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2006年12月18日

花は経済のバロメーター

今日18日(月)のセリ前、「FLOWER OF THE YEAR OTA2006」の表彰式が行なわれた。消費者の心をとらえた花であることは言うまでもないが、日本語が世界語になった「かわいい」であらわれるエレガントな中にも愛情をにじませる健康的な美しさや、健康・環境への価値観を体現した30歳代の女性が好む花が各シーズンのグランプリとなった。詳しくはHPを参照下さい。

さて今日はもう一つ、景気動向が非常に敏感に花の消費に影響を与えはじめたと思われるので、その実態をお話ししたい。昨年、よく地方の花市場の社長が「東京は景気が良くなってきたので、もうそろそろうちの方も良くなるはずだ。一年遅れるか一年半遅れで良くなるだろう」というので、僕は率直で失礼だが、「それは昔の話で今はそうではないのでは」と話した。今は基本的に経済の動向が変わり、人口動態も変わっているから、今までの経験が通用しない。10月から実感として景気が下向きだ。アメリカの景気減速、ユーロ圏の景気減速で来年の9月くらいまで企業のセクターは今までよりも良くない。しかし日本の個人消費セクターはわずかだが失業率が改善され、所得も向上してきた。団塊の世代のリタイアに合わせ、品質重視の消費性向は益々高まっていくだろう。
さて今言った経済そのもののパイの縮小を意味する少子高齢化の中で、食と住の産業はかなり再編が進んできた。花も当然、その中に組み込まれてゆくが、花の小売店舗は小料理屋と同様、チェーン展開しなくてもやっていけるし、また私生活ではそういう家族付き合いができる花屋の需要はしっかりあるので、そうは簡単に小売業、そして花の問屋の流通再編にはならない。しかし10月からの日々の取引の中で垣間見ることができる取引から見た経済はこうだ。

昨日の苔松・苔梅はよく売れた。会社の受付や料理屋などに飾る高級品の需要は昨年よりも強い。特に飲食店は花飾りに前向きだ。しかし、門松は減だ。正月休みのときに会社に福をもたらせるといっても、コストからして省いてもよいと合理的に判断している。お金の使い方はより個人と家族の絆へ使うべきだと会社の役員と総務も考えている。そういった価値観の流れであろう。10月から今まで油をたかなくてもよい時期に出荷しようとする人たちが多かった。これが例年の天候なら需要は秋・冬物が売れるからそれで良いが、今年は暖冬だから消費者はその気にならない。よって今は安くしても売れる時代ではないので、価格はストックやスナップ、スイートピーを中心に続落し、カスミソウのようにケニア産に足を引っ張られる格好で、出荷しても手取りがほとんど残らない結果となった。これは仕事需要が少なかったことと、個人需要が堅調だといっても欲しいものが許容範囲の値段じゃないと売れないことを示している。スタンダードタイプで花が大きい、咲き方がフリンジ咲きやらカップ咲き、野菜や果物のおもしろい形の実物、あるいは実付花木のように、たくさんあっても飛ぶように売れていくものがあり、また昔覚えた僕の相場観の3分の1や4分の1で取引されているものものある。このように時代は変わった。以前よりも前向きにはなったが、かつての前向きの伸び率とは全然違う。今流行りの言葉の“リセット”と同じように、リセットはシクラメン生産者だけでなく、生産流通業者に特に求められている。足元では従来通り仏花でも良いが、供給するものの狙いは「FLOWER OF THE YEAR OTA 2006」が示すように30歳代の女性の価値観に置くのが良いだろう。

投稿者 磯村信夫 : 00:00

2006年12月 4日

暮れの準備

12月に入り、ようやく寒くなってムードが盛り上がってきた。売る方の私たちは11月の月中から入れ込んでいたが、昨年は寒波が早々と襲来したので売り手と買い手の息はぴったり合った。今年は暖冬だから12月に入りようやくというより、例年通り12月から買い手もその気になってきた。

