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2009年3月23日

地方市場は範囲の経済

昨日、湯沢でスキーをしていたが、下のほうなどもうすっかり5月の連休のような雪の少なさだった。

今日23日の荷はこれも母の日近辺の量で、先週と同じだけあった。これだけ暖かいと思わず咲いてしまったのだろう。菊類は需要に合わせて出荷が減ったが、他の洋花はコントロールが利かず、今日ドッと出てしまった。しかし明日からの冷え込みで出荷量はおさえられ、来週からは3月も終わり4月、初夏の花が中心となっていく。

今日は需給バランスが崩れた格好での立ち合いとなるが、2009年度の花の需給バランスの基調は、需要が少なくなったり、あるいは低価格で販売しようとする動きより先に生産量が減っていったりする状況にあることは変わらないので、単価は横ばいから社会のムードに押されて安くなったとしても1割安というところに落ち着いていくだろう。

先週お話しをした個人需要主導型、特に地方の個人需要が主導して相場展開されたのが3月の彼岸相場であったが、仏花以外にも季節の小花や球根花など地方の消費者が業界を引っ張って行っている。しかし出荷物は生産量と運賃の関係から、ロットをまとめても値崩れを起こしにくい政令都市の大手市場に荷物が集まっている。したがって地方の市場は規模の経済でなく範囲の経済を行なう。この場合の範囲の経済とは、自分のところで使っていない資産や能力を使って市場業務以外の商売を行なうことだ。具体的には卸売市場の仕事をし、手の空いたときあるいはやりくりをして、仕入れて販売するという問屋行為を行ったり、せり以外にも御用聞きを行って受注販売をしたり、せりが終わった午後や通称「裏日」と言われる翌日に暇を持て余さぬよう花束や鉢物の加工をしたりする。このついでビジネスを範囲の経済と言っているが、地方の市場は範囲の経済をやりだしたわけだ。こうして地方の花き流通は形を変えながら進化していっている。地方ほど卸売市場がいろいろな仕事をし始めている。まだやり始めたばかりなので、仲卸や加工業者などと競合していくと思われるが、今後どのようなコストパフォーマンスを行なえるかによって多角化の成功がかかっている。これから競争は激しくなろうが地方の卸健在ということである。

投稿者 磯村信夫 : 00:00

2009年3月16日

次の局面に入った花き消費

2007年7月、食料品の値上がりやガソリンもリッターあたり140円になって、生活が苦しくなってきた。ボーナスも上がらず主婦は消費を手控え始めた。そこから百貨店協会が発表する婦人服消費がマイナスに転じたのだ。当時、ワンピースが流行り始め、単価が落ちたから私は前年比割れしたと思ったが、そこから明らかに主婦は生活防衛を始めたのだった。今まで花の消費が堅調に伸びているときというのは業務需要が堅調なときだ。百貨店協会の指標で、男性衣料が売れているときは花も絶好調だ。

現在の花の消費構造は、法人需要が低調だから法人需要の多い三大都市圏は最も打撃を受けている。失われた10年の後、日本のグローバリゼーション対応とは会計やコンプライアンスをアメリカ基準にすることだけでなく、輸出企業がアメリカの個人消費を目当てにモノを作り、日本から直接の場合もあろうが、アジア経由でアメリカに買ってもらい、そこから得たお金を三大都市圏中心に分配していた。三大都市圏、とりわけ東京は2002年からの好景気の恩恵を受けてきた。自動車、弱電、金融業、不動産業が活発な地域は少なくとも2007年7月まで、長くて2008年の第1四半期まで景気が良かったわけだ。その間、日本は内需拡大政策を取ってこなかったから、地方は好景気の影響すら受けず、少子高齢化でちっとも景気が良くないと言っていた。だから日本花き市場協会の150社の花の売上は横ばいから微減だったわけである。

当時は日本を三つの地域に分けていた。輸出企業で上場会社の本社がある地域(政令都市)、道州制の中心地で支店経済の地域(札幌、仙台、福岡に代表される地域)、農業と大手企業の工場で成り立っている地域の3つである。

