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2015年5月18日

大切なことは、"してはならないこと"が決まっているかどうかである

 今朝、市場から群馬県に帰るトラックの荷台を見たら、一般社団法人 日本花き卸売市場協会に入会していない荷受団体行きの荷があった。輸入商社の荷が一つと、主に市場外流通をしている菊会社の荷が、市場なのか仲卸なのか分からないが、聞いたことのない3カ所に出荷していた。支払いはきちんと行われているのだろうか。流通が多岐にわたる現在問題となるのは、取引の公明性と支払いの問題である。

 産地は大体、出荷する卸売市場を絞ろうとする。花では直接過ぎて云いづらいので、青果市場を例に取ろう。青果市場では農協を経由しない、いわゆる系統外出荷をする産地も増えているが、需要量に比べて国産の供給量が少ない事実がある。よって、農協の系統品も会社組織の所も出荷先を絞り、安定したサプライチェーンを構築しようとする。また、生鮮食料品花きは、供給も消費も季節とお天気によって量がかわるので、安定した取り組みなしでは全ての業者がやっていけない。こういった中で、北の青果市場では、荷揃えの為に、産地から高く買い安く仲卸や量販店に卸す金額が、直近期2億5千万円にも上ったらしい。都内のとある大手会社では、直接荷を貰えないので交通の便の良い他市場に荷を取りに行く。その横持運賃代は5千万円にもなり、経営を圧迫していると。青果の場合には、買い手が代払い組合を作っている。取引が発生した毎3日ごとに卸に支払い、卸も産地へ送金する。従って、産地は卸が倒産でもしない限り、焦げ付きはほとんどない。

 しかし、花の場合、系統農協に対しては、月3回、ないし、月2回、卸から産地へ支払っているが、それ以外の生産者に対しては、その市場と出荷者との取り決めとなる。地域によっても異なるが、35日から50日となっている。こうなると、もし自分の荷物を預けた会社の経営が悪くなると、青果と違って未収代金が膨らむ。出荷者のどれくらいが、出荷先の経営状態を知っているだろうか。しっかり契約書を交わしているだろうか。甚だ疑問である。

 卸売市場は社会に役立とうとしているので、宗教と同様に"してはならないこと"を決めている。産地から委託された花を販売した時、9.5%ないし10%と、事前に各卸売会社が申請し承認された販売手数料のみを頂く。また、取引をした後、決められた買参人の保管所に荷をおく。ここまでを買参人に対する基準内サービスとして、代金を頂かない。これ以上のサービスは、各社と買参人の取り決めにより有料となる。買い上げ代金の支払い、卸から産地への支払いは、都内の中央卸売市場の場合、月3回、地方市場は任意だが、月3回、ないし、月2回となっているのが一般的のようである。これが原則で守らなければならないことである。

 市や県が認可している卸売市場は、してはならないことを決めてあるが、宗教を信じているものと同様に、戒律を破るものがいるかもしれない。その時には破門されるのである。出荷者の皆様方は、そこをよく考えて出荷先を選んでもらいたい。

投稿者 磯村信夫 : 11:42

2015年5月11日

母、子、孫の三世代母の日

 昨日の母の日はいかがだっただろうか。高度経済成長の時に地方から大都市圏に出てきて、そのまま定年を迎えた団塊世代の方々などに、娘家族や息子家族がカーネーションやお母さんの好きなものを持って、孫と一緒に母の日に実家を訪ねる、というのが、母の日の過ごし方の本流になってきた。都合がつかない場合には、花キューピッドやインターネットサイトの花屋さんにお願いして届けてもらう。

 リアル店舗では、三十歳代、四十歳代の方々のお眼鏡にかなった駅ナカ、駅周辺のお店や、商店街でも、花の品質にこだわっているお店には、土曜日の夕方や昨日の朝からお客さんの列が出来ていた。駅周辺やスーパーのテナントに入っているお店では、普段の売場+もう一つ、ないし、もう二つくらい売場を確保して花を販売していた。専門店が、物日に売場を広げられるのは、こうしたテナントで入居している花屋さんだけである。だから売上が何倍にもなるのだ。食品スーパーの束売りは振るわない。やはり「質」が求められているので、インショップ化しないと時代に合わないのだ。
 
