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2010年1月18日

地元卸売市場の役目

リーマンショック後3年目、花の市場にとって、やることはより明確になってきた。

デフレで生産者は手取りが少なくなっている上に、生産資材高でさらに手取りは少なくなっている。卸売市場も下がりつつある価格の1割を販売手数料としていただいており、出荷数量も少なくなっているので、損益分岐点を下げ、仕事を再定義しなければならない。

日本全国ではこのような統計数字がある。花・植木小売業21,000社、花取扱量販店19,000社、花束加工業者900社という数値である。専門店が減り、量販店の数が増えたので、花束加工業者が増えているのである。切花を中心に扱う花店は八百屋さんや果物屋さんとは違う。むしろ似ているのは魚屋さんで、販売するのにうろこを取ったり、3枚におろしたりするように、花屋さんも販売するにはまず水あげの技術が必要で、それプラス技を持って商品を作り上げなければならない。言うなれば寿司職人や料理人が店を出している。それが花屋さんだ。だから業態としては、永遠になくならない。しかし店の数から言うと少なくなってきているのも時代の要請かもしれない。少子高齢化で女性も働き、出来合いの手軽な花束やアレンジがお惣菜と同様に必要になってきている。

さてそこで地域の花市場の役割の問題だが、街には花屋さんとまだ花を扱っていないスーパーマーケットがある。花市場の今のお客さんは花屋さんだ。だからスーパーマーケットや八百屋さんに花を販売すると、花屋さんを困らせることになる。それはできないという花市場が多かった。しかし消費者が求める小売の業態は、新しい花との生活を花の専門店や百貨店の花売場に求める。家庭需要の手軽な花を求めたいとワンストップショッピングができる割安な花を買いに量販店に行く。食卓の花、窓辺の花、庭の花、子どもが産まれたので植木を、など居住空間のスペースごとの花を買いにホームセンターへ行く。特に玄関先や庭の花はホームセンターで売っていて欲しいと消費者は思っている。時間の節約はネットショップとコンビニの花だ。消費者の気持ちになって考えると、卸売市場や仲卸がルビコン川を越えて、花屋さんやガーデンセンターに加えて地元密着型のスーパーマーケットの花売場に家庭需要の花を届けていくのは時代の要請とも言える。花屋さんがそのスーパーにテナントで入ってくれていると、地元の市場としてはありがたい。入っていないとすると需要喚起のため、消費者の買い物の道ができている地元のスーパーに花を売ってもらうことになる。日本花き卸売市場協会の会員で拠点市場と言われるところ以外の花市場は、さらに地元に密着し、地域の消費者が求める業態の流通チャネルに花が流れる仕組みを作ることが、花き産業の主役である生産者と消費者が喜ぶ道であることを花の卸売市場は認識すべきである。

投稿者 磯村信夫 : 00:00

2010年1月11日

復活してきたホームユース

世界が一つの市場になってリーマンショック(2008年9月)以来、花の法人需要はオーバーに言うと半分になった。100年に一度の恐慌も年が変わり3年目の今年、会社は2007年比売上高で80%でも赤字にならない仕組み、メーカーなら60%でも持ちこたえられる仕組みを作ってきた。これは大企業・中小企業の話で、個人企業はまだまだ厳しい局面が続いている。がしかし、ホームユースは復活してきて、年末正月と街のお花屋さんに足を運んでくださる消費者が明らかに増えた。確かに1、2年前と違う。お店によって異なるが、「男性のお客様が増えているんじゃないかな」という花店もある。関東地方は他の地域よりも男性比率が高く、25%が男性だと業界誌のフラワーショップが報じていた。男性客が4人に1人じゃなくて、3人に1人に近づいているお店もあるのだろう。

会社は理性で存続を図るので、3Kと言われる交通費、交際費、広告宣伝費を削れるだけ削った。会社の交際費からいただいていた花き業界の収入は大きかったが、向こう5年あまり期待しないほうがよさそうだ。個人は理性だけで存続を図るのではない。個人はようやくリーマンショック後の「短期的にどう対処すべきか」というところから、「うちの会社もどうやらやっていけそうだ。俺の給料はこれから大体このくらいかな」と先の見通しが少し立ってきた。会社の対処療法で一時的に所得が減って、そのとき自分の行動やお金の使い方を変えた。それなりに時間が経って慣れてきて、足元はまだ水がひたひた迫り、ぬかるみよりもっと悪い状態だが、見通しややるべきこと、自分の所得など先が見えてきて、長期的対応にのっとった消費行動をし始めた。