昨年末(2008年11月、12月)は、派遣切りなどで工場経済の地域に不安が広がり、花の売れ行きが鈍った。本年に入り、1月15日過ぎ、グローバリゼーション企業による相次ぐリストラ政策が発表され、支店経済、本社が多い政令都市のいずれもが世界恐慌に類する100年に一度の不況を認識し、花の単価は史上最低の記録を更新した。生産者から小売店までため息をつく日々が続いた。しかし3月に入り、今相場を引っ張っているのはついこの間好景気の恩恵を受けなかった地方である。私の実感として、地方にうかがうと東京ほどの落ち込みはない。そのことを地元の方にお話しすると「最初から景気が良くなかったから、もちろん悪くなっていますがあまり変わりません」というのが実感だそうだ。ここが3月の花の消費を引っ張っている。もちろん花は三気商売で天気・景気・やる気である。暖冬で今年は東北・北海道地域は道路に雪がなく、3月にお墓参りをするなど花の需要が喚起されているが、しかしもっと大切なのは心理的な影響だ。日本は世界第2位の経済大国として内需拡大を目指さなければならない。もったいない精神でムダはいけないが、環境問題を考えた消費をすることや人間として生まれたからにはオシャレを楽しんだり、花のある生活をしたり、豊かな居住空間を手に入れるなど、たくさんのなすべきことがある。2005年、アメリカの家計はカードやローンを使って15%借金をしてまで消費をしつづけた。これでは破産してしまうから、当然リバランスしなければならない。日本は所得が上がらないから貯蓄の取り崩しもあるだろうが、マンションは年収の5倍と言っている。これはおかしい。EUやアメリカと同様年収の3倍で人心地ついた住宅が供給できなければならない。いくつか抜本的な政策を施し、内需による経済発展ができなければならない。そちらを向いた政策変更の時期となっている今、地方の暮らし向きが元気なうちに、21世紀の日本はこうあるべきという抜本的な経済政策を練り上げ、さらに内需を活発化させる施策を取るべきであると日本は政府に期待したい。

投稿者 磯村信夫 : 00:00

2009年2月23日

順番に下押し荷あまる

今日23日は3月を占う日であったが、20日の金曜日は北国で久しぶりの豪雪で、東北地方の中心仙台では土曜日にも雪があり、日本海側や北国の花の売れ行きは悪かった。バレンタインの前後はポカ陽気で、先週はしょうがないと腹をくくっていたが、20日の金曜日から入荷が減って、今日23日に賭けていた産地は多かった。前年よりも少ない入荷が20日、23日と続いているので、水曜日には結婚式需要をテコに相場が2?3割上がっていく予定である。

2?3割というとずいぶん上がっているようだが、2?3割上がるのと下がるのでは大きな違いがある。下がっていくときは高いところから落ちていくわけだから、ガクっと下がっていく。しかし上がっていくときは下から上がっていくわけだから、仮に2割上がっても元の水準には戻らない。よって3割上がってきたときようやく、2割下がった元の水準に近くなって、運賃や諸経費をまかなえて手取りが残るという水準になっていくので、2?3割上がって行くと言っているわけだ。

現在の市況構造はこのようになっている。高品質な花が法人需要が少なくなって次のお客様の大衆の上の人たちに買ってもらっている。価値はあるが、価格が下がったので大衆の上の人たちは、喜んでそれを買っている。そうすると今まで大衆の上が買っていたボリュームの大きい中上の商品は相対的に価値と価格が下がり、大衆でもその下の人たちが十分に買えるようになった。こうやって下落ちしてきて大衆品のかなりの数の花が買ってもらえるお客さんを探して右往左往しているのだ。買い手がなかなか見つからなかったというのが先週16日の週だった。

法人需要と個人需要の違いは販売促進費などの経費で処理できるのか、源泉徴収されたお給料の身銭で買うかの違いだ。この違いは大変大きい。単価にしたら3?4割違って当たり前だ。法人需要が少なくなったから、良いものを扱うところ、高級品を扱うところほど苦労しているわけだ。なぜ単価が安いのか、アフタータックスのお金で個人は買うからだ。安くてよくなければマニア以外の個人は買わない。だから順繰りになって価値の低いものが行き所を失っている。これが1月15日の小正月以降、花き市場で起こっている。残念だが現実だ。

