くいる地域の市場が伸びている。この人たちと、その親である戦中から団塊の世代は、人生の通過儀式の仕方やら花を変えてきた。

 今年目立つのはランで、カトレアから胡蝶蘭に儀式で使われる花が変わりつつある点である。カトレアは、かさばるので遠隔地からの出荷はほとんどない。少なくとも輸送体系は傷みやすいので、直送でないと流通出来ない。胡蝶蘭は上手に荷造りするとアジア圏なら、傷まないで市場に届く。
そこで胡蝶蘭の得意な台湾は、アンスリウム・オンシジューム・トルコギキョウに次いで、胡蝶蘭の切花生産を本格化させる気運がある。
 
 台湾の生産者は、良いものとなると皆が作り始め、日本で相場が立たなくなると一気に作ることを止めてしまう。こういうことが時々あるので、台湾の輸出商の人たちと日本の主に輸入する協会と花市場は、しっかりと価値を保ちながら消費を拡大する施策を取っていく必要がある。
 
 日本国内でも胡蝶蘭の鉢物生産者が切花を生産したり、逆に将来の切花安を予想して、胡蝶蘭の切花生産から鉢物生産に向かっている生産者もいる。台湾の生産者は、どっと作ってペイしないと止めてしまう。これでは、せっかく消費を拡大したのに品物がないのでは困ってしまう。
 継続出荷、持続性を持って輸入商社は台湾の産地に今申し上げた事情を伝え、生産出荷をコントロールしてもらわなければならない。
 高額商品の花が上向いているというのに、台湾の生産者が水をさすのは止めてもらいたいというのは、私の気持ちだ。

投稿者 磯村信夫 : 17:49

2013年4月15日

BCP(事業継続計画)をしっかり立て経営する

 4月10日(水)、フローリメックス社が倒産手続きをしたとのニュースが入ってきた。2月のチコレラ社倒産に続く、オランダ花き業界で2回目の大型倒産だ。
 フローラホランドが敗戦処理に向けて従業員や施設など業務を引き継いでくれるところを探す助力をするという。

 2月の時点では、イタリアやスペインを中心にしていたチコレラ社なので不景気の為、然もあらんとも思った。
 
 しかし、フローリメックス社は大元はドイツの会社であり、ヨーロッパが今バランスシート不況と言えども、ユーロはむしろ割安に動いており、ロシアなどにも着実に輸出出来ているのでトータルの輸出金額は増えていたはずだ。
 それなのになぜ・・と調べてみた結果、

・子会社の花束加工で大クレームが起き損失がかさんだこと。
・社員の給料遅延があり労働争議に発展していったこと。
・大手の顧客をライバル会社に取られてしまったこと。

以上の3つが原因であった。
 
 メインバンクでもナーバスになっているこの時期ゆえに起きた倒産とも言えなくはないが、BCP(事業継続計画)など経営の根幹に関わる視点がずさんだったのだ。
 このことは、規模は違うかもしれないが日本でも起こりうる。本年度は、スーパー、ホームセンターとも2014年4月の消費税上げ、2015年10月の消費税上げを見込んで出店を加速している。今年一年で量販店は、もう出店する場所がないくらいまで新たに出店する。

 2012年度から、すっかり儲からなくなってきた花束加工でバレンタインデーやお彼岸のように物日で大クレームをされたら、立ち行かなくなるかもしれない。
 どのような品質管理をすれば良いだろうか。クレームが来ない安心して販売してもらえるものを作るだけではなく、店頭での管理まで納入会社は気を遣わなければならないのだ。もちろん宅配便を使うとしたら、温度管理も欠かせない。

