大田花き 大田花きコーポレートサイトへ
 

2010年12月27日

産地情報の大切さを思い知る

東北地方へのトラックの出発が雪のため早く出たいところだったが、荷物が思いのほか多く、希望時間よりも30分~1時間遅れた。大雪にはならないとの予報なのでどうにか店では売れてくれるものだと思う。年末の雪の予報は東北や北海道、北越地方にとっては気になるところだが、どうにか見通しも立ち、生産者も小売店もまあまあの年の瀬になるだろうと思う。それにしてもクリスマス前の北西ヨーロッパの大雪や、アメリカのカリフォルニア州の集中豪雨で、欧米では残念なクリスマス商戦となって、客足も完全にストップした第51週であった。

日本では暖冬で小売店は正月用のものは買うに買えず、近年まれに見る菊類の相場安であった。昨年の12月から菊類は1年を通じて堅調であったから、この12月のスプレー菊と一輪菊の大幅な相場の下げは花き業界に大きな不安を与えた。特に菊類の比率が高い地方の市場にとっては大打撃の12月の切花市況であった。

少し詳しく菊類を見てみると、小菊については事前に入手した産地情報通りで、主産地の沖縄県の情報精度は非常に高く、今後とも相対価格もセリ価格もマーケットメイクしていけるだけの精度であった。スプレーギクについては、国内の産地のものは事前にもらっていた情報どおりの出荷量であった。しかし国産が少ないので円高もあって積極的に輸入をしたマレーシアのものを中心に第50週、第51週と近年まれに見る低調な価格となった。年末に使うものは暖かすぎて買えない。また輸入品の情報が的確に卸に伝わっておらず、どこの卸売会社も情報なしで販売するといった状況。これではマーケットメイクの仕様がない。少なくともアジア産のスプレーギクを取り扱う輸入商社は出荷先の中核市場と十二分に打ち合わせの必要がある。

この12月の一大事件は先に記したように24日の金曜日に白菊が暴落したことだ。それは愛知と福岡の出荷情報が当初もう少し後ろにずれ込むとのことであったが、プロの生産者たちは結局出荷を合わせてきた。ずれ込む予定が合わせてきたので、量は潤沢というよりも溢れかえってしまった。遅れるつもりであったので、事前に大手買参人を中心に輸入品の白菊や国産のものもすっかり手当てしていたからだ。こういう状況があったので、24日にセリ場では白いものはなんでも安いと言う様相を呈し、菊のみならず白いストック、白いスナップ、白のカーネーション、白のトルコまで安くなった。円高がしばらく続き、中国や韓国で作られている神馬がこれからも物日には出てくる。国産のものと上手に棲み分けるだけの独自の品種と品質を誇る輸入品が増えてきた菊類については、まず主要産地は主要市場に出荷状況を的確に伝える義務がある。主要輸入商は主要出荷先に的確に情報を伝える義務がある。そして主要市場はトータルの作柄状況、出荷状況を主要産地や主要輸入商にフィードバックし、今年の相場見通しを伝えておく義務がある。これができなければ卸売市場の役目は果たせない。市場は品揃えだけでなく、せり前、せりともに相場を決めるのが役目である。

2010年12月の市況は情報の共有が的確でなかったために起こった低迷市況であった。二度と失敗は繰り返してはならない。


本年一年ご愛顧いただきまして大変ありがとうございました。

投稿者 磯村信夫 : 00:00

2010年12月 6日

ポスト成長マーケットの花売場

4日の土曜日、松と千両の出来を見に行ったら、昨年よりも良いので一安心。南天の実は悪いと言うし、クマが里に降りてきて悪さをしたと聞くので成りものは不作かと心配していたが、千両は実付きがまぁまぁなので良いお正月が迎えられそうだ。

第48週、第49週とここのところに来て、花も青果物も潤沢に出回るようになって、高値から平常相場に戻ってきた。平常相場に戻って量が出てくると、売れる店舗と売れなくなってきた店舗がはっきりしているのがわかる。大手企業のボーナスは先週出たところが多いから、今朝せり場で会うと「よく売れた」と言う小売店もあれば、「どうもパッとしない」と言っているお店もある。