 品物を売る為には、コトの時代に相応しい「質」を追求しなければならない。ビールにしても、ビールを買うのではない。「旨いビールを飲む」を買うのである。味も、泡立ちも、旨そうに見せて旨い。コレでないと時代にそぐわないのだ。従って、今回の母の日も、そういう店やインターネットサイトの花が売れていた。一方、売れているかは別として、ネットサイトでも、とあるAサイトで値下げをすると、Bサイトも影響されて下げていく。このように、実際の店舗で売っているような感覚でサイト運営している人たちを多く見た。繰り返すが、お母さんにあげるのが花であろうと何であろうと、予算もあるだろうが、「質」なのである。この「質」が信用されるものでなければならない。

 母の日が終わると、首都圏では西武プリンスドームで「国際バラとガーデニングショウ(通称:バラ展)」が開催される。東京ドームの世界ラン展もそうだったが、バラ展では日本中から人が集まる。日本は本当に花の国だと思う。是非とも、バラを観に足を運んで頂きたい。

投稿者 磯村信夫 : 15:59

2015年5月 4日

中身の『品質』は物語だ、モノじゃない、コトだ

 今年のゴールデンウィークは初夏の陽気となり、ついこの間まで春だというのに寒かったのが嘘のようだ。上越では雪がしっかり残っていて、私はゴールデンウィーク中スキーを楽しんだ。当日は例年より暑く、若者たちは殆ど半袖でスキーやスノーボードを楽しんでいた。また、ウグイスも鳴いていて、毎年春スキーを楽しむ私としては、スキー場でウグイスの声を聞くのは初めてだった。

 暖かくなると、花持ちが気になる。母の日を目前に、切花も鉢物も流通上どのような鮮度保持管理をしたのかが重要になってくるが、本日は提案を二つしたい。一つ目は、仲卸・小売店での販売時に「この花をどこの誰が作ったか」を明示していくことだ。昨年、某大手ファーストフード店の食品事故問題が話題となったが、大手ともなると、「納品業者の責任だ」と言うだけでは済まされない。それと同様、大手の卸売市場、輸入商社も、外見だけではなく、中身の質をしっかりと見極めることが重要である。また、生産会社や個人の生産者も、中身の品質まで責任を負わなければならない。中小企業ではそこまで手が廻らないかもしれない。しかし、最終的に、仲卸・小売の店頭で、原産地や生産者名を出して売ることで、生産者と流通業者が明確にその品物に責任を持ち、消費者により安心して買って頂けるようにするべきである。大田の仲卸通りでも、バケツに入れて販売し、生産者名等の記載のないものがある。水が揚がっているので外観は良いが、中身はどうなのか。何日前の荷か、体力はあるのか。少し見ただけでは分からない。流通業者が誠実に明示をしていかないと消費者まで質の責任であるブランドが届かないのである。このことを、原産地や生産者名を明記することで届けていきたい。

 二つ目の提案として、輸送中の鮮度保持体制を整えることが挙げられる。もう五年も前のことだが、オランダからロシアのサンクトペテルブルグ、また、モスクワへトラックで鉢物輸送を行っている業者と、その荷を販売しているホールセラーに話を伺ったところ、トラックの温度設定は15 ℃で、荷主さんが市場に出荷した日から五日ないし一週間でサンクトペテルブルグに、十日ないし十二日でモスクワに到着するとのことだった。これだけの時間がかかっているのである。こうなると、多肉の花鉢であるカランコエの持ちは抜群だろうが、他の花鉢はテストしないと難しい。持ちが良いとされている鉢物の方が、消費者の花持ちへの期待が切花よりも大きい為、花持ち保証は難しいのだ。日本でも、母の日の需要期になるとカーネーションの鉢物が沢山出回る。出荷から消費者に届くまで何日間かかるのか、その間の温度管理や日照管理等、その鮮度保持体制を整えなければならない。