投稿者 磯村信夫 : 00:00

2009年2月16日

多様性は進化

13日から東京ドームで「世界らん展」が開催されている。これを目当てにタイや台湾から生産者や学者がいらっしゃることが多い。生産者といってもアグリビジネスの社長で、まさにビジネスマンの人たちだ。日本で生産者というと自作農で、そんなに大きな面積ではなく、米と花あるいは野菜など複合経営をしている人たちが多く、農家はまさに生産者として自分の農場のマネジメントを地元の農協に外部委託している人が多いが、海外の生産者は事業家であることが多い。その人たちと今年は為替の話しに終始した。為替を決めるのは政治と経済だから必然、アメリカやEUのそして日本の政治経済の話になる。今まで人件費高に嘆いていた台湾やタイの生産者たちも、経費を抑え、質を高め、日本に今まで以上に出荷していくことを希望していた。

春一番が吹いて、陽気に誘われて都内を散歩すると、思った以上に早咲きの桜が咲いている。関東地方で結婚式の件数ナンバー1が目黒の八芳園だそうだが、そこの庭にもすばらしい桜がある。大田市場の花き部でも河津桜はいよいよ見ごろを迎えた。今まで2月に入ると花桃の販売に集中していたせいか、早咲きの桜に無頓着であったが、こうして見ると結構あるものだ。

昨日房総半島の花の産地を駆け足で見てまわった。ここにも桜は至るところにあった。房総市丸山の石堂寺では梅が見ごろを迎えていて、その香りに魅了された。梅でも数がまとまると、ほのかな香りも濃くなって、梅の香りはこういうものであったかと思い出させる。観光地となった花摘みの房州白浜から千倉、和田にかけては、かつて市場出荷をしていた人が、「花狩り」とも言っているらしいが花摘みで身を立てている。房州をまわって花と野菜の直売所と葬儀のセレモニーホールが随分と増えたように思う。市場出荷の産地としては、若年がはりきっている丸山地区を除いて3?5%ずつ毎年落ちるだろう。岩井、富浦や館山は、後継者が比較的多くいる地域だが、学校を卒業して即後継者に入るところは少なく、少し他人の飯を食って、社会・会社とはどういうものであるかを身に付けて戻ってこさせるという花作りが何軒もいる。安房郡の花作りは昔と違って、大変交通便が良くなって、その分経営マインドを持った農家でないとやっていけないと考えているようだ。そう考えさせているのは、アクアラインと館山道の開通だけではなく、南房総市になって地区のことをさらに深く考えるようになり、また農協も鴨川市農協が安房農協になり、安房郡が一農協になっていくことも、逆説的だが農家の経営者としての自立を促しているようだ。「今度息子を連れて行きますからよろしく」とか「市場に何年、オランダの生産者に何年」とか、そのように後継者育成プログラムを相談に来る人も多い。観光農業と東京中央市場に出す農業、そして関東や東北の一定規模の市場に出す農業、直売所や道の駅で販売する農業、花束加工をする農業、花農家としての生き様の多様性を今の房州に見て取れる。

投稿者 磯村信夫 : 00:00

2009年2月 9日

利益確定から取引先分析をしはじめた花き業界

立春も過ぎ温室の中ははや春で、入荷も少しずつ増えてきた。忙しくさせてもらっているが、売上減で利益減となっている花き業界は法人のお祝いの需要が少なくなり、消費者の節約思考から購買数は変わらないものの買上げ単価が下がっているからしょうがない。そうした状況の中にあって、産地や仲卸は利益確保のため新たな戦略を取ってきた。取引先を「利益を出させていただいている先」と「儲けさせてくれない先」、あるいは「ほとんど赤字に近い先」と、こういった顧客の分析を行い、特に「赤字の先」、「利益をほとんど出させてくれない先」には取引条件の改善交渉をお願いし、どうしても聞き入れてくれない場合には残念だけれど取引をやめる方向に出てきたのだ。

現在の環境下で花が売れていくためには「良いもの安く」、少なくとも「良いものがリーズナブルな価格」でないといけない。これは必要条件で、十分条件は「物語性」がお店やその花、あるいはブーケなどの製品にあるかどうかである。近年、大脳生理学で解明されたところだ。脳が動き、購買につながっていく。そのことを聞いただけでワクワクして買ってしまうのだ。

