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2009年8月24日

G20

先週の土・日の海の賑わいと言ったら、真夏の賑わいそのものであり、今年は夏らしい日が少なかったから終盤の土・日を存分に楽しんだようだ。週末暑かったので、思ったよりも花の売れ具合は活発でなかった。35週の今週から花き業界では本格的に秋に入り、夏物から秋物へ衣替えするわけだが、その動きは少し鈍いようだ。

皆様方はこの夏、旅行をされましたでしょうか。昨日、近所のガソリンスタンドの経営者と話していたら、長野県内もご多分に漏れず、景気が悪く、駅前はシャッター街と化している場所があると言う。一方、ロードサイト店は活況なので、景気が悪いのか時代が変わったのか、その辺の判断が難しいと言う。しかしその両方なのだろうという結論になった。“グローカルに考える”で、考え方の基盤となる我々日本の立ち位置はG7、G8の日本ではなく、G20の中の一員である日本を立ち位置とするべきだ。GDP世界第二位の座は今年、中国に譲る。このG20の平均的な豊かさや平均的なものの値段を我々日本の平均的な値段にする必要がある。G20の中でのお金の使いではどうだろう。購買力平価をもう一度チェックする必要がある。食料品の値段、花の値段はどうだろうか。

日本の生鮮食料品の価格はG20の平均値に近づこうとしている現実がある。抗しがたい現実だ。そうなるとまずはどうやって合理化するか。それよりも高いとしたら花保ちを良くして、バラなら必ず咲ききるようにして、1日あたりの鑑賞コストではむしろ安いと言われるものを日本の農業と生鮮流通は作り出さなければならないと思われる。
消費者が求める方向性はもう定まったのだから、我々はそれに向かい努力するだけだ。秋本番を前にして、この夏の締めくくりはG20で地球は動くということである。

投稿者 磯村信夫 : 00:00

2009年8月17日

大田区・品川区のガーデニング・家庭菜園の例

農業について一般の人たちの関心が高まっている。産業としての農業ではなく、趣味の家庭菜園の人気も再燃してきている。農業については今まで触れてきたので小さなガーデニングや家庭菜園の大田区・品川区の動きを探ってみよう。

大田市場のすぐそばには旧東海道がある。大森警察から平和島までの間、昔ながらの道が残っている。そこから国道15号線に合流して、旧東海道は消えてしまっているが、その先の鈴ヶ森から品川まで旧東海道がある。大田市場のすぐそばの旧東海道の側には、大きな「平和の森公園」があって、水辺の生き物や緑を楽しめる。その先には「平和島競艇場」がある。鈴ヶ森の旧道を通ると、右脇には勝島がある。平和島とか勝島とかいずれも支那事変以降、第二次世界大戦中に埋め立てられたことが名前でもわかる。「しながわ水族館」やら大きな公園があって、その右手には「大井競馬場」がある。「平和島競艇場」と「大井競馬場」が向かい合っているのが面白いが、このところの緑は今ではすっかり森と化している。旧道の「鈴ヶ森処刑場」を品川寄りにちょっと行ったところに家庭菜園がある。このまわりの人たちは小さな区画だが家庭菜園を楽しんでいるのだ。またその先の立会川のところに坂本龍馬の銅像があり、そこには勝島運河として有名でボラがたくさんいるところだ。その護岸は一マス一マス品川区民に貸し出ししており、みんな花を作っている。一年中季節の花が咲き乱れていて、一マス一マスそれぞれ工夫が凝らされている。ベランダ園芸を楽しむ人も多いが、こういうみんなが散歩するその場所を自治体が貸し出しきれいにしていく。これが新しい市民運動となってきているのだ。大田市場の最寄りの駅は流通センターだが、改札を降りた正面の花壇は「東京港野鳥公園」を手がけているNPO法人の人たちの手によるものだ。地縁、血縁が濃い地方の方たちは、地域で草取りや道端の花壇を作ることなど普通に行われることだと思うが、人との付き合いが希薄な都会にあって、鈴ヶ森の家庭菜園も勝島運河の護岸のマス目の自作花壇も新しいコミュニケーションの場所として地域をはぐくんでいる。ふるさと東京のまちづくりの一端である。