 切花の品質クレームの事例だが、二年前の母の日に、コロンビアからの切花カーネーションで大クレームが発生したコトがある。以前、日本の生産者でも、自分のストッカーでためておいて母の日前に一斉に出荷し、クレームになってしまったカーネーションの生産者がいた。国内生産者は母の日以外にも出荷するので信用と名前が大切。そんなに悪いことをする人はいないが、これがコロンビアからとなるとさらに疑心暗鬼になる。こう考えると、日頃から深い付き合いで信頼がおけ、その会社自体がブランド化している商社とのみ付き合わざる負えない。そうしなければ、こちらの暖簾も危ない。誰が作り、どういう鮮度保持管理をされているか、しっかりとした物語を背景に作られた商品を売らなければならない。少なくとも、流通上の鮮度保持に対して買参人にきちんと説明して切花も鉢物も販売する必要がある。そのコトが物日に対する市場・仲卸・小売の責任である。

投稿者 磯村信夫 : 15:33

2015年4月27日

オランダ花市場の役割

 先日、エチオピアからの直行便が敷かれたので、フローラホランド市場のエチオピア担当が、組合員であるエチオピアのバラ生産者たちと、エチオピア国の貿易担当の方、在日本大使館の方を伴い弊社大田花きに見学に来られた。1989年ベルリンの壁崩壊、91年ソ連邦の崩壊により、まずケニアがヨーロッパのバラ産地として台頭し、次いで社会主義国であったエチオピアが自由主義体制を取るようになって、オランダのバラ生産者がエチオピアで農場を作ったり、他国の農業者がバラやサマーフラワーを作り、オランダ・フローラホランドの組合員になったりして、オランダを通じ全ヨーロッパに出荷されている。

 ディスカッションの中で、弊社大田花きという会社が中央卸売市場の卸売会社となった経緯や、この場所で仕事を行う権利と責任、卸売市場法という法律のこと、そして、委託販売手数料率、また買付差益も自由化されているが、その中でどのように営業利益を上げているか等、日本の花卉卸売市場について知ったことは、彼らの大きな驚きであった。トロリー(台車)やバケツの借賃、また、大きな箱で市場に送った際、市場が水揚げをする代金等、オランダの市場は委託販売手数料は5%未満だが、他の代金を徴収する。従って、サマーフラワー等で日本と同じやり方をするとすれば、販売手数料率は30%にも、相場が安いときには40%にもなってしまう。せっかくジンバブエからエチオピアにサマーフラワーの銘柄産地としての地位が移ったのに、生産者手取りとなるとなかなか大変だ。フローラホランドの組合員は他国と取引する時も、わずかな率だが花市場は手数料を頂くのは当然のこととされている。このように、日本とオランダでは同じ市場でも随分と違う。

 さらに、日本とオランダの市場が際立って異なる点は、仲卸の商売の仕方だろう。オランダの仲卸は徹底した在庫主義だ。専門店チェーンや、ロンドンのニューコペントガーデン、パリのランジェスの仲卸から二、三日前に「いつ、何を何本(何鉢)欲しい」と注文があっても容易に対応できる。それに対して、日本から輸出するとなると、原産地証明や輸出検疫、その国の輸入検疫、もちろん、飛行機での移動時間がかかるので、一週間程前の予約相対が必要になってくる。オランダはそうではないのだ。まさにアドリブと同じ要領で前日でも発注を受け、オーダーに間に合わせて発送しているのだ。しかし、これは大変なことなので、日本円にして百億円以上の年商がなければ仲卸業はやっていられない。結局、日本の輸出の花が競合するアメリカの東海岸では、日本のオリジナルともいえる、日本で品種改良した花々しか切花輸出は出来ていない。ヨーロッパで魚の塩焼きを食べるのは、ポルトガル位だそうだ。ポルトガルからニューヨークの魚市場に出荷された鰯を塩焼きにして、ニューヨークに住んでいる親戚の家でご馳走になったが、こんな感覚で、オランダと東海岸の都市の花輸出入商売はあるのだろう。ヨーロッパへの輸出の難しさは、ヨーロッパを知る我々にとって、どうすればオランダの既存の業者と協業出来るか。これに尽きると思う次第である。

