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2016年4月 4日

新年度でお伝えしたい二つのこと

 新年度に入り、昨年度とは違う状況になっていることを二つお伝えしたい。一つは、一輪菊の中でもピンポン菊やアナスターシア、あるいは、畑で咲かせた一輪菊、通称"ブルームマム"が一定のポジションをとり需要が高まってきたことだ。ダリアや大輪のカーネーションとも良く合うこれらを、既に世界標準となっている「ディスバット菊」として統計処理することとなった。特に、若い人たちの需要が期待できると思われる。

 そしてもう一つ、切花の生産が増えず、一年を通じて平均単価が高くなっている。そんな中で、仏花を中心とした花束加工業者の人に素材の組み合わせの提案をしたい。同じ花束でも、専門店が販売する花束は短めのものが多く、上から見て「何て綺麗なんだろう」と、思わず手にとりたくなるブーケが多い。一方、仏花は、関西仏花を除いて、一定の丈の長さがある花束を、消費者は「何本入っているのか」と根元をチェックして、本数で買っている。このタイプの花束は、高値が続くと採算が悪化してしまう。天候によっては、今年も高値が続くかもしれない。それでは商売にならないので、もう一度スプレータイプの花を中心に、あるいは、枝をかいて、それを1本と見立ててでも花束を作って販売してほしい。手本は専門店のお花屋さんが作る花束である。上から見た美しさで販売するには、本数よりもボリューム重視だ。昨年の11月から今年の1月まで、花の単価は安かった。そういった時には、量を多く一束に入れられる。しかし、高値になった時は、束をキツく集めず、ふんわりと結束してボリューム感を出していく。こうしながら、消費者の期待を裏切らないようにしてもらいたい。

PS;
 毎週火土は朝の4時過ぎに家を出て、40分程かけて歩いて通勤しようと思っている。このごろ夜が明けるのも早くなったためか、今月は今日で2回、「源ちゃん」が目を覚ましていて、無言だがお互い会釈の挨拶をした。

 どんなつらいことがあったんだろうか。僕が知っている限り、源ちゃんは火曜日と土曜日には僕の通勤路の環七脇の道を寝場所にしている。他の曜日は会ったことがないから、きっと違うところに寝に行っているんだろう。今の車は5年目で、ホンダライフのちっちゃなやつだ。僕と知り合いになってからもう15年以上。源チャンの車は3台目、いずれも古い中古車で、しかもだんだん小さくなって来た。

 源ちゃんはこんな小さな軽の車の中で、身体を伸ばせないのにエコノミック症候群にならずに寝ている。僕は勝手に思っている。すごくつらいことがあったから、ここでも寝れるんだ。

 今朝も源ちゃんは寝起きでまだぼーとしていたが、僕が会釈すると会釈をし返した。何でか分からないが、何か人生っていいなあとお互い思って一日が始まった。僕の勝手な想像じゃない。僕たちは、お互い代わり映えしないけど「今日もよい一日が始まるね」と挨拶したんだ。
    

投稿者 磯村信夫 : 10:56

2016年3月21日

今後の物日対応について

 12月と並んで切り花の需要期である3月、今年の市況は16日(水)から供給不足となり、過去5年で最も高い単価となった。何故そうなったのか、生産・消費、小売店の角度から分析し、今後の物日について考えたい。

 2015年度(4月~3月)の物日の相場を振り返ると、前進開花で8月盆の菊相場は高騰した。ここ15年無かった高値である。周年産地は暑さで奇形花の発生があり、露地栽培は高齢化で生産が少なかった。安定した出荷が出来ず、例え大産地でも日頃の出荷比率に合わせて市場を絞り、出荷数量を決定した。こうして8月は高騰した訳だ。また、消費者においては、伝統回帰から、お墓参りの需要は想定したよりも減っておらず、団塊ジュニアまで含めて、今後とも微減が想定される。また、7月盆の地域でも、盆は8月だと思っている若い人たちが増え、終戦の日にご先祖様にお参りする習慣が出来ている。