 日本の花き業界は利益が出にくくなっているが、社員の給料は労働に見合うものになっているだろうか。人を使うことが出来る優秀な人材はしっかり確保出来ているだろうか。会社が嫌になり、優秀な人材が優秀な若い社員を連れて退社するという事例が日本の花き業界にもある。会社はそのようなことがないようにしなければならない。何も煽てたり甘やかしたりするのではない。
 仕事場は戦場と同じなので、厳しさは当然のことだが、よく教育をし、信頼し、任せていくことが更なる発展に繋がる。
 フローリメックスの労使騒動は働く人たちに責任を取らせようとし過ぎたのではないかと思う。2ヶ月分の遅延が結局4ヶ月分の給料を支払うように命じられた。

 最後に大手顧客がライバルに取られるということは起こり得ることだ。ただ、取ったら取り返す、そのくらいの意気込みでないといけない。

 この間、バーに行った時にジャックダニエルがアサヒビールになって、ジム・ビームがサントリーが新たに代理店になったことを知った。サントリーはやられたのでやり返した。こういうバーボンウイスキーの世界でも生き残っていく為にはどうすべきか視野に入れて置かなければならない。
 これは花き業界でも同様だ。BCPは、存続維持する為にどうしても必要だ。日本は3月末の送迎需要を見ても、花束なら昨年は、1500~3000円、今年は3000~5000円に。卒業式、入学式など年度の始まりに使われる胡蝶蘭は、昨年よりも一週間長く相場が持った。  
 
 デパートの活況とともに、花も高額な商品から需要が復活してきている。しかし、量販店の大量出店でも分かる通り、更に激しい競争が繰り広げられる可能性が高い。花屋さんの数が更に減少していくことも予想しなければならない。
 消費税が上がりディスカウンターが人気になったが、低価格の花が更に人気になっていくことも勘定に入れて行かなければならないだろう。
 
 資金繰りまで含めたBCPの立案がまだならば、まず社内の部長以上に社長の意志を伝え目合わせすること。そして早めにプランを立てることがどうしても必要だと思われる。

投稿者 磯村信夫 : 15:46

2013年4月 8日

輸出倍増計画―市場で輸出検疫―

 4月8日、今日はお釈迦様の誕生をお祝いする"花祭り"の日である。今年は、昨日の日曜日、都内では桜祭りを計画した所も多かっただろうが、大森では桜が終わってしまったことと悪天候の天気予報で中止になった。

 しかし東海道の品川宿では、商店街の人々が中心となって開催され、まだ風が強かったもののきらきら光る春の日差しの中、多数の住人が駆けつけていた。
 お寺が多い品川宿辺りに住む若いお母さんと子供たちにお釈迦様の誕生日に花をお釈迦様に捧げることが、実は自分たちが"慈悲の心"を教わっていることを教えたいものだと思った。

 日本の花き業界は、1日・15日の仏様の花と榊の入替え需要がベースとなって、お客様がお店に買いに来て下さるとき、季節の花も購入していただくというリズムで動いている。特にご高齢の方を中心に花が好きで来店して下さるのはありがたい。

 さて、おとといの6日(土)に大田市場の青果仲卸の元社長であり、現在、経済産業大臣政務官・内閣府大臣政務官である平衆議院議員の会が大田区産業プラザで開催された。
 日本農業新聞(平成25年4月4日付)でも報じられていたが、日本の農産物の輸出促進の為、卸売市場で植物防疫官が輸出検疫を出張サービスすることが出来るようになり、その人数を増やすというのだ。
「甘利大臣も実態が分かってくれて推進してくれている」とうかがっていたのが、政府の方針として新聞の記事になった。

 生鮮食料品花きの4品目は素材の良さを生かした日本人の評価に裏付けられた世界第一級の肉・魚・果物・花である。これらを市場の仲卸がコンスタントに輸出国の問屋が長くても数日で捌ける量を、多頻度に輸出しようというものだ。
 日本列島は長いので、産地が移動することもあろう。また、各県が個別に売りに行くと、現地の問屋に手玉にとられるだけでなく、ロットが大きいものだから一定期間在庫にしながら販売せざるを得ず、結局安くないと買えない。こうなると輸出補助金が必要になる。これではだめだ。
 
