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2010年9月 6日

「新しい」をつくる

土・日と小学校のクラス会で、泊まりがけで那須温泉に行った。那須というとリンドウで有名だが、リンドウ以外にもアスチルベやベロニカなどの草花、スプレー菊、バラがあり、高品質な花を作っている。自由時間が多かったので、那須町農協の方にお願いし、部会長と一緒に圃場を見て回ったが、那須といえどもこの猛暑でハウス物はまぁまぁだが、露地物の出来があまり良くない。夜温が下がらず生育がストップしていて、敬老の日やお彼岸の需要期に間に合わないものも出てくるだろう。だから少し硬めでも良いので、切り込んで出荷していただくようお願いをしてきた。

来週いっぱい猛暑が続くようだが、8月の終戦の日以降、商店街の花屋さんの売上が例年の7掛けと、店売りは3割落ち込んでいる。花屋さんは活けこみやギフト、冠婚葬祭など店売り以外の需要を集めがんばっているが、それでもどうしても売上は2割近く例年を下回っているようだ。駅ビルやスーパーなど空調の効いている花売場は暑いながらもがんばっており、小売は1桁マイナスで留まっている。今日の市から少しずつ需要期に向けて入荷は増えてきているが、花保ちの良いものをどのように提供できるか、産地での採花日表示や小売店での金額、品種名、産地名の表示、できれば何日までなら花保ちを保証するなど花保ち保証をすすめていただきたい。暑い中で家ではクーラーをつけっぱなしのはずなので、一定に花保ちを保証できると思うのだがいかがだろうか。
このように新しいサービスや新しい花を創ってしっかり家庭に花を届けたいと思う。新しいサービスや新しい花を創って需要をリフレッシュさせる。それが不景気といわれる中での大切な仕事だ。

今年は各種苗商から出される品種が近年では最も少ない。何か野菜に力が入っているようだ。これではだめで、消費者に目新しさを届けていき、需要を創っていくことが必要だ。
花き切花業界ではバラは消費者に驚きと感動を与えられる新しい品種が多数揃った。トルコギキョウとユリ、カーネーションも感動を与えることが出来ると思う。ヒマワリと枝物も自信がある。今心して新しい商品を作っていかなければならないのが草物だ。今年のように暑いと花保ちが悪く、需要が減る。草花作りはヨトウムシ他、虫害の被害が多いので製品化率が低い。日本の暑い夏を越えて製品化率を高めるのは本当に難しい。だからここのところの草物に新鮮さがない。エコから枝物や葉物だけではなく、草花は欠かせないものだ。草花が得意な産地は、3年なおざりにされてきた草花の商品開発をぜひともすすめてほしい。花保ちが良く、季節を感じさせる草花こそが成熟した国民生活を営む日本の家庭に最も必要な品目であると思われる。すべての花の生産者は需要を作り上げるために新しい花と新しいサービスを作り出していこうではないか。

投稿者 磯村信夫 : 00:00

2010年8月30日

もう「なあなあ」ではいかぬと感じた2010年8月

一昨年は残暑、昨年は冷夏だったが、今年は今週もまだ猛暑が続く。花は三気商売で、天気・景気・やる気だから、天気がこう暑いと消費も生産もしぼむ。8月の単価を見ると、月前半は異常天候で荷薄、単価はここ5年間で最も高い市況が続いた。しかし盆後は、単価は冷夏だった昨年よりも下がり、残暑だった2008年よりも低い。路面店の売上は軒並み前年を大幅に割り、月末になってもロスの問題から秋物に切り替えることが出来ない。衣料品も長袖やセーターなどの秋物を置いても売れていないようだが、9月になってもロスの心配から大多数の路面店は品揃えを変えられない。クーラーが利いている駅中や商業ビル、量販店の中の店舗は、先週末の28日からまだ力強くはないが秋の需要が始まった。景気は日経平均で9,000円を割って、本年下半期見通しは暗そうだ。産業構造も工業を中心に工場を現地化することを考えているから、今後の経済の見方についてはかなり慎重だ。だから、就職内定率は上がらない。花についても更に人を絞る動きになってきている。花き業界もご多聞にもれずリーマンショック以来、給料を下げたり臨時雇用の率を高めたりしてきたが、ここに来て更に再販業者である小売や仲卸の利益率が悪化している。それは仕入れ価格が2008年よりも高いが、デフレ経済で販売価格を上げられないことから収益を圧迫しているからだ。小売や仲卸だけでなく、卸も更に人を絞るところが出てきており、通称「ぶら下がり社員」や臨時雇用者は解雇されたのか職を求めて業界内を右往左往し始めた。