投稿者 磯村信夫 : 00:00

2009年8月10日

台風9号

外はすごい雨だ。台風9号の影響で大消費地である関西圏・中京圏・関東圏のいずれもがせり中、豪雨にある。産地に大きな被害が出ないといいが・・・と念ずる。


花は作るに天候、売るに天候で、天気の影響を大きく受ける。かつては計画販売をしたい買参人は、自分が望む質・量・納期・価格を揃えるために予約相対を組んだが、今は質と量が大切なことは言うまでもないが、価格一番、納期二番となっている。良くて安いことが今の世の中ではとても大切で、良くても高ければ売れ残る。こうなると予約相対ですべて揃えないでせりを併用する加工業者や量販店のバイヤーが増えてきた。せりはその時その時の需給バランスで決まるから、今日のように蒸し暑く、土砂降りだとすると、気分が重く相場は下がる。高いと買えて、下がると買えなくなるものだが、心して仕入れようとする花束加工業者と店が何人かいた。

それは今回の不況で、食品スーパーが消費者に広く受け入れられ、消費者は近所の食品スーパーは自分たちの味方だと感じている。加工業者はスーパーに普段と変わらぬ価格帯でお盆の花を提供し、一気に地域内のシェアを取っていこうという意欲を見せているのだ。7月の東京・神奈川のお盆のときも、専門店では本店格の店、チェーン店、そしてスーパーマーケットの花売場が消費者の支持を集めたが、8月もその流れを加速化させようというのである。大手の花の買参人は市場外流通するのか?しないと言う。卸売市場を利用して荷を集めないと、結局損をしてしまうことが多いと言う。

それは三つの理由からだ。一つはスーパーマーケットからの発注が年々遅くなり、間際だしロスを出さない数しか発注してこない。売るに天候だからだ。だから売れたら発注する。こういった臨機応変な対応が取れないとだめなようだ。二つ目は直接出荷者と取引すると、今日のように天気予報が土砂降りであっても、一定数量取らなければならない。台風の予報によると、たとえば自分の納品をするスーパーでは、「明日の11日に店があまり動かないだろうから納品を予定数量より少なくしてくれ」と店に言われているとしよう。その分12日に多く納品しなければならない。だから今日は、仕入れは少なくなければならないが、契約取引ではこういった臨機応変な措置が取れない。中に卸売市場が入ると仕向け先を臨機応変に調整することができるので不良在庫を持たずに済み、在庫が適正に維持できる。三番目にはお盆といっても使う花は次の通り。菊、小菊、アスター、カーネーション、ケイトウ、リンドウ、スターチス、オミナエシ、ソリダコ、ガマ、ハス。これが最低で11品。これを産地に行って契約してくるとしよう。4、5箇所の産地でこの11のものを納品できるのであれば良いが、結局そうは行かないから別々のトラックで納品される。何台ものトラックで納品するとなると、荷受業務をしなければならない。荷受業務をするということは内容まできちんと当たり、検品をしていくということで荷受・検品業務で少なくとも前日の午後から、夜中じゅう2、3人が必要となる。そしてそれを納品する店ごとに分けたり、花束加工する手順に合わせ、仕分けしなければならない。そのためにあと2、3人夜中から出勤させなければならない。それプラス、それらを分ける一定広さの作業場が必要となる。それは花束加工所とは別に用意しなければならない。そんなコストをかけられるだろうか。かけてもいいが高くつく。だとしたらミドルマンの卸売市場に荷を揃えてもらうところまでお願いをする。自社で行うのは納品別に小分け作業や花束加工をするための仕分け作業などの分荷機能だ。それだったら早く出てくれば良いので、どうにかやっていける。これが世に言う「取引減少の法則」だ。ミドルマンが入ることにより取引が減少する。産地においては農協の集出荷場がある。これと同じ機能が消費地に必要なのだ。だから花のように15,000アイテム以上もある農産物、しかも毎年2,000の新しい品種が出てくるものは、ミドルマン卸売市場の存在が欠かせない。それがトータルとして安くつく。

今日のせり取引では積極的に在庫しようとする者と、台風一過まで極力在庫を持たないようにしようとする者と、その買う量は何十倍もの違いが出た。マーガレットホールの法則どおり、結局卸売市場でフレキシブルに分配先が変わるということは大変無理のない商取引であるように見えて、自分で言うのもなんだが、卸売市場機能の素晴らしさを台風9号で再確認した次第である。