 生鮮品の輸出入というのは、その国の市場の仲卸の仕事であるのが普通で、鮮度が大切な鰯でもポルトガルの魚市場の仲卸がニューヨークの魚市場に毎日送っている。
 端的に、このような例が一般的で、これを日本も普通に行おうとしているのだ。
 今年の春のように、肉も魚も野菜も花も安い年には、円安も手伝って多くの量を輸出出来るはずなのに、日本ではそのルートがまだ出来ていない。市場ルートをいち早く作って行きたいと思う。
 
 後は"インボイス"も問題がある。事前に商工会議所に届けなければならない手間がある。より簡単に措置がとれるようにして行かなければ、オランダやイタリアの仲卸ではないが、生鮮品は相場 のセールスがやりにくい。

 まずは第一に傷みやすい日本の生鮮品花きは世界の誰もが認める最高の品質揃い、これを輸出することを卸売市場の新しい仕事としたい。
 平議員は何もお金をかけずに既存のものを使えば、意識改革だけで輸出額を倍増出来ると考えている。もちろん私たち市場は「その造りを海外にも売り込もう」とこの話に乗って輸出をして行きたいと思う。

投稿者 磯村信夫 : 16:52

2013年4月 1日

切花の卸売価格が上りにくい要因とは・・・

 先月、東京都中央卸売市場から、2011年1月~12月の都内中央市場の仲卸の経営状況についての報告書が刊行された。
 水産部では、約30%が黒字で約70%が赤字、食肉部では約40%が黒字で約60%が赤字。青果部も同様であった。花き部は、約6割弱が黒字で残りの4割強が赤字であった。
水産・食肉・青果はスーパーマーケットの比率が多くなり、自分より大きな会社と取引きするので、利益が出にくい体質になっている。花き部は、専門店の減少と、買出し人と言われるレストランや美容室などの活け込み業者の数が減ってきたことが赤字の要因となっている。

震災の年は、たしかに食料品はセシウム問題があったが、花業界では母の日まで需要がどこかへ行ってしまったような絶不調であった。2012年、暦年では改善したが、4月~3月の年度で考えてみれば、生鮮4品の仲卸業者は苦しかったのではないだろうか。それは2013年2・3月に単価が大幅に落ち込んだからである。
何故単価を抑えようとする力が働いているのか切花について考えてみる。青果の仲卸はキャベツを丸ごと納品する。量販店に直接売るのだ。なので、仲卸から専門店に卸しているのと変わらない。

しかし、切花はそこで加工業者が入る。花の仲卸が花束加工業者に納品し、花束加工業者がスーパーに納品する。そうなると、スーパーで販売するまでに一段階増えるので仲卸が花束加工業者になっていくのが潮流にもなってきた。また、こういうパターンもある。卸が花束加工業者に納品し、花束加工業者がスーパーに納品する流れだ。又、卸が別会社を作り、花束加工を行うといったパターンも含まれる。こうして切花の場合、従来より一段階多い流通過程となっている。
よって、この花束加工業者が食べていく為には、納品するスーパーから適切な対価を貰うか、そうでなければ仕入価格を安くして手間賃を出すことを考えなければならない。
こうして2012年度は、10年前の平均単価まで下がっていったと推定される。そして、更にスーパー用の花束花材の花は特定の卸・仲卸を通じてしか流通していないので、業界全体のパイは20数年前の1980年代と同じではないかと推測される。

今後、スーパーの花売場が伸びるということは、小売店の数が減少するということである為、仲卸・卸・産地とも本格的に数の調整局面に入ったと見て良いだろう。財務の健全性を第一にして、縮小均衡する卸・仲卸と下がった2012年度をばねに飛躍しようとする卸・仲卸とはっきり分かれた格好になった。当たり前だが今までと同じように働いて、皆が良い時代は花き業界において完全に過ぎ去ったのである。