リーマンショック以来、ここ2年で更にお客さんが集まる店と今までより売れなくなった店とはっきりしてきた。駅中だとか駅周辺という立地条件は小売業だからもちろんあるが、それだけではないというのが小生の観察だ。日本はポスト成長市場である。年寄りが増えているから、病院や介護、アンチエイジングのサプリメントなどのマーケットは拡大する。しかし16歳から64歳までの生産年齢の人たちが減っている。この年代は物入り世代だから、活発に消費する。この年代の人たちの人口が少なくなって、ほとんどの業界は右肩下がりになっている。G7の国々はポスト成長市場で、イノベーションが起きにくく、商品の差もちょっとした差で関心のある人以外はどれもが同じに見えて選ぶのも煩わしくなってしまう。でもそうは言っても人は消費をするわけだから、フェアーのときに買う。花屋さんでも集客力のある店は選択と集中でフェアーを積極的に開催している小売会社である。

だがフェアーだけで売れているわけではない。そのお店のファンになっているのは、そのお店の理念、ポリシーが前面に打ち出されていて、商品や店員の働く姿勢にそれが現れているお店がお客様から「人生意気に感ず」で支持を集めているのだ。食品スーパーの出店が都市部を中心に盛んに行われている。総合スーパーもコンビニよりも少し大きい食品スーパーを出店してきている。そこで花束が売られていることが多い。花の小売店の競争もますます激しくなってくるが、花の商いを通じて何を実現したいのか、その哲学とフェアーを行う企画力が選ばれる花店の条件になっている。このことをまだ若いBe We Flower'Sの佐藤社長から私は学んだ。

投稿者 磯村信夫 : 00:00

2010年11月29日

輸入されにくい鉢物に力を入れる

切花は素材として流通しているので、残暑で開花が遅れても、小売店さんにきちんと連絡しておけば物日でもない限り消費価値は保てる。だが鉢物は完成品が流通しているので、今年のようにポインセチアやシクラメン、シンピジュームが遅れると価値が損なわれるので、今ひやひやしながら鉢物を販売している。

大田花きの前身の一つ大森園芸市場は、昭和7年日本で初めての鉢物専門の卸売市場として大森区(現在の大田区大森)で営業が始まった。戦時中、食糧増産で花の生産が限定され、仏壇の花材がほとんどになって切花が中心となったが、昭和30年代の後半、鉢物の生産もまた盛んになって、私が大森園芸に入社した頃は切花・鉢物ともバランスのとれた荷姿になっていた。母の日を除き、12月でも3月でも、1月の中でも鉢物の需要が先で、終わると切花の時期となり、流通業者にとってちょうどいい組み合わせである。1990年、大田市場は切花鉢物とも扱う卸売会社2社が入場した。独禁法のためである。大田花きは大森園芸の流れを汲んで、切花を中心に鉢物も扱った。どちらを重点に扱うかはそれぞれ時代と競争関係が規定するものだが、ガーデニングブームが終わった後、大田花きの社長に就任した私はまず商品回転率が高い切花に力を入れた。(*注 大の切花好きの消費者は1週間に1回切花を買う。鉢物好きは多くて1ヶ月に1回だ。)

切花の菊、バラ、カーネーション、ラン、ハモノは国際競争をしており、先を読んだ生産をしていかないと輸入比率がどんどん高くなる。だから大田花きとしては、まず切花生産者に力をつけてもらう必要があったのだ。それと同時に需要開拓も行わなければならない。それが2005年までだ。そして現在、特に2008年のリーマンショック以降、2つの流れがある。1つは国際化で輸入切花が増えてきた。特にアジア地域から多い。もう1つは鉢物の単価の下落で目を覆いたくなるほどだ。これはホームセンターなどの量販店扱い比率が60%を超え、鉢物・苗物は量販店内の価格競争に巻き込まれた。当然、小売店は鉢物を扱いづらいので取り扱い数量を減らしている。この2つの大きな流れがある。大田花きはこれからを考え、お取引いただいている荷主さんに輸入されにくい価値ある花を生産出荷していただき、私たちが企画するサプライチェーンの源流に末永くなっていただきたいと考えている。そこで2007年から鉢物に力を入れ始めた。TPPへ参加した場合も当然考えておかなければならない。そうなると日本の価値観に根ざした価値ある花もので園芸鉢物類の占める割合を高めていく必要がある。特に専門店で売りたいと思う鉢、売れる鉢の開発だ。大田花きは1ヶ月に1回鉢物を、1週間に1回切花を買ってもらうための仕組みづくりをしながら、国内花き生産者に作付する品目の選択の幅を広げてもらい、国際競争の中でも力強く勝ち残ってもらいたいと考えている。