 さて、エチオピアは大変良いバラの産地なので、今後はケニア共々、日本の消費者に受け入れられていくと思う。ですから、国内バラ生産者は、中身の品質を充実させ、綺麗に咲ききるバラ、咲いて長持ちするバラを作ってほしい。ケニア・エチオピアにはフラワーウォッチがついているといえども、棲み分けは十二分に可能だと信ずる。

投稿者 磯村信夫 : 17:30

2015年4月20日

今までの習慣を断ち切る

 自宅の近所に新しいマンションが建った。"グリーンベルトに面した全館南向き"という売り出しが当たったのであろう、さっそく完売になっていた。バイオフィリアは住むときに当然に必要とするもので、広く自然に接することが出来るというのは売りの一つだろう。自然にも新陳代謝があるから、排泄物がゴミになる。今、壁面緑化や室内の観葉植物等が見直されているが、よく見るとフェイクが混じっていることが分かる。テレビのニュースやバラエティーショーでも、フェイクの中に生きているものがある。生き物が面倒なのは分かるが、人はコミュニケーションの中で自分があるのであるから、面倒がらずに、本当に生きているものを使用して欲しい。

 さて、株価が二万円を超えるまでになり、経済問題を語ることが多くなってきた。業種によって、また、会社の規模によって、ベースアップも行われている。しかし、一般論として、団塊世代が六十五歳以上になり、嘱託で働いているとしてもお給料は下がっているのだから、上がる人もいれば、下がっている人もいる。トータルからすると、可処分所得が減ったところがあるのも事実だ。しかし、気持ちは確実に前向きになってきている。

 遡りますが、花の場合、業務需要では、少子化で先に結婚の組数が少なくなった結果、二十世紀に入り葬儀需要の比率が大きくなった。しかし、ここ二、三年で、五人、六人兄弟等の戦前の人達はお亡くなりになっており、戦中の二、三人兄弟、戦後の長男、長女の子供は二人の人達が、今後の葬儀需要の中心となる。従って、葬儀の件数そのものが少なくなってくるので、葬儀の花を手掛けているお花屋さんたちも、さらに整理と統合が必要になる。これは当然、お彼岸やお盆の時の仏花束の需要数、一日、十五日のお供え花の需要数にも変化が見られ、一昨年辺りから誰の目にも仏花需要が少なくなったと理解されたのである。一輪菊を中心にした相場は、路地菊の産地が高齢化の為少なくなり供給減。周年作型の菊の産地は、利益は少なくなったが、まだまだ頑張ってくれているので、需給は縮小しながらもバランスは基調としてとれている。市況は季節や生産コストによって量の増減があり、ある時期は余り、ある時期は足りないということが起きている。ただ一つ言えることは、戦前の五人、六人兄弟等の人たちはもう残り少ない。これからは、多くて三人、そして二人兄弟、一人っ子世代の葬儀需要の花を賄うだけで足りる、と言うことである。

 切り花においても、鉢物においても、家庭需要やオフィス需要、公共の場所での植栽など、新しい需要を定着させていく。そうしないと、十パーセント近くの生産・出荷が減ってもおかしくない現況に、花き業界があることを再認識してほしい。明日は昨日の続きだが、その明日はみじめな明日が待っているだけだ。さあ、努力して、過去を断ち切っていこう。

