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2009年11月 9日

デフレ下での存続法

世界の三大花の消費地、日本、ヨーロッパ、北アメリカで今日切花相場の下がっていないのはトルコギキョウの八重とシャクヤクだけではないだろうかとの意見で、三極に住む花の事情通の意見が一致した。今年のオランダのFORTI FAIRは昨年の3分の2の人出であった。同時開催のアールスメールの展示会は例年並ということだったが、8月末に開催されたモスクワの花の展示会が3分の2であったことを思うと、景気動向からオランダのHORTI FAIRはまあまあの人出であったのではないか。

今週の週中、国際フラワーEXPOとガーデンEXPOが幕張で行われる。弊社グループでは関連会社が新しい考え方や新しい商品を紹介する予定だ。ぜひともお立ち寄りいただければと思う。弊社大田花き本体としては、個人消費の開拓にポイントを絞って素材開発やリテールサポートを行っている。基本に忠実に、当たり前のことを当たり前にやるのが取引所運営会社であり、花の卸売会社であるから、大田花きの活動はあえて展示しない。出会いの場そのものを大田市場で持っている大田花きはB2Bの展示会で新たな出会いの場を作らなくてもよいのではないかと考えている。


さて、花の単価が下がり、デフレが本格化してきている。そして2015年まで続くと考えている。世界単一マーケットで今まで高かった日本の物価と賃金の調整が本格化してきたと判断している。生産者の皆様方は生産資材が値上がりし、売る単価は安くなってきているので今後の見通しが立たないと言う方も多いと思う。原因と解決策は次のようだ。

ベルリンの壁が崩壊して20年、世界は単一マーケットになった。文明にはフローの資源を利用する文明と、ストックの資源を利用する文明とがある。せいぜい馬車で移動するフロー資源利用文明のときは地球は耐えられる。しかし地下資源をエネルギー源として使うストック利用文明はどうだろうか。日本が明治維新で化石燃料を使う文明に入ったとき、世界の人口は15億。日本の人口は3千万人。ストックの資源を使っていた先進国といわれる国の人口は4億5千万人。だから地球はまだ耐えられた。だが現在、ストックを使っている文明で15億人、地球の人口は60億人。BRICsの中でアジアの同胞であるインドと中国だけでも25億人の人々がストックの資源を利用する文明に入った。こうなると石油だけでなく、農業資材が値上がりする。しかしこの人たちの人件費、農地の価格などを考えると、彼らは輸出を考えたとき競争力はあると言わざるを得ない。韓国や台湾からの花を見ていても競争力はあるのだ。だが地球は保たない。新しい発展の仕方、暮らし方、価値基準を持たなければならない。日本は25%CO2を削減するのだ。このような状況の中で日本の生産者が受け入れられるためには、日本人の価値基準に合った新しい花をどこよりも早く作出し、MPSやEUREP GAPなど世界でトップクラスの地球に優しい農業と鮮度管理を徹底している旨をアピールする必要がある。カーボンフットプリントもそのうちの一つである。

これらの消費者価値に適合した生産流通は、一軒の農家や一軒の小売店がやりきれるだろうか。時間や問題意識、資金問題などあるだろうから、どうすれば一段階上がったサービスを提供できるかが今問題になっているのだ。

今後、先進国では更に付加価値をつけた商品を消費者に楽しんでもらう競争になってくる。価値あるサービスをやりきれるかどうかに日本の花作りの存続のポイントがある。今やらなければならないのはまず意識改革で、規模の大小に関わらず、一つ一つ消費者価値を高め、デフレ下でも価値ある花に相応しい代金で買ってもらえるよう生産流通技術を革新し、それをPRして行こうではないか。世界で花の生産は微減だ。日本の小売店と消費者は必ずやりきれる。