*注
人は1日3回お腹が減るので、3人家族の場合1週間で、3人×3回×7日で63回食べ物は消費される。
切花は1家で1つ、1週間に1回だ。
鉢物は1ヶ月4週あるとして1ヶ月に1回だ。
そうすると小売でのビジネスチャンスと上限規模はチャンスベースで63:1:0.25だ。

投稿者 磯村信夫 : 00:00

2010年11月 8日

パイをふくらませ棲み分けを明確にするスプレー菊

神馬という一輪菊が日本の品種だと知っているアジアの生産者はどれくらいいるだろうか。朝の現場巡回で、韓国釜山の農協から輸入会社を通じて神馬の出荷があるのを見つけた。初めての出荷なので菊の担当者に聞くと、近頃中国に加え、韓国から新しい産地の出荷があるという。白菊の神馬はマレーシア、ベトナム、中国の海南省、上海の近郊、チンタオの近郊など、そして韓国のいくつかの地域からの出荷となる。台湾でも作っているが、日本に輸出するのはほとんど黄一輪菊だけで、白は過去に叩かれた経験から出荷しない。今朝、仲卸さんが納品した仏花束が現場に置いてあり、どんなクレームなのか聞いたところ、中国の上海地区の神馬で輸入会社は○○、色がくすんで灰色っぽくなっていた。その現物を見て、栽培中の問題なのか、輸送中の問題なのか、それとももうだいぶ葉が黄色くなっているので燻蒸処理の問題なのか、それを今日解明することになっているという。

菊は輸入国産問わず、すぐに水揚げするものではなく、場合によっては定温庫で何日間か保管してから水揚げするというそれだけ長持ちする花なので、クレームのときにその原因究明に困る。特に船便を使う中国、台湾産は定温40フィートコンテナで11万本入るから、その農園の生産規模にもよるが生産時点で何日分か貯めてある。また到着してからすぐ出荷できればいいが、日本に着いて出荷まで数日置いておくとなると、一週間で着いたものが実質二週間以上となってしまうことがある。サプライチェーンの鮮度管理が輸入の神馬には欠かせないところで、これが未整備な現状を考えると輸入の神馬の最大のウィークポイントとなっている。

このように白一輪菊は国産品と輸入品が顧客を奪い合い、激しく競合しているが、スプレー菊は輸入のスプレー菊の主産地であるマレーシアは最初から日本で値段ではなく質で勝負を挑んできた。だからマレーシアのスプレー菊の単価は国産の平均単価を上回るときもあるほどで、日本の消費者にとって欠かせない産地として高い評価を受けている。これに続けと、韓国やベトナム、フィリピンのスプレー菊がある。その質の競争を見て、鹿児島県の島の産地は品質をそこそこにしながらも、価格競争で自分のポジションを確保しているところもある。スプレー菊もお手軽品を鹿児島の島の産地で、それ以外のところは一本でも見ごたえのある質の高い品種群を日本も含めたアジアのスプレー菊の産地は作っているわけだ。沖縄のようにオリジナルの品種で独自のポジションを勝ち取っている産地もある。

さてそのスプレー菊の産地が、今大田市場で「パーティーマム」という名前で展示会をしている。日本花き生産協会のスプレーぎく部会と日本花輸出入協会の合同のイベントだ。今朝せり前に、多数の買参人に向けて両代表からご挨拶をいただき、農林水産省花き産業振興室の佐分利室長より買参人にスプレーギクの消費拡大のための新しい場面での使用を呼びかけるご挨拶があった。ディスプレイはレン・オークメイド氏(オランダ)が担当され、まさにすでにグローバル化している花き産業の実態を反映したすばらしい展示会とセレモニーになった。

世の中には2つの仕事しかない。モノそのもので人を喜ばせる仕事、メーカー。コトで人を喜ばせる仕事、サービス業である。農家は農産物そのもので取引先を、そして消費者を喜ばせるのが仕事であるから、当然に今の世では国際競争を余儀なくされる。これを心に留め、日本花き生産協会はお互いに認め合い、日本花輸出入協会(海外の産地にとって農協の役目)とともに、イベントを組んだ。菊、バラ、カーネーション、ラン、ハモノのグローバル化した品目は、スプレー菊を見習い、ぜひとも一緒に消費拡大運動に取り組んでほしい。プロモーションするのは卸売市場の大切な役目と心得ている。やりましょう。