経済学で言う短期所得弾力性によって車等の高額商品や嗜好品の販売は激減したが、長期所得弾力性により、車等は必ず復活する。花の所得弾力性は研究されていないので残念だが、古い指標で恐縮なのだが、1970年の発表で外食産業の短期所得弾力性が1.6。収入が1%減ると外食に使うお金は1.6%減となる。本当に指標が古くて恐縮だが、法人需要も考えると、だいたい外食と花は同じくらいかなと感じており、もし花も短期所得弾力性が1.6だとすると、10%収入が減れば16%減となる。しかし長期所得弾力性は外食と花とは違う。家ではお料理をすれば済むわけではないので花は1.6以下のはずで、これが3年目になって効いて来ているのだろうと思う。特に切花は枯れてなくなってしまうし、季節の訪れを感じさせてくれるものなので、個人消費が復活してきたのだろう。

私が尊敬する岡本武男先生の言葉に「希望の朝を迎え、勤勉なる昼を過ごし、感謝の夕べを送る」という言葉がある。少なからず日本人はこうした心持ちに近づいていることが花の売れ具合から分かる。

投稿者 磯村信夫 : 00:00

2010年1月 4日

明けましておめでとうございます

明けましておめでとうございます。

関東地方はお天気に恵まれよく売れた店が多く、今日の切花初市は好調な滑り出しをしています。日頃の実績が物日に花開くのが花の仕事で、それは小売・仲卸・卸・生産者・種苗・育種のどの仕事をとっても毎日の努力が欠かせません。負けない理由は我にあり、勝てる理由は敵にあり。負けに不思議な負けなし、勝ちに不思議な勝ちあり。日本の世界に誇る優れた点は「丁寧なものづくり」と「誠実な商売」です。この世界に誇る二つの力とこれまた世界に誇る日本の心もちである「お互い様」・「お蔭様」をもって日本の花を前進させていきたいと思います。

今年もまたよろしくお願い申し上げます。

投稿者 磯村信夫 : 00:00

2009年12月28日

一年間ありがとうございました

本年一年ご愛顧いただきまして、大変ありがとうございました。おかげさまをもちまして、明日の止市をもって本年の営業は終了いたします。花き卸売市場としての役割をつつがなく果たせましたのも皆様のご厚情によるものと御礼申し上げます。来年も中央卸売市場の卸売会社としての役割を今年以上に果たしていく所存ですので、変わらぬご指導、ご鞭撻をお願い申し上げます。

日本が生み出す富は1ドル=90円に直すと、20年前のレベルにまで落ち込んでいます。商の実感からすると、金額ベースで20年以上前の1980年代のマーケットサイズ売れ具合ではないかと感じます。もしそれが事実だとすると、デパートやスーパーが店舗を閉鎖したり、希望退職者を募ったりしていることは、ある意味で当然のことだと言えます。花き業界もデフレで単価が下がっているだけではなく、各分野で数の調整局面になっていることを認識しておかなければなりません。特に花き物流を担当する農協の集出荷所、運送会社、卸売会社、仲卸は最大の需要期の12月になっても、火・木・土には入荷がほとんどありません。月・水・金には2日分の仕事をしなければならないという状況になっています。2日分を1日の一定時間で処理するため高性能な機械設備を入れたり、深夜労働などで人件費が高止まりしたりせざるを得なくなっています。このように損益分岐点が大変高くなっているのですが、生き残りをかけた今は売上でなく利益の時代なのに、デフレで黒字化することが大変難しくなってきます。

花の流通業は2010年から最初の5年は、業態変革か仕事を止めるかが迫られている時代であると言えるでしょう。花き産業のどこの分野でも明確なビジョンをもとに仕事をしていかないと、売り上げを作り、利益を出していくことが本当に難しい時代になったと言えるでしょう。

