大田花き 大田花きコーポレートサイトへ
 

2007年4月 2日

花き流通業の今年の進化方向

新しい年度が今日より始まります。花き業界の各社は昨年以上に進化していくことでしょう。今日は年度はじめに当たり、その方向性をお知らせしたいと思います。

1、小ほど小回りが利き進化が早い
日本中の卸売会社でセリ前取引を行っていないところはほとんどありません。三年前と様変わりです。セリの前々日か前日にインターネット定価売りをしていない卸売会社も少数派になってきています。昨年急速に進化したのは、年商15億円未満の卸売会社で、特に10億円未満のところは、ITでいえば携帯電話がそうである通り進化が早く、買い手の仕入れの友として頼りになる存在に育ってきました。今まで卸売市場の卸会社は産地と買い手である仲卸や小売店の間にあったのですが、この進化している卸売会社は消費者と小売店の間にあって、特に小売店との密着度たるもの、それは素晴らしいものだと思います。確かに大口顧客である仕事屋さんやチェーン店、あるいは量販店など、量・質とも要求されるところは大手の卸の顧客でありますが、彼らは中堅以下の顧客をしっかり捕らえたのでありました。今後とも小売店とともにこれら卸は進化していくものと思われます。

2、戦略を持たない仲卸苦戦
これら中堅以下の卸売市場は、業態を仲卸業や問屋業にあわせて進化してきました。「必要なものがあれば注文してください。揃えて届けます。」年商20億円台の卸もこのように顧客維持のため、業態を変化させました。そこで激しくぶつかっているのが仲卸との競合です。当初の予測ではより小売に密着している仲卸が勝ち、卸は売ってやる姿勢では敗れるものと思われていました。しかし、卸はもう後がありません。手数料の自由化もあと2年に迫っています。そんなことから、日本中の卸売市場を見ていると、卸と仲卸がライバルとして競争しあい、仲卸に軍配が上がった卸売市場は少なからずありますが、しかし待ちの姿勢の卸から積極的に顧客のところに出向く卸も多くなり、そういうところが勝ち星を積み重ねています。昨年の夏にはその分水嶺だったようです。そうなると仲卸は二つの戦略を持って、自らの仕事を進化させようとしています。一つはサプライチェーンの中で、小分け作業(ピッキング)に重点をおき、ロスの軽減を顧客に提案する。もう一つは、川下に下りていき、花き業界以外で花を使う法人を顧客にすることや特定の花のチェーン店と組んで、そこの花の仕入れ・配送まで含めたサードパーティーロジスティックスを行なう。この二つが従来のものに加えて新しい戦略として浮かび上がっています。花の仲卸の社長は一代目がほとんどで、魅力ある人物が多い。必ず、一般社会に打って出てくれることでしょう。元気な魚の仲卸はインターネットの初期の成功事例にあるように、『プロ・築地の卸が選んだ魚』のお届けサイトなどが有名ですが、プロの目利きが花の仲卸の売り物ですから、私自身は今後の仲卸の活躍に期待しています。

投稿者 磯村信夫 : 00:00

2007年3月26日

人材の多様化が花き業界を発展へ

花の卸売会社もさまざまな雇用形態になっている。パート社員、アルバイト社員、派遣社員、嘱託社員、契約社員、正社員、このように多様化している。このように雇用形態が多岐に渡ってきたのは、何も大田花き一社のことではない。少し広く見ると世界でそのような傾向になってきている。世界で現在最も躍進著しい人材の会社は、派遣会社と請負会社である。

現在、国で議論されているように、残業が25%増しの賃金ではなく、5割増の賃金だとすると、日本は残業が減ると言われている。理由は仲間や上司から残業稼ぎだと思われたくないので、その従業員が段取りよく仕事をこなすからだ。日本には仲間から認めてもらう、通称「裏承認」と、秀でた才能パフォーマンスを披瀝したときの「表承認」と二つある。現在の知識社会、ポスト工業化社会では、創造性が不可欠である。会社でも成果主義の人事制度をとり、実力のあるものは年齢ではなく働けるようなシステムにしながらも、独創性が今ひとつ出せていないと言う。それは日本特有の仲間内から認められる「裏承認」のためだと言われている。バカになってみたり、ドジをしてみたり、できるヤツほど付き合いや義理を果たして、あんなに忙しかったら大変だろうと思うことがある。こういう中で、先ほど書いたように多様な種類の雇用社員がいる。ここではじめて各自がお互いの人としての特質や欠点を認め合い、一つの目的に向かって仕事をしていこうとする気運が生まれてきている。混沌と競争が必要なのだ。