投稿者 磯村信夫 : 00:00

2010年11月 1日

新局面TPP

週末の台風でハロウィンは残念だった。子どもたちは近所でお菓子をもらいに歩けなかったので、家でパーティーをしたところも多い。土曜日の夜、仮装パーティーを楽しんだ若者たちは、台風で例年の1/3くらいだったようだ。この若者たちのパーティーのときに、バーなどで飾られる花は近年、かなりの数にのぼるようになっている。ついていない週末だったが、来年に期待したい。


昨日、荷主さんの結婚式で群馬へ行ったが、テーブルではTPP(環太平洋パートナーシップ協定)の話しで持ちきりであった。FTA(自由貿易協定)やEPA(経済連携協定)の二国間協定と違い、参加者が例外なき関税撤廃を行うことを条件とするので、同じテーブルの組合長や農業委員会の方はあまりにも影響が大きすぎると交渉の参加にすら反対のようだった。

小生は先週、39年前の思い出の場所に行ってみようと親友2人と韓国へ行った。当時、我々は車で韓国に渡るため関釜フェリーに乗り(おそらく日本で第一号車)、釜山・ソウルを訪れた。当時は高速道路が出来たばかりだったので、対向車は270台くらいしか会わなかったし、鳥はスピードになれていなかったのでフロントガラスにぶつかってきた。その39年前の場所を訪ね歩いて、釜山から慶州、ソウルまで行った。朝鮮半島は日本が統治をしていたとき、北は重化学工業など、南の今の韓国は農業と漁業を主な産業としていた。今は農業をベースに、工業でも小売業でも世界的な競争力を持つ国家となっている。とりわけ農業は、国家が国際競争力をつけるよう電力や石油、あるいは温室、また輸出の際のさまざまな援助をしており、その額はここ5年で日本円にして4兆円~5兆円と言われている。そういった農家(農業経営者)とも話しをする機会があったが、すべて満足とはいかず、キムチの白菜やニンニクの輸入など困った話しをするが、しかし総じて見ると国民生活が向上しなければ我々農民も豊かになれない。我々は今後育種など、あるいは加工技術など独自のものを開発して世界に打って出るという結論に達することが多かった。そんなことを昨日思い出しながら、結婚式の間でTPPに対する可能性とリスクを話題にした。

切花は1970年代(昭和50年代)、福田赳夫総理がタイを訪問したとき、手土産に切花の関税をゼロにしますと言ったところから、日本は世界でも珍しい輸入切花関税ゼロの国となった。しかも当時は花の生産者に対して補助金などなかったから、まさに自前でやってきたのが花き業界で、創意工夫と負けじ魂に富んだ人たちであった。花のことだけ考えればTPPは相手国が関税ゼロになるので輸出の可能性が広がる。大田市場では場内を輸出検疫所に指定してもらって、輸出検疫を受けられるように、都を通じて国にお願いをしている。日本の花は世界に打って出られる実力がある。

中国そしてインドが台頭し、新しい国際情勢に合わせて自らを改革していかなければならない日本は、このTPPの問題は慎重に、かつ未来を見据えて取り組まなければならない最重要課題のうちの一つである。

投稿者 磯村信夫 : 00:00

2010年10月18日

社会インフラとしての卸売市場システム

国税庁から2009年の給与所得者の統計が発表された。総数は2009年は前年よりも82万人減って4,506万人となった(前年比1.8%減)。戦後最大の減り幅なのは団塊の世代がいよいよリタイアし始めたからだ。給与所得は237千円減って406万円となった(5.5%減)。景気とは関係なく15歳から64歳のいわゆる生産年齢(=最多消費年齢)が減っていくわけだから、日本のあらゆる産業分野で国内消費は減っていくことになる。

これを前提に花き業界にいる1人1人が経営をしていかなければならないが、法人需要が減っていくことは日本が今までの同一化社会から価値観の多様化する社会に移っているのでやむを得まい。しかしホームユースにおいては、食べるものと違い、胃袋が小さくなったり少なくなったりするのではなく、むしろ1人当たりの居住空間は広がる。花や緑は育て飾る楽しみがあり、しかもそれが生き物であることから、場の雰囲気を盛り立てる。花や緑は、解かった人にこそ不可欠なものとなっているので消費に不安はない。環境問題も消費を後押しする。