投稿者 磯村信夫 : 00:00

2009年11月 2日

2009年下半期の花き生鮮品流通事情

10月29日版の週刊新潮で赤松広隆農水相が卸売市場の機能を強化する必要があることを、17日名古屋の市場を視察した際発言したが、その内容を揶揄したとも受け取れる記事があった。流通のプロを自認する小生としては、その記事の中の流通ジャーナリスト金子哲雄氏が「流通過程に介在する業者が減るので値段が安くなり、漁師の手取りも増える。確かに卸売業者は淘汰されるが、産直が悪いと言うのは時代のニーズに逆行しています」といったことに意義を申し立てたい。それは我々が利用するタクシー料金とバス料金を比べてみるとよく分かる。バスターミナルやターミナル駅が物流上必要不可欠で、結局消費者と生産者の利益は物流の中間にこのようなハブターミナルが介在することによってよくなる。直接生産者と小売店ないし消費者というのはそのときは良いが、取引の継続を考えると不都合が出てきて結局高くなる。このハブターミナルが卸売市場だという事実を認識してもらいたい。

さて下半期の10月は天候不順で、平年作以下で出荷量は少なくなっているにもかかわらず需要が足りず、デフレで花き生鮮食料品業界は低迷した。今までは会社が真っ先に節約する交際費にかかわる需要が少なくなって、個人でも儀式がこぢんまりとなり、エコを理由に長持ちする花に個人需要が移っている。商品回転率が鈍くなっていったのが理由だったが、この10年でかつては60%あった中産階級が世界単一経済圏になって、日本では中産階級は半分の30%(アメリカは15%、逆に中国はほとんど0から15%)になった。よって中産階級が少なくなった分だけ物日以外の日は荷が動かなくなっている。特に地方では中産階級の比率がさらに低くなっている。またデパートに次いでGMSも業態的に競争力がなくなり、食品スーパーでさえも大幅減益になったから、体力のあるうちに不採算店を閉鎖し、ネットビジネスを本格化させたり、海外に出て行こうとしたりしている。戦後一貫して増え続けてきたスーパーの生鮮食料品花き売場はこの10月からマイナスに転じ、その速度を速めている。だからまだほんの一部だが、行き場を失った花と生鮮品が滞留してデフレになっている。花は人口減と高齢化で一人当たりの居住スペースが増え、花好きも多くなって、将来見通しはやり方によって消費増が期待されるが、食べ物は人口減と高齢化でパイが小さくなる見通しがいよいよ現実のものになったと読み取れる。不況からの消費不足だけでなく、そこから発した売場面積減と少子高齢化を現在、事実認識をしておくことがまず大切だ。

生き残りの道はどの企業も一緒。コスト削減、生産性の向上と新しいものを生み出す力だ。

投稿者 磯村信夫 : 00:00

2009年10月26日

韓国ソウル圏の花の消費事情

昨日、横浜ランドマークタワーの隣のビル、クイーンズスクエア1階でフラワーデザインコンテストがあった。優勝したのは大田市場花き事業協同組合の教育委員長である池上のフラワーショップ花徳の堀さんで、賞賛の声が上がっていたそうだ。私は午前中に行ったのでコンテストはまだ行われていなかったが、オランダ球根協会から花材提供があり、オリエンタルハイブリッドユリの消費拡大にと消費者に直接訴えかけるシーンで花材を提供する姿勢を、我々日本の花き業界も見習わなければならないと思った。

ユリと言えば、韓国産はコンスタントに入荷があり、すっかり国内産地と同様一定ポジションに定着している。先週、ソウルの花市場に行ったら、仲卸のGさんは「韓国は2?3輪しかいらないから、それより多く付いているのものは日本に輸出してもらうのです。韓国には外貨獲得の輸出援助振興がありますから、大田市場にもずっと一定量行っていると思います」と言う。韓国に行くと2年前と違ってウォン安でお金の使い出がある。ソウル圏では輸出主導型で景気は戻ったようだ。東京圏のような不安な感じや倦怠感のような空気はもうなくなっている。

ソウル市場の場長に状況を聞くと、「昨年は肥料や農薬、資材や燃料の高騰で前年より入荷が3%減った」と言う。「ソウルはまだいいが、釜山やテグーなどは5%くらい減った」と言う。「でもソウルは単価が高くなって、特に切花は確実に需要が増えてきていて、市場の売り上げはトータルで4%増だった」そうだ。今年は夏くらいからかなりの手応えが感じられていて、入荷は横ばいで去年よりも売り上げは良い状況が続いているそうだ。