さて話しを元に戻すと、産地は今まで個別の仕入先や出荷先ごとに収益分析を行なってこなかった。仲卸もその取引先である仕入先・販売先に対して利益分析を行なってこなかった。ところがもうプール計算の名の元のどんぶり勘定ではやっていけなくなったのだ。だからそれを現在行い、産地や仲卸は取引先に改善を求めたり、選択と集中を行なったりしているわけだ。

卸売市場においても平成19年度の社団法人花き卸売市場協会のプロジェクトとして、手数料自由化をどう乗り切るか、一体全体卸売市場業務はどのようなビジネスプロセスで成り立っていて、それらはコストがいくらかかっているのかを東京農大の藤島先生のチームにお願いして、アクティビティー ベイスド コスティングから検証していただいた。いくつかぞっとすることが解かったが、そのうちの一つに同一荷口3個でせり業務やらせり前取引業務がペイする。2個や1個ではペイしない。経費倒れになってしまうのだ。そうするとせりにせよ、せり前取引にせよ、3個以上出荷してもらわなければならないわけだから、現在どの産地がその条件を満たしているかチェックする必要があるし、出荷要請のときに同一荷口3個以上を要望する必要がある。ケース3,000円でこの有様だから、これより安いものとなると同一荷口4個以上、場合によっては5個以上となる。一体全体そういう産地はどれくらいあるだろうか。産地の集出荷場はせりやせり前取引をしないだけで、市場と同じ様に入れて並べ替えて出すのが仕事だ。そうすると農協の共撰の手数料率によるが、9.5?10%の仮に1/3だとしても、同様に同一荷口3個じゃないとコスト倒れになる。

これで分かる通り、スケールメリットが利かない花は集中と選択でスケールメリットを高める必要があるわけだ。もちろん消費者は少量多品目を望んでいることが多い。高く買ってくれれば良いがそういう時代ではない。だから消費者の支持を得られる花やサービスにおいてはスケールメリットを利かす時代に入った。それは「利益は経費である」からである。今あるのは昨日努力したおかげ。今、明日の努力をしていかなければ明日がない。そのためには応分な投資が出来る利益が欠かせないのである。儲からない時代だからこそ、利益が出せる体制づくりを急がなければならない。

投稿者 磯村信夫 : 00:00

2009年2月 2日

日本の技・第58回関東東海花の展覧会

今年は1月30日(金)?2月1日(日)まで、池袋サンシャインシティで開催された。日本花き卸売市場協会は今年で50年目を迎えるが、それより8年前に既に開催されていた。生産者の技を競うその出来栄えにいつも深い感動を覚える。今年はまわり番で東京都が主催した。だから伊豆諸島や都下の生産者は関東東海の品評会にめがけて、例年の何倍もの力が入っていたように思う。関東東海花の展覧会で農林水産大臣賞の栄誉に浴すと、必ずその地域あげての祝賀会を催す。それほど栄誉ある会である。今年気になったのは、千葉県からの出品が少し少なかったように思う点である。適地である千葉は関東の消費者にとって欠かせない産地である。高速道路網が整備され、地域事情がかなり変わって、後継者難があると聞く。そのような中でも高い生産技術が地域に埋蔵している千葉県にがんばってほしいと思う。

関東東海花の展覧会を見に行った土曜日の夜、テレビのCSで麻生総理のダボス会議での演説を見た。アジアと共に生き、インドまで含めたアジア圏の経済活性化を日本はリーダーシップを取って行なっていく意気込みを述べたステイトメントであった。日本国の総理として誠に時局を得たものであると思った。というのは、1月21日ガイトナー財務長官の指名公聴会がワシントンであり、ガイトナー氏は民主党政権として政府の介入を為替政策の面においても辞さないことを意思表示した。また同様に中国の為替政策を名指しで非難した。アメリカは大きな景気刺激策をこの二年間でとってゆくが、その恩恵を受けるのは中国や日本を中心とした国々であってはならず、いわゆる「ただ乗り論」に警告を発し、内需を引き上げることとそれぞれの域内貿易の活発化をアメリカとして強く要望する態度を示したものであった。ガイトナー氏は、ドル安はエコニューディール政策で必要不可欠としている。中国は早い時期から4兆元(約54兆円)の内需拡大経済政策を国として発表しており、日本も早く有事における経済対策を出す必要があると私は思っていた。それがダボス会議で発表された。進路も内容も正しいものであったので一定に評価できる。そうなると花はドル経済圏の中南米の花も、ユーロ経済圏のオランダやアフリカの花も、ドル経済圏のアジア、オセアニア地域からも、日本には入りやすくなる。国内生産者は競争が激しくなるので、?製品化技術が高いこと、?円安で今まで導入できなかった海外の優良種苗を積極的に導入すること、の2つが必要となる。関東東海花の展覧会の品質レベルが日本と海外産品との棲み分けの鍵になる。