さて、10月15日に市場流通ビジョンを考える会では第9次卸売市場整備計画を前に、会としての提言を鹿野農水大臣に行った。新しい卸売市場ネットワークの時代を迎え、更に卸売市場が社会の進展にともない能力発揮ができるように提言を行った。

核になる考え方は生鮮食料品花き業界は卸売市場ネットワークを通じ、国民に価値、そして需給バランスを反映した価格を提供することによって、これまで以上に国民にこの国に生まれてよかったという豊かさを提供するものだ。消費者である我々一個人は、要る時そのものが価値あるものになる。よく言われるように、曲がったキュウリだろうが、葉がシラサビ病の菊だろうが、要る時消費者は必要になるからそれにお金を払う。しかし消費者は要らない時は価値を見出されていないから質が良くて安くても買わない。

生鮮食料品花き業界においては、生産者や農協、卸売市場、仲卸業、小売業の業者が価値に序列をつけ、需給バランスで相場は変動するが相対的な価値は変動しない。菊を例に取ると、名古屋以東は愛知のスプレー菊が一番の価値ある産地の品物で、他県のスプレー菊は愛知県のものよりも相場が高くなるということはほとんどない。需給バランスは絶えず変動し、価格は変動するが、価値は変動しない。それはあらゆる産地の荷を見て、触って、使っている業者による価値付け、評価があるからだ。目利きによる産地の序列付けは適正で、産地や生産者の力が衰えると、下位に落ちてかつてのブランドもコモディティー化する。

近頃、ファーマーズマーケットや道の駅が繁盛している。これも一つの成熟国家としての農産物流通、あるいは手軽なレジャーという側面からの楽しみの一つである。もちろん安全安心という側面も大変大きいと思う。しかし全部が直売所で生産流通することは出来ないのはいうまでもない。生産側から見ると直売所や地方の市場に出荷する農家。もう少し規模が大きくなると農協出荷も多くなり、地元の中核市場にも出荷する農家。そして更に規模が大きくなると地元中核市場と中央中核市場に出荷する農家。もっとプロ化して、更に中央中核市場と輸出まで考えるようになる農家がある。卸売市場はそのネットワークを通じて、市場外流通業者の需給調整機能も行ってきたが、スケールメリットが利く利益が出せる品目は市場外流通を使い、品揃えや少ししか要らないもの、あるいは余ったときや本当に不足したときなどに卸売市場を使われては経営体力が弱ってしまい、結局社会のインフラとしての役割を果たせなくなる。市場外流通している大量消費品目を市場ネットワークに更に有利に取り込めるような市場のあり方を今回提言した。価値と価格を認定する取引所としての卸売市場。価値を守ってきたのは我々卸売市場を司る業者である。今後はますます生鮮食料品業界・花き業界において素材価値が重要度を増していくだろう。それぞれの用途に応じたオープンな出荷と調達を可能とする卸売市場を活発化するのが第9次卸売市場整備計画であってもらいたい。

投稿者 磯村信夫 : 00:00

2010年10月11日

研修

モノやサービスが売れにくくなって、その分「ああでもない、こうでもない」と日々の仕事が忙しくなっている。売れなきゃ寝てれば良いと言っていた時代は良い時代だった。目先のことにあくせくする毎日だが、これではいつまでたっても流されて毎日終わってしまう。これを脱出するには、企業内研修が必要だ。

大田市場花き部では先週の6日水曜日、公益法人日本フラワーデザイナー協会(通称NFD)の花ファッション委員会のチームによる2010年秋冬デザインのトレンド勉強会が開催された。NFDは文科省の所轄だが、私は日本の花き産業の先頭にいて、今日的な人と花との関わりを、フラワーデザインを通して絶えず切り開いてくれている協会だと尊敬している。その花ファッションのデザインチームがお花屋さんの店頭で売れるフラワーデザインを目の前で作ってくれたのだから、専門店や仲卸、卸の社員の悦びや感動は高く、出来上がった作品をセリ室上の中央通路で展示したが、写真を撮るのにも大変なほどだった。大田市場で働くもの、大田市場で仕入れる人は、築地市場の人と同様の自負がある。NFDと大田市場と合同の勉強会は、「俺がやらなきゃ誰がやる」と参加者のみならず、大田市場に出入りする者の心に火をつけた。