投稿者 磯村信夫 : 00:00

2009年8月 3日

7つの効き目

8月盆の仕入れが始まった。エルニーニョの影響で涼しいのは良いが、雨ばかり。日射量は大幅に不足し、九州では豪雨で日本中の産地に被害が出ている。小菊も茨城産は前進していたが、日射量不足で遅れて、出荷ピークが7日頃となり、需要期ドンぴしゃりという怪我の功名の産地もある。しかし他の産地は遅れていたり、傷んで出荷できなかったりしているので品不足となりそうだ。前進開花に高値なしと言われており、8月盆市況の見通しは当初そのように予測されていた。しかしここに来て開花遅れが目立ち、ほおずきやハス、ミソハギなど1年に1回の物日の花が揃いにくくなるなど、当初の計画が狂ってきた。そんなことから再度、仕入計画を作り直す必要が出てきたわけだ。以上の産地状況に加え、土・日の高速道路1000円で、日曜日の晩上がってくるトラックの延着問題がある。市場に入荷が遅れれば、出荷時間は当然遅くなる。一番欲しい10日(月)に時間に合わせて納品することが難しくなるかもしれないので、仕入れが前倒しになる。しかし荷は天候の加減で遅れ気味、どこまで後ろにずらしてもらえるのか。今年は不景気で自宅にいたり、田舎に帰ったりする人が多い。お盆の花は売れるはずだ。このようなわけで、卸売市場では今日から荷の取り合いになってきた。

話題をもうひとつ。先月、日本フローラルマーケティング協会主催の夏季セミナーがあり、そこで会長である法政大学の小川教授とアメリカのスタン・ポーマ氏の講演があった。小生は残念ながら所用があり出席できなかったが、出席した社員からそのテキストを見せてもらうと、アメリカフローラルマーケティング協会が、ハーバード医科大学で心理学のナンシー・エトコフ先生ほか、著名な大学の先生の方々に花の効能を調査してもらい、その成果を広告宣伝に使っているとポーマ氏は言っている。
そのテキストで一番印象に残ったのが、花は7つのエネルギーを人に与えるということだ。
1、健康
2、感謝の気持ち 
3、愛 
4、静謐
5、繁栄 
6、新たなる始まり 
7、創造性(ひらめき、モチベーション)。
私自身を実験台にこれを7月下旬から追試し始めた。これが本当に効くのである。朝洗面台で花を見る、それが1日効く。夜、日記をつけたときに1日を振り返ると、効いていると思う。スイッチがオンになり、前向きになったのではないか。
そんなわけで、昨日東京は昼前に雨が降ったが、また小さな花を2つ買ってしまった。
皆さんも、自分が作っている花はいいが、近くの花屋さんで買って体験してみてください。

投稿者 磯村信夫 : 00:00

2009年7月20日

グローカル

物日が終わった20日頃というのは、価格が下がる可能性が大きい。毎月繰り返される「20日悩み」の原因は月給取りの給与はだいたい25日だから、その前で消費者は金欠病になっていること、週末の20日なら金・土・日と店が売れるが、今日のように月曜日だと活け込み需要や稽古需要に限られるため、需給バランスが崩れる。特に月曜日は、日頃農業に従事していない家族も農作業を手伝うので出荷量が増える。そうなるとよく言われる「相場が軟調のときは月曜日で相場が崩れてしまう」というセリ人のぼやきに拍車がかかる。それに10日、20日、月末は締め日で、買参人は締め後10日以内に支払いをしなければならないから、20日はどうしても必要なものだけ買って、21日から仕入をしようとする。このような事情があって毎月20日というのは鬼門なわけだ。東京では7月のお盆だったから、それに輪を掛けて買い気が弱いのだ。

皆さんはグローカルという言葉をご存知だろうか。前大分県知事で「一村一品運動」で名高い平松知事が作られた造語だそうだが、私もいつも頭の片隅に置いて、グローカルを心掛けている。グローバルに、日本人として、ローカルに、考え行動するということだ。今日の日経新聞に、国立西洋美術館の青柳館長が、日本の農業は大規模化して単品を作るのではなくて、小面積でも多種多様なものを作って、地産地消を行うほうが今の時代に合っていてエコではないか、という趣旨の発言をなさっていらっしゃった。まさにその通りで、地元に供給するを核とし、さらに余力があれば道州制の中心地や日本国内の他地域に特産品を出荷していく。さらに海外にも日本のファンがいれば輸出もする。これで成り立つ農業を日本はする。このような農業ができるように人材まで含めて業界や行政府が支援していくことが必要なのではないかと思う。グローカルに考えた時、日本人のほとんどがこの理想に向けて日本農業はチャレンジせよというのではないかと考える。梅雨のまだ明けていない地域も多くあり、現在荷が少し偏在をしているが、8月盆に向けもう取引は動き出している。花作りの皆さんもJAもグローカルに行動し、8月のお盆商戦には良い仕事をしてほしいと願っている。