投稿者 磯村信夫 : 00:00

2009年1月26日

ポリシーが打つ手を決める

今年は団体の新年会は少ないが、情報交換を主にした人的ネットワークの新年会がやたらと多い。そういう中で得た花の販売に関しては一言で言うと「心配していたよりも悪くなかったのでホッとした」と12月を総括できる。花は三気商売で、天気・景気・やる気で構成されている。12月・1月と景気感は本当によくない。不景気風が吹き始めると、半年で正社員の給料が減額になり、1年で失業率が高まるのが通例だから、社員においては12月も1月もまだそんなに大きな影響は受けてはいない。しかし国によって、特にアメリカと日本は情報の共有レベルが対照的と言ってもいい程異なっている。日本は社会的な地位や年齢や性別などに関わらず、広く情報を共有化しようとするが、アメリカは上の方に情報が集中し、下の方にまで情報が流れていく仕組みが社会にない。よって日本は他の先進国と比べて、国民が一丸となって準備する姿勢が整う。こうして日本はデフレからようやく脱却できそうだったのに、また我慢の時代となっているのだ。

花は生き物で、なくなるものだから、花を飾る習慣のある人たちにとっては毎週季節の花を買うのは楽しいことである。年末から正月、お天気が続いた地域の小売店は「心配していたよりもよく売れた」と思って感謝した。あいにく12月27日・28日の土日にお天気が悪かった地域、ところによっては31日もお天気に恵まれなかった地域は前年より2?3割売り上げを落とした。この地域の小売店は「花も同様、厳しい」と感じている。今年2009年、前者は「努力すれば2008年並みの取扱金額でいけるのではないか」、後者は「年間通じると良くて9掛ではないか」と感じている。

国内生産は冬場2割近く少ない。1年を通じても、1割少なくなるかもしれないと予測されている。こういった供給量の中で、円が強いから輸入品が一定数量、不足を補うだろう。しかし海外もベトナムなど一部を除き、出荷量が増えているわけではない。そうなると、前年並みの出荷量を確保することは難しいだろう。「花の相場や流通量は地域によってまだら模様」と土曜日の内々の新年会では結論付けた。
本支店経済の地域と工場経済の地域で分かれる。本店が多い首都圏や中京圏、京阪神は不調な中でもまだ気を吐いている。地方の中でも支店経済である道州制の中心地は相場がそれなりに立つ。しかし工場経済の地方の県庁所在地では需要の強いもののみ相場が立ち、他のものは相対的に弱いので量を減らさざるを得ない。具体的にはこの1月で言えば葬儀需要はコンスタントであるから、それに使う菊類やストック、スナップは相場、消費量とも変わらないが、それ以外の需要の花材は量はいらないということになる。

本年・来年の見通しはおおよそこのようで、この中で各社はポリシーにしたがって戦略を練り、的確に手を打っていくことになる。経営環境が変わっても、確固たるポリシーを持ち、こんなときこそ的確に手を打って消費者に花のある生活を届けていきたいと思う。

投稿者 磯村信夫 : 00:00

2009年1月19日

花市場にとって最も大切な荷主さん

1年で1回しか行なわない市に1年の計をかける松と千両の荷主さん。その荷主さんと市場のつながりは太い絆で結ばれている。

17日(土)と18日(日)、千両と松の荷主さんである遠藤小左衛門農園の会長にあたる照一さんの葬儀があり茨城県波崎町に出向いた。波崎は利根川を挟んで銚子の対岸に位置する温暖なところだ。照一さんの父君である小左衛門さんが千両を導入し、私の祖父謙蔵が経営をしていた大森園芸に出荷をしてくださった。照一さんは私の父民夫を信頼してくださり、一番の千両の荷主さんとして花屋さんから高い評価を受けた。現在の棟主である幸夫さんの代になり、さらに品質を極め、大田花きで最も信頼される松と千両の荷主さんの一つとなっている。市は1年で1回のことだから信義しかない。