今まで同質性が強調されていた雇用形態では、「出る釘は打たれる」という風であった。それが花き業界も全体で売上が落ち、ゼロサムの法則どおり、どこかが伸びるとどこかがへこむとういことになり、嫉妬や陰口などが出てきた。しかし、2009年手数料の自由化でいよいよ押し詰まってきたときに、このままではいけないと、世間をよくを見、外に目を転じていく人たちが増えてきた。特にバブル経済崩壊後、花き業界に入った35歳以下の人たちに素晴らしい人材が多くいる。もちろんそれよりも年配の人たちにも素晴らしい人材は多いが、気持ちの切り換えが行動に結びついているかというと、何か昔の成功体験と比較しているかのように、出来ない理由を並べたり、自慢話になったりしている。花き業界における雇用の多様化と新しい人たちの活躍が、新しい花き業界を生み出していくことが実感できる。

投稿者 磯村信夫 : 00:00

2007年3月19日

アジアの中の日本の花

彼岸のお墓参り需要と卒業式需要が重なりセリ場は活況である。ロジスティックの観点から見て、飛行機便の荷物は月曜日に遅れることが多い。それはこの時期、通常に飛行機便を使う産地に加え、沖縄の荷物が増えてくるから、羽田の航空貨物取扱所が混雑するのであろう。飛行機機材もかつてのジャンボ系からどんどん小さくなり、その分、荷が割れてくることが多くなっている。成田は良いのだが、問題は羽田の荷物となってきた。他のトラック輸送はずいぶん改善され合理化されているので、飛行機便の羽田の改善が望まれる。

さて、話題をもう一つ。フラワーアレンジメントを習いたいという若い女性は、一時に比べて少なくなっている。しかし、サークル活動のようなアレンジメント教室は活発だ。ちょうど大学でも○○部は部員が集まりにくくなっているのに、サークルは気楽なのか人気である。今、我々の財布では、「健康」に対する財布と「絆」に対する財布の紐がゆるい。この絆の一つに、気の合うもの同士の花のサークルやお料理のサークルがあり、もちろん音楽のサークルもある。仲卸さんの営業活動を見ているとフラワーアレンジメント教室だけでなく、このようなサークル活動への花の供給が増えていることがわかる。花を習いたいという人は減っているのかもしれないが、楽しみたいと思っている人は確実に増えているのだ。

さて、このような環境の中で、日本フラワーデザイナー協会(NFD)は「今年の日本のフラワーデザイン」を発表していく方針だと聞く。それは大変素晴らしいことだ。楽しみの中には流行のスタイルを取り入れるということもある。アジアの人たちは今でも日本の花について学ぼうと努力している。外に向かって、NFDが情報発信するということは、アジアの花のセンターである日本が、今後益々その役割を果たしていく上で、必要不可欠なものであろう。

投稿者 磯村信夫 : 00:00

2007年3月12日

輸入花は増加傾向

 東京では六本木ミッドタウンが新たにできるなど、質の高い生活空間を整えつつある。富山のように海・山・自然・持ち家などの伝統文化に根ざした生活の質を備えたものではないが、グローバリゼーションで世界の大都市に負けないハイテクに裏打ちされた居住空間が東京の目指すところだ。過去3,4年ほど、日本は世界の同時好景気と円安が相まって、特にアメリカと中国の高度成長のおかげで、大企業は利益を上げてきた。しかし、企業の順風満帆の状況はここで一旦仕切りなおし、これからは普通の経済成長となる。
家計部門では企業によって異なるが、昇給が行われているところもあり、初任給を上げているところもある。このように所得が増えていく基調にあって、個人消費は2007年の夏のボーナスから少し期待ができそうである。

景気が良い良いと聞くが、花には少しも良い影響がないと、昨年花き卸売市場協会の会合のたびに異口同音に言っていた。それはグローバリゼーションでデフレのプレッシャーが絶えずあるからで、昨年は天候などの不確定要因を除けば、秋までかなり好調だったと言えよう。