今年の曜日回りから、もう12月の最終週の納品分については注文を受けきれないなど、スペース上、人手の上からもむずかしくなっているようだ。特に今年は人手が久しぶりに足りない。今後の一つの基調になっていくだろう。

駐車禁止から、大手宅配業者は運転手以外にもう一人、人をつけている。体力のないトラック会社は油高で収支合わせが大変で、運転手さんへ十分な手当てが支給できないでいる。だからトラックの台数はあるが、運転手がいない。こういった状況に今年はなっている。そうなると搬入も搬出も極端なピークは無理で、なだらかな山にせざるを得ない。余分にお金を出すというのであればともかく、価格据え置きとなると要望に応えることがなかなかできにくいとトラック会社は言う。

労働分配率を運送業界は世間と比べて下げたままだったので、人手不足に泣いている。花き業界はいかがであろうか。賃金水準を見ていてかなりばらつきがあるが、総じて人が資本の割には割安ではないだろうか。

以上見てきたように、今年の暮れが以前と異なるのは、人手が不足している点だ。よってどのように合理的に消費者に荷を届けるかを考えなければならない。そうすると、切花も鉢物も29日までだらだら引っ張るということになる。また実際の業務を進めていく上で、商流の打ち合わせはもちろんだが、物流の打ち合わせをトラック会社とよくしておく必要がある。もう一度繰り返すが、都内にある三つの共同荷受け所はいずれも10・11月、何年かぶりに前年の取扱量を上回った。それは油をたかなくても良い時期に出荷したいという荷主、生産者の意向で、10・11月の量が増えたこともあるが、それプラス運転手の手配がつかず、産地は市場への直送をやめて、荷受け所経由とするところが多くあったということだ。物流は我々花き業界にとって生産や品揃えに、勝るとも劣らない大切な機能だ。ジャストインタイムに物流させるにはどうしたら良いのか。それぞれ取引先と入念に打ち合わせをして欲しいと思う。

投稿者 磯村信夫 : 00:00

2006年11月13日

要は心の持ちよう・改革・イノベーション

 相場を扱っていると認識や意識の違いによって流れが大きく変わることを経験する。コップの水を半分しかなくなったと思うのか、まだ半分あると思うのか、それによって試合の流れに相当する時の機運が違ってくるのだ。
 今年のオランダの市場は2ケタ成長している。青果の東京青果さんより大きな売上を持つオランダの2つの花市場はいずれも9月までで10数%増の取り扱いだ。1995年から10年間、投資や合併を繰り返しながら売上微増を辛抱してきた。一定規模以上の生産者から構成される生産組合、一社で日本のその品目(例えば菊、バラ、ポインセチアなど)の何分の1を生産する大規模海外生産者、そして大規模流通会社。小売店向けのキャッシュ&キャリー。このようにサプライチェーンがいずれも一定規模以上であるから、意志が徹底され、作戦がムダなく遂行される。2004年EUが旧東ヨーロッパまで拡大し、二ヶ年間デフレが先行したが、昨年末より景気はじわじわ上げてきている。今期、花もしっかり上向いてきた。さすが5億人以上を消費ターゲットにするオランダの市場は、耐えるときは耐え、打って出るときは果敢に打って出て、グローバリゼーションに的確に対応し、これを絶好のチャンスだとして生かしている。そしてこれが2008年1月、アルスメール市場とオランダ花市場の合併発表となった。
 さて、どのようにこのグローバリゼーションを見るか、オランダの花き業界は「変化はチャンス」と見ようとしている。日本も同様に見るべきだろう。では、どのようなチャンスかというと、?消費者にとっての利便性は??自社の有り様、自分の属している業界の有り様は今のままで良いのか、どのように変えるべきか??自分の取り扱うものやサービスのチェーンの中で、最適なサプライチェーンはどんなものか??そのとき自社は何をなすべきか?チャンスは4つの問いにある。
 消費者は一人一人、あるいは一家庭である。例えばホームユース需要なら、専門の小売店は地域に密着して、人口相応の店舗数がなければならない。また結婚式や葬式をつかさどる儀式の場所はそれよりもずっと少なくて良い。学校で言うと、義務教育の小中学校の数と同じ数だけ花のホームユース用花店があればよいし、高校と同じ数だけ葬儀場があれば良い。そして大学と同じ数だけ、結婚式場があれば良いと、こういう勘定になる。
 生産サイドは一定の規模拡大が必要だ。農協の花き部会とか、○○出荷組合などと、少なくても出荷団体としての規模拡大は必要になる。小売店やできれば消費者にまでも、その生産者名を、あるいは生産地域を知ってもらう必要があるからだ。そうでないとブランド化は図れない。ブランド化が図れなければ価格競争をしなければならない。「良いもの安く」競争だ。これを日本人はどこまでできるか、移民を決意しなければならないのか。茨城のトルコ生産者のように思い切って海外に出て行くのか。オランダのバラ作りはそうしている。
 さて今日は「日本ばら切花協会創立50周年記念大会」が東京で開催される。多様化の代表とも言えるバラ切花は、現在5本に1本が輸入品である。まだまだ輸入品が増えると言われている。今後をどう読むのか、そして多様化の中でどこまで国産のシェアを保つことができるか、それは健全な精神をばら切花協会の会員がしかと持つところからすべてがはじまるのである。