松は種蒔きをして3年目、ないし4年目に若松やカラゲ松、門松などを出荷する。3?4年のサイクルで絶えず仕事をする。これら若松の類をスジものと言うが、かつては鹿島の松、波崎の千両と特産地が分かれていた。しかし、撰別・荷づくりをする熟練工の人材確保が1ヶ月くらいの短期間だと所得の面から難しくなってきた。今では松だけの鹿島の生産者の数は10人と減って、2ヶ月以上雇用の期間を設定できる松と千両の波崎の生産者が日本のお正月を祝う縁起物の大産地となっている。その中でも有数の生産者が遠藤照一さんであった。同業者の後輩である岡野三男さんを弟のようにかわいがり、自分の出荷先に荷を出すことを認めてきた。たまたまだったのかもしれないが、弊社大田花きと大阪のなにわ花いちば殿をメインに出荷しており、質や量の面で競争が最も激しいといわれるこの2市場で弟分の岡野農園を好敵手としながら、消費者と花屋さんの立場に立った生産・出荷を行い、時代と共に重きを置くポイントを変えながら現在に至っている。

農産物である千両や松は天候など自然の影響を受ける。だから契約取引をお願いしても遠藤さんは確実にできる量しか受けてくださらない。「そこまで硬く見なくてもいいんじゃないですか?」と言っても、「もうそれ以上は受けられない」と言って、断ってしまう。そんな風だから、せりで仕入れてくれる決して大きくないお花屋さんの1人1人の期待に応えようと、やってみなければわからないせりにどんと出荷してくる。安定収入を求める事業家としての当然の要望よりも、遠藤さんの価値観はそれよりもさらに高いところにあるようだ。尊敬する荷主さんのうちの1人である遠藤小左衛門農園の遠藤照一さんの葬儀に参列してきた。

投稿者 磯村信夫 : 00:00

2009年1月12日

文化展二つ

「生け花スピーカー」の古賀さんから招待チケットをいただいて深川にある東京都現代美術館で開催されたブラジル移民100周年記念の展示会を見てきた。ブラジルの花ビジネスではサンパウロ周辺の日系人とオランブラ周辺のオランダ系の人たちとが激しく競争をしている。花生産のスタイルも現在の日本とオランダくらいの差があり、オランダ勢が伸びていることが気に掛かるところだ。

展示会では藤原大氏とイッセイミヤケ クリエイティブルームがデザインした洋服が展示してあり、そのテキスタイルはアマゾンの森や川をイメージしたニットで作られている。そこに旧知の古賀さんが熱帯観葉植物カークリコで生け花スピーカーをもってジョイントしており、「生け花スピーカー」から発する自然の音が何とも言えぬ空間を作っている。藤原大氏と共演しているブラジル側のアーティストは有名なカンパナブラザーズで、色の魔術師と言われる現代的なアーティスト。彼らが使っていたのは何気ない空間の中で、素通しの壁にミニ観葉を配置しており、それもよく気を配った新しい部類の品種が多く入ったミニ観葉で、空間造形に色でリズムを加えたものであった。芸術家は時代を鋭敏に反映するが、どの作品を見ていても不況による不安感や絶望感は感じられなかった。ブラジルは経済と芸術、そしてお得意のストリートカルチャーをますます発展させていくことだろう。

10日の土曜日には、東京箱崎にあるロイヤルパークホテルで「いけばな大賞2008 第82回全日本いけばなコンクール」の表彰式が開催された。主催は社団法人帝国華道院であり、協賛は社団法人いけばなインターナショナルである。花き業界は農林水産省で所轄されており、しかも花き振興室が生産・卸売市場から小売りの団体まで5つの社団法人を所轄している。あとは種苗課が種苗団体を所轄しているので、植防や農薬まで含めてすべて農林水産省で話しが済む。近年、花き産業が成熟期にかかり、文化の伝承を考えたり、消費の拡大を考えたりするときに、文科省が所轄している社団法人帝国華道院や生け花の各流派との協業や社団法人日本フラワーデザイナー協会との横の連帯が必要になってきた。さらに外務省が所轄のいけばなインターナショナルのように海外に支部がある団体との連帯も不可欠となっている。