投稿者 磯村信夫 : 15:55

2013年3月25日

2013年3月の低調市況から

 27日(水)までで卒業式は終了する。3月は、家庭需要に加えてお彼岸を中心に特別な花の需要がある月だ。
 2013年3月の市況は、私が花き業界に入って約40年、これだけ単価が安い年はなかったと言える記録すべき3月期であった。
 今、20日締めの入金が買参人から行われているが、需要期であっても量が潤沢で、その上需要もしっかりとしていたのでお客様も喜ばれ、買い上げ代金の入金状況はすこぶる良い。
 
 単価安で当てが一番外れたのは、輸入商社の方々だった。1・2月の赤字を3月で取り戻せないどころか更に傷口を広げて年度末を迎える。
 円安や現地の人件費高から、仕入れ価格が高くなり、運賃も安くならないので、今後も苦しい展開が予測される。母の日まではと歯を食いしばっても、これ以上傷口を広げられない業者も少なくない。

 国産を輸入花で補う21世紀に入って続いている花の調達の仕方が、この3月で完全に壊れた。輸入商社の皆さんと新年度に向けて早急に協議をしなければならない。
 次いでダメージが大きかったのが、3月のお彼岸用の露地花の産地である。沖縄県の小菊が価格を支えきれず、値崩れを起こし、関東では房州、関西では淡路島等の金盞花や露地のストックなどの仏花の花材が軒並み極端に安くなった。
 また、ハウス物の和歌山県のスターチスも中国雲南省のものが大量に出回り安値に泣いた。一年前のデータを見て、作付けや仕入計画を立てるのは止むを得ないこと。今年は、小菊の後にスターチスが安くなり、結局アイリスまで紫はほとんど安値の波を被った。

 さて、これからである。原因をかいつまんで見ると、昨年売れていたので、国産も輸入品も3月の作付けは多かった。秋の台風で沖縄県や鹿児島県奄美諸島は2月から本格出荷になったが、例年だと雛祭りの頃、出荷が減って相場が立ち直り、そこから彼岸商戦に入るものが、今年は途切れなく出荷があり、しかも安くても荷が減ることはなく徐々に出荷量は増えていった。
 
 内地では、稀に見る寒い冬で露地物は遅れた。ハウス物も燃料費が高く、設定温度を低めにするしかなく、2月の中旬まで出荷は少なかった。
 天候が例年よりも暖かくなって来てから、内地の露地ものも施設ものも出荷量は増えて行った。どのくらい増えたかというと、在庫がまだあるのに市場へ行くと、セリ人に勧められて購入する。或いは、見ていると安いので、購入してしまう。それがまた在庫になる。
 相場が出るパターンというのは、小売店が売ってしまってから仕入れる。相場が安いパターンというのは、売る前に荷が来る。こういう時である。

1月から2月の上旬まで荷が少なかったから、細かく品揃えして大切に売っていた小売店は中旬から多くの荷を積まれ、市場から「さあ、量を売ってください。」と言われても、そんなに急には変えられない。
 
 「疾風に勁草を知る」で、この安値でも、いざと言う時に頼りになったのは、どこの国内産地・輸入商社であったか、どの市場でどの仲卸でどの買参人であったか。このことをしっかりと心に刻み、そことの取り組みを深めていくということである。

 安倍政権が誕生し、日本が再生し再出発しようとしている。花き業界もそういう気分が盛り上がっている。その中で40年来、初めての安値で解かったことは、"花は確実に売れる"。その代わり、我々業者は食べて行かなければならないので、"誰と取り組めば最悪の時でも乗り越えて行けるか。"この方針がはっきり見えたと言うことである。