投稿者 磯村信夫 : 00:00

2006年11月 6日

オランダHorti Fairの花の傾向

 1960年代のファッションを再現している。これも事実だが、女性が身に付ける光り物やベルト、あるいは上着を見ていると、パンクロックならぬ、もう少しハードでセクシーなものも良く売れていて、一つの基調になっている。また女性のハンドバッグを見ても、この基調プラス産業革命以前の色調や、もっと言うとなんとなく中世の感じがするものに人気が集まっている。
 今度のオランダHorti Fairに行くのに、昔のオーストリア・ハンガリー帝国のウィーンから入ったので、なるほど数年前から気を吐いているウィーン・デザインがなぜもてはやされているのか、色使いや形などよく理解できた。これらと同じ上記三つの傾向がオランダのHorti Fairで先端的な動きとして見ることができる。特に染物や蝋人形ならぬ蝋で加工したバラ、日本でも紹介されたらしいがアールスメール市場の染物専門業社が開発したレインボーローズ、ますます自然に反する、自然を征服して私たちの都合のいいように色付けしたり、加工したりした花の比率が高まっているのが目に付く。プリザーブドフラワーは生の花と変わらないから不人気で、加工するならもっとはっきりした自然界にはない色合いを出さなければならない。映画を見ても、洋服を見ていても、シンプルではないものに関心が移ってきているのがよくわかる。花も同様である。

投稿者 磯村信夫 : 00:00

2006年10月30日

オランダHorti Fairに向けて

 日本のIFEXに続いて、オランダのアムステルダムでHorti Fairが開催される。B to Bでの新しい花き業界の提案を行なうものとしては世界最大で最高の品質レベルだ。弊社では大森園芸の頃から都合25年毎年行っている。特に大田市場の花き部に入ってから、見学に行く社員の目的もそれぞれ変わって、ロジステックの角度からオランダの花市場や仲卸を勉強する人、新品種を見たり時代の傾向を見たりする人など様々だ。数年前から労働生産性の切り口で、小売花束加工業者や仲卸、卸、生産者を数値で見る人もいて見学の仕方も多様になってきた。今年の小生の課題としては、この夏ロシアに行きロシア人は一輪菊を大好きで、良い品物がどの高級店でも日本円で250円から300円の売価で並んでいたのを見て、そういえばポーランドやウクライナも一輪菊が好きだったことを思い出した。たくさんお金を出すところに良いものが集まってくるからその供給元であるオランダの一輪菊の今とこれからを勉強しようというのが小生の目的だ。研修グループの中には生産者もいて一緒に見学をする。生産者の立場から品種を選ぶことだろう。
 さて昨日の朝、花き業界のとある方から電話を頂き、「ビッグニュースもう入りました?」と聞かれるので、「何ですか?そのビッグニュースとは・・・」と聞くと、アールスメール市場とオランダ花市場が合併することになったのです」とのことであった。世界のビッグビジネス鉄鋼業界と同じ危機感を持ったのか。どのような見通しの共有が合ったのか等、花市場の社長やボードのトップに聞いてみたいと思う。それでは次回は拡大EUの中で行なわれるユーロ高のオランダHorti Fair 2006のエッセンスをお知らせします。