花き業界は1999年に日本人の所得が減り始めてから単価が下がり、マーケットサイズが小さくなった。それに加え2005年から切花鉢物とも生産量も減り、単価も下がるという日本のほとんどの産業と同じ道をたどってきた。そしてここに来て更に人の問題にも手をつけ始めている。

何も花き業界だけではないが、零細企業が多い花き業界はもうこれ以上財務体質を悪く出来ないと経営者は判断している。問題なのは労働の質だ。花き業界として、サービス業として、また生き物である植物を扱う業者として、知識を身につけることや相手の立場に立って仕事をすることなど労働の質を上げていく必要がある。仕事は必ずブロードウェイの俳優のように臨むのが正しい。仮に身内に不幸があったとしても、観客にそれを悟られてはプロとはいえないだろう。それが仕事をする上での当然の心構えであるが、花き業界は今まで良かったので私生活をどのように自分を磨くために使い、自分を生かして仕事をするかをしていない人たちがいる。中には職務中に仕事に関係ないことをしているぶら下がり社員やかつてよく言われたように遅刻せず働かずの人もいる。このレベルを上げていくことが花き業界の次の発展のために欠かせない。モチベーションはその組織で醸造していくことでもあるが、個人が自律して作っていくものなのである。そういった倫理と具体的な勉強の機会を社員自ら持っている会社しか世の中が求めるサービスレベルに適合できないのではないかと考えている。

2010年8月は今までの延長線上では生きていけないことを花き業界に示唆する一月であった。

投稿者 磯村信夫 : 00:00

2010年8月23日

秋の花はじまる

ようやくススキが出てきた。今年は秋の花が遅く、20日の声を聞いて秋の模様替えをしたいと考えている小売店は多かったが、ススキもトリカブトもミズヒキもまだ出荷がなく、ようやく今日から出荷が始まった。今年は残暑が続くと言うが、秋を楽しみたい気持ちが強い。

先週の19日から川崎市茶華道協会の「第122回いけ花と茶の湯の会」が川崎のさいか屋百貨店で開催されている。華道はたくさんの流派の先生方が78作品を出展している。トロピカルで異国情緒のもの、ひまわりを使ったものなど、夏を謳歌するような作品もあったが、ほとんどは秋を描いた作品が多かった。第122回で解かる通り、川崎市の華道家や茶道の先生方の結束は強い。
川崎市の地形は食パンの形をしており、東海道に接している面が縦の奥行きよりも狭い。だから地方の方は東京と横浜市が続いているように勘違いしている人もいる。また川崎は京浜工業地帯の中心で何やらスモッグがあるイメージを抱いている人も多い。実際はそうではなく、花の文化も古く、江戸時代には大森の隣の蒲田が枝物の一大産地で促成物のふかしの技術に秀でており、モモやユキヤナギ、紅切シマツツジなどの促成花木は有名だったが、その産地が時代とともに多摩川の上流である川崎市宮前区馬絹に移転した。そして今ではすべてと言っていいほどどの花作りに後継者がいる。馬絹地区で有名なのが枝物の束ねの技術でそれを「枝折(しおり)」と言うが、生産者の吉田義一さんは現代の名工として認定されている。活け花が盛んだから巧みの技術も活かされる。夏の終わりの花の展示会は活ける技術や花の持たせ方など見るべきものがある。