投稿者 磯村信夫 : 16:45

2015年4月13日

ホルミシス

 もう二週間以上も前になるが、ラジオ番組で朝井まかて氏がインタビューを受けていた。1959年生まれ、関西出身の小説家だが、めっぽう花好きで、江戸時代の草木の商売を良くご存じの方との印象を受けた。20年以上も前、イギリス人の友人から「四十を過ぎたら、小説も読まなくっちゃね」と言われ、何冊かに一冊は小説も読むことにしているので、今回迷わず朝井まかて氏の本を手に取った。彼女の作品は、史実に基づいて文献を調べ、その文献の行間を読み小説化している。また、小気味よいリズムで、花き業者が知らないことが沢山描かれていた。朝井まかて氏の本は、まさに花き業界の必読書の一つのように思う。

 こうして休暇を頂き、空いた時間を利用して本を読んでいるが、これもマズローの欲求"ファイブF"の一つ、非日常性の楽しみである。休暇も小説も、非日常性の楽しみだ。マズロー博士は、人間の根源的な欲求を「ファイブF」=フィーデング(食欲)、フロッキング(群れる)、ファッキング(性欲)、フリーイング(逃走)、ファイティング(攻撃・征服)の五つと表した。この欲を上手に用いて社会に役立てていくのが、我々人間の理想の生き様ではないだろうか。

 ファイブFの一つ「ファイティング」では、目標を達成するということに尽きる。確かにプロレスもボクシングも観ていて面白い。もちろん、野球も面白い。しかし、「やった!!」という達成感のあるものは、目標を達成したときで、いずれも辛い時だろう。元来、人には恒常性がある。ホメオスタシスだ。ホメオスタシスは、傷がついたら元に戻ろうとする。また、社会の中においても、ケンカをしたら仲良くなろうとするホメオスタシスが働く。そういったホメオスタシスが我々にある。一方で、"ホルミシス"と言われる、何らかの有害な要因において、有害となる量に達しない程度に用いることで有益な刺激がもたらされるものがある。例えば、筋肉や脳細胞のように、目標に向かって無理をすると、実際に無理をした分だけその筋やシナプスが傷づく。そして、負けないような形に、さらに筋肉や脳は強くなるといったものだ。一つの目標が定まると、それに向けて無理をする。そういう風に人は出来ているのだ。ホルミシスを、ホメオスタシスと同じように、我々現代人も自分の身体を信じてやってゆく。「脳に汗をかく」という言葉もあるが、まさに、寝ているときや、散歩している時、あるいは、それとは逆に、「無」の境地になった時に、覚悟が決まったり、アイディアが形になったりする。

 今、私たち花き業界にとってやらなければならないことは、各自がホメオスタシスで収支ばかりを合わせ、縮小均衡になることではなく、ホルミシスで「もっと沢山作るんだ、もっと沢山売るんだ」。そうやって身体を動かすと共に、どうやって儲けさせて頂くか、それを考えることだ。目標は「少し無理をする」。そうすることによって、幾多ある人の幸せに通じる職業の内の、花きという仕事で、無理をした分だけ力がついてくるのである。そのように人は出来ている。

投稿者 磯村信夫 : 17:14

2015年4月 6日

買参人の偏りを示す今週の相場

 今日から相場が一、二割安くなった。これは、特別な需要が入学式しか無くなったからで、例年通りである。4月8日のお釈迦様の誕生日、花祭りが終わると、すっかり雪解けのように相場も緩んでくる。しかし、今年は春の嵐のごとき暴落市況は無いと読んでいる。もちろん、作るに天候売るに天候で花は天気商売ゆえ、悪いことが重なれば暴落もあるだろう。

 今年は曇天続きが作柄に影響している。しかも、作付けが前年より少ない。従って、デザイン力で価値を感じてもらうこと、また、日持ちの良さで割安に感じてもらうこと。この二つを前面に出すことで、消費者の心を捉えてリピーターを作り出していく。このことが、本年度作付けが増えない花きの出荷状況の中で、我々が小売店にお願いすることである。