投稿者 磯村信夫 : 00:00

2013年3月18日

生産性は値決めの方法にあり

 今年のお彼岸の相場は安い。安いのは量が多いからだ。何の量が多いかというと"競りの量"が多い。

 "競り"といっても、20年前大田花きが競り下げ方式を採用してから、人間が競っている市場でも競り上げの威勢の良い競りは小数派となり、競り人が最初に値段を出す競り下げの市場が多くなっている。
 潤沢感がある中で、競り下げとなると、よっぽど買参人の数が多い、或いは「量を売るぞ」という意欲のある買参人が一定数いないと競りは低調となる。
 競りで価格発見された相場は、次回の競り前取引きの指標になる。今年のお彼岸の相場は負のスパイラルにはまり込み、安値となったのだ。
 では、どのようにすれば生産者が生計を立てていける程の価格を作ることが出来るかというと、

① 契約取引の量を増やすことである。
②  競りの力が年々弱くなってきているので、産地は安値しか生み出せない市場には、契約品のみとし、競りの委託出荷をなくすべきである。
③  産地は輸入品が入らないレベルの価格に抑え、その価格を割ったら出荷しない。余剰の分は産地廃棄することによって、価格を守ることである。

 卸売市場は公共性を持つ。公共性とは、差別的取り扱いの禁止、受託拒否の禁止、それを前提に第9次卸売市場整備方針では、拠点市場を青果・水産で制定した。花きも実態はそのようになっている。その市場は今までの卸売市場の延長線上にあるのではない。
 仕事のやり方を変えて行かなければならない。それが拠点市場と市場間ネットワークの仕事のやり方だ。花き産業を成長させるには、経済成長の三原則通りする必要がある。 
 まず一つ目に、花き関連の設備投資を増加させること。二つ目に、花の生産や流通販売に携わる人たちの労働を増加させること。三つ目に、技術を進歩させること。2013年彼岸期は、この三つ目が必要なのに、旧来の競り方だけだったのだ。
 
 今までのやり方がどこの市場でも通用するわけではなくなって、競りから相対に取引のウエイトが高くなった。更に競りだけ見ると、取引所として機能する卸売市場は、全国でも小数となっている。
 こうした中、花き業界を進化させるのは、より生産性の高いやり方にしなければならないということだ。利便性の高い"せり前相対インターネット受発注システム"や"在宅せり"は、売り手も買い手も利便性の高い取引であるが、それよりも小売価格が決まっており、使う花のアイテムも決まっているとすれば、当然予約相対が最も安定した取引である。
 花き業界は、今でも"作るに天候、売るに天候"かもしれないが、量が潤沢なら発注しないで間際に安く購入しようという買参人が多数いる。買い手の立場からすると、それは分かる。
 しかし、それでは小売価格も大幅にばらつき、結局生産原価を割る価格しか生まれない。
 
 今年のように、予約相対した人が高いものを購入してしまうということがある。これではだめだ。契約取引をした人を損をさせてはならない。その為には、主産地・拠点的市場は価格に責任を持って取り組む。場合によっては、損をしてでも価格を守ることが花き業界発展の為に欠かせないことを3月の市況は教えてくれている。

投稿者 磯村信夫 : 16:50

2013年3月11日

生産技術革新を希望する

 フローラホランドの2月実績が前年比で15%も良かったので驚いている。
 1月下旬からヨーロッパでは寒波があり、2月になって温暖な気候となった。バレンタインデーの2月ではあるが、金融危機から実態経済が悪化していると言うのに、この売上の伸びである。
 一方、日本のマーケットはアベノミクスで景気が上向いて来ているのに、寒さで二桁マイナスであったから、花の消費の根強さに大きな違いがある。
 日本は仏事の物日には花は必需品となるが、日常の花、或いは花のある生活を楽しむという習慣はまだまだ弱い。
 日本の花き業界はバレンタインデーを男性が花を買う、西洋から入ってきた新しい物日にしようとしている。
 しかし、ベースになっている家庭需要というものは、やはりヨーロッパと違う。もう少し普段使いを頑張って掘り起こさなければならない。その為には、価格は大切な要素であろう。
 