韓国は北との戦争後、ベトナム戦争にも参戦し、日本でいう団塊の世代が10?15年遅い。ソウル圏ではほとんどの人たちの住居はマンションだから鉢物から伸びてきたが、韓国では若い人たちから切花の需要が起こり、今では団塊の世代でも使うようになっている。まだまだ冠婚葬祭用が多いが、それでも店売り15店舗のチェーン店ができるなど、コーヒーチェーンが町に溢れるにしたがって、韓国でもおしゃれで手ごろなホームユースの花が売れようとしている。本格化するのはあと4、5年先だろうが、しかし新しい動きはすでに見て取れる。

韓国はEUとFTAを結び、2011年から実施される。そうなると日本の花の輸出は韓国でオランダと激しく競合することになる。世界のサブカルチャーの発信基地は渋谷地区で、ロンドンのファッションの発信基地ピカデリーサーカスは渋谷のスクランブル交差点を真似て、オリンピックの年2012年にスクランブル交差点を導入する準備をしている。世界で日本だけがスクランブル方式を使っているのだが、多数の人をスムーズに移動させるだけでなく、ロンドンはファッション、特にサブカルチャーまで含め新しいものを発信する場所として渋谷のイメージを借りてスクランブル交差点を導入しようとしている。このように渋谷は世界から注目されているのだが、渋谷と最も似ているのがソウルの明洞だ。明洞あたりも少しだが花に注目する人がいて、将来の韓国の花の需要を先取りしているようだ。国民1人当たりの年収1万ドルで人生の通過儀式の花。2万ドルでそれプラス物日と大衆のホームユースの兆し。3万ドルで家庭需要、手軽なギフトと世界を見るとこのようになっているように思う。2万ドルの香港とシンガポールに加えて、台湾や韓国は日本の花を評価してくれる人たちが住む場所だ。将来のFTAをにらみながら、輸出振興を今からしていくことが必要である。

投稿者 磯村信夫 : 00:00

2009年10月12日

花は人を幸せにできる

このたびの台風18号で、被害にあわれた多数の皆様方にお見舞い申し上げます。
特に甚大な被害をこうむられた三重県、愛知県、静岡県西部、福島県の生産者の皆様、出荷物がない間にも皆様方のファンである買参人としっかり連絡を取り、心をつなぎとめておきますので、私ども卸売市場は今まで以上に連絡を密に取らせていただきたいと思っております。よろしくお願いいたします。


私事ですが、私はどちらかと言うとラジオ派で、特に毎朝4時06分頃からNHK第一で放送されている「心の時代」と日曜日の12時15分からNHKFMで放送されている「トーキングウィズ松尾堂」という番組が大好きです。それを散歩しながら聞くのが趣味です。
昨日の「トーキングウィズ松尾堂」は途中から聞いたのですが、出演者の田中ウルヴェ京さんはシンクロナイズドスイミングのメダリストで、今はメンタルトレーナーです。その京さんのもっとも大切な言葉、それはシンクロナイズドスイミングで名を成した後、ある意味では生きる目的を失った時期だったそうですが、お名前は聞きそびれましたがアメリカの心理学の権威の方から「成功とは、人に役立つ自分のやりたいことをやること」だと言われて、それをご自分の教えにしていらっしゃるそうです。「俺が俺が」で生きている私たちですが、この自我をもっと大きな、人に役立つために使っていくことこそ自分がやりたい分野で、力を授けられ、成果が上がっていくのだと思います。自分のためだけにやりたいことをやっていたら、それは成功とはいえないのでしょうね。


田中ウルヴェ京さんからこの話を聞いたら、頭の中はすっかり10日土曜日の夕方に六本木ヒルズで行われた社団法人全国花卸売協会(全国の仲卸協会)設立記念レセプションでの小池常務の締めのご挨拶を思い出していました。私の中の小池常務は「大好きな花の仕事を通して、笑顔の絶えない、またすべてを受け入れる力を与えてくれる花。素直な気持ちになれる花がそこにある生活をしてもらうことに業界の誰もが今、全力を傾けようでないか」との力強くも澄み渡ったご挨拶を思い出していました。決して自分勝手でなく、我々は花が人を幸せにできると信じているのです。私たちは花を売って売って売りまくりたい。1/1000構想で集めた基金で花を買って買って買いまくってくださるように消費者を誘導したい。そう思いながら散歩しました。
台風の被害にあわれた方々の荷がない間の留守を守り、定位置をあけて待っている我々の花市場の仕事の仕方のこと。また日本中で6割の家庭が1年で1回も花を買ったことがないという我々からのコミュニケーション不足の改善のことも、私の中で熱い決心になっています。成功とは人のためにやりたいことをやりきること。全国の同士とともに、いい仕事をさせてもらっていると、感謝したい気持ちになっています。