 "疾風に勁草を知る"と言うが、今まで専門店中心の花き小売業界であった時には、日本中の市場の相場の出方も、池に石を投げた時のような波紋の状況だった。しかし、今日では、相対的に専門店の販売力が衰え、スーパーの花売場やホームセンターの売場、あるいは、インターネットサイトでの売場の力が増したことで、市場間で相場のバラつきが出ている。弱り目に祟り目の相場下落時の今週、専門店の市場と言われる市場の相場はバランスを逸し、崩れる傾向にある。花束の店頭売価は一緒だが、安くなった分本数を入れられるスーパーの花束売場は、売り先が極端に鈍るということはない。ガーデニング素材を買いに行くホームセンターも、苗物・鉢物、切花とも、荷動きはそれなりに活発だ。インターネットでは週末に向け様々な需要を取っているし、早い所では、コンビニのカタログ販売と同様、母の日の注文をとっている。そういう受注活動が活発な中、ついで買いのものも売れている。こういった消費実態を反映した買参人のバランスが、卸売市場には必要なのである。

 産地や買参人は、自分が取引している卸売市場のサプライチェーンを良く知る必要がある。今までは、ただ単に相場が高いとか安いとか言っていたが、それでは駄目で、消費者までお届けする、買って頂く。その為には、花の種類や規格、鮮度保持の仕方を責任を持って行い、売れる店づくりを卸・仲卸、産地はお手伝いしなければならない。また、 鮮度保持流通について、国は"国産花きイノベーション事業"で物心とにも援助をしてくれている。売ってお終いではなく、消費者にお届けすること、リピーターになってもらうこと、これを各花き業者の共通の目標にして、花きを流通させる必要がある。また、花き市場では、自社を利用する小売チャネルに偏りがあるようであればバランスを整え、専門店50~60:量販、ホームセンター、カタログ・インターネット販売40~50になるよう努力すべきである。それが相場の安定を促し、生産者に安心して作ってもらえるのである。

投稿者 磯村信夫 : 16:28

2015年3月30日

送別需要の語るもの

 桜が咲き、常緑樹の冬の葉も春の葉に替わり、すっかり春らしくなってきた。そして彼岸が終わり、会社員の送別需要等が多くなってくると共に、地域によって洋花相場の強弱がはっきりしてきた。また、東京特区では、千代田区、中央区、港区を中心に上場会社の本社も多く、美味しくて割安なレストラン等の予約がこの時期取れないという話をよく聞く。大田市場のある大田区大森近辺でも、団塊の世代のリタイアやそれに伴う大幅な人事異動が目につき、駅ナカの花屋さんは大忙しである。

 団塊ジュニアが中心になって会社を切り盛りしていく時代になっているが、この世代は都市によって多い市と少ない市がはっきりしている。東北や九州が際立った例だが、仙台市と福岡市に団塊ジュニアが集中している。今後の花き市場経営を考える時、どのような特徴を出しながら運営していくのか、今ある自分の花き市場は交通網が発達した現在、ここにある必要があるのかないのか等、検討しなければならないのは、団塊ジュニアの層がいるかいないかがポイントになる。彼岸後、洋花の相場が堅調であったエリアは、送別の花束と結婚式需要があった所で、そこには事業所や工場まで含め、若い人達の職場が多数ある市であった。花き業界はそこを見て、産地から小売りまで、誰とサプライチェーンを作っていくべきかを明確にしていかなければならない。そうでない市に位置する市場は、地域の拠点市場とネットワーク化を更に進めなければならない。

