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2014年12月15日

寒波で相場戻る

 衆議院議員選挙が終わった今朝、胡蝶蘭が沢山出ていた。また、通常の切花・鉢物は今週から荷動きが普段の年の瀬に戻っていくと思う。なにせ、ディナーショーや、少しお値段の張る赤坂や銀座での交際費を使った忘年会等が、衆院選のためここ二週間本当に少なかった。それが今週からあるのだ。

 先週の12日(金)から、花も青果も単価が上がった。それは、需要が少なかったよりもさらに供給が少なかったからだ。これから3月までの基調をいうと、石油価格が高止まりして、円安もあったので、作付けが少ないのだ。まさか、この12月の初旬、ニューヨークの石油先物価格が1バーレルあたり60ドルはじめの安値を付けようとは予測出来なかった。石油輸出国機構(以下、OPEC)がアメリカのシェールオイルにシェアを奪われるのを嫌がって、価格が下がっても減産しない決定を出すとは思わなかった。「アラブの春」で危機感を持った産油国は、いずれも国民の生活の質向上の為に、国家支出を引き上げてきた。従って、サウジアラビアでもアメリカ同様、ペイラインが1バーレル当たり80ドルを少し超えた所と言われている。いつのまにかアメリカは、シェールオイルで世界第2位の産油国になってきた。カナダまで含めると、その影響は大きい。

 そういった最中のOPECの減産措置見送りである。こうなると、石油価格は今後そんなに高くならないと予測される。私たち花き業界では、良い花を作る為には、冬場、油を焚いて温度を保つことがどうしても必要だ。それは、漁師の巻き網漁船と同じ比率で油代がかかる。漁師さん達が石油代の補助を訴えデモをするのと同じ状況が、冬場の花き業界にあるのだ。現在、油代が下がってきたといえど、作付けを予定していなかったこの冬の花は、生産量が去年に比べてマイナス幅は1ケタ代だが明らかに少ない。また、今年は9月に涼しかっただけで暖秋であったから、前に回ってしまった花は山形のストックだけではない。

 需要はまだだが、本格的な暮れ相場に本日15日から突入と言ってよい。エルニーニョの発生が75%の確率で確実視されているが、偏西風の蛇行が例年とは違い、寒い雪の12月を日本は迎えている。そして、雪による延着・未着を考えると、早めの仕込みが安全である。一定量を押さえておきながら鮮度管理をし、28、29、30日の三日間に消費者へお正月の花を届けてもらいたいと思う。

投稿者 磯村信夫 : 17:37

2014年12月 1日

だたいま4回目のスランプ中

 この二十年で、4回目の消費後退劇が花き業界で起こっている。一回目は、1999年から始まったサラリーマン世帯の所得の減少で、特に法人需要が減り単価が下がった。この傾向はデフレと言われ、花き業界では未だストップしていない。二つ目は、2007年のサブプライム問題、2008年のリーマンショックにより高額所得者も節約ムードとなった結果、切花・鉢物ともに消費量が減り、単価が下がった。特に鉢物業界ではダメージが大きかった。三つ目は2011年の「3、11」で花どころではない状況が、お彼岸の需要期の最中に起きた。卒業式等も延期され、春だというのに約一か月間、全くと言っていい程花が売れなくなった。しかし、"絆"消費で母の日から回復に向かった。そして、第4回目の2014年4月、消費税が上がると共に消費が低迷し、特に10月以降は3、11の復興でお金が入ってきている仙台地域でも消費に手ごたえがなくなった。今回の場合は、消費税を転嫁出来ない程販売に苦心している街のお花屋さんがいること、生産・小売ともに花き業界人の高齢化が進み、また、21世紀に入って研究開発が資金的にも人材的にも出来なかったことによる構造的な花き業界の不振が原因である。

 業界の誰と話しても、「真綿で首を絞められているようだ」と言う人が多い。その原因として、商品開発と時代に合った売場作り(インターネット販売も含め)、そして販売方法、話題作りにある。消費のターゲットを高齢者に置く一方、団塊ジュニアにも狙いを定め、時流に合ったおしゃれな花を買ってもらおうとする努力が必要である。それだけ分かれば、各県の各振興協議会で頑張ったり、「花の国日本協議会」のように、マーケティングや上手な業界組織に資金提供をしてやってもらう事が近道であろう。

 日本も花き業界も成熟化してきて、面白がる人が少なくなってきた。花き業界がここまでこれたのは、育種・素材付加価値生産・目利きの評価・スピーディーな物流・技術とセンスで商品化・売り場つくりを時代に先駆けやってきたからだ。何も難しいことをやろうと言うんじゃない。これら取引先や消費者を驚かせたりしながら、今まで面白がってやってきたのをやろうというのだ。おんなじことをやるんじゃない。何か変わったことをやって、社会から「花屋さん(花き業界人)は時代の鏡」「花屋さんは未来の占い師」と言ってもらえるように我々は面白がってやってゆこう。ずいぶんと余裕はなくなってきたが、それでも面白がってやってゆこう。そうすれば消費は必ず付いてくる。