 9月の敬老の日・お彼岸期は天候にも恵まれ、ジャストインタイムであったので、生産者良し・消費者良し・小売店良しの花き流通となった。12月は稀にみる暖冬で、端境期にならず1月出荷の商品が年末に出てきてしまった為、花束加工業者や量販店、そして、間際の仕入れで荷が潤沢であった小売店も、皆さんまあまあの結果であった。もちろん、消費者も良い花が割安に買えて良かったのだが、景気動向もあり、生産者、卸・仲卸は前年を下回った。 

 さて、この3月は、昨年の8月盆と同様の展開だ。団塊世代が高齢者となってリタイアをし、退職の送別の花の数は確かに少ない。しかし、団塊ジュニアの子どもたちが小学校を卒業したり、中学へ入学したり、また、謝恩会や送別会、結婚式は結構多い。また、全国各県で花き振興協議会が発足され、国産花きイノベーション推進事業の予算で、花育活動が活発に行われている。そんな関係で、地元の花屋さんがもう一度学校と良い関係を築き、卒業式や謝恩会等の花の需要が喚起されてきている。単価は安いかもしれないが、日本中で行われている為、この需要は大きい。

 花の小売店業界から見ると、セルフの花束販売をしている量販店が、物日には通常の何倍にも売場面積を広くし、一日の売上金額が通常の10倍以上となっているようだ。全国の仲卸は花束加工を行い、小売店でも花束加工業者として量販店に納入している所が数多くあり、現存するスーパーマーケット、ホームセンターで、物日に花束を販売していない所は日本中で殆どなくなった。しっかりスケジュールされて花束加工・納品が為されるので、いつ仕入れて幾つ花束を作り、いつ店頭に並べるかが、日本中で全国一律になっている。一方、量販店の花売り場にシェアを奪われた花の専門店は、後継者がいない所が店を畳んだり、そうでなくても、嘗ては物日に仏花は3倍売れた所、今は2倍少々の数量しか売れなくなっている。しかも、一顧客あたりの単価は低下気味で、物日の仕入れは、物日の前の市1、2回のところが大変多くなった。さらに、地方でも宅配便が1日で届いたり、都市部ではインターネット販売で当日配送される為、気持ちの上で日本全国の専門店は使用する間際1回の市で仕入れている。

 今後の傾向として、特に仏花が売れる物日には量販店のシェアが高まり、逆に専門店のシェアは低くなる。そうなると、専門店の買参人が殆どの卸売市場は、存続が難しくなる可能性がある。流通量にしても、量販店は売れる物日で売場面積を広め、物日が終わると小さくする訳だから、物日とそうではない時の格差が益々大きくなる。徒歩と自転車で買い物をすることが出来る各県の都市部以外、物日の格差が益々大きくなるから、専門店の存続が難しくなるということだ。しかし、専門店は、新しい花との生活を提案するプロだ。ギフトや冠婚葬祭の花だけではなく、切花にしても、鉢物類にしても、新しいモノを取り入れて自分流にデザインする。お客様をうならせる新しいトレンド、あるいは、新しい花は、face to faceで接する専門店からしか生まれない。専門店が少なくなると、花の買い物コスト削減や、ワンストップショッピングで買い物時間削減を売り物にする量販店やインターネット花店の販売にも影響してくるだろう。ファッション業界のように、トップクラスの専門店を模倣して、大衆価格で販売すれば売れるという訳にはいかない。従って、花き業界をあげて、専門店の数が少なくなり過ぎないように、頑張って商売してもらえるようリテールサポートをしていかなければならない。これが、花き業界、そして、大田花きの方針だ。

 最後に整理すると、日本の花き産地は、花き輸入商社まで含め、今後とも天候や経済状況により、供給が不足する可能性がある。一方、需要量は、物日と普段の差が広がる。従って、人手不足や天候不順を前提に、鮮度保持対策と納期を守ることによって、計画通り物日に販売できるようにする。また、消費者の金額的な負担を少なくし、きちんと開花する、あるいは、花持ちを約束する商品をお届けすることが必要だ。専門店は、卸売市場から天候と産地状況をよく聞き取り、リスクも考えて、今までより早めの1、2回前の市から商材確保をして、余裕を持って販売することをお勧めする次第である。 