今年は円高にふれ、輸入品の数量が昨年よりも多く入ってくるものと思われる。中国やベトナム、あるいはインドにしても、GDPの中で輸出が占める割合が甚だ高い。例えば日本であればせいぜい輸出入共々15%前後、アメリカで20%、ドイツで40%、中国はなんと70%だ。どう見てもこの経済はバランスの取れたものだとは言えない。しかしグローバリゼーションの世の中で、新興国はここまで世界に打って出ているということである。とりわけ東南アジア地域は、工業製品だけでなく花も輸出をして外貨を得たい。先日、エチオピア大使がもっとバラを買ってくれとセールスにいらっしゃった。今後、人口が最も増える国の一つにエチオピアがあり、食っていくためには外貨を稼がなければならないということのようだ。そうなると、平均して日本の輸入花のシェアは15%から5%増えて、20%に届くのではないかと予測される。花き専門輸入商社の努力で、日本で再度選別したり、日本人の好みに合うものを入れたり、咲ききる品種を指定したりして、品質は毎年上がってきている。国内の花もアジア諸国に向け、輸出したいと思っているが、実行しているのは4,5箇所と少ない。ほとんどの産地は地域リーグ、あるいは日本リーグだけでどう優勝するかを考えている。例え日本で仕事をしていても、世の中はすっかりグローバリゼーションになっているから、再度世界一を目指すことで生産者間の目線を合わせてもらいたい。(野球に例えれば、草野球、高校野球、都市対抗、日本のプロ野球、アメリカの大リーグがある。世界リーグもあるが、実質はアメリカの大リーグが世界リーグと言って良いだろう。)
花そのもので、直接消費者を喜ばせるのが生産者の仕事。世界の優良な花は今後とも、質の高い生活を目指す日本に輸出されつづけていくことだろう。国内産地は、輸入花による中級品の価格のプレッシャーも強く、今後どのような土俵でナンバーワンになるか、戦略の見直しが必要となっている。競争を絶えず意識して仕事をしていただきたい。

投稿者 磯村信夫 : 00:00

2007年3月 5日

3月の相場予測

3月に入ってからも暖かい日が続く。週末にはコートなしで街を歩く人が大変多かった。車椅子の人たちも、街に出ていてなにやら楽しそうだ。
ある航空貨物を扱う責任者の方と話す機会があった。「今年は雪が少ないから、お墓参りの需要が増えると花き業界では予想しているのですね」とさすがプロらしい発言があったが、小生からは「一面そのようです。しかし他の面から見るとこの暖冬は花の商売にとってマイナスの点もあり、例年並ではないでしょうか」と話した。

そこを、もう少しお話すると、早咲きの桜はもう咲き始めた。3月一ヶ月で見ると、東京は九州と同じで3月20日に染井吉野の開花が見られるとされているが、お彼岸のお中日のときに花見ができそうだから、当然にお墓参り以外の切花の需要は落ちそうだ。パンジーはようやく元気になり始めたところで、その頃真っ盛りであろうから苗物の需要もそれほど大きくなるとは期待できず例年並みといったところであろう。

今朝も荷を見ていると、お彼岸用の露地ストックなどが出てきたから二週間早い。キンセンカはピンチをして、二又仕立てにしてもらっているので後にずれ込む予定であったがこれも早い。沖縄の小菊も三日程前進していると聞く。では前進をしてしまって14日の水曜日以降高騰するであろうか、いや少なくなってもそんなに高値相場が出るとは思えない。理由は二つ。一つ目は、消費者はすでに花の値段をよく知っており、いくらからいくらだったら買うが、それ以上でもそれ以下でも買わないとなっている。二つ目は、所得が増えていないので、花の消費が例年以上に活発化するとは思えないからだ。確かにアルバイトを社員化したり、団塊の世代の退職に合わせて新卒を増やしたりなどの賃金アップの動きがある。しかし基調は日本では外国人労働者ではなく、女性と高齢者の労働意欲が活発で賃金を押し上げる状況にあるとは思えない。もちろん高くしたら売れなくなってしまうから、コストが上がるとなるとグローバリゼーションで中国やインドなどに工場が移転する。あるいは日本は法人税率が高いので会社を外国に移すなどといったことが考えられるからだ。よって若年労働者の賃金がそう簡単に上がってくるとは思えないので、みんなが良い賃金上昇は考えにくく、花の消費はそんなに活発になる状況下ではない。

3月は総じて中値安定の相場展開になるであろう。そしてみんなが花を買うときに自分も買いたいと思うので花が売れていく。しかし、消費の手応えはあっても、パイが拡大するといった力強さはまだ感じられないだろうと予測している。