 五年に一度、大田市場花き部では買参権の更新作業を行っている。大田花きと売買契約を結んでいる買参人のうち、11社が弊社との契約を更新しなかった。実感は、「この程度で済んだか」というものであるが、それは小売店をまだ営業していて、更新しなかった会社の数だ。理由は、遠隔地であったり、他の市場を利用するので大田からは仲卸さんにお願いすればいいと考えていたりと様々だ。実際に小売店を廃業していく人達は、一ヶ月に一、二件はある。人口が増えている東京の大田市場でもそんな風であるから、団塊世代の社長が七十歳になった時、後継者がいないとしたら多分やめていくだろう。五年以内に大量の花小売店が閉鎖する可能性もある。新年度になるこの時期に、もう一度、2025年までを見据えて小売りまでの花き流通について、専門店の花屋さんはどういう店であるべきか、スーパーの花売り場はどういう花売り場であるべきか。ホームセンターは、あるいは、ネットやカタログ、更に、雑貨屋さんの花やみどりの売場等、新しく方針付けをしていく必要がある。

 景気が上向きつつあり、新卒予定者は就職戦線では売り手市場になっている。花き市場は相対売りの比率が高まり、優秀な社員の必要性が叫ばれている。そんな中、その市場を退社し、他業種に行く例を少なからず聞いている。これでは駄目で、市場の経営者は生きがいを持って働いてもらえるよう、理念の徹底、諸待遇を整え、花き振興法にあるように、まずはオリンピックまで、花のルネッサンスを、生産消費のルネッサンスを図らなければならないのである。これが新年度の目標だ。

投稿者 磯村信夫 : 15:56

2015年3月16日

同一労働、同一賃金

 日本の小売流通業は2月末の決算がほとんどだから、3月下旬に株主総会を開催する所が多い。胡蝶蘭のお届けや会場でのスタンド花等、結構需要があるようで、離任式や定年退職の花束需要と併せて、オフィス街の花店は忙しい日々となりそうだ。

 また、今週の水曜日18日は彼岸入りだが、私はお中日に墓参りに行くことにしている。入りと明けの両日に墓参りに行く熱心な人もいるようだが、若い人達はお中日だけがお彼岸と思っている。お彼岸の意味、そして、入りと明けがあることをきちんと伝えていきたい。

 さて今日は、年度末なので、人事異動や給料についてお話する。公正であること、フェアであることが、取引所である卸売市場の最も重要な価値観だが、人事や給料を決める場合にも同じことが言える。具体的には、同一労働・同一賃金の職務給制度の賃金体系を敷くことが必要だ。例えば、上司と部下が同じ仕事をしている場合、やり方や改善方法を指導するのであれば、同じ仕事をしていても良い。しかし、それを毎日しているということは、その上司は同じ仕事をしている間は部下と同じ賃金にならなければいけないということである。長い間同じ職位にいたり、降格する人を見ていても、もっと部下の教育や取引先の説得、需要の創造等、仕事そのものの取り組みと成果を出さなければならないのに、していない、あるいは、無関心だったり出来ない人が多い。すなわち、ライスワーク(※註)になっているのである。職位に対する責任感が期待値より低いのだ。昔から同じようなことばかりやっている人がいる中で、「変わる」為に、花き市場だけでなく、青果市場も人材育成が叫ばれている。

 日本社会では、同じ業種であるにも拘らず、中小企業の社員は能力が低く、大企業の社員は能力が高い、ということがある。本当は逆でなければならない。「山椒は小粒でもぴりりと辛い」という言葉があるように、小さな会社ほど、能力が高く、特定の分野に優れているといった社員がいてしかるべきなのである。我々花市場の販売手数料は、中央卸売市場が9.5%、地方市場は10%である。従って、日本で一番取扱いのある大田花きでも、手数料を売上とすれば売上高は25億円程度の会社だ。この規模の会社は世の中にごまんとある。我々はより楽しく、生きがいを持って働き、勉強しなければならないわけだ。卸売市場の場合であれば、公正を一義に、昇級、賃金を職務給制にすることがどうしても必要だと思う。業種、仕事が同じなら会社の大小に括らず賃金は同じであることが、職務給制度だ。

 4月からは、ほとんどの日本の会社は新年度である。年功序列になっていたり、パート・アルバイトの給料が安かったりしている会社があれば、この機にさっそく直してもらいたい。