投稿者 磯村信夫 : 16:49

2016年3月14日

国民生活にとって、農協と卸売市場は欠かせないという事実認識の上に立った改革が重要

 農業従事者の平均年齢が高齢者となった日本農業において、現内閣の下、農協改革が進められている。先日も、配合飼料を供給する会社に対して、提供価格に競争力がないことを指摘し、合併等の改善を促すことがあった。また、農協系の金融についても言及した。そして、農協改革が進められている今、卸売市場についても、何らかの構造的な改善・指導があるかもしれないと考えられる。

 私は、花き産業で働く一人として、日本の園芸特産物農業の現状を理解しているつもりである。イタリアより長い日本列島の縦長の地形と、戦後の農地改革によって狭くなってしまった1戸あたりの耕地面積、この2つの弱点を日本農業は持っている。これを補ってきたのが、協同組合精神による農協の各産物部会の集配センター・販売センターとしての役割、また、消費地の卸売市場の集配センター・販売センターとしての役割だ。園芸特産物においては、この社会インフラが、国民生活にとって欠かせないものであるとの事実認識をした上で、農協改革や農業者団体、関係業者の改善・勧告等が為されるのであれば良い。しかし、地域農協、地域卸売市場が成り立たないような改善命令であれば、アメリカ・EUのように、国が農家の所得を一定水準保証しないと、先進国では農業はやっていけない。

 一方で多様性を謳い、一方で効率を求める。そして、効率の中には強者の支配がある。どのようにバランスをとっていくか。あらゆる法人や業種、そして、生物は、生きていけるのなら多様性があった方が良い筈だ。「生きていくために多様化して形を変えていけ」というのであれば、農協改革の下、農業者へのサービス企業として、それぞれの企業は喜んで自己改革をしていくに違いない。

 それにしても、日本の農業従事者の平均年齢が高齢者であるという事実は、国を挙げて農業の重要性をアピールし、後継者が生まれる環境を作り、若者が農業をやりたいと思うような状況を作っていかなければならないことを示唆している。個人の担い手が少ないなら、法人が農業を行うのも良いだろう。東京オリンピックまでのここ5年が、大運動をしていく最後のチャンスではと思われる。

投稿者 磯村信夫 : 13:28

2016年2月22日

社会性を一義に考えながらも弱点を補強する

 第10次卸売市場整備計画の骨子が、2月17日に開催された日本花き卸売市場協会の理事会で、卸売市場室より説明があった。少子高齢化の中で、社会インフラ業である花き卸売市場の流通量がこのままでは減ってしまうと想定し、従来の市場機能にプラスして生産者へ、あるいは、小売業者へ、一歩も二歩も踏み込んで協業することによってこそ、既存の卸売市場を利用させうるというものである。

 元来、卸売市場は市場法により策定された"社会性"を第一に考えた流通業である。しかし、それ故市場法によって役割や手段を制限してしまう面があった。これを、第10次卸売市場整備計画では、生活者視点での機能の強化をし、役割を多角化していこうとしている。「規制緩和」という言葉で表されることもあるが、一般企業のマーケティングを参考に説明するとこうなる。コトラーのマーケティング手法を使い事業を伸ばすためには、まず「マーケティング1.0」で企業の生み出すモノやコトの機能や品質を争う。次に、それにプラスして「マーケティング2.0」で消費者視点での他社との差別化を図る。さらに、現代では「マーケティング3.0」で、モノやサービスの社会的価値や、企業としてのミッション、ビジョンを社会に示すことが必要だ。これをブランドとして販売する。衣料品業界で言えば、ユニクロの社会性、また、個人の良心に価値をおく「これがいい」ではなく、もっと生き方そのものを表現した無印良品の「これでいい」等、世界では社会性の高い価値を生み出している企業が、貧富の差を問わず人々に選ばれ利益を出している。