そしてもう一つ花や緑の話題がある。昨日の22日、ゴミを埋め立てて造られた島を「海の森」にしようと安藤忠雄氏が実行委員長になっている「海の森」の一般公開があったので見に行った。大田市場の前を通りお台場へ行く一般道があるが、今この「海の森」の予定地前に大きな橋を架けようとしている。葛西に行く橋で、これが出来たら大田市場と葛西市場は本当に近くなる。また築地が豊洲に移ったらこの3つの市場は本当に近くなる。いずれも夜間なら15分圏内というところだ。この「海の森」の予定地に風力発電機が立っている。また20年前にゴミで埋め立てられたので、メタンガスが出ていて、このメタンガスも電力に替えている。大田市場花き部の前の運河側用地で、都内で集められた落ち葉などを使って腐葉土を作っている。風向きによって臭いときもあるので、所轄の港湾局に文句を言ったりしていたが、「海の森」の作業風景を見ていて、あまり文句ばかり言っていてはいけないなと思った。20年も経ったから馴染んだとは言え、地表にきちんとした土を張らなければならない。海の上で風が強いからすぐ活着できる木とそうではない木があり、緑化で余った木を持ってくればいいというわけではない。大田市場から車で5分のところに埋立地の勝島の大きな公園があって、テニスコートや野球場、ドッグランなどがあり、木も本当に大きくなっている。30年~50年後、「海の森」を作るには、土を作り、東京港の人工島にふさわしい森を作っていく必要がある。植栽されている木を見ると落葉樹が少ないので、どうにか落葉樹の比率を更に高めてもらいたいと思いながら、1/9の進行具合の「海の森」で360度のパノラマを楽しんだ。完成は2016年だそうである。

投稿者 磯村信夫 : 00:00

2010年8月16日

夏の花の産地は極東の日本で

今日は関西が休市なので長野県など東西に出荷している産地からの入荷は多い。とりわけ遅れていた露地菊の下位等級や仏花用の中国の白菊など、需要とミスマッチな品物が多い。だが全体の入荷量は少なく、気の早い人はもう9月の結婚式シーズンやお彼岸の荷を心配している。

今年の猛暑でも買参人は異口同音に「昔と比べるといろいろな花が出荷され、しかも水あげが良く、花保ちが良くなった。ありがたいことだ」と言っている。アジアの花の産地はセオリー通り赤道直下の高冷地にあるので、日本の冬に競争力がある。しかし夏場は日本の高冷地の方が涼しいので、マレーシアの菊を除き、盆に向けての増産はない。また特に今年は日本にカーネーションを供給しているコロンビアの天候が思わしくなく、寒さや洪水など今までには考えられなかったような栽培環境となっている。中長期的に見ても、夏にはもっと日本の花き生産者の方々にがんばってもらわなければない。夏場の日本生産が何らかの理由で少なくなったとすると、このアジア近辺では韓国やロシアにお願いする以外に手はない。植物検疫の問題や技術と人手、そしてロジスティックを考えると、何としても日本で生産してもらうことが必要となっている。ぜひとも夏場の花の増産をお願いしたい。

こう発言する下地になっている考えは、2010年共に学習し、発展しあう仲間として、ドイツとイタリア、そしてアジア諸国があるのではないかというものである。すでに一部の学者は、「日本は西欧におけるイギリスの役目ではなく、ドイツやイタリアのようにならなければならない」と考える人もいる。日本は内需比率が非常に高く、アメリカと同様80%にもなる。GDPにおいては輸出も輸入も20%ほどのものだ。そこへ行くと、ドイツは輸出入とも40%を超え、よく輸出しよく輸入している。イタリアも近頃そうで、今まで移民に出るのには慣れていたが移民が来るのは初めてで、国内では人種差別や排斥運動までもが起こっている。これは日本もだが、若年層の失業率が日本は10%だが、イタリアやドイツでは20%となっているので政治問題化している。しかしEU化が拡大されているのでもわかる通り、開かれた国として互助互恵の精神で思いやりとつつしみを持って拡大政策を推し進めている。日本は今内向きになっている。戦後の農業政策と戦後教育の失敗であると私は考えているが、2010年の今からアジア太平洋地域国家共同体の一員として、ドイツのようにGDPにおける輸出入を増やし、互恵の精神を持って国を運営していくべきだと考えている。