投稿者 磯村信夫 : 00:00

2006年10月23日

新しい消費の予感

 たくさんの方にIFEXにお越しいただき、誠にありがとうございました。出展者はこの日のために新しい提案を用意し、それをつぶさに見ることができた。前回と代わり映えがしないと見る人もいるかもしれないが、よく見てみると趣向が凝らされており、花き業界の時代を先取りしたものを大変多く見聞することができた。それらを1、2年かけてブレイクダウンしていく、それが業界の発展へつながっていくことだろう。
 さて、昨日大田市場まつりが開催されたが、お天気に恵まれたせいもあって、花の即売会は大変盛況だった。全国の百貨店9月の売上では、紳士服がプラス6.2%と気を吐いている。新しい時代がはじまってきているかのようだ。
 まずは僕が考える花き業界の近未来について・・・。今、花き業界はカジュアルフラワーから始まり、ガーデニングブームが過ぎ去り、花は珍しいものではなくなって、フラワーアレンジメント教室の生徒が少なくなっている。だから、前から比べたら人気がなくなっている方向へ行っている。
 昔からジーンズを見ていて今回のブームは、ボトムスからはじまって擦り切れジーンズまで古いヴィンテージもののような加工が一巡したと思ったら、また紺のジーンズへと戻る。昔ジーパンと言われていたものが、飽きられてチノパンへ移り、しばらくしてまた大のジーンズブームになって今がある。確かにチノパンも少しは見るけれど、ジーンズはジーンズで発展をしている。花もこのような流れであると思っているのだ。あらゆる花の種類で新品種が何百では利かないほど毎年投入されているから、消費者が飽きるはずがない。前から言っているように、男性衣料は一巡して最後に上がってくるものだから、景気循環で花の売れるタイミングと同じだ。特に今日の衣料品は日本の男性も無粋が売り物では生きていけず、「ちょい不良(ワル)オヤジ」までいかなくてもジェントルマンのたしなみをもった大人の男の身だしなみ、そして作法、それが一定所得、一定教養以上の男性に求められるような時代背景がこの日本にある。
 若者の生活文化だけでなく、大人の生活文化がアジア諸国に受け入れられる今日になっている。その中に花がある。昨日の市場まつりでの花の売れ具合を見ていると、切花がよく売れるので、即売係りも切花売り場から鉢物の方へ、声の大きな販売員を助っ人に出したようだ。新しい花の大衆消費文化がもうそこまで来ていることを昨日の市場まつりで実感した。

投稿者 磯村信夫 : 00:00

2006年10月16日

人材

 今週はIFEXの週である。インターナショナルフラワーエグジビジョンは今年で3回目だが、世界の花の大産地や消費地で行なわれる国際的な展示会競争に、世界第2位の経済大国の日本は遅まきながら参加し、アジア諸国では唯一、一早く定番化した。これでヨーロッパ大陸と一部アフリカ、南北アメリカに偏っていた国際的な花の展示会がアジアでも世界から認められることになった。この意義は大変大きい。今週の木・金・土に開催される。詳しくは下記の通り
IFEX第3回 東京国際フラワーEXPO http://www.ifex.jp/