 卸売市場に話を戻すと、差別的取扱いの禁止や、受託拒否等、社会インフラとしての成り立ちから、社会性は良しとするが、あまりにも少ない利益であったり、赤字の事業体もあるなど、必ずしも自らの力で社会を良くしていくということが出来ていない。開設者である地方自治体に助成金を依頼したり、国にも援助をお願いしている実情がある。しかし、これではいけない。NPO法人は、風がなければ空には羽ばたけない。一方、企業は自走することが出来る。利益を出すことが出来るからこそ、自走エンジンを健全に保って社会を良い方向に進めることが出来るのだ。当然、考えてモノ、コトを商いしているので、世界の一流企業はチップ以上(※チップは15%が目安)の利益を出そうとしている。自走する為に15%以上の営業利益を出すことが、社会性を一義に考えた私企業の在り方だとグローバルスタンダードでは言われている。日本では考えられないことだ。そんな高い営業利益率を卸売市場には求めないが、卸売市場(卸売会社と仲卸)は、より価値の高いコトやサービスを提供することにより、出荷者や輸送会社、小売店に対し、強い働かきかけをして自社の働きを買ってもらい、自走エンジンを健全に保ってもらう必要がある。

 卸売市場は東京オリンピックまでのここ5年、生き残りと自社の繁栄を考える時だ。社会性を一義に考えながらも、もう一度、「マーケティング1.0、2.0」で自社の強み、弱みをしっかりと把握し、消費者視点での差別化を図った営業活動を行っていかなければならない。それが、第10次卸売市場整備方針が施行される2016年度である。

投稿者 磯村信夫 : 16:33

2016年2月15日

フラワーバレンタイン

 2月も半ばのこの時期、荒れた天気であることが多いようだ。母が他界する前、僕が生まれた時のことを話していたのを思い出す。自宅から歩いて10分足らずの場所にある病院に、母は雪の中を歩いて行って僕が生まれたという。2月16日のことだ。父も駆けつけ泣いて喜んでくれたと、身辺整理をしていて「へその緒」が出てきた時に、僕に渡しながら母はそう言っていた。そういえば、2年前の大雪も、今年の春一番も大荒れの天気だった。この時期はこういうこともあると思いながら、フラワーバレンタインを迎えた方がよい。

 立春後、花のイベントが続々と開催されている。東京ビックサイトでは(一社)JFTD主催『フラワードリーム2016』が、東京ドームでの『テーブルウェアフェスティバル』の後、『世界らん展日本大賞2016』が開催中だ。また、先日は横浜美術館で(一社)アジア花の文化協会のシンポジウムが開かれた。さらに、銀座松屋では『いけばな古流協会展』が、池袋サンシャインシティでは『第65回関東東海花の展覧会』が開催されている。2月はそれらの東京近辺のイベントを回っていた。そんな中、昨日は小学校の同窓会に参加した。先生の体調が芳しくない為、先生のお住まいの近くである茅ケ崎で開催された同窓会に、17名もの同窓生が集まった。アングロサクソンの国から始まり、今はヨーロッパ中というより、日本とイスラム圏、アフリカを除いて殆どの国で、本命の女性に男性が花をプレゼントする日になっている、という事を知らない団塊の世代の人達であった為、2月14日、こんな大切な日にクラス会が開かれたわけだ。集まった中で女性が一人、フラワーバレンタインを知っている人がいたが、彼女は海外との繋がりが深い会社に勤めていたことのある人たちだった。

 クラス会の後、フラワーバレンタインの店の売れ具合を見に行った。時間の関係から、駅ナカ・駅周辺の専門店しか見ることが出来なかったが、しっかり売れていた様子だった。その帰宅途中、家内にフラワーバレンタインの花を買った。そのお店では、私の前に4人の男性が並んで会計やラッピングを待っていた。(一社)花の国日本協議会とタイアップしているJ-WAVEや、新聞にも取り上げられたし、男性ファッション誌でも紹介されていたのを見ているのか、あるいは、海外滞在の経験がありフラワーバレンタインを知っているのか。日曜日なので、カジュアルな服装だった為、どのような仕事をしているのか分からないが、そういった青年から中年位の方々が並んでいた。