我々は農業の分野で、しかもその一部の花の分野で、国内生産と海外の産地に日本やアジアの消費者に花を堪能してもらえるよう生産してもらうことが必要だと考えている。リーマンショックも100年に1回なら、今年の天候も100年に1回にしてほしいが、しかし近代化とは化石燃料をはじめ、長い間掛かってためてきた地球資源を使って生活するから、地球はサスティーナブルな状況とは言えなくなってきている。だから天候不順を前提に農業を営んでいただく。しかも夏場に品質を保持しながら生産してもらう。そうなるともう一度、種苗、生産技術、そして立地条件の見直しと、露地でするか、雨よけハウスか、ビニールハウスかを決めておく必要がある。円高で来春まで輸入品は価格競争力があろうが、天候に勝てるわけではない。夏場の国内産地の皆様方は、今年の夏の反省として、上記の360度チェックをしてほしいと思う。天候がおかしければおかしいほど、プロの本領が発揮される時代となっている。それは日本の花作りの時代と言えないだろうか。

投稿者 磯村信夫 : 00:00

2010年8月 9日

想定外の作柄不順の2010年8月盆市況

日本がこれだけコロコロと首相が変わるのは考え物だと思っている。現に世論調査を見ても、信念の強い首相の待望論がある。その一方で、あらゆることをお茶の間の話題として捉え、何事も身の丈サイズに直して分かりやすくしようとしている。この二つを同時に満たすには、リーダーは明確な将来像と短い言葉で端的に自分の思いを伝えることが必要だ。そうでないとまた烏合の衆に迎合するメッセージとなる。

場の空気とはそういうものだ。取引所は恐怖や快・不快、都合・不都合の神経回路を通って、色付けされた事柄が本人の事実情報として取引の参加者に届く。参加者は「さぁいくら?」のせり人の声でヤリを突き、せりに参加する。せり前取引のインターネット相対も同様だ。だから大切なのは恐怖や快・不快を感じさせる品物の量の問題で、自分が質・量・単価とも自分の都合で買えるかどうかが大切になる。多くの買参人の中にはこういう考え方の人がいて、その数は決して少なくない。その人たちはいずれも地元の消費者から絶大な信用を得ている人たちだ。「花ならあそこの花屋さんじゃないとだめよ」と一昨日も二夫婦から言われた。そのような人たちは「今年の天気じゃ生産者は本当に大変でしょう。梅雨明け後の猛暑で露地物の小菊やリンドウ、ケイトウは上手な生産者でも量は出てこないのではないかと思います。そう思いながら買わせてもらいます」と言う。このようにいつも生産者のことを考えながら花店を営んでいる人たちだ。毎日品質や量が変わり、需給バランスによって価値も価格も変わって、しかも生き物の生鮮食料品花きはプロが商いするものだ。見積もりが取れないと納品先が商いしてくれないから、それは見積もりを取れるようにするし、花束加工をするとしても人の手配や段取りがスムーズに行くように予約相対もする。しかしそれもぴったりと言うことはない。今年のような天候のときには幅を持って考えてもらいたい。この幅を持って考えてもらえるように、的確な情報伝達が産地や卸は必要である。産地は天候で仕方がないのは分かるが、仕方がないと判断するのは買い手側である。買い手は生産者のことを思ってほしい。苦労して作った花を商いさせてもらっているのだ。こう考えれば、産地状況は我が事として捉え、中長期的にも信頼し合える同志となる。
今年の8月の盆は12日が切花休市なので、11日まで予約相対が続き、迎え火の13日まで入荷がある程度潤沢となる。16日は中京関西の市場が休市なので、荷がまわってくることもあろうから、関東以北はがんばって販売をしようと思う。