弊社はそういう難しい時代といえども、6割の家庭が1年に一度も花を買ったことがないという花き業界で仕事をさせてもらっているわけですから、可能性はまだまだあり、今の倍は花が売れると考えています。祭事の花とホームユースに集中して戦略を練って、取引先に満足してもらうつもりです。国内産地にも売れ筋と生産性の高い花を中心に作付してもらい、価格競争力をつけて利益アップをしてもらうつもりです。

それでは皆様、良いお年をお迎えください。

投稿者 磯村信夫 : 00:00

2009年12月21日

2009年 3大ニュースのその3

今年の松市と千両市は景気の影響を受け、上級品が安値、家庭向けの短いものが堅調であった。クリスマスの需要が今ひとつ盛り上がりに欠けていることを思うと、お寺と神社を崇拝する日本人の文化は脈々と受け継がれてゆく。

さて三大ニュースの三番目は、需要を創って販売に成功した宮崎県の有限会社綾園芸殿と株式会社ジョイフル本田殿が日本フラワービジネス大賞2009に輝いたことだ。私が日本フラワービジネス大賞選考委員会の委員長をしており、恣意的になりやしないかと自らをチェックしてみたが、どう考えても後ろめたさなく今年の花き業界の三大ニュースの一つに入れるべきだと考え、今日の発表とした。
育種・生産部門でビジネス大賞に選ばれた有限会社綾園芸の草野修一氏は、今のラナンキュラスブームを作った人だ。イノベーション=改革×普及であるので、普及をするためにご自身の生産出荷だけでなく長野県のフラワースピリットという生産組織と地元のJAの花き部会に有望品種を作ってもらい、特定の市場に出荷している。品種を選定するとき、作る立場、売る立場、使う立場の人たちに来てもらい選抜し、実際の出荷物としての栽培につなげる。こうやって日本独自の品種が開発され、人気のラナンキュラスの半分の品種は草野さんの品種になっている。需要を創造したわけだ。
また流通・販売部門では株式会社ジョイフル本田殿がビジネス大賞を受賞した。豊富な品揃え、専門スタッフによる商品企画と商品管理など、よく勉強している社員が鉢物、苗物、切花を販売する。花だけでなく、土も栄養剤も鉢も花瓶もいろいろな材料を選びプロセスを楽しんで作品を作っていく上で、もっとこうしたら部屋に溶け込むだとか、お出迎えするときに花が引き立つだとか、品物だけでなくトータルのサービスを販売している。日本の花売場の中で最も素晴らしい花売り場の一つがジョイフル本田殿である。今後ますます時を重ねて進化していくことであろう。

100年に一度とも言われる経済危機で、各国政府は100年に一度の景気のテコ入れ策をしている。それで景気は少し落ち着いて、下げが止まったようにも思う。しかし、あらゆる分野で消費は2割減というのが先進国の姿である。政府のテコ入れが少なくなると、二番底のリスクがある。だからゆめゆめ来年の後半には2007年並になるとは考えてはならない。健全な金融情勢と雇用情勢になるのは少し先のことである。それは2015年という人は多い。花の景気もずるずる下がっていく状況から、来年の12月ないし2011年の1月からは品目や会社によって反転して前年比を上回っていくと予想される。そのような会社は今年のビジネス大賞の2社のように需要を創っていくところであろう。「1/1000構想」で花き業界全体で花き消費の宣伝をしていく具体的な話し合いが年を越した。まずは花き業界のそれぞれの会社がサプライチェーンの良き協力者を得て、消費者が喜ぶ花やサービスを創って販売する。綾園芸殿、ジョイフル本田殿を手本にイノベーションを行い、新しい需要を創って販売することが必要である。

投稿者 磯村信夫 : 00:00

2009年12月14日

2009年 3大ニュースのその2

その産業の魅力度とは期待成長率が高く、その業界の企業の資金繰りも健全で(財務の安定性)、平均マージン率も高く、市場規模も広がる可能性があって、顧客もさらに増えてくることが一つの尺度となっている。こう考えるとなにやら今の花き産業は魅力がないように思えてくる。だが、私は今年の10月10日、全国の仲卸団体である社団法人全国花卸協会が社団法人化パーティーで発表した「花は人を幸せにできる」を信じており、花市場として実行する決意でいる。これらは現実を見据えてのことで、悲観してのことではない。こういう言葉がある。「失敗したいのなら将来を恐れると良い。成功したいのであれば将来を楽観し、熱意を持って向かうべきだ」今年1年、プロゴルファーの石川遼から学んだことはこれだ。