投稿者 磯村信夫 : 00:00

2009年7月13日

入口商品とフェアで繁盛

小売店間の競争が激しくなったり、低価格化で利益が出しにくくなったりして、店舗をたたんだり、またそこに新しい花屋さんが入ったりということがある。新しく入った花屋さんは低価格志向にも応える商品作りが出来る花屋さんが繁盛している。何も全部を低価格にしてしまったら、結局利益が出なくなるし、価値ある商品を作れない。だから全部が安いわけでなく、目玉商品を作ったり、産地フェアをしたりして、取り組むことが必要だ。言うなれば、「入口商品を作る」ことと「イベントをする」こと、この2つがお客さんに来てもらい、楽しい花売場となって売上を作れるのだ。入口商品には、ワンコインで手軽に楽しめる花があるし、時として105円でも売り出すこともある。どのような入口商品を考えるのか、産地イベントを打つか、これからの小売店の腕の見せ所だ。

今年の7月お盆は今日が「迎え火」、土・日が絡んだので、どの小売店もお盆の花はよく売れていた。そこで気になったのが、弱気になったのか必要以上に低価格で販売している店が、私の見る限り少なからずあったことだ。そこの店の周りを見ると、確かにスーパーマーケットや100円生鮮コンビニで低価格の花があるが、明らかに品物は違う。だから価値を知っている専門店はきちんとした値付けをしてもらいたかった。私が心配するのは、生産者は油代を除いて経費は高止まりしたままだ。だから価値を知ってくれている専門店が価格に走ると、当然安く仕入れるだろうから、それでは生産者は赤字になってしまうのだ。日本の生産者が手を掛けて世界に誇れる良品を作ることが出来るのは、その価値を認めてくれる消費者がいるおかげだ。その消費者はほとんど専門店で買っているし、また専門店がその価値を教えてくれているから日本の生産者は成り立つ。だからこのお盆のときでも、時代が時代だから入口商品をアイディアで作ることは必要だが、全部の価格を下げてしまうのでは、結局生産者が「合わないからやめた」というようになってしまいかねない。小売店間の競争もあろうが、もう一度業態別役割を認識してもらいたい。専門店や百貨店は花との価値ある生活を届ける小売店。スーパーマーケットはセーブマネーを届ける。ホームセンターは楽しいインテリアフラワーからランドスケープまで花のある生活空間を届ける。コンビニエンスストアは利便性を届ける。ドラッグストアは健康を届ける。確かに業態間の乗り入れがあり、境目が見えなくなっている。しかし強みは何か、あるいは社会の役目は何かということを花屋さんに自覚してほしいと強く感じたお盆の小売戦線であった。

投稿者 磯村信夫 : 00:00

2009年7月 6日

これからの産業は第一次産業と第三次産業か

七夕というと仙台が有名だが、7月は湘南の平塚が見応えのある七夕飾りをして、街を賑わせている。今年は景気がよくないから気持ちだけでも不景気風を吹っ飛ばせと力が入っている。横浜から小田原までの間に大企業の緑豊かなクリーン工場が東海道線の車窓から見える。しかし今回の不況で工場を海外に移し、広い空き地になっているところがいくつもある。工場に勤めていた人たちは大変だろうが、そういう地域の事情まで含んで七夕を楽しんでもらおうと平塚の人たちはより力を入れているかのようだ。
生産人口は毎年少なくなって、工業は生産拠点を海外に移す。また65歳以上が今5人に1人なのに、2030年には3人に1人になる。リタイヤした世帯の支出は働いているときの30%減で7割程度。収入は60%減って4割程度になるから、どうしても貯金を取り崩す。高齢化すると貯金を取り崩す。預金が減るから金融機関の整理・統合が必要だ。