投稿者 磯村信夫 : 00:00

2009年10月 5日

コロンビアの花のサプライチェーンに学ぶ

大田市場花き部の中央通路にて長野県南信ハウスカーネーション組合のカーネーションが展示されており、今朝、長野県南信ハウスカーネーション組合の内田組合長から「ようやく天候も回復し、良い品物ができるようになったのでぜひ使ってほしい」とせり前に挨拶していただいた。

日本でカーネーションを作るようになって100年。夏にもこんなにすばらしいカーネーションが長野県から北海道の高冷地で作られるようになり、夏場に花持ちの良い花として切花の必須アイテムになっている。日本のカーネーションはコロンビアと中国のカーネーションと国際競争している。特にコロンビア産は手強いライバルだが、その良さを見習って日本国内でより良いカーネーションを流通させていこうと思う。
先週コロンビアのボゴタで二年に一回開催されるproflowersという展示会に行ってきたので学んでいただきたい点も含め、簡単にレポートしてみたい。

カーネーション、バラ、アルストロメリアで有名なコロンビアはいずれも日本のスケールからすると大大農場ばかりだ。今回の世界同時不況で切花の単価が下がっており、信用不安もあり、ペソ高ドル安も重なって、キャッシュが足りず閉鎖を余儀なくされている会社もある。しかし最適地で生産されていること。早朝収穫し、温度コントロールの利いた集荷場でしっかりと予冷と前処理、水揚げ、翌日箱詰め、差圧予冷、温度コントロールの利いたトラックで飛行場に持って行き、飛行機でマイアミに。機中は貨物室も20℃未満でかつてのように凍るような事故はもうない。マイアミ到着後、サービスレベルの高い物流作業は、差圧予冷、品温をまた2℃に下げ、その温度帯で保管物流作業(カーネーションは2℃だがバラは1℃で作業)。そして日本に輸送。アトランタ経由だったり、ロサンゼルス経由だったり、ニューヨーク経由だったり、アンカレッジ経由だったり、いくつかの飛行機会社を使い、指定時間までに成田に届ける。機内は一定温度に保っているが、成田に着くと夏場だったら暑いので、早速箱の中のカーネーションやバラの温度が見る見る20℃近くに上がり始める。最大手のクラシックさんのように品質管理を忠実に行っている輸入業者の方は箱ごとに温度計を入れてもらっている。早速クラシックさんは通関後、自社の保冷庫に荷を引き取り、品質管理。箱から出して再度選別、水揚げ。水揚げする水を冷やしておくことが重要なポイント。そのままにして水も一緒に2度まで温度を下げようとすると6-7時間かかってしまう。だから冷たい水を先に用意しておくのだ。そして選別、水揚げをして、翌日市場に出荷する。このようにしてコロンビア産は切花後7日?10日で小売店の店に並ぶ。そのためには適地で作られるという以外にこのようにポストハーベストのためのたゆまぬ努力が積み重ねられているのだ。クラシックさんに品温管理表を見せてもらうと、この時点で農場、この時点でマイアミ、この時点で成田、というように卸売市場に品物を大切に届けようとする努力がここまで行き届いていると頭が下がる思いだ。「こんなにきちんと管理していると、コロンビアのカーネーションはクレームはほとんどないでしょう」と問うと、「物日の時にクレームがあります。その原因を調べてみると、STS(チオ硫酸銀など)エチレンを自ら出さないようにさせる物質の含有量が少ないことがあります。ですからいくつもの農場に仕入先を分散させて、仕事の負荷を下げ、十分に前処理してもらい、クラシック品質基準を保って取引先に迷惑をかけないようにしようとがんばっています」と直接クラシックの西尾社長から話をいただいた。私たち国内業者は、生産から消費者の手に渡たり、毎日楽しんでいただくところまでを自らの責任として、流通品質の保持をコロンビアのカーネーションに習い行う必要がある。今年のボゴタでのプロフラワーズでは日本の37社の会社が訪れた。円高もあって仕入れは1割安くなったが、新たにカーネーションの輸入を始める人もいて、日本のコロンビア産のカーネーションの単価は1割以上も下がって採算を合わせるのは、ましてや利益を出していくのはプロの業者といえどもそんなに簡単なことではない。その中でマイアミのロジスティック業者も日本の輸入商社も必要なところには徹底的にお金をかけて手を入れ、日本の消費者に届けてくれようとしている。我々国内業者はさらに気を引き締め、学ぶところは学び、消費者に選んでもらえるように今後販売していきたいと思っている。