1、花の法人需要減
法人需要の減退で花き市場の取扱金額は1割減。世界同時不況でさらに日本国内の国際化は進んだ。国際化は先進国では格差を生み、発展途上国では富の向上を生み出す。また技術革新は先進国で格差を生み出し、発展途上国でも格差を生み出す。だからコペンハーゲンのコップ会議で、途上国から先進国が持っている環境保全技術を無料で開放せよといっているわけだ。そうはさせじと先週国際展示場で行われた「エコプロダクツ展」で日本企業は環境技術を武器に勝者になろうとしている。さて、国際化と技術革新はこのような結果を生み出すが、世界はワンワールド。物価と賃金が世界同一になっていこうとしている現代。マッキントッシュやユニクロのように、先進国の会社が独自のノウハウを持ち、それを明かさず、NIEsやBRICsとwin-winの関係を作る。言葉は悪いが新植民地主義でビジネスする会社が伸びている。
日本の何でも自社だけでやる自前主義では競争に勝てないということだ。

2、イノベーション=開発×普及
日本の自前主義では普及に難があり、携帯電話に代表されるように、せっかく日本がトップを切り、世界最高のものを作りながら結局世界に認められないということになる。NOKIAと比べてみれば、日本の戦略が普及という点においてどれだけ劣っていたかが分かる。自前主義の日本企業が国際競争で負けて、日本はGDPベースで、需給ギャップが35兆円から40兆円もある。内需拡大と国際競争力強化は企業の努力だけではおぼつかない。羽田空港のハブ化のように、国家戦略が必要である。
日本の強さは何か。それは「丁寧なものづくり」と「誠実な商売」である。研究開発だってお手の物だ。

 3、今年のフラワーオブザイヤー
財団法人花普及センターで2009年フラワーオブザイヤーが発表された。受賞した赤いバラの『サムライ08』は、京成バラ園が種苗を取り扱っているフランスのメイヤン社の作出品種だ。メイヤン社はEUの会社でイノベーション=開発×普及で行うから、『サムライ08』は日本だけでなくコロンビアからすでに輸出されている。もう一つのフラワーオブザイヤーは弊社のもので恐縮だが、フラワーオブザイヤーOTA最優秀賞に選ばれたのは緑風舎・高木ナーセリー作出の小さい胡蝶蘭『なごり雪』だ。どう普及させるかだが、日本で完成品を作るが苗は台湾とのリレー栽培だ。早く多くの生産者に作ってもらいたい。そして優秀賞に兵庫六甲農協淡河支店のテッポウユリ「プリンセスオーゴ」。そして特別賞に越後中央農協のチューリップ『ゲープランドキフト』だ。日本だけのローカルな花とは言わせない。ファッション同様、日本一の目利きが選んで、世界の産業人が納得する2009年の日本の花だ。

 4、内なる国際化で2年で金額2割減の花き業界
国際競争に勝てなかった日本の企業群は3Kをケチる。広告宣伝費、交通費、交際費だ。企業の交際費に支えられている花の支出は大変大きい。企業は工場を海外に移転する。国内の雇用は減り、地価は下がり、地方の経済力は弱くなる。設備投資も社員のボーナスも少なくなって、非正規雇用の人たちの所得から減り始める。こうして今度の不況ですっかりあらわになったのが日本の中産階級が崩壊した姿だ。かつて実質60%、心情的には80%中産階級であった日本国民は、今30%になった。こうしてホームユースでも、物日は単価が下がれば今までと変わらず消費されるが、普段は効かなくなってきて、それがデフレ圧力になっている。こうして法人需要減と単価安で2年で2割の売上が吹っ飛んだわけだ。この日本も必ず復活する。復活した花き業界はもっと暮らしに欠かせないものにしていくのだ。その一端としてまずターゲットにしたい顧客は次の人たちだ。