 さて、毎週いくつかの定例会を持っているが、土曜日に行なっている例会でここのところ「人」の話になっている。まず採用問題は団塊の世代のリタイアと、すっかり攻めの体制が整った大手企業。この二つを考えただけでも新規大卒者の採用はなかなか容易ではない。中途採用といっても卸売市場システムそのものが新しいものに生まれ変わろうとしているわけだから、業界の経験者はよほど吟味しないとかえって会社が変わろうとする足を引っ張ってしまう。他業界の経験者となると生活のリズムが違う。こういった話にここ2回程なって、どのように人を採用し教育していくかという話になっている。
 現在花き業界を構成する種苗、生産、輸送、卸売、仲卸、小売、これら構成要素の中で、最もバイタリティーがある、あるいは魅力的な人材が多い業種は仲卸業界である。このようにどこに人物がいるか業界を比べてみたら、会議ではこのような結論になった。それは二世、三世が少なくほとんどが創業者だということからであった。サラリーマン根性がなく、いわゆる「おぼっちゃま」ではないのだ。仲卸と言っても、全国卸協会という名称で場内仲卸、場外仲卸、花の問屋の人たちが参加しているが、この人たちは一代目の人たちが多い。リスクもあって小売店のために仕事をしなければならないだけでなく、自分より図体の大きい卸から仕入れなければならないことが多いのでよく揉まれる。仲買業として働き者だし、仕事が彼らの信念を鍛える。この仲卸の人たちが必要とする人材を採用できるようにすることが現時点での花き産業の発展におおいに寄与すると思われる。
 尤も、この卸売商(仲卸)の人たちは地方卸売市場と激しく競合している。2000年以降、この競争の中で地方卸売市場は従来の市場業務から新しい問屋業務をも内政化してきた。これによって小売店に役立っている。卸も仲卸も今、時代として必要なのは消費者に顔を向けた花の卸売業(問屋業)だ。ここに不足なく人材を届け、良い仕事をしてもらいたい。

投稿者 磯村信夫 : 00:00

2006年10月 2日

カイシャ需要

 オフィス街の花屋さんにとって9月29日(金)は一年で二番目に忙しい日だ。3月末も年度末の金曜日が一番忙しいのだが、お店によってはむしろ9月末の方が忙しいと言うところもある。
 株式を公開している会社は今、四半期決算といって1年に4回決算をして、株主に会社の今を知らせる。9月は上期の決算で弊社もご多分にもれず、忙しい日々を送っている。僕自身は上期末で、前半の総ざらいをし、下期に向けて的確に指示を出す必要があるから9月に入り本当に忙しい日々を過ごした。
 9月末の人事異動は転勤の場合、単身赴任が多い。だから、より花束が多く動くわけだ。特に今年の9月は昨年よりも需要が多かった。昇格もあり、ランのギフトを専門にしているところは組閣もあって、今週いっぱいまで忙しい。このようなオフィス街の需要は大なり小なり日本中の県庁所在地では起こっている。テレビドラマを見れば分かる通り、かつては店屋さんの家族を中心にしたドラマが多かったが、この頃はビジネスマンやビジネスウーマンを主人公にしたものばかりだ。“カイシャ”は花業界にとっては大切な需要である。カイシャ需要をもう一度掘り起こしたい。

 さて、上半期の総ざらいとして札幌や大分など卸売市場が立ち行かなくなってきているのがわかる。買付が自由化されたが、それはリスクが高くなったことでもある。花き業界の仕事の中で、誰もができてリスクの少ないものは利益が少ないという当たり前の状況になってきた。

投稿者 磯村信夫 : 00:00

2006年9月25日

何日前の荷?物流トレーサビリティー

 先週の木曜日、日本でははじめての国会コンサートに行った。こちらはシンビの河野メリクロン様と同様、応援をしている假屋崎省吾さんが花活けをするというのでこのコンサートにうかがった。メインはモーツァルト生誕250周年ということでフィリップ・アントルモン氏自らの演奏によるピアノ協奏曲と四十番のジュピターであった。クラシックではほとんど趣味の合わない家内もモーツァルトは好きで、僕としてはホッとした。それにしても假屋崎さんは世界の頂点を極める人々の前でも浮いたところはなく、彼の花活けのレベルの高さを改めて認識させてもらった。