投稿者 磯村信夫 : 00:00

2009年9月28日

シルバーウィーク

シルバーウィークは初めてだったので、需要見通しをやや見誤った感がある。

当初、5連休だから最初に遊んで、敬老の日に花を持っていく。そしてお天気を見ながらお中日を中心にお墓参りに行く。お中日が悪ければその前倒しをする。あるいは敬老の日と一緒にお墓参りをする。よって花の需要はちょっと食われてしまうと思っていた。

というのも例年は、彼岸の入りにはお墓参りに必ず行く人の数は読める。お中日は浮動票的にお天気が良ければ行く、雨が降ったらいかない。このような例年の流れだから、不景気で今年はお天気も悪くないし、いけるとは思っていたが、むしろ後半との思いであった。

ふたを開けてみると、土日はてんてこ舞い。売るものがなくなる小売店も多くあって、21日(月)も市場の市況は堅調。22日(火)仲卸の店頭でも彼岸用の花、洋花ともに、ほとんど売るものがない。そして23日(水)、都内を中心に相場はまあまあ。しかし8月にお盆だった地域を中心に水曜から相場を下げた市場が多かった。

シルバーウィークが終わって、小売店に話を聞くと、「前半大忙し、中盤普通、後半お金を使ったのか倹約型で尻すぼみ」。しかし25日のお給料が出て、少し懐が暖かくなって花の需要も決して冷え切った週末ではない。総意をまとめるとこんなところだったようだ。
お参りしてから遊びに行ったようで、親孝行や孫のおじいちゃん、おばあちゃん孝行が実家に行くこととお墓参りとくっついて、シルバーウィークで最初にやっていきたいことになっていたようだ。思ったより夫婦、親子、あるいは孫とおじいちゃん、おばあちゃんとの関係が強くなっている。あるいは強くなりつつあると、花の売れ具合を見てそう感じた。

投稿者 磯村信夫 : 00:00

2009年9月21日

仏花もターゲット年齢を下げる

今年に入り、ゴルフで一緒に回った2人の婦人からそれぞれ印象に残る日常花の買い方の話を聞いた。60歳代でご主人と一緒にゴルフをしている女性はやはり裕福なお宅だから、花のある生活をしている。お一人は「花の値段って本当に安くなったわね。ありがたいけど作る人も大変ね」「持ちの良い切花が増えたわね」と。その理由を法人需要が少なくなって、高品質の花が近所の一番店の花屋さんに並んでいることを話すと、「そうなの、ありがたいわ」と率直に喜んでいた。

そしてもうお一人は、夫婦一緒に回っていた奥さんで「うちは紀伊国屋(青山)でいつも花を買うのだけど、世の中節約志向だし、夏は持たないから、仏様の花は節約して1本や2本で済ませてしまっているの。節約志向だから花の仕事も大変ね」となんとなく全体のパイが小さくなっているのを見通したような発言をしていた。

ヘビーユーザーの60歳代の人の発言がこうだとすると、パイが縮小しないようにこれを打開しなければならない。ではどうしたらよいだろうか。その方策はこうだ。

まず産地の話から。日本では3つの輸送園芸地域と3つの広範囲な地元産地が花の産地だ。北海道・東北・九州と、首都圏・中京圏・関西圏の近県産地である。今年は夏の天気が悪かったので、8月盆の小菊は不足したが、菊は7、80円?5、60円と安定した荷動きだった。9月の彼岸期には天候も回復し、東北・北海道で小菊が潤沢であった。輸送園芸の夏の2大産地、東北と北海道で小菊が多く作られるようになっている。それは60歳代以上の女性がコンスタントに菊、小菊などの仏花を買っているので需要がはっきりしているためだが、もう現時点で日本中の秋の小菊の作付けは仏花需要を量的に満たしたということだろう。