 フラワーバレンタインは着実に成果を上げ、花をプレゼントすること、花を持って帰ることがカッコイイという印象を生活者に与えることに成功しつつある。これをもっと普及させると共に、価格的にも、しょっちゅうプレゼントをしても負担にならない金額にしていかなければならない。どうすれば、生産者と一緒に再生産価格の問題を解決出来るだろうか。花の消費拡大イベントが沢山行われている中で、供給体制を強化しなければならないと感じた次第である。

 追記:今朝、スーパーに納品している大手花束加工業者の人たちと立ち話をしていたが、「うちはフラワーバレンタインは全然関係なかった」と彼らは言っていた。

投稿者 磯村信夫 : 15:34

2016年2月 8日

量が少なくても高値で総額を補える時代ではない

 本日は旧正月。インバウンドでアジアの方が宿泊されるホテル等には、花が綺麗に飾られている。また、切花だけでなく、三本立の胡蝶蘭がお出迎えしている所もあり、華やかな空間を演出している。ベトナムでは花桃を飾るそうだが、アジアでは中国のネコヤナギやキンカン、そして、シンビジュームの鉢ものにしても、人々の暮らしの中には花文化の伝統が続いている。

 昨年の11月から、花の消費は冠婚葬祭の花と1日、15日の仏花が全体の相場を引き上げる要因ではなくなってきた。花の小売店では、20世紀に活躍していたディスカウンターが殆ど存在しないので、豊作の時に的確に家庭に花を届けてくれる役割の店が本当に少なくなっている。消費者の花のお買い場は、スーパーマーケットやホームセンターが存在感を増し、消費者の期待に応えて花売り場も充実しつつある。専門店の分野においては、駅ナカ、駅周辺の店舗が依然として消費をけん引しており、商店街の仏花中心の店、あるいは、仕事花中心の花屋さんと明暗を分けている。そこで考えなければならないのは、仏花や冠婚葬祭の需要は大切だが、今の生活者のライフスタイルからして、今後しばらくは伸びが期待出来ない。現在の業者間の競争から、確実に業者数の調整、総需要の減少があると考えるべきである。そうなると、立地条件に恵まれない花会社は、外に営業に行く、JFTD花キューピッドに参加する、インターネットでの需要の掘り起こしをする必要がある。

 先週、東京では(一社)JFTD主催の『フラワードリーム2016』が東京ビックサイトで、また、『テーブルウェア・フェスティバル2016』が東京ドームで開催された。いずれも花の素晴らしさを訴え、消費拡大に役立っていくことだろう。このような、社団法人やNFD等の公益法人活動、あるいは、各県の振興協議会の花育活動等で、伝統文化の需要だけではなく、花の効用として、花は心の栄養に欠かせないものであることを知らしめることにより、健全な花き産業の発展を期する。こう実際に行っていくことが必要である。また、生産地においては、需要に合わせた品目・品種の見直しも欠かせない。即ち、「価値=メリット-コスト」の法則通りで、メリットをお知らせすることが必要なのだ。
 
 去年の8月のお盆の菊の高値を最後に、新しい枠組みの時代に入っているのである。

投稿者 磯村信夫 : 15:08

2016年1月11日

健康の青果だけでなく、花きで住環境を整える時代に舵を切った

 先週の9日(土)、(一社)帝国華道院主催『第89回全日本いけばなコンクール』の表彰式が、箱崎のロイヤルパークホテルで開催された。その懇談会で、各流派のお家元をはじめとする諸先生方に、今の切花チューリップは前処理をしているし、カスミソウも匂いを抑える処理をしているので、どちらも暖かい部屋に置いても間延びや匂いを気にせず使ってもらえるようになったことをお話しした。初めて聞いたという先生方が多く、市場や小売店が、産地それぞれが行っている改善努力を消費者へ情報提供出来ていないことを感じた。原産地表示まで含め、『この産地はこのような前処理をして花持ちを良くしています』といったような、業界人は知っていて当たり前のことを、消費者にも的確に伝えていかなければならない。