投稿者 磯村信夫 : 00:00

2007年2月26日

円安で困る花き業界

今日のセリ場はスタート時から盛況であった。ひなまつり・晦日の仏花需要・高校の卒業式・週末のウェディングの需要が重なって春本番の様相を呈している。
 相場商売をしていると、日々変化がありそれだけでも十二分におもしろく、あっという間に一年が過ぎてしまう。しかしそれではよい仕事ができないので、どうにかコツコツ積み重ね、新しい仕事の形を作ろうとしている。
 
 話は横道にそれるが、国立博物館平成館で、昨日閉幕した中国国家博物館名品展は、何千年もの歴史を経た美の存在感が心に染み渡り、一種の恍惚感をもたらして、観るものを寡黙にさせた。これら美術品は都合不都合をあきらかに乗り越えている。
日頃の仕事の中では、時(の都合不都合)の意見と分かれることがある。
例えば経済諮問会議で検討されている医療改革や農業改革は、時代の都合不都合を言っている。来るべき時代の都合不都合を考慮し、国民の安寧秩序に資するため、全体最適を図ろうとする。一方業界は、国の一つの構成員であり、供給者でもあるので、時代の都合と相反することもあろうし、業界の中の一企業とすれば正に変わることは面倒な、不都合なことと捕らえられても致し方ない。
 都合不都合には、美術の世界でもよくあって、例えば近代絵画の画家などは、グッケンハイム家がいなかったら、どんなことになっていたか。生前は貧乏で、亡くなってからその絵が高値で取引されることになっていたに違いない。

 今、日銀は利上げをしても、日本国の国債・地方債の利払いや中小零細企業の経営悪化などから、ヨーロッパ並の金利になることはまだ先のことだとされている。聞いた話だが、スペインやセルビアで住宅ローンを組むとき、為替リスクがあるにも拘わらず、円建てサムライ債で住宅ローンを組むことが実際にあるらしい。
 このような状況だと我々卸は、円安で輸入商社の苦労を知る必要があり、再度輸入花の価格設定について練り直ししていかないと、質的にも量的にも消費者を満足させることができなくなるのではないかと思う。
 
 日本は暖冬気味で、開花が前進している。コロンビアやエクアドルは寒波で、一体全体赤道直下でコートがいる日などというのはあるのだろうか。本当に異常気象は恐ろしい。
そうなるとお彼岸の荷物が困る。消費者は花のことを既によく知っているから、いくら品物が足りないと言っても、消費者の持つ値ごろ感の許容範囲であれば
「高いわね」
「今年はこういう訳ですから」
とコミュニケーションすることによって花は買ってもらえる。しかし許容範囲を超えるシンギュラーポイントを抜けてしまうと、途端にいらなくなる。
これが成熟産業である花きの実態ではないか。国内生産者と同様、花の専門商社の人と卸・仲卸が緊密に連絡をとっていく必要がある。そうでないと、商品のパイを減らしてしまうことが予想されるからだ。
そして更に、輸入商社の方々と国内の主要産地は、共に日本国民へ花を供給するという同じ立場でコミュニケーションの場を持つべきである。
 同業者同士の話し合いをもつことも、時代の要請ではなかろうか。

投稿者 磯村信夫 : 12:31

2007年2月19日

東京マラソンで花プレゼント

伊豆太陽農協からいただいた大田市場の河津桜は見頃を迎えている。流通センターのところにある雪柳も早々と咲き始めてきた。なんと早いことだろう。今日の市場の荷姿を見ているとすっかり3月のお節句後の荷姿だ。春の草花が多く、季節の先取りでうれしいところだが、消費者はひなまつり用の桃を欲しがっているからちょっと需給のミスマッチがある。