研修というと知性とか理性に訴えかけ、磨きをかけるかのように思っている人がいるが、感情に訴えかけ、情熱の火種を燃え盛るようにすることが研修だと考えている。
心理学者ジョナサン・ハイトは私たちの感情は「象」であり、理性は「象使い」だと言ったが、「象」が私たちの感情が行動を起こす。「象使い」と「象」が一体化して、思い行動する。「思ったことしか実現しない」「やったことしか実現しない」「散歩のついでに富士山に登ったやつはいないのだ」。

大田花きでは静岡県御殿場市に研修所がある。そこで当社のバイブルである"Future Vision"と"メタセコイアになる"を繰り返し、繰り返し学ぶ。またこの秋から群馬県赤城で農業実習を行うべく宿泊施設を借りた。商売の基本といわれる「創って作って売る」を実践するためである。研修は会社の大きさに関係なく行う必要がある。研修は「象」を良き方向へ導く、「心志を養うのは養の最なり」であるからだ。花き業界のリーダーよ、後輩に研修をさせてやってくれ。それが花き業界を産業として整える。

投稿者 磯村信夫 : 00:00

2010年10月 4日

競争激化 仲卸・小売店

10月に入り下半期のスタートを切った。2008年、2009年と生産者と市場は単価安で利益が大幅に減ったが、再販業者である仲卸や小売店は、卸価格の下落幅ほど小売価格が下がらなかったため利益確保が出来ていた。売れ行きは鈍ったものの、利益に関して言えば、むしろ2007年よりも良かった会社があったほどだ。ところが昨年の年末から少しずつ荷が不足するようになって、とりわけ2010年には荷が足りない状況が続いている。作付面積を減らしたり、出費を減らすために遠隔地に出荷せず運賃を節約したり、運賃が割安な拠点的な市場に荷を集めたり、どうにかして手取りを増やそうとしている花き生産者は多い。

中小の市場は前年並みの売上が確保できず、荷が豊富な市場から仕入れ、セリと買い付けをすることによって売上と利益を前年並みに保つこととなった。仲卸、花束加工業者、小売店は依然として消費者の下げ圧力が衰えることなく続いているので、卸売価格は人的要因と天候によって上がってきている中で、利益が出しづらい状況になっている。まして、ここのところの23区内のスーパーの開店ラッシュは目を見張るほどで、まさに最終段階に来たのではないかと思うほどスーパー内の競争は激烈になっている。そこで花が取り扱われるわけだから、当然近隣の小売店には影響が出る。猛暑で夏場、成績の良い花店で前年比95%で、利益はマイナス30%くらいだと聞くが、それでなくても体力を落としている小売店にとって今のスーパー戦争は脅威でもある。どのように自店の特徴を出して、しっかり消費者に認知してもらうか。今そこに神経を集中させて店作りをしていく必要がある。

日本の花店は花キューピッドやフラワーシップなどの花の通信協会が日本の花店のレベルを上げた。だからこんなにすばらしい花店が日本にはたくさんある。その都市部の花店が今危機にさらされようとしているのだ。地方では優勝劣敗が済んで、すでに残るべき花店が残った。今、政令指定都市の人口密集地域で専門店とスーパーの花売場で直接の競争が起きている。お手軽なパーソナルギフトから、花を良く知る団塊の世代・団塊ジュニアから、格好いいと認められた地域専門店が頑張るときなのである。

投稿者 磯村信夫 : 00:00

2010年9月27日

話題二つ

先週末ちょっと用事があってベトナムに行ったが、ホーチミン空港で入国のとき、「外国人」と「ベトナム人」の間に「ASEAN」があった。本格的にASEANが一つの集合体として動き出しているなという実感があった。

ドイモイ(開放)政策の前にベトナムを訪れたとき、中国と比べてみて絵がよいので、歴史的文化背景と大国中国の国家運営との違いを肌で感じ取ったが、今回も1日5~6ドルの賃金の人たちが向学心に燃えていてよく働く姿を見て、この国の未来を信じた。