 さて、今年を占ういくつかの事象がマスコミで報じられている。まず、天候の話題、エルニーニョ現象である。エルニーニョ現象は現在、史上最大と言われており、今週は例年の寒さだそうだが、暖冬であることには変わりはない。天候異変が今年はこれからも続いてゆく。二つ目に景気だが、昨年の前半は、個人消費はしっかりしており、エコノミストが予測した通りの展開となった。しかし、年後半から食料品(生鮮食料品を含む)と中国産の衣料品等、買い物頻度の高い「食」と「衣」が値上がりし、いわゆる「体感物価」が上がって消費が控えられた。個人消費が振るわなくなったのである。花の場合、それに加えて暖冬の影響で、11、12月の安値市況展開となった。

 2015年の青果物は20世紀の単価水準となり、平成になって最も高い単価となった品目も多い。これは、天候異変による不作だけが原因ではなく、「健康」、「安心・安全」、「機能」を合言葉に、消費が確実なものになっていることを示している。花と同様、11月から現在まで、暖冬の影響で単価は失速気味だが、大きな傾向として、カット野菜まで含め、野菜の供給不足時に、原体価格が高値になっても、小売現場では家計に無理のない価格帯となる調達ルートが、2015年でおおよそ出来てきた。従って、青果の単価がこれ以上上がるのは難しいのではないかと思われる。一方、花の場合には、2015年の青果の高値につれて単価が上がった面もあるが、花の消費においては最悪期を脱しているので、小売価格を据え置いて、量を販売する時代になってきている。

 量を買ってもらうためには、一年間52週にフィットした花を提案しなければならず、その時々の天候に応じて若干修正を加える等、販売していこうとする花の品揃えと見せ方、価格を一にも二にも工夫しなければならない。ここ数年、青果物と同じ波長であった花の相場は、同じ地域で作られている農産物だから、天候の影響を受けて同じ流れの時もあろうが、20世紀の終わりから21世紀のはじめのように、青果物と別の動きをすることが予想される。それだけ、花きが農産物において主要地位を示しつつあることが、誰の目にもはっきりと映ってくる年になるといえるのではないか。

投稿者 磯村信夫 : 11:37

2016年1月 4日

今必要とされていることをやる

 明けましておめでとうございます。

 花き振興法が策定されてから実質2年目、いよいよ花きの生産拡大、消費拡大運動に弾みをつけてゆく年となりました。卸売ベースでの取扱金額で、現在の3,700億円※から、2020年、東京オリンピックの年には5,000億円、2025年には6,000億円の取扱高を、国を挙げて目指します。
※(一社)日本花き卸売市場協会 データより

 まず本年は、消費の主役に躍り出た団塊ジュニアに好まれる花の生産販売に努力を傾注します。また、花き消費の中心である仏花や、人生の通過儀礼としての花需要を大切にしながらも、主力をパーソナルギフト、家庭需要に置き、法人・家庭とも生活空間にフィットした花を生産販売する努力をします。具体的な運動としまして、仕事場に花を飾ってもらい、潤いや生産性アップを狙った花や緑のオフィスを演出する"フラワービズ"を、業界を挙げて取り組みます。また、"ウィークエンドフラワー"や"フラワーフライデー"の愛称で、毎週末の買い物として、花売り場で一家団欒、家族の為に花を買ってもらいます。間近の1月31日・愛妻の日には、奥さんに花をプレゼントしてもらいます。2月14日のバレンタインデーには、男性から女性へ格好よく花を贈ってもらいます。その格好よさを、FVイベントや、広告媒体を通じて生活者に訴えていきます。

 パワーは私たちの内側にあります。思ったことしか実現しないし、やったことしか実現しません。だったら、花き業界は"思って実行"する。誰かがやってくれそうだと、自分が楽をするのではなく、種苗・生産・集出荷・配送・卸・仲卸・小売の各分野で花き業界が頑張って、日本国民が自分自身の生活の質を上げてもらえるよう応援して、花を買ってもらえる年にします。オリンピックまであと4年、皆の努力が積み重なれば、必ず大きな力となって、花のある生活をしてもらえます。そうしたら、我々も心豊かになれるというものです。