社団法人帝国華道院の理事長である関江松風氏や社団法人いけばなインターナショナルの会長である中山逸子氏に花き業界との連帯の話題を出すと、省庁間の縦割りで今まで横のつながりがなかったことを残念に思っており、今後共に出来ることがあったら、一緒にイベントなどを協賛し合い、花の文化を盛り上げてゆけば良いと話し合った。

押し花文化やアートフラワーまで含め、それぞれの花の造形文化につき、ともに協力し合えるところはし合って、個別のイベントの数を減らしてでも総合的な大きな花のイベントを作っていく必要がある。

投稿者 磯村信夫 : 00:00

2009年1月 5日

お正月は吉と出た

明けましておめでとうございます。


昨年の12月は大変重苦しい雰囲気の中で、お歳暮、クリスマス、年末の商戦が展開された。お歳暮、クリスマス需要は前年よりかなり落ち込んだが、年末はお天気によって明暗を分けた。関東地方はお天気に恵まれ、足りなかったところも多く出るなど、1月3日の市、5日の初市とこじっかりした商況が展開されている。あいにくのお天気だった北陸・東北・北海道などでは、小売りの業態により、またお店により売れ具合はまちまちだったようだ。

海外に目を転じると、アメリカではクリスマス前に早くもクリスマスセールを30?50%オフで行なうところもあったらしい。花は1割?3割客単価は下がったようだが、例年の数は売れたようだ。日本と同様、インターネット販売は好調で、インターネット花店ナンバーワンのプロフラワーズで昨年よりも1割増えたようだ。アメリカは会社の人員についても機能を最優先するため日本人から見ると情け容赦ない待遇をしていると感じるが、その分効率的で競争力があるとも言われている。日本から見ていると、非人情のようにも思うが、リストラされた人たちが身近にいるアメリカで、クリスマスに花を例年通り使ってくれたと何人ものアメリカの花屋さんやスーパーの売場の責任者、そしてインターネット花屋さんが言っていた。アメリカ人に言わせると、アメリカと比べ動きがゆっくりしているというヨーロッパでは、フランス、ドイツ、ベルギー、オランダとも、昨年とほとんど変わらず売れていたようだ。さすがに贅沢なものは売れが鈍かったようで、例年より若干単価を落としての販売だったようだが、変わらず売れているという状況だったそうだ。確かに住宅バブルだったアイスランドやスペインやイギリスではオランダの市場でエクスポーターの買いは鈍かったと市場の人間は言っていたが、何か破滅的にも報道されているロシアはしっかりした需要だったそうだ。総じてEU諸国では、法人需要があまり多くないわけだから、花から見た暮らし向きは何か豊かな感じがする。

休みの間、第二次世界大戦後の花き業界の年表を作っていて、このままじゃいけないと自らを奮い立たせたことをお知らせしたいと思います。昭和20年(1945年)の終戦から20年間が日本の花き産業の幼年期。昭和40年(1965年)から30年間が日本の花き産業の成長期。ホームユースやガーデニングなどもこの時だった。一般社会では昭和60年(1985年)頃から成熟社会に入ったと言われていたから、花き産業はその後10年かかってホームユース、ガーデニングと成長していったわけだ。そして平成7年(1995年)から成熟期が始まっていった。まだ花屋さんの数は増えていたし、ガーデニングブームも始まったばかりだった。しかし平成9年(1997年)に消費税が5%になり、三洋証券、山一證券が倒産したり、平成11年(1999年)からは花の価格もデフレ化していった。2009年、今は成熟期から衰退期に入ったのだろうか?環境が叫ばれるこんな時こそ花と緑が人々に人間が持つ本来の人間性を思い出させ、自分や社会を調和の取れたものにしてくれるはずだ。「成熟期でよいが、衰退期にさせてはならじ」これが花き産業人の一人である私の心意気。だってそうでしょう。誰がやるのですか。我々以外にいません。我々自ら日本国民に花と緑を届ける。そういう気持ちをもって毎日の仕事に邁進してまいります。

本年もよろしくお願いいたします。

投稿者 磯村信夫 : 00:00

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