 ヨーロッパに行くと、花の値段が安いので、思わず多く購入してしまう。日本の卸売価格とドイツの小売価格が同じ花もある。日本の方が安いのは苗物だけだ。後は、切花も鉢物も品質は良いが高いものが多い。

 今、アベノミクスでデフレストップと言っているが、花の場合、もう一度国際価格をしっかりと調べ、高いものがあったら農家の所得を落とすことなく、或いは農家の所得を上げても採算が合うように、どうすれば作れるかを研究すべきである。

 農業の第6次産業化で直売所や完成品を作り、売るところまでするのは良いだろう。しかし、それは抜本的な解決策にはならない。やはり生産だ。
 花や生鮮品は消耗品なのである。なので、消費者にあまり大きな金額的負担は掛けられない。もちろん高くても良いものはある。しかし、小売店が良いものを割安に販売できるようにもう一度生産の方式を研究し、実行に移してほしい。

 日本バラ切花協会の会員の方がオランダへ行き、一坪辺りの切花本数を倍近く生産する技術を学んだそうだが、天候の与件以外に必ず技術がある筈で、それをもう一度取得するべき時となっている。
 オランダの花市場の2月の取扱数量と金額を見て、やはり値段は個人消費を定着させるには欠かせない要素だと考える。
 
 生産者の皆さん、花き業界再出発の為、"良いもの安く"を始められる人から始めてほしい。

投稿者 磯村信夫 : 16:32

2013年3月 4日

量販店花売場、健闘す

 大田市場の西側駐車場にある河津桜がようやく咲き始めた。雛祭りの時に咲くのは、2週間くらい今年は遅いのではないかと思う。その分、春を待ち焦がれる気持ちは強く、週末はよく売れたという小売店が多かった。

 2月の品目別実績を見てみると、花桃、菜の花、ラナンキュラスが昨年よりも良い結果を残した。
 昨年2月は29日まであり、結婚式用の花を手当てする水曜日から始まり、水曜日で終わったので、式場に花を入れているお花屋さんは仕入れが嵩んだ。
 一昨年、結婚式は3.11があったので年内中は見送り、週末のお日柄が良いこともあり、2012年は1月から結婚式が多かった。
 お祝い事だけではなく、仏事も絆消費で一昔前までとは言わないが、それに近い規模の葬儀が執り行われた。関東でそのようだったので、東北地方は毎週末慰霊祭のようなことが行われていた。
 昨年と比べ、2013年の今年は全て平常に戻り、1月から2月まで週末のお日柄もあまり良くないので、切花の単価は青果と同じ2割安となった。その中で、花桃、菜の花、ラナンキュラスが品目別に金額的にも前年実績を上回り、気を吐いたのである。

 花桃と菜の花が健闘したのは、スーパーマーケットや量販店で、花を購入することが日本国民に本格的に浸透し始めたことにある。その分街のお花屋さんはたまらないが、"祭事"というと量販店で間に合うようになってきたのである。
 そういう理由で、花束加工業者が増えてきた。量販店自らも自社加工するところが出てきて、今最も競争が激しくなっているのは、花束加工業界ではないかと思われる。セルフ販売の花束はパートさんが作成するので規格が揃っていることが必要で、産地は共選共販などで品質の平準化と量の確保をお願いしたい。
 そして、量販店の花売場の賑わいは、専門店の売り上げ減を意味し、新しい花のある生活を提案して、専門店としての存在意義を高めていく必要がある。そうでなければ廃業も残念ながら覚悟しておかなければならないだろう。

 また、ラナンキュラスの躍進は、バラと同等の価値あるものとして、この冬場に位置付けられている。この1月からは特に輸入品まで合わせてバラが不足しており、バラと併用する専門店が多い。
 少し話はそれるが、円安とASEAN諸国及び南米アフリカ諸国の最低賃金が上がりつつあることを懸念する輸入商社は多い。昨年の11月に比べ、一番高くなったタイは、円安2割、賃上げ2割の計4割仕入れコストが上がっている。もう国内生産減を輸入花で補うといった施策は難しいのではないか。もう少し単価を上げてくれないと、輸入も国内生産も減ってしまうという輸入商社も多い。