 では、さっそく、本年の努力をまず一歩から積み重ねていきましょう。
 

投稿者 磯村信夫 : 11:41

2015年12月28日

希望します。カッコいい八百屋さんみたいな花屋さん

 2015年は、量販店の花売り場が生活者に認知されたこと、駅ナカ・駅周辺やショッピングモールの花き専門店がますます生活者に当てにされるようになったこと、また、葬儀が小さくなり、それに合わせて花の消費量も少なくなったことが、花き業界のエポックとなった。来年の目標として、量販店の花売り場の更なる充実、葬儀の花を扱う業者の吸収合併による大規模化が挙げられる。そして、今後とも天候不順で出荷の波が大きく振れることから、安かったらいくらでも販売しようとする、意欲のある値付けの上手い専門チェーン店の存在が、花き業界の消費のパイを大きくすると予想される。

 指摘していることから分かる通り、情報収集、商品化を企画立案し、値付けをして販売するというスーパーやチェーン店の売り方は商売の基本だが、天候の振れ幅が大きい昨今、生鮮食料品花きの販売には不都合が起こる。アドリブが効かないので卸売価格だけが暴落し、小売価格が一定、販売量は予定通りということになってしまうのだ。豊作で価格が安いなら、量を小売店に売ってもらい、消費者に沢山買ってもらえば良い。食品の場合、少子高齢化で胃袋が小さくなったことで、一人、二人世帯では消費量が少なくなり、また、加工品の比率が多くなってもやむを得ない。一方、花は、切花も鉢物も苗物も、セット販売で今まで以上の量を売ることが出来るはずだ。また、荷が少なくて高い時もあるから、生活者の値頃感に合った値付けを行う技量のある花店が必要だ。魚や青果ではそういった会社が活躍している。

 素敵な花屋さんは花き業界にはいるが、八百屋さんや魚屋さんを多店舗展開する会社のように、質と値段にこだわり、量を売っていこうとする会社がもっともっと活躍してもらわなければ、花が家庭に入っていかない。切花を全部で3本入れるところを、計画とは違うが値段が安いので倍入れてしまおう等、切花も鉢物も二日で全て売り切る意気込みのある花屋さんの活躍が、現在の花き業界に望まれているのである。そんな会社が来年のスターになるだろう。

投稿者 磯村信夫 : 12:02

2015年12月21日

花き業界、金額ベースで下げ止まる。来年から反転の年に

 今年の12月は暖冬の為、需給のミスマッチが起こり、生産者も小売店も苦しい展開が続いている。昨年は通常の天候で陽気が引き締まっていたので、日々の出荷量や販売額は今年の1,3~1,4倍の金額で推移していた。生産者も、卸・仲卸も去年の金額を見て青くなっている12月の展開だが、特に小売店は、花き業界の最終ランナーとして直接生活者と接しており、悪戦苦闘の日々が続いている。まして今年は、松や千両が不作で割高だったので、小売店の苦労は大変なものだ。こういう時こそ、作柄、出荷状況を正確に小売店に繋ぐ等、流通業者の小売店への応援体制を強くしていきたいところである。

 一年間を振り返ってみると、天候に振り回されてきた感があるが、総じて需要はしっかりしていた。また、人手不足や高齢化、そして、円安により国内外の生産供給が不足した分、相場は安定して、暦年ベースで前年を2~4%上回る状況で推移してきた。

 切花は、花束や装飾の素材として流通する。小売店は素材としての花を使って花束やアレンジを作成し、お客様に自分の花が気に入って貰えたか、反応を瞬時に読み取ることが出来る。一方、鉢物は完成品が流通している。生活者と生産者に距離がある為、流通しているものが生活者に好まれるものばかりとは言えない。どこにでもある完成品の花鉢を販売する小売店は、値付けを上手にしないと売れ残ってしまう。従って、2015年、切花は堅調、鉢物類は軟調となった。生活者に喜んでもらえる鉢物類の商品化が、鉢物生産、流通業界の所得に繋がる。来年は鉢物業界が立て直す反転の年にしたい。

 2016年は、切花類の面積拡大と、天候異変に備えた生産・流通技術の装備を、また、鉢物類の時代に合わせた商品化を行えば、花き業界は確実に拡大へと進むものだと思われる。

投稿者 磯村信夫 : 12:06

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