団塊の世代が60歳代になって、仏花の需要が高まっているが、特に需要を強く感じるのはここ1、2年であり、この世代がリタイアする2015年以降は確実に仏花需要量が減る。現在は法人需要が少なくなった分、仏花需要がそれを補っているが、仏花需要がしっかりしているうちに切花・鉢物ともホームユースやちょっとした手土産の花を習慣付けてもらえるようプロモーションしていきたいと思う。

投稿者 磯村信夫 : 00:00

2010年7月26日

花き業界再構築への道

先週のこのコラムでサブプライムローンに端を発する100年に一度の経済不況で、需要不足からまず個人消費が見込める分野へと花売場が移行していった様を報告した。具体的には駅中専門店チェーン、花束加工業者が納品する量販店の花売場など消費者の目に留まるところで花が売られる。消費者がいるところに花売場が出て行った様を報告した。賑わう売場を持っているのは電鉄会社だったり、量販店だったりするので、当然家賃代が必要になって、その家賃分だけ結果として農家手取りが減ってしまったことを報告した。

需要不足、デフレ、財政悪化は日本国としての問題だが、同時に日本にあるすべての産業の問題でもある。花き業界でも個人需要を追い求めて、消費者に近づいたが、部分最適の時代は終わり、花き業界全体の全体最適を計画し、実行しなければならない時となっている。それがリーマンショック後3年目の本年からやることだ。

花き産業振興室の方針と今年10月に出される第9次卸売市場整備基本方針に、花き業界、生鮮食料品流通業界の全体最適の答えがあると期待している。

<参考資料>
農林水産省HP内
花き産業振興方針

市場流通ビジョンを考える会
第9次卸売市場整備基本方針に関連して(提言)

投稿者 磯村信夫 : 00:00

2010年7月19日

売るのが難しくなってサプライチェーンに新たなメンバーが加わったので農家の手取りが減った

曇天に次ぐ集中豪雨の後、ようやく梅雨が明けた。今度は強い陽の光で葉焼けや花焼けの被害が心配だ。今年の夏の出荷物は強い根っこが出来にくい栽培環境であった。そこに来て、冷夏予測が猛暑予測に変わり、暑さに慣れるのにはもう少し時間がかかるだろう。この夏の作柄は出荷量で去年より1割少ないといったところである。植物の健康も心配だが、それを作る生産者の意欲に陰りがあるのも心配だ。

サブプライムローン問題から早3年目。品目別所得の平均値からすると、米や果物ほどではないが、野菜に比べて花の農家手取りが劣ってきたのが私の懸念材料だ。冠婚葬祭については、花の消費量と金額は堅調と言える。しかし、ここでは場所代や紹介料などの名目で、コミッションが3割以上支払われる。仮に3割としても、10,000円のうち3,000円は式場業者に行き、7,000円で10,000円の花を作ることになる。しかもこれらの冠婚葬祭の花を作るとなると、高い技術が必要になる。となると、それを行う従業員の給料も一定水準以上出さなければならない。これが廻って仕事用の花の農家手取りは小売価格の1/3から1/4へと少なくなっていった。

法人需要がリーマンショック以降少なくなったが、個人需要はしっかりしている。駅や集客力のある小売店にテナントで入ると、売上高家賃比率は15%~20%近くを言ってくる。10,000円の花は2,000円を大家さんに払い、8,000円で10,000円の価値の花を消費者に販売する。チェーン展開していれば本部経費も必要だ。そうやって必要経費分を支払っていくと、小売業者は仕入れ価格を小売価格の1/3から1/4の一定割合に抑えていかなければならなくなる。

街で自分が所有する家族経営の花店を営んでいれば、10,000円分の花は仕入れ価格が5,000円で良い。しかし自分の物件ではない場合は、家賃も出さなければならない。消費者は個店からチェーン店へと花の場合でも「お買い場」を移している。ここでも農家手取りが少なくなっていることが解かる。