 5、アラ還とアラフォー
身も蓋もないわけではない。花は多くても邪魔ではないし、枯れてなくなるものでもある。だから狙いは?親元から通勤している人、親の近くに住んでいる家族。懐と心と時間に比較的余裕がある。?アラ還。花嫁修業の一つとして生け花を習った人たちで日本文化の良い継承者たち。なんといっても元気で、これから自分のためにも日本のためにももう人肌脱ぎたいと思っている人たちだ。?アラフォー。子育て真っ最中だが子どもと一緒に世界で生き抜いていくことを考え始めた世代。
人数が多く、親のすぐそばにいるし、地域に密着して住んでいる。まずはこのグローカルな人たちから再度お客さんとしてコミュニケーションを図ろうではないか。店も商品も花き産業繁栄のための仕組みをこのお客さんを軸に組み立てる。機能や技はグローバルに、センスやメッセージはローカルに、小売/仲卸/卸/生産者/種苗は自分の役目を再定義してビジネスを再構築しようではないか。これが2009年/2010年の花の商売の正解である。

投稿者 磯村信夫 : 00:00

2009年12月 7日

2009年 3大ニュースのその1

いよいよ今年も余すところ、あと3週間あまり。今日は第50週目、第1日目となった。残りの4回の内3回を、花き業界の重要なニュースを1つずつお知らせしたい。
3大ニュースのまず第1は、日本列島全体で見たとき店頭需要はスーパーマーケットやホームセンターなどが主流になったということである。人口が密集している3大都市圏や政令都市の中心部などはお花屋さん優位の店売りが続いているが、車社会となった地方都市まで含めると、今年1年で完全に量販店が店売りの分野では消費者の「花のお買い場」となった。そしてその量販店自らが花束加工をする所は例外中の例外だ。花束加工業者を指定業者として選び、買取って再販する場合と、店頭で売れたら売り上げを起こし一定手数料を頂くといった委託販売方式をとるこの2つによって日本中どこでも花が売られるようになった。量販店が小売の主な場所となったということは新たな花束加工業者が増えたということである。花束加工業者は花屋さんから参入した会社、仲卸業から参入した会社、地方卸売市場から参入した会社があり、まずは仏花をつくって納品している為、一年を通じ菊、小菊の卸値がしっかりしていた。しかし仏花だけでは消費者の期待に応えられないので、来年以降は季節の花束をラインナップさせていくことだろう。

欧米では1995年まで第1回目の花屋さんの淘汰の時期があった。ベルリンの壁が崩壊し、ソ連邦がなくなって人件費の安い国から花がたくさんやってきた。アメリカではコロンビア、エクアドル、コスタリカ。ヨーロッパではケニア、南アフリカなどであった。そこからただ単に仕入れて売るというその商売は、ボリュームディスカウントをきかせて仕入れることのできるスーパーマーケット、ディスカウンターが強い。店頭売りの分野で仕入れた花を売るだけの花屋さんは淘汰されたわけだ。我々が欧米で見る専門店はいずれもデザイナーが花店を経営しているデザインショップ的なものである。その第1回目の専門店の淘汰の波が日本にはなかった。今、欧米では量販店が花持ち保証をするようになり、インターネット花店も、もう寡占化され、第2回目の淘汰の波が押し寄せている。文化も違うので日本は欧米と同じようになるとは思わないが、小売りでは花も量販店中心の時代になったのである。
日本ではこの20年ほど専門店が相手であったので国内産地は少量多品目で単価の下落を防ごうとしてきた。高品質のものを作って評価が高かった産地は、考え方を改め売れ筋への絞り込みと第2ブランドを作るなど規格を含めた大幅な見直しが必要となっている。花屋さんは小料理屋さんと一緒。プロの料理の味をお客さんに楽しんでもらう。だからこれからも専門店は消費者に必要だ。しかし、できあいのお惣菜が人気なようにできあいの花束、今後アレンジメントも必要になってくる。こういう要望が消費者から上がってきて、今年初めて量販店が小売店よりも店売りの分野でトータルの販売額上回ったのではないかと思われる。そうなると、この勢いはますます盛んになるはずだ。既存の花き業者である種苗、生産、卸売市場(卸売会社+仲卸)と花の専門店は事業を再定義し自分の強みを磨き、仕事のやり方を変える必要がある。日本の花き業界も新しい時代となっているのだ。