次に消費サイドの話から。近頃、駅中の花店を中心に、仏花でも洋花を多く使うようになってきた。一輪菊や小菊を入れないで、菊と言ってもSP菊を中心に使う仏花も増えている。SP菊も使わず、ピンポン菊やアナスタシアなど東西ヨーロッパで家庭用として人気の一輪菊でこしらえた花束もある。それ以外に季節の花や色別にこしらえたブーケなどいろいろなものがあり、それを仏花として使ってもよし、テーブルに置いてもよし、という商品を使っている。これらはいずれも*アラ還狙いとアラフォー狙いのブーケやミニブーケだ。秋になり、菊類はあるが洋花が足りないのは消費構造上困る。60歳代、70歳代のヘビーユーザーに刺激を与え、実際にもっと購入してもらうにはもっとターゲットの年代を下げ、アラ還とその子どもたちのアラフォーにしていかなければならないのだ。だから洋花が足りない。これは今年の9月のシルバーウィークに言えることなので、普段はますますこの傾向が続いていくだろう。誤解してもらっては困るが、菊・小菊の安定供給の上にアラ還好み、アラフォー好みの商品創造がパイを大きくするということだ。

*アラ還・・・アラウンド還暦
*アラフォー・・・アラウンドフォーティー

投稿者 磯村信夫 : 00:00

2009年9月14日

花の「お買い場」が変わりつつある

GMSのイトーヨーカ堂も上期営業赤字に陥った、と週刊ダイヤモンドは報じている。
粗利40%代の衣料品販売が不振で、粗利20%代の食料品は微減としている。食品スーパーやファストファッションが健闘しているところが多いということは、消費者の回遊場所が変わってきていることを示している。
弊社の販売先カテゴリーの取扱実績を見ても、リーマンショックより1年が経ち明らかに変わってきた。花き業界は法人需要の大幅減や地味葬式で需要が足りない。露地物など古くからの花の産地は高齢化し、かつて野菜から花に変わった人もまた野菜に戻り、花の供給も目に見えて少なくなっている。特に種苗費が高い球根類やめずらしい草花の供給が足りない。こういう中で小売カテゴリーからすると、食品スーパーの花売場(納入している花束加工業者)は確実に実績を伸ばしている。これは市内市外を問わず、競争激化している関西地方を除き日本全体に言えることだ。
もう一つ取扱実績を伸ばしているのが地方市場である。地方の市場は花束加工業者や量販店の要望を受け計画仕入を行わなければならない。また地元の専門店大手のプロとしての品揃えを確保するために、規模の大きい卸と付き合って、協業してサプライチェーンを作る動きが活発化してきた。買参人カテゴリーでは、この2つが実績を伸ばしているのだ。
デパートは粗利が30?35%ないと、あれだけの質の高いサービスを提供することができない。駅ビルは15?20%だから、同じようなものをお値ごろな値段で供給できる。時の流れに沿った品揃えや値づけで、スーパーや駅ビルはリーマンショック以来、すっかり消費者を味方に付けた。商店街は1店舗・1店舗の需要が不足し、売れなくなったので意気消沈してしまって商店街全体のことを考えて手を打つことができなかったのだ。
この1年で花の売り場もかなり多くが量販店中心となっていった。会議などでよく同業の市場の人と話をすると「どうもパッとしないんです。」と言う。パッとしないのは圧倒的多数の街の花屋さんが不活発だからである。だからセリを中心に物日間際の2回ぐらいのセリだけでしか昔の物日らしい立会いが再現されないのだ。問題は小売店間の業態競争に留まらないことだ。街の小売店さんと花の生産者が対になっていて、街の小売店さんが買ってくれるから規模が大きくない生産者は花で収入を得られるのだ。品種にしても、売れ筋、死に筋とたくさんあっても適切に評価されるのは、少なくても専門店の人たちが消費者に花を届けてくれるメーンプレーヤーだったからである。主役が変わろうとしている。これに合わせて産地はもう一度、出荷体系の見直しを行う必要がある。グループ、共選共販、法人化など少なくても5000坪で1出荷者ユニットの取り組みをしなければならない。又、花屋さんは販売力と仕入力を上げなければならない。構造改革が消費者から起こっているから、近隣の駅の同業者が一つの仕入機構・販売機構を作る時となっている。八百屋がやってきたやり方だ。そして卸・仲卸はリテールサポートを行う新しい時代となったのだ。