スーパーマーケットの花を見てみよう。スーパーの花は花束加工業者が作って納品したものだ。だから花束素材の花は上代の1/3~1/4が仕入原価となってくる。だから花屋さんがサービス花束を作って売っている場合とは、仕入れ価格が違ってくるのが分かるだろう。花束加工業者に働いてもらわない限り、消費者に自分の花を届けることが出来ないのだから、生産者は失礼な言い方だが扶養家族が多くなり、手取りが少なくなっている。

このようなことが21世紀になってから起こり、とりわけここ3年間では元気な野菜に比べて、花は農家手取りの点で見劣りすることが多くなった。ここにやる気の問題があり、それを私は心配しているのだ。
今後の日本農業を考えると国際競争力が強いのは、果菜類と軟弱野菜、花、果樹の4つにあると思う。野菜は現在、中国の残留農薬問題と餃子問題から国産が人気となっているが、近未来は貿易統計を見ていると、廉価版の輸入野菜、みずみずしくて甘い国産野菜と二極化して行くと思われる。お惣菜用の輸入野菜が多くなってきたときに、野菜の単価は下がらざるを得ず、そのときに花が手取りの面で野菜と同じようになっていく、それが2015年までの見通しではなかろうかと考えている。だからここ数年、花作りはちょっとしんどいときが続くと思うが、生産性の低い死に筋の花をカットするなどして製品化率向上に努め、所得を上げる努力をしてもらい、また我慢のときと思ってもらいたい。

法人需要が少なくなって、個人需要に期待がかけられる昨今だが、需要が減った割合よりも供給が少ない。この傾向はまだ続くと、先週発表の種苗会社の品目別種苗の販売実績は物語っている。花き生産者はぜひとも現実を見据え、また将来を良くしていくべく、心志を養って生産をしていただきたい。小売店も独立店舗として経営して行くのは難しい時代になっている。だから去年よりもサービスレベルを上げ、地元に密着した店作りを展開していってもらいたい。

ここ3年、月曜日が荷が多かったのは、勤めに出ている娘や息子が手伝ってくれたためだが、もう2010年からは就労している家族だけで出荷するから、月曜日でも量は多くならない。確実に今までとは時代が違っていることを認識し、マイナストレンドのままの人と早くも反転しそうな人と混在している現状をしっかりと見据えていき、どうすれば上昇できるか考え行動する時期となっている。

投稿者 磯村信夫 : 00:00

2010年7月12日

菊相場の安定化に寄与

今年の7月盆は参議院選挙やサッカーのワールドカップの決勝戦で買い手も気はそぞろと言ったところだが、開花が遅れている品目が小菊やミソハギなどいくつもあり、前年よりやや良いくらいの売上を確保している卸売市場が多い。取扱高が前年をやや上回っているのは、出荷期が需要期を外して後ろにずれ込んで単価が高いのが表面的な理由だが、高齢化で盆の仏花需要が確実に高まっていることと、日本最大の菊の生産地である愛知みなみ農協が今年4月から一輪菊4部会を一本化し、窓口も一つにして相場のばらつきを抑えたことによる効果が大きい。中京以東のどこの卸売市場も一輪菊の主産地は愛知みなみ農協で、せり前価格の*台の相場を決めるとき、出荷量とそれぞれの地域の中核市場の相場を参考にし、そこと折衝してwin-winの関係で値段を決めていくと言う。このようなコントロールの利いた仕組み作りの勝利とも言えるのである。

花や生鮮食料品は作るに天候、売るに天候で在庫がきかないから、流通は卸売市場の役目となるわけだが、花市場は切花が主として月・水・金、鉢物が主として火・木・土で商いされるからせり取引だけでなく、せり前取引の価格も産地状況、販売状況などを加味し、お互いの考えをぶつけ合わせて、卸と生産地は値段を決めることが出来る。せり前取引が多くなってくると、卸売市場は委託出荷物を相対するのだから、産地との値段についての事前の話し合いやせり前であっても誰にいくらで売ったのかなど、インターネットで常時産地が見られるようにしておくことが必要である。もちろん買い手もである。Wチェックをできる必要がコンプライアンス上欠かせない。