投稿者 磯村信夫 : 11:41

2009年11月30日

花活けのアプローチから頂上を目指す

28日の土曜日、両国の江戸東京博物館で開催されている特別展示「いけばな?歴史を彩る日本の美?」を見てきた。大変見ごたえのある展示で、文人としてだけでなく一人の男子として、花を活けることが欠かせない教養であったことを教えてくれた。江戸も末期の頃になると、個人の道というより、花を飾り見ていただくこと、その見る人の視点に立った世の中となってきたため、また日本が家庭を大切にしていく円熟した文化生活となったため、生け花は女性の欠かせない教養の分野になっていった。

フラワーデザインはデザイナーと花屋さんの間の境はほとんどない。花屋さんの息子さんがすばらしいデザイナーであったり、デザイナーが花屋さんになった人たちも多い。だから大田市場の仲卸には多数のデザイナーやデザインスクールの先生方、そして仲卸を指定してその店で花材を揃えなさいと言われているスクールの生徒さんもいて、仲卸は繁盛している。しかし生け花となると先生は芸術家と教師の二つの顔があるが、生け花の先生方はいずれも歴史的に花屋さんから花材を仕入れることが多くあった。しかしこの頃、大田市場の仲卸を利用する生け花の先生方も増えてきた。枝物や葉物、あるいは花にしても、伝統の上に新しい創造がなければならないし、伝統的であればあるほどいつも時代を捉え新しくなければならないということを華道家は再確認し始めたからだ。仲卸の評価眼は鋭いものがある。その眼を利用し始めた華道家たちは、21世紀の次の10年、日本のフラワーデザインを発表し、日本花き業界に大きな力を与えるようになっていくだろう。G7ではなく、G20が話し合わない限り、世界経済の成長はありえない。経済に裏打ちされた古くて新しい花の文化が元気なアジアに認められ、消費活性化して輸出業務に結びつき、日本の花き産業が今まで通り、先頭集団を走れるようにしたいと考えている。日本のフラワーデザインとそして華道が花き業界の中では発信源となって先頭を切り、種苗業界まで含めた既存の生産、卸、小売業界がそれを助け、支えるような形で商売をさせていただく。消費宣伝活動や花育活動まで含め原点に戻り、G20時代の花き業界はもう一度生け花とフラワーデザイン、そして庭造りの活性化から始めていく必要がある。

投稿者 磯村信夫 : 00:00

2009年11月23日

文化から食と花を見る必要性

日本のように周りが海で囲まれて、あたかも自然発生的に生まれてきた国をネーションという言い方をしていて、ドイツやアメリカのように連邦国家で成り立っている国をステイツと呼んでいる。ステイツが世界では圧倒的に多くて、ネーションはそんなに多くない。世界が一つになって、人類はみな兄弟なのだが、日本のようなネーションは頭の切り替えと対応が素早く行かず、ステイツから見ると、何をそんなにもたもたしているのだと思われたり、動きがのろいので傲慢に映ったりすることもあるらしい。文化という切り口で見ると、人目を気にするだとか人からこう思われたいというところまで含めて、文化と大衆文化であるサブカルチャーを物差しに日本人は毎日生活している。

食は栄養補給、身体のメンテナンスという物理的な機能面から、もちろん旨さもあって、ファーストフードや牛丼店などが繁盛しているが、文化を感じさせる食卓を週に何回かしないと、それは例え肉じゃがであっても、ダシをしっかりとった味噌汁でも、日本人は心が寂しいと感じてしまう。一生に一度しかない人生のこの一時を、食文化で心と身体を充足させ、幸せと明日の活力をもらう。だから、小さな差異が生産者の心配りや流通業者の畑のままの美味しさを損なってはならないという使命感を感じさせ、料理人の技と心配りに触れるたび、私たちは日本文化を体で実感し、日本人で良かったと思う。もちろん中華料理を食べて中国文化の素晴らしさを堪能したり、イタリアンやフランス料理を食べてそれぞれの文化を堪能する。日本の食文化は素材にこだわり、それが多様化を生み、産地間競争や市場間競争、料理店の競争が絶えず新しい食材と料理を生み出す力になっている。この文化としての食は零細な生産者や小売業者が十二分に活躍できる世界である。文化としての食がファーストフードと異なるところで、日本はグローバリゼーションとともにファーストフード化しながらも、ファーストフードとスローフード、さらにその中間にある手作りお惣菜など、文化という切り口から生産流通を整理していくというアイディアが必要ではないかと思う。