さて昨日は東京マラソンであった。都内の花の関係者で作る東京都花き振興協議会という組織がある。5つの中央卸売市場花き部に多摩地域を加え、そこを利用する小売店・仲卸・卸が集まって会を構成している。生産者は参加していないが、まさに東京都内花関係者が一本化した組織である。この組織は花き業界のアンカーである小売店から会長が選出される。今期は葛西市場花き部から選出された天田会長が急逝されたので、例外的に葛西の仲卸の大矢さんが会長に就任なさった。その大矢会長のもと、何か消費宣伝活動をしたいと話し合いが持たれていたが、企画部会長のフローレ21小池社長(世田谷市場・大田市場の仲卸)のもと東京マラソンで女性の完走者6000人に花束をプレゼントしよう、男子・女子・車椅子の3部門の上位8名に花のレイをプレゼントしよう、となった。海外の市民マラソンでゴール近くにはワゴンの花店が出て、そこで完走したお父さんに花をプレゼントする、恋人に花をプレゼントする。将来こういった市民マラソンと花束プレゼントを日本でも一つの習慣にしようと振興協議会で取り組んだ。フローレ21の小池社長が花き振興協議会の企画部会長、プロジェクトのリーダーだ。そのもとに大矢会長や葛西市場の三島理事長(小売)が積極的に関わり、東京中の花店の代表と仲卸の代表、卸から派遣された社員たち、それに東京都花き市場協同組合の職員の人たちが加わって、16・17日の東京ドームでのプレイベント、17日のフローレ21作業場での花束加工やレイ作り、そして昨日本番でのプレゼントや表彰式の立会いを、まさに東京中の花き関係者が協力して行なった。特に17日のスイートピー、ガーベラ、カーネーションの花束作りでは、フローレ21さんの指示も適確であったが、一致団結の協力具合も素晴らしく、予定よりも2時間早く出来上がった。

産地や輸入商からも素晴らしい花を協賛いただき、本当にありがとうございました。

P.S.
より詳しくは株式会社セロンの芹沢社長が振興協議会のカメラマンとして良い写真をお撮りになっていらっしゃいましたので、株式会社セロンのHPへ。
また東京ドームでのプレイベントの様子は弊社のHPでも見ることができます。

投稿者 磯村信夫 : 00:00

2007年1月22日

新しい日本の花き業界への動き

 今日は雨模様だが雪になるようでもあったので、雨で済んで良かったというところである。冬なのに関東地方は日射量が不足し、ステムが柔らかかったり、細かったりするものが多い。2月後半からのものは例年のとおりだが、それまでは少し優品や良品が多くなる。入荷量を見ていると案の定、昨年よりも5%以上少ない日々が続いている。

そんな中で昨年の「千葉中」の閉鎖と同じように、「相模原園芸」が19日の金曜日、市場の業務を閉鎖した。いずれも経営が健全のうちに閉鎖したので、そこを利用していた荷主さんやお花屋さんは困ったろうが、良い判断だと言える。

なぜこのようなことを書いたかというと、我々のような中小零細の廃業や倒産が2005年から再び増えてきたということだ。これはあらゆる業種に言える。ゼネコンや知事の汚職問題まで含め、広くはグローバリゼーションの中で21世紀の日本に生まれ変わるべく新陳代謝が行われている。2010年までこのような状況が日本では続いていくと思われる。そう思う理由は、日本は第二次世界大戦後米軍に統治されたが、ものの考え方やあらゆる社会システムが日本流だからである。2,3年前までのアジアンビューティーから、現在はジャパニーズビューティーになっている。ジャパニーズビューティーになってきたのは一方には日本の良さが忘れ去られ、失われつつあること。一方には日本の得意技であらゆるものを入れて日本流に焼きなおしたものに磨きがかかってきたということ。この二つの意味からであろう。日本は日本独特の文化、文明を持つと世界では定義付けられている。そして日本の役割はイギリスのそれに似て、アメリカとアジアの掛け橋になることであるとしている。よって日本は「お互い様」の思想や「フェアー」の物差しで自らを律し、アジアに位置しながらも、西洋とアジアの掛け橋になっていく役割を果たすことが必要であろう。

そのような視点でチェンマイ花博のジャパンデーに合わせ、先週国交120年のタイ、国交50年のマレーシアの花き業界を日本花き卸売市場協会の視察団の一員として見た。東南アジアの花き業界は中国系の人たちが多く、花は仏教や道教、ヒンドゥー教の仏壇に月2回は供えられるなどの日本との共通項も多いことから、アジアの花産業に日本は貢献できると確信した。日本はイギリスのようなポジションで他のアジア諸国と接していくのが一つの道であるように思う。