昨年の台風18号で愛知県は被害を受けたが、4月から愛知みなみ農協が一輪菊部会を一本化し、窓口を一本化することによって拠点市場と取り組んだ。これによるメリットは一般の小売店もいたずらな安売り競争を仕掛けられる心配がなくなり、結果消費者にも安定して菊が提供できるようになり、全体の菊類の相場が安定してきた。この仕組みを消費者からたくさんお金を巻き上げる仕組みにしてはならない。謙虚に我々は昨年よりもより良いものを割安に提供し、我々の自助努力を認めてもらうようにしていく必要がある。消費者無視の事業者都合を心配するくらい、愛知みなみ農協と愛知県経済連の菊のせり前販売システムはスマートに機能している。反面教師は個人出荷の多い鉢物である。分割して統治せよは権力者がイニシアチブを取るやり方だが、分割されてはならない。家族経営がまとまって、本論は消費者のため、具体的には生産者であれば販売者のため、小売店であれば生産者のため、卸売市場は生産者と販売者のため、サスティーナブルな販売状況を作っていく。そのためには家族経営の個からグループ化へ、さらに大きく農協のグループ化、そうやって各地の市場でシェアを取る。一定の規模によって自分たちの存在を明らかにし、流通させていくことが花き業界でどうしても必要だ。まとまった場合のロットは一番小さい単位でも生産面積で一荷主5,000坪を目標にしたい。気が合う者同士、あるいは地域でグループ化し情報を共有化し、一つのお財布でそのお財布から各自の販売金額をもらう。そういった大きさが必要になっていて、それらを上手に積み上げていき大型化し、農協一輪菊部会を一本化して、好成績を出しているのが愛知みなみ農協だ。時代が要望している。その結果として愛知みなみの菊部会は成績が良いのであろう。その影響で菊の相場が安定しているのである。
*台の相場...建値としての相場のこと

投稿者 磯村信夫 : 00:00

2010年6月28日

株主総会を終えて

採花日をどう表示したら良いか迷っている産地がいるとしたら、長野県の伊那大田会の会長の森田さんがやっている表示の仕方はとても簡便で分かりやすい。三段に分かれた丸い判子で一番上に採花日表示と書き、真ん中に採花日、そして一番下に産地名を書く。例えば今日のものであれば、一番上に「採花日表示」として、2行目に「6月25日」、一番下に「南信州産」としている。ハコの面の等階級と出荷者名の欄にある余白のところに判子を押す。鮮度管理に関心が深い買参人から「ありがたい」「立派」「よくやってくれた」とお褒めをいただいている。

さて、先週の土曜日の26日、大田花きの株主総会があった。今期、特に強調して発表したわけではないが、会社の進むべき方針をこのように示した。平成20年、21年と消費行動が変わり、生産状況が変化して、その対応に追われた。リーマンショックから2年目の21年度は減収増益であった。しかしこれは働く人に我慢してもらったり、設備投資を控えたりしたためで中長期的に見れば会社の成長にとって、かえって危機的な状況に思える。よって会社そのものの品質からして、平成21年を底として、平成22年度から新たな意気込みで中長期的にも発展できるようにしていきたい。防ぐべきところと、果敢に攻めていくところのメリハリを明確にして行っていく。このような目で業界や社会を見ると、まさに平成22年度は3年前と違って見える。今流行りのベストセラーではないが、世界第5位である農業大国日本をこれからどうするのか。花の分野で明確に方針を出してやっていく。いくつもあるが、その中で最も大切なことは、購買力平価で見たとき、ヨーロッパの小売価格、卸売価格と同じ価格で取引が行われるようになっても花き業界が継続的発展の出来る体質に進化させること。花束加工業者に国産品を優先的に使ってもらえるような質や量の仕組みを産地とともに作り上げることの2つである。