 土曜日、日曜日とお墓参りや花屋さん廻りをした。東京では日本の風習を上手に伝えられていない人たちが多くいる。お盆というと東京人なのに8月がお盆だと思っている人もいるし、彼岸というとお中日だけをお彼岸と思っている人が多い。年配者は入りもそして彼岸の明けもそれなりに気に留めて行動をしているが、一般人は秋分の日が彼岸だと思っているのだ。今年は秋分の日が土曜日だったから、一般の人にとっては土・日が墓参り、彼岸である。台風もそれて、どこの墓地もお店もよく賑わっていた。
 今年の特徴はすっかりピンクのリンドウが定着したことである。紫のリンドウよりも先にピンクが売れてしまっているところが多かった。そしてもう一つケイトウも確かに仏花としてよく使われるようになってきたが、カーネーションは仏花に欠かせないアイテムであるということだ。一輪も良いが、SPでも良い。とにかくカーネーションだ。国産・輸入品とそれぞれあるが、カーネーションを使うと仏花の雰囲気は明るくなる。内観を中心に組み立てられてきた仏花だがもっと軽やかな先祖とのコミュニケーションを時代は求めているようだった。

 この彼岸中の取引で気をつけなければならないと思ったのが「シェルライフ」、その花が持っている寿命のことである。
 今年の2月、オランダ最大の仲卸業者OZの部長と話していて、彼はカスミソウを海上コンテナで入れるテストをしていると言う。コスタリカから試験をしているそうで、きっとレザーシダと一緒に送ってきているのだろう。アフリカからも船輸送のテストをしようとしている。テクノロジーの進歩をどうやって業界の繁栄につなげるか考えていたのだが、この秋はむしろリスクについて考えた。コロンビアのカーネーションは一週間前に切ったものが小売店の手に渡る。なかには10日前に収穫したものもある。真夏でもコロンビアのカーネーションは国産に比べ、保ちで引けを取るわけではない。特に水揚げしてソフトバケツで出荷されているものは7?10日も経っているものとは思えない。インドのバラで、作業工程からして、横箱の荷姿で市場で取引されるもので、早くて4日目、だいたい5日目くらいのものが多い。日本でリパックし、水揚げして甦生させた状態で出荷すると一般的にはあと2日必要だ。インドのバラでも、こうなると6?7日前に切ったものである。コロンビアやエクアドルでだいたい1週間、ケニアだと一番前に切ったものは9日?10日前となる。これはコロンビアのカーネーションと一緒だ。冷たくして運んで、日本で水揚げをする。カーネーションは咲き方を楽しむ花ではないので、適地で生産し、夏でも1週間以上保てば、消費者価値は高い。しかしバラは「咲かないバラ」であれば良いが、咲き方を楽しむ消費者にとっては、ちょっと問題が残る。1週間前に切ったものも水揚げすれば、一昨日切った国産品と鮮度であまり遜色がないとすると、小売店はどのようにお客様に対し、責任を取ったらよいのか。ケニア最大の生産販売会社であるアゼリアのイギリス本部でこのことを話し合ったとき、結局販売者の責任として説明責任をいかに果たすか、そして再販業者である卸は、同様に流通過程と何日間かかっているか等を説明し、それを小売店は承知の上で消費者に対する責任を負う。このことをCSR(Corporate Social Responsibility)を行なうことが欠かせないとした。 グローバリゼーションと共に、バイヤーが的確に知らなければならない重要な情報は、いつ切って、いつ荷造りをして、どこ経由で何日かけて輸送し、どこでリパックし、いつセリにかけて、いつ取引が終了したか。これを的確に知ることが必要である。ややもすると減農薬、無農薬等、そちらばかりを気に取られていると肝心な加齢情報についておろそかになる。何日目の花か。ここを押さえること、これが欠かせないとこの秋の需要期で強く思った。