福沢諭吉は「一身独立して一家独立する、一家独立して一国独立する」と独立自尊の大切さを説いたが、同様に儒教にも「修身 斉家 治国 平天下」とあり、ベトナム政府が個人や個々の暮らしを大切にしていることがよくわかり、良い印象を持って帰ってきた。今後ベトナムと日本は良い関係を発展させていくだろうと確信した。

今日は第14回のかぼちゃ大市である。団塊ジュニアはディズニーランド世代で、その人たちがお母さんになって、東京の新興住宅では幼稚園だけでなく地域間でハロウィンの「Trick or Treat」(子どもたちが「お菓子をくれないとイタズラするよ」と言ってお菓子をもらい歩くこと)や仮装パーティーをやるようになっている。六本木ではずいぶん前から仮装した人がやってくるが、団塊ジュニア以降の若い人たちがハロウィンを楽しんでいるのは日本の一つの特徴だ。日本の経済を発展させるのは、第一弾が団塊の世代、第二弾が団塊ジュニア、そして第三弾が女性たちの活躍だ。「三つ子の魂百まで」なので、子どもと十分に接する時間がまず必要だが、もっと多くの既婚女性が働くようになってほしい。子どもは両親だけでなくおじいさん、おばあさん、そして地域で育てるようにすれば、国の活力も働き手の人数も失わないですむ。こうすれば理想的には子どもの数は2.3人になっていくのではないか。まず花のマーケティングとしては団塊ジュニアの世代にかぼちゃをくりぬいて飾ったり、それをベースにしてアレンジメントを作ったりして、花を身近なものに感じてもらうことが欠かせないと思っている。おもしろそうなこと、楽しそうなこと、そこに花を使う。それがすっかり定着したのがハロウィンのイベントだ。実りの秋の10月である。

投稿者 磯村信夫 : 00:00

2010年9月20日

秋冬の見通し

10月25日の週にオランダから花の関係者が大挙して来るそうだ。ユーロがしばらく弱いのでもっと花を買ってほしいということだろう。

ヨーロッパはEUを中心にここ2年間、国債発行や特別減税措置などを行い景気をテコ入れしてきたが、出口論争である財政再建の議論が活発化している。イギリスの40歳代を中心とした保守党政府の財政再建策を見ていても、日本ではとうていできそうにないものでも国民はそれを支持し、自らのこととして協力している。だからしばらくユーロは弱いと見るべきだろうが、アメリカは二番底にならぬよう更に政府は財政支援を決めた。しかし大統領府と議会がしっくり行っておらず、今後の中間選挙で共和党の議席が伸びると公共の投資や政府の支援策が更に遅れ、タイミングを失する可能性がある。

日本は民主党の代表選で菅総理は為替介入と更なる景気対策を一定規模だが約束した。為替は予断を許さないが、市場はこれ以上円高になることはないと見ており、日本は二番底まで陥らないで済むのではないかと私は考えている。

そうなるとこれからの花の商況を考える時、130年来最大の天候異変をどのように織り込んで市況を見るべきか。1つは12月、1月出荷分の菊からはじまり、ストックやスナップなどあらゆる花の定植が遅れ、また活着が十分でないこと。この秋までの傾向通り、出荷時期が後ろにずれ込んでいること。天気予報どおり秋が少ししかなく、急に冬になるようであれば、円高で油が安くなっているが、3年前のように潤沢に焚くわけにはいかない。結局穴が開く期間があること。松や千両などは高温、干ばつで被害を受けており、消費者の懐を考えると、高値はかえって買う気をそぐことになるので、折り合いを例年の2割高までとどめておく必要がある。そうなると上位等級品も少ないが、品目によって高値で2割高、中値で3割高で、需要が高まる1日と15日の前、週末の結婚式などの前に高くなり、このタイミングを過ぎると下がるといった波調を繰り返すこととなる。また12月の仏花素材は寒くなることでもあるし、沖縄に台風被害があまりなければこの8月と9月の需要期に間際の手当てで懲りているから、早いところで12月15日近辺から買いが入ってくるものと思われる。

130年来最大の異常気象による小菊とリンドウの飢饉とも言える絶対量不足の彼岸期は、いやがおうにも卸売市場や小売、花束加工業者の再整備を促した。生鮮食料品花きの市場流通の再整備は人口動態と時代背景をもとに天候異変によって促進される。この流れは2015年まで加速すると予測される。

投稿者 磯村信夫 : 00:00

Copyright(C) Ota Floriculture Auction Co.,Ltd.