投稿者 磯村信夫 : 11:21

2014年11月24日

花の良さを知ってもらう。花の名前を知ってもらう

 今年最後の三連休となり、東京では消費拡大の為のイベントが、小生が関わっているだけでも4カ所で展開された。酉の市からいい夫婦の日、勤労感謝の日もあった今回の週末・三連休はお天気に恵まれ、プレゼントされた花も各家庭で綺麗に飾られていることだろう。終わったら今度は花売り場で花を手にしてもらい次の消費に繋げたい。

 この度の消費税増税先送り判断は、花き業界にとっても大変有り難い。それは、今の花き業界は時代に合った商品の提供や売場づくりが決して上手くいっているとはいえないからだ。今年4月に消費税が上がってから、花では高齢者向けの需要が少なくなった。

 よく言われる消費税増税とアベノミクスであるが、私は切り離して考えている。アベノミクスが無ければ、失業率も企業投資も、株価も国際収支も、さらには観光産業も、プラスに向わず世界の先進国の平均的なレベルに近づこうとする諸活動が阻害されていたに違いない。ようやくそのアベノミクスによってデフレがストップしつつあり、株価も上がって景気がよくなろうとしていた時、約束だからと4月から消費税が上がってしまい、嗜好性の高い花は、数量が少なくても単価が上がることはなくなってしまった。その理由は、新しさを感じさせる売場や、今を感じさせる商品群の提供が少なく、せいぜい季節に合わせた商品作りしか出来ていなかったからだ。それは特に量販店の売り場において顕著である。消費者に欲しいという気持ちを起こさせることが出来なかったのだ。

 少子高齢化でGDPは縮むという論調があるが、私はそうは思わない。確かに、耐久消費財等余るものもあるし、胃袋が小さくなっているので食品も余るだろう。しかし、高齢者に向けた介護やアンチエイジングのサービス、化粧品、健康になる食べ物等、新たな需要が出てきた。私は64歳だが、父と母が亡くなっても仏壇は家にはない。実家には妹が住んでいて、普段は妹が仏様を守ってくれている。私みたいな60歳代はかなりいる。アメリカでは、50+(フィフティプラス)といって、50歳以上は生き方に違いが出てきている。そういった新しいニーズに花は使われているだろうか。デイケアの場所でのアレンジメントスクールや、定年後のガーデニング教室、あるいは市民農園の貸出等、時代に合ったモノやコトを供給出来ていないから、消費税が上がってこのような体たらくになっているのだ。

 12月に衆院選が行われるので、慌ただしい上にさらに慌ただしさがプラスされるようで、何も12月に......という気持ちも少しある。しかし、新年を迎えるにあたり、増税とアベノミクスを一緒くたにしないこと。また、少子高齢化であってもGDPを伸ばすことは可能であること。そして、人口においても、今後とも1億人を割らないよう出生率を確保し、女性だけでなく高齢者も生きがいを持って働けるようにすること。失われた20年を主に団塊ジュニアたちがしっかり取り戻せる経済政策を打ってほしいと思う。

 花き業界は、景気によって消費が増減するが、4~11月の体たらくは自助努力が足りなかった所為である。友達三世代に向けた的確な売場作り。商品開発を「モノ」と、お教室や生けこみ、学校での花育のような「コト」との2つの分野で行っていきたいと思う。また、2017年の4月から消費税が10%になるとしているので、それまでに沢山の消費者に花の良さを分かってもらえるようにしたい。この三連休中、それぞれのイベントをしていて、花の名前や品種についての質問がお客さんから出てこなかった。もっと興味を持ってもらい知ってもらう。そうしなければ、花の需要はヨーロッパのように高位平準化されてこない。さらに私たち花き業界は、国や都道府県から後押しをして頂きながら、業界自体で花のプロモーションを行っていきたいと思った。

投稿者 磯村信夫 : 15:26

2014年11月17日

NFD展示 凄い

 11月15日は七五三でお天気が良かった。車窓からだが、「友達三世代」で若夫婦とお孫さんに日本文化の伝承がきちんとされているご家族が多いのを見て嬉しく思った。この日、横浜みなとみらい展示場で開催されていたNFD(公益社団法人日本フラワーデザイナー協会:以下NFD)のイベント「日本フラワーデザイン大賞2014」へ足を運んだ。みなとみらいの駅に着くと、構内の多数の液晶パネルでNFDの祭典広告をしていたので、イベントが行われていることがすぐに分かった。キレイな画面がそこらじゅうにあるので、NFDの存在はもちろんのこと、花の消費宣伝にも一役買っていたのではないか。この画面を見ただけでイベントや花に興味が湧くだろうし、花活けを習ってみたいと思った人もいただろう。実際、パシフィコの場内は、部門ごとの分かりやすい展示や参加型のイベント等、和やかな雰囲気が漂っていた。デパートの催事場で行う花の展覧会は、人込みの中で観ているようで、堪能するという域まで達しない。しかし、今回のパシフィコでは、ほどよいスペースと通路を取っていたので、じっくりと鑑賞出来た。

 同時開催で、高校生のデザインコンテストも行われていた。スポーツがそうであるように、今の若者たちは中々優れている。自分を通じて上手に花の良さを引き