 さて、ラナンキュラスに話を戻して、ダリアに次いでオランダのベアトリクス女王さえ驚かせた最近の日本の花といえば、ラナンキュラスである。今後、冬場の花として、ますます消費量が増えていくと思われる。切花だけでなく、鉢物においてもその予兆は表れ始めている。

 最後に、2月末からマーケティングに優れたお花屋さんが数名言っていたことがある。それが、3月4日付けの日経MJでアイリスオーヤマの社長がお話されていたことと同じなので、ご紹介したい。
 そのお花屋さんの何軒かは70歳を過ぎると、ペットを飼うのが難しくなると考えているので、花を購入する頻度が増えたり、家の中の一箇所だけでなく、何箇所かに花を飾るという。どうも花とペットは同じお財布から出ているようで、70歳になったので、もうペットは飼えなくなり花を購入するという人も多くいるようだ。
 20世紀最後の10年が花・ガーデニングブーム、21世紀の初頭の10年からペットブーム。
 21世紀になって13年、そろそろペットは...。アイリスオーヤマの社長もまた花の需要が復活して来るのではないか。花のある生活が戻ってくるのではないかと見通しを立てている。
 そこで、需要を取りこぼすことのないように国内生産者、輸入商社の皆様方に頑張って生産して貰えるように応援をするのが、農協や普及所、市場の仕事となっている。

投稿者 磯村信夫 : 14:53

2013年2月25日

一定規模ないとやっていけない川中業者

 先週イタリアのチコレラグループ(フローラホランド内エキスポーター他計6社)が5千万ユーロの負債総額で裁判所に倒産手続きをした旨のニュースが飛び込んで来た。その中の1社であるZurel社は、ロシアへの販路を開拓した花の輸出会社として名高い。
 また、今から25年程前の大森園芸時代、創業者の社長が狭い大森園芸の2階の応接室で日本の花き業界についての質問をし、私が答えたことをノートの書き込んでいる姿を思い出した。
 今でもフローラホランドのアルスメール市場、ウェストランド市場の玄関に大きな機械的時計があるが、それはZurel社からのプレゼントである。

 オランダの流通業界は、ビジネスとして統廃合が活発に行われている。日本の場合、産業界でも「和を持って尊しとす」で、統廃合は思ったように進んではいない。どちらかというと独立のまま組合や協会を作り、仲間内でそれなりに仕事をして行くことを良しとしている。
 しかし、それで食べて行ければ良いのだが、利益が出ないと投資が出来ないし、人材が揃わないので、その業界の未来は明るいとは言えない。
 そもそも仕事とは人に喜んでもらうことにあるのだから、大変に決まっているので、統廃合しかないとオランダの花き業界は考える。ドイツ、デンマーク、南アフリカ、ケニアを巻き込んで花き産業を前進させている。
 しかし、ヨーロッパの花き業界でもイタリア、南フランス、スペインは少し違い自己都合を通してしまった為、利益が少なくとも旧体制のままでいる方が良いと言ったので、その人たちに花を販売し代金を回収する作業が上手くいかなくなり、結局今回のチコレラの倒産となっていった。

 日本も川中の卸・仲卸が生産地と小売店の大型化などにより、集荷・販売上、今までと違ったことをしていかないと存続すらおぼつかない状況に2008年のリーマンショック後になっている。
 2015年まで消費税の値上げが予定されており、TPP交渉参加で農業情勢も変わってくる。その中で、どのような進路を取れば良いか、少なくとも市場間ネットワーク、ホールディングスなどで規模を大きくし、事業活動を行っていくことが必要になっていることは言うまでもない。

投稿者 磯村信夫 : 13:12

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