投稿者 磯村信夫 : 00:00

2007年1月 8日

冬の一日を大切に

大荒れの天気が二日続いた。ビニールハウスの被害が心配だ。

今日から平常の営業となる。とは言っても今日は祭日営業。だから普段の月曜日の朝なら、活け込み用の花材の仕入れでごった返す仲卸通りも、今日は少し静かだ。それを見込んで、店売り分の仕入を控えた仲卸もいるし、また飛行機などの交通の便が乱れていることで仕入を減らしたり、やめたりした仲卸や地方卸もある。だから平常に戻ったとは言えないが、入荷量を見るとどうも今月中は予定通り少なそうだ。油代の高騰は生産者の懐を直撃している。入荷の少ないときは需要の少ないときでもある。しかしそれは個人消費が少なくなるということであって、販促をしなくていいということではない。花は寒いからよく保つのでかえって消費者価値は上がっているから、人気が出てきたラナンキュラスなどのような春の小花を前面に押し出してアピールしていきたい。

年末の需要期が終わったばかりだが、いわゆる物日相場による売上増を予算の中に組み込んではならない。せいぜい予算組みするとしても、正月を迎えるにつけ、品質の良いものが量的に売れるから平均単価が高くなる。よって、この程度のアップに売上予算をとどめておくべきだ。物日相場によるインフレを計算できなくなった昨今、いかに三月中旬までのそれぞれの週を大切に商いするか、ここが最も大切なところである。もちろん次の物日に準備しておくことも大切であろう。しかし目の前にある今に集中すること、そこで最善を尽くすことが必要だ。計画を今日に落とし込み、そして今日も欠かせない1日として計画を立てて行動する。そういう努力を花き業界はしていきたい。

投稿者 磯村信夫 : 00:00

2006年12月25日

評価眼

 今日は新しい花の評価についてお話したい。花もご多分にもれず、成熟産業となった。情報産業やIT産業であっても売上のピークは2000年前後で、2005年はそれより落ち込んでいる。国内マーケットはどの業界も大変だ。だから花産業は毎年2000に近い新品種を出して、消費を刺激しようとしているがなかなかうまくいかない。日本における花き消費を見ると成熟化しているととれる。消費が成長期にあった1970年代?80年代は珍しいものがセリに出ると、どのようにその花を水揚げしたら良いのか、何日もつのか、あるいは水やりや手入れの仕方などわからなくても、買参人は先を競って買っていた。それがどうだろう。バブルが崩壊してからというもの、新しいものに対してセリ場では普通のものと同じか、場合によっては安いということが起きてきた。知られていないから安いのか。そこで卸会社はショーケースに飾ったりして、この品種はこういうものですよと知ってもらおうと、いわゆるPRをここ10年以上している。しかし、セリ場ではよく名の通った品種が売れ、新品種が安いということが繰り返されている。例えば、黄色のフリージアではアラジンが、白バラではティネケがまだ流通している。この古い品種に指名買いがあるのは日本だけではないだろうか。では、バブル経済が崩壊したので小売店が新しい品種を評価できなくなったのかというと、経済の理由だけではなく、人材の若返り、つまり番頭さんや後継者がセリ場にきていないことにもその理由がある。僕は大森の町工場の中で育ったから、今でも元気な町工場はどういうところか解かる。社長がいて、番頭さんがいる。10歳か15歳くらい若い。社長さんが得意とするものプラス、番頭さんがこれはいけそうだというものを作っている。そこに息子が入る。息子はしばらくすると若い感性で今の流行のものをとらえて作ろうとする。天才的にできる親父がいて、時代を乗り越えて、いいものを作っている人もいるが、一般的には会社にもさまざまな年代の人がいて、それぞれが会社を盛り立てる。その構造が花屋さんにない。今人気の花は30歳代の働く女性が決めているから、その人たちをお客さんにしている花店は新しい花を評価するがそうでない花店も多い。どちらかというと評価眼を持つ花店は仲卸を利用することが多い。仲卸の社員は若く、感性も磨かれているので仲卸が小売店を代弁するようになってきた。そして仲卸の店頭で新しい花が小売店とデザイナーなどの買出人によって評価される。そういう時代に花はなってきた。産地もフェアーをするとき、セリ場での挨拶と、セリ場上での商品展示が今まで定番だったが、この頃仲卸さんの店頭で販促活動をするようになった。評価をする場所は少なくとも大田市場の場合、仲卸通りが評価の場所とここ10年で変わってきた。

成熟した国家はいずれもそうで、「あなたの欲しいものはこれでしょう」と現物を見せて、評価してもらうしかないのである。

今年は今回で最後です。一年間毎週目を通していただき、大変ありがとうございました。
来年も宜しくお願い致します。

投稿者 磯村信夫 : 00:00

Copyright(C) Ota Floriculture Auction Co.,Ltd.