食べるものや花の支出については、高齢者は子どもがいる世帯と比較すると金額で1人あたり120%支出してきたし、今もしている。高齢化とは良いものをそれ相応な価格で買うことのようだ。だから、年輩者は国産の品物が大好きだから、国産の消費金額の総額はそんなに減らない。特に花き産業においては、少子高齢化でシングルが多くなると予測されるが、ワンルームというのではなく一定の広さを持った1LDK、2LDKになる。室内空間を豊かにしようとするし、街の家並みや景観を整えていくことが日本の豊かさにつながるので、花と緑が使われる場所が増えていくと予測する。農業の中での花のウエイトが高まると私は見ている。
また林業はCO2削減の中で脚光を浴びている産業だから、CO2マーケットより資金を得られることになるので見通しは明るい。

日本は今後とも移民政策に慎重だろうから、工業が少なくなって一次産業と三次産業が産業の中心になっていくのではないのか。ものづくり、確かに付加価値の高いものは今後も作っていくだろうが、日本の工業のウエイトは確実に減っていくと平塚を見てそう思った。

投稿者 磯村信夫 : 00:00

2009年6月29日

地域の産業 農家の売り方作り方

農協と取り組む場合がほとんどだが、町と取り組んで産地振興をする場合もある。町と取り組んで、今では町の職員が出荷計画や会合のときの司会をしてくれている場所がある。それが水戸や大洗のすぐそばの涸沼で名高い茨城町である。私=作る人、あなた=流通させる人、そして主に小売店のあなたを通じて消費者に届けていただく。こういったチームを作ろうと取り組んできた成果が知る人ぞ知る産地となった。作る花によって消費者に届ける小売ルートは違う。菊や小菊は、大手の花束加工業者に取引いただいている。カーネーションやバラは、個人出荷だから高品質のものを扱う特定の仲卸と小売店のお抱え産地として安定した経営を行っている。グラジオラスやキキョウなどの草花は、個人出荷だが必ず茨城町の○○というように名前を売っているので、せり前取引、せり取引とも、有利に販売できていると思う。お得意の枝物や鉢物も同様で、いけばなの先生だけでなく、特定の大手小売店から、時期になると必ず発注があり、新しいものを作るときもそのお取引先に事前調査ならぬ一声掛けてから作付けを始める。こういうコミュニケーションを効かせた花き栽培を行っている。年に何回というより、ほとんど1ヶ月に1回、弊社の担当者は主要メンバーと顔を合わせ、生産者と品質や取引先の満足度、もっとこうしたらよいという改善案を話し合い、実行に結び付けている。

「PDCAのサイクルを回している」と口で言うのは簡単だが、まさにPlan-Do-Check-Actionを種まきし、育て、収穫しているわけだ。相場が乱丁な時でも、茨城町の人たちはなぜ安いのかを知っており、今後について不安はない。これからもコミュニケーションを密に行い、生産者が希望を持って生産できるようにしていく。それが仲介業者としても卸売市場の役割だ。やりがいを感じている。

投稿者 磯村信夫 : 00:00

2009年6月22日

続・2009年初夏の販売状況

昨日の雨は大変残念だった。小雨だったらまだしも、あれだけ強いと買い物に行かないし、父の日の花を売り損なったところが多かっただろう。しかし、金・土とよく売れたので、駅周辺の店や地域一番店の本店格のお店は大変賑わった。5月の下旬から晴れの日が少なくて、関東地方はもう1ヶ月近くも梅雨が続いているようなものだ。昨日は夏至で日が一番長いと言うが、残念ながら花の主産地は例年の半分しか日射量がない。だから今後、夏は少し不足するのではないかと心配している。

日本の花の産地は6つだと思っている。輸送園芸の産地として、九州、東北、北海道。三大都市圏の半径200?300kmの産地で首都圏(含む長野、新潟)。中京圏含む北陸(新潟を除く)、関西圏である。輸送園芸の夏場の産地、東北、北海道が日射量不足で悩んでいる。かつては専門店でほとんどの花を販売していたので、花屋さんたちは粗利が5割あったから、品不足のときには粗利を削ってでも高く買ってくれていた。しかし今は花束加工業者がスーパーマーケットに納品し、地方に行くほどスーパーが花売場の中心になってきた。今まで鉢物、苗物を中心に売ってきたホームセンターも切花を扱うようになり、地方では人気の花売場となっている。ここでは粗利を27?8%とする薄利多売方式を取っている。だから例え量が少なくてもかつてのように小売価格近くまで相場が跳ね上がるということはない。