新たな10年が始まった。平成32年までの間に生活文化として、家庭需要とパーソナルギフトをどのように育成、拡大していくか、具体的な取り組みが欠かせない。ヨーロッパでは若い人ほどスーパーマーケットではなく、専門店で花を買うと言う。日本でも洋服を見ているとさもあらんと思う。グローカルに考え、一歩踏み込んで仕事をするこれからの10年のスタートの年、それが平成22年度である。

投稿者 磯村信夫 : 00:00

2010年6月21日

第一世代ならではの危機感

昨日の父の日は意気込んだ店はがっかりしたが、父の日だから花はあまり関係ないと斜に構えていた店は予想に反してまあまあの売れ具合であった。ただ父の日イコールひまわりと考えて気合を入れて、ひまわりばかりが目立った店はかえって荷が偏ってしまって残したところが多かった。

渋谷の原宿とは反対のほうの奥に松涛という東京では第一級の高級住宅地がある。そこに渋谷区立の美術館があって、中国の扇面画の展覧会を見に行った。扇子は日本から宋の時代に中国に渡り、扇面画は中国の絵画でも一つのカテゴリーになっている。明治期の日清戦争後、日本は生意気にも中国を尊敬しなくなった。しかし中国の文化や宗教、思想は極東の日本にたまっていて、我々日本人の血肉となっている。とりわけ戦後生まれは、日本の伝統文化を知らないように、朝鮮半島と中国のことを知らない。これではご近所と仲良くしてゆくことが出来ないので、私は日中の芸術文化の交流の会に入っている。古典は無論のこと、現代作家の作品も目を見張るものが多い。

日頃の仕事の仕方の中でも、東アジア三国に共通した考え方を見て取れる。それは西欧人のように物事を要素に分解し、それを組み立てて全体像を作っていくという仕事をするのではなく、まず全体を捉え、その一部からでも全体を見ていこう、その一部の仕事こそ全体の仕事の中で欠かせない仕事であるという全体と一部が一体化した仕事に対する捉え方である。

例えば大田花きの例で恐縮だが、人事異動で優秀な人たちが新たに作られた営業の一つの部署に配属された。そこの長はその社員たちに言う。「毎日○時から○時までは電話に出ることを一番の仕事にしてください」と。片っ端から電話に出る。それを数ヶ月続けているとすっかり大田花きのサプライチェーンが見えてきた。仕事をするということは自分が動くと言うことだけではなく、社内外の人たちに動いてもらって、仕事が出来上がると言うものだから、まず大田花きの営業のストラクチャーが毎日毎日電話に出ることによって解かってきた。せり前のインターネットでの受発注業務や電話でのやり取り、セリや注文の受発注業務など、社外との接点を体感することによって会社の商売の構造と実際、そしてお取引先が何をどうすれば喜ぶかなど、癖や性分が分かり、電話を取り次いだりしながら自分もお取引先との人間関係を構築してゆく。

世の中には無駄なことなぞない。況や、仕事に無駄なことなぞあろうはずがない。どの仕事も大切な仕事である。ただ時間は有限だし、体も一つだ。そこでどうすれば良い仕事が出来るか考える。
仕事は人を鍛える。可能性を開花させる。人格を高める。そして組織で働くということは自分ひとりでは出来ない、でっかいことも力を合わせてやる。出来たとき喜びを皆と分かち合う。その喜びは格別だ。しかしそんなに簡単に事が成るはずはない。しぶとく、しつこくやる。

戦後の花き業界は第一世代が作り出した。しかし近頃、第二世代、第三世代となって甘っちょろくなり、平気ですぐあきらめてしまうようになった。しかし花の仲卸は第一世代が多いので、今回のリーマンショック以来の花き産業の経済危機に一番危機感を感じている。仲卸が持っている危機感を共有して、もう一度花き業界の各分野で自分の仕事に真剣に取り組むべきだ。そうすると具体的に自社の強み弱みが確認でき、仕事の実が上がってくる。

投稿者 磯村信夫 : 00:00

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