投稿者 磯村信夫 : 16:17

2009年9月 7日

おかげさまで20年

明日9月8日は大田市場花き部開場20周年のせりが行われる。この20年間、日本の花き業界は成長期から成熟期へと進展し、今業界上げて個人消費の定着に目標を定め、ルネッサンスを起こそうとしている。

20年前の1990年9月8日(土)、弊社大田花きで日本で初めての機械せりが行われた。最初のせりを土曜日にしたのは、不慣れで万一混乱が起きたとき、修復作業を日曜日の午前中まで終えれば月曜日のせり準備に間に合うためである。一週間経ってようやく人心地が付いたものの、それまで寝る間もないほどの慌しさであった。よく荷主さんも買参人さんも嫌にならず、継続してご支援してくださったと感謝の気持ちでいっぱいになる。

私はそれまで長い間せりをしてきた。せり人は仕入れで値段の差をつけないよう、例え同じものが10口以上あったとしても同じ値段で通すのが良いせり人だ。できるだけ一物一価にしようとするのである。そのためのテクニックはいろいろあるが、決してすべて早いもの順というわけにはいかない。せり台の前に群がる買い手に順番が早いからと落としてしまうと、当然手が引っ込む。手が引っ込むと自分のせり台の前から人がいなくなる。賑やかにやっているから、ひな壇の上に座っている大手も品物を欲しくなる。閑散としてしまっては、欲しい気持ちも冷めてしまうのだ。このことに疑問を感じていた。取引所の価格決定はニュートラルな行司役がすることが重要だ。結局、消費者がほしがっているものが高くなって、それを知った生産者は量を多く出荷するようになる。やがて値段が少し下がり、今まで買えなかった人も買えるようになって消費者は喜ぶ。生産者も喜ぶ。こういったニュートラルな行司役をコンピュータシステムを介在させることによって、また買参人がボタンを押すことで相場形成される花き産業にできればと思って、当時のNKK様とともに日本のせりシステムを作り上げた。これにより大田花きは実際の取引を取引関係者が瞬時に見ることができるシステムを提供し、取引結果を蓄積して未来予測のための統計まで使えるようにして行った。ITの発展が商流、物流、お金の流れ、そして情報の流れを促進させ、今大田花きは日々15,000アイテムの花を扱う日本の切花相場の指標を生み出す卸として仕事をさせていただいている。サービスの進化は決してとどまることを知らない。変わらないのは取引を通じて、花き業界の主役は生産者と消費者、そして準主役が小売店。この三者が持てる力を発揮してすばらしいパフォーマンスをしてもらいたい。そのためのお手伝いをさせてもらいたいという情熱だけである。この情熱は今後も変わらない。

投稿者 磯村信夫 : 00:00

2009年8月31日

衆院選を終えて

都議選で経験していたので民主党の勝利はわかっていたが、これほどまで日本国民が今までの政権党に不甲斐なさや不満を感じていたのかと思うと、複雑な気持ちになる。

新しいが時代始まっているのに、日本はズルズルと国際的な地位だけでなく、メリハリのある仕事生活や私生活を後退させてきた感がある。それにストップをかけ、前向きに取り組んでいこうと日本国民は決心した。今まで日本ほどノンポリの国はないと感じていたが、ここまで仕事や生活が難しくなると、やはり政治が仕事にも生活にも直接深く関わっているということを失われた20年で思い知った人たちが多くいた。

市民の声を役人経由ではなく、直接選んだ議員を通じ国政に反映させるという透明性の高い三権分立の姿を目指すことは喜ばしいことといえるだろう。今回の選挙に関しては、大田市場に入場している立場としても、羽田空港の国際化に合わせた大田市場のあり方、築地市場移転に反対の民主党が都議会の第一党になった後、また国政でも第一党になった今日、築地の再整備をどうするかなど日本が世界に誇るインフラシステムとしての卸売市場をどうするべきか再度検討し、21世紀にふさわしい市場に再整備してほしいと思っている。これで区切りは付いた。イノベーションを起こして、新しい需要を作っていける国家として8・30日本は出発することになった。

投稿者 磯村信夫 : 00:00

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