※ライスワーク
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投稿者 システム管理者 : 16:14

2015年3月 9日

3月17日、みどりの日

 様々な需要で、3月のお花屋さんは本当に忙しい。今日9日から、いつも在宅ゼリで買っているお客さんもセリ場に来ていて、本格的な仕入れの日々となってきた。私ども大田花きでは、セリの師範が定期的にセリ人を指導している。当日のセリが終わった後、セリの良し悪しを、円陣を組んで師範が指摘していく。玄人のセリ人でなければ、目利きの上に空気も読むことが出来ない。そして、世は「一物多価」の時代というが、スイスをみて分かる通り、「一物一価」が作り手、売り手、そして買い手にも好ましいことは言うまでもない。一物多価となった時、少なくとも、同じものであるのに何故価格差が生じるのか、セリ人は理論づけなければならない。さらに、セリで最初に買う人は、花販売のプロだ。よく花を売る人ほど最初に買う。あまり売れない店ほど、どうでもいいからと待ち続けていると、たとえ1箱でも安く買えてしまうことがある。これはセリ人が下手なのである。大田花きではそのようなことを日々指摘し、徹底的にトレーニングしてセリをさせている。それは、日本の相場は大田花きのセリ場から生まれると自負しているからだ。

 さて、今日の立ち会いは、上(相場)はやや重いが順調で、大変活気のあるものとなったが、昨日の日曜日は国際婦人デーで、週末の店頭は賑わったところもあったのだろう。年に一回、新年の抱負を語り合う会を開催しているが、その男性陣から家内に花が届いた。都心の花店では、イタリアと同じように、ミモザを贈る日としてキャンペーンを行っている店があったが、自動車メーカーのFIATが大々的に宣伝していた通り、よく売れたそうである。

 皆様方は、イギリスのウィリアム王子が来日された時、横浜の外人墓地で、彼がバラの花のリースを捧げているニュースをご覧になっただろうか。横浜市は日本で第二位の人口の「市」であり、なんといってもお洒落な都市である。その外人墓地のすぐ側に、いくつもの人気商店街があるが、元町が「セント・パトリックスデー」にちなんで、みどりの日のパレードを開催するそうだ。「セント・パトリックスデー」は、東京では、表参道のパレードが有名だが、アメリカでは、シカゴやニューヨーク等、アイルランド移民カトリック系の人達が中心になって、みどりの洋服を身にまとい、みどりの食べ物、黒ビールではなく、みどりのビールを飲んで、アイルランドにキリスト教を広めたセントパトリックの命日(3月17日)に、みどりを大切にすることを訴える。元町では土曜日、14日のホワイトデーにパレードを開催するそうで、どんな仕掛けをして、花やみどりを楽しむのか、大変見ものだ。

 花や緑といえば、皆様方は「バイオフィリア」という言葉を御存じだろうか。生物や自然への愛情を指す言葉で、生物学者のE.O.ウィルソンが提唱した。例えばマンションでも、海や緑が見える向きの部屋が高いのは、我々人間が持っている「バイオフィリア」からである。この快適さというものは、脳内物資のエンドロフィンによるもので、中毒性のあるものではない。甘いお菓子や、たばこ、お酒は中毒になり、こういった欲に基づいた追い求めるものであれば、簡単に売れる。しかし、バイオフィリアからなるこの欲は、みどりの日や、あるいはホワイトデーのように、敢えてイベントをする。みんながやるから行う。こういったことをしていかないと、売れていかない。ここに、みどりや花の産業が今一つ大きくならない点がある。 「衣食足りて礼節を知る」であるので、文化的なもの、そして、環境の事を、あって当たり前でないことを前提に取り入れていくことで、現代社会の人間生活に欠かせないという知識と感覚を備える必要がある。

 3月のグリーンの日「セントパトリックスデー」を、花き業界人は是非とも注目してもらいたい。

投稿者 磯村信夫 : 16:53

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