投稿者 磯村信夫 : 00:00

2006年8月28日

生産者のコスト増を代弁する

 8月26日の土曜日、第16回の大田花きバラ会議が開催された。日本の中でも高いレベルの花き生産者が一同に集まり、自分の方針がこれで良いか確かめたり、軌道修正の有無を決定したりするためにこの会合を使っていただいている。弊社の目的は切花の中でバラのシェアを20%にすることだが、16年経ってもまだ満たず、まだまだ努力を重ねなければならない。日本の夏は東南アジア並みだが、それでも目標を修正せずにやっていきたいと思う。

 さて日本の花き生産だが、露地物を中心に減ってきた。2002年をピークに減りはじめた切花・鉢物類は生産減に歯止めがかからない。野菜や果物などは下級品や規格外のものができてしまったとしても、カット野菜やカットフルーツ、中食用の素材としてお金に換えることができる。しかし、花は1本は1本、1鉢は1鉢で失敗作はお金にならない。また、昨年までは価格の下げ圧力がマーケットに蔓延していたから、花き生産を断念する人は思いの外多い。メーカーというのは工業製品、工芸品、農業とも大変な仕事である。花は成熟産業だから、花をやっていれば嫁さんが来るというわけではない。農家にはこのような問題が現実に多くある。しかし、農家も良い経営をしているところは良い嫁さんがくる。
 再度言うが、国内の露地生産が減ってきた。だから暑い夏の時期から秋まで、もう前年を上回るということは考えられない。露地の時期というと、6月から11月までだが、この間は菊や仏花用小物の生産がもう前年を10%くらい下回ることを前提に考えなければならないわけだ。そして油が高くなると当然冬場の生産が減ってくる。そうなると唯一潤沢にそれなりの量が出てくるのはハウス中の無加温で花が咲くときに限られる。これが従来の基準から見た今後の日本の出荷傾向だ。
 市町村合併、農協合併など産地の大型化は避けられない。狭い地域の産地では一定量の確保ができなくなっているからだ。安定した出荷のためには一定ロットを確保したい。となると市町村合併や農協合併は時代の要請だとわかる。安定供給の量が確保できるようになると、安定して出荷できる市場を再度選びなおさなければならない。それはこの国の人口も減っており、都市部によって明らかに格差がつくことが予測できるからだ。コスト削減はスケールメリットを生かすことによって実現し、それが利益となる。1989年ベルリンの壁が崩壊し、1991年にソ連がなくなりロシア連邦ができた。デタントがまさに現実のものとなったのとほぼ同時に、アメリカはGPSとインターネットの民生化を決定した。それは情報産業が限界効用逓減の法則に則らずスケールメリットを利かすことのできる産業だからだ。そしてこの情報産業とお金の産業では、電子送金するときに1円と1億円の手間はほとんど変わらず、金融業はスケールメリットが大きいと言える。お金の仕事はスケールメリットを利かすことのできる産業である。仕事花で言えば、一つ一つ異なるテーラーメードの結婚式より、ほとんど既製に近い葬儀の花は利益が出せる。これもスケールメリットだ。この経済合理性のために現在産地で第一の優先事項は農家の所得をこれ以上下げないこと、増やしていくことだ。そのためには一定規模以上の卸で出荷物流コストが安いところに集中して出荷する必要がある。物流コスト、手間のコストなどを削減することが手取り増につながる。物流、情報流、金流、商流、この4つのコストパフォーマンスを産地は追及していく。未だ産地は出荷先運賃のプール計算をし、平均運賃として組合員にお願いしているところもある。しかし個別卸ごとに費用対効果を算定しているところが増えている。これは利益を重視しはじめると当然のことだ。
 もうこれ以上花の生産減を加速化することはできない。生産減が誰の目にも明らかになり、景気の追い風で単価が上昇すると予測される。日本中の小売店は消費者に日本花き業界の現状と油高騰による農家の生産コストを花き業界の一員としてお客様に説明してほしい。

投稿者 磯村信夫 : 00:00

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