消費は政府の相次ぐ経済対策で、マインドは以前よりもだいぶ明るくなったが、7月のボーナスは出るところでマイナス15%、出ないところも多いといわれているから、値ごろ感と安全安心、ストーリー性と売れる基本は変わらない。一進一退を続けながらの夏の市況展開になるだろう。そうなると、7月のお盆、8月のお盆の菊やリンドウの相場がどうなるのかである。ここ1年ですっかり消費者のマインドは変わってしまった。象徴的なのはデパートが2桁でマイナスである点だ。消費者は良くて安くなければ買わない。花は嗜好品かも知れないが宝石とは違う。生鮮の文化品だ。だから小売店は良いものを今の消費者の価格に合わせて販売しようとする。しかし生産地は別の意識を持っている。良いものをそれなりに販売し、評価してもらわなければならない。生産資材も値上がりしたままで、石油は安くなったが、それ以外は高止まりしたままだからだ。そこで卸は中に入り、消費者の代弁者として、産地に対し「その価格提示では結局デパートのように2桁マイナスになってしまいます」と話し合いの土壌を作っておくことが必要である。売り手と買い手がどこで折り合うか、買い手ともよく協議し、質・量・価格・納期などの、スペックを詰めていきましょう。この夏の花き業界は、お盆という日本の文化的行事を控え、ボーナスが前年よりもかなり低いという消費者の懐具合の中で、消費者に喜んで買ってもらえる販売戦略、価格戦略が必要である。喜んで買ってもらえる夏の花を供給しようではないか。今年の花き業界は今から心して支度に取り掛からなければならない。

投稿者 磯村信夫 : 00:00

2009年6月15日

2009年初夏の販売状況

イタリアでG8の財務相会議が開催され、世界経済は明るい兆しが見えてきたと言う。出口(財政再建)の話も出たそうだから、お先真っ暗な状況から確実に改善の方向に向かっているのだろう。

5月に主幹事の野村證券のお誘いで支店セミナーに参加し、大田花きの紹介と花と緑の話をしてきた。資産の中で株式の比率が高い60歳代、70歳代の方々が中心のセミナーだ。不況による株価の暴落で、気分は落ち込んでいたが、ここのところに来て株価は回復の兆しが見えてきて、後期高齢者医療制度も改善されていく方向が明確になるなど、60歳代、70歳代の消費活動は活発化してきた。それは花の売れ具合を見ていてもよく分かる。法人需要が少なくなったので、付加価値の高い高品質な花が花屋さんの店頭に並ぶようになった。それを5月の下旬くらいから(母の日にもらった花が終わって)、店頭で買い始めている。景気も良くないし、お天気も愚図つき気味の6月。ジューンブライドというのも昔の話で、今は結婚式も6、7、8月と少なく、花の市況はパッとしないが、しかしその中でもヘビーユーザーに支えられて、まあまあ質の良いものはこじっかりした相場となっている。

そういえば昨年と違い、上物の単価が15%ほど安いのは法人需要、とくに会社の経費削減によって少なくなっている活け込みの需要の影響で、特に枝物と葉物が安い。活け込み需要の分野では、今ようやく輸出産業が少し在庫調整の目鼻が付いたところだから、今後個人消費や設備投資に回ってくるまで、しばらく時間がかかる。それは2011年からだと今のところ予定をしておいたほうが良い。

今それなりによく売れているが、しかし期待したほどでもないのがトロピカルの花である。ヘリコニアやジンジャ、ランや葉物など、期待値からすると少しがっかりしている。それは旅行業界やデパートの水着売場にもその雰囲気が出ている。今年の夏の旅行の受注状況は、ボーナスが前年よりも下がること、9月にゴールデンウィーク並みの連休があることから、いまひとつパッとしない。パッとしないから、「梅雨を吹っ飛ばせ」とか「暑い夏を楽しむ」だとか、そういう気分に消費者はなれないでいる。ようやく沖縄県でジンジャやヘリコニアが増えてきているのに、今回の不況は誠に残念だ。

だが、今回の不況で復活したのが、お父さんの価値だ。花き業界では定番の黄色のバラをずいぶんと前から予約相対を組んでいる会社がある。またひまわりを父の日の花として、業界ではキャンペーンをしている。お父さんはこの不況でがんばってくれている。同情票半分感謝半分のプレゼントが、今年ほど活発な父の日はないのではないだろうかと花き業界は期待をしている。

投稿者 磯村信夫 : 00:00

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