花は食と同様、文化に根ざしたもの。花の消費は文化消費と言ってもいい。そうなると文化に根ざした小気味良い差異が価値につながり、この小さな差が値段に反映される。F1種などに代表される作りやすく良いものを安く生産供給できる体制、これが本流であるということは分かる。しかし金を一つの物差しとし、安くてよいものを尊ぶグローバル社会であっても、日本はこの小さなこだわりをとても大切にして、マーケットを作ってきた。ダイバシティーは生物の多様性のみを言うのではない。日本文化の食や日本の花飾りでは、素材の質にこだわり、生産販売する。こだわる生産者と小売店、そしてその素材価値を正しくジャッジする卸売市場の存在がどうしても一定数以上必要で、この人たちが日本文化を支えている。

投稿者 磯村信夫 : 00:00

2009年11月16日

中小規模の生産者と小売店は継続して発展できる

幕張メッセで11月11日から3日間行われたIFEXではたくさんの方にお越しいただいた。花と緑、そして関連業界のショーとして今年もまた見応えのある内容であったと思う。ただ海外の出展業者からはあまりお声が掛からなかったとの声が聞こえた。残念だった。それはもうすでに大手の輸入商などは現地の生産者をよく調べていて、最も重要な財務基盤なども掌握している。買い手からお金が取れないのも困るが、出荷者が破産しては取引先にも迷惑がかかるので、国内外ともに産地の財務基盤による格付けが花き業界でもされてきたということであろう。闇雲に取引しようとする状況ではないのだ。

弊社の関係会社では開発力の高い花の生活研究所やディーオーシーが脚光を浴びたが、それ以外の流通会社はこのような展示会では名前を知ってもらうということにとどまった。同じ流通業者でも、大田市場の仲卸19社は、切花鉢物流通の約90%のシェアをしめる卸売市場流通が変革期にあるため、大田市場の買参権を持たない花の関係者に強くアピールできたと今回の出展を高く評価している。

今、卸売市場流通は全国規模の中核市場と道州制の中心となる中核市場に分けられ、ここが中央卸売市場として今まで以上に評価機能と品揃機能を強めていくことが予測されている。地産池消で文化の香りがする生鮮食料品花き流通と世界の花や国産の特産物、また価格競争力の強いロット商品を扱う大規模中核市場に分かれる。それは物価と賃金の調整が本格化した日本において、日本国民が求める方向に卸売市場が対応する。消費者が行く方向に小売店は対応し、卸売市場も農家も対応する。大きな事業家農家や1億円以上の農協の花き部会しか残れないようでは困るので、ファーマーズマーケットや道の駅が盛んになった今、産直農家と地元の市場に出荷する農家、地域の拠点的な市場に出荷し地域の拠点的な産直市場でも販売する農家、都市部の大規模拠点市場に出荷する農家。少なくても農家の諸事情によって4種類の生き方ができるようにしていくのがよいと思う。現状、小規模農家と対になっていて、その人の荷を地元の市場で買っている街の小売店がいる。農家の場合には地域が小規模農家を支える。しかし小売店の場合には組織化や地域で助け合う習慣がない。よって地元の市場はリテールサポートや的確な消費宣伝活動を行う。特に地元の小売店で花を買ってもらえるよう業界をあげて支援する意味で物日などに消費宣伝活動をする必要があると思う。大規模ではないが良い仕事をしている小売店は多い。家賃がいらないから、良いものを安く提供できる。また花の小売店は八百屋さんや果物屋さんと違って素材屋さんではない。料理のように花束やアレンジを作ってお客様からお金をいただく。例え仏様の花にしても、自ら味付けした店独特の味である。だから私は、花屋さんは小料理屋さんだから絶対に街で、しかも個店で生き残っていけると思うのだ。

街の花屋さんと小面積の生産者が対になっている。どちらかがなくなると、どちらもなくなる。死ぬまで現役でいられるこの商売を時代にしっかり対応させて、存続させることが花き業界の重要な課題だと考えている。ASEAN統合とAPEC、FTAとEPA、WTOなど、世界が一つになって的確にその世界の中で自分の役割を見つけていく日本。共存共栄を図る中で、まず我々は小売店と生産者の発展を期さなければならないと考えている。

投稿者 磯村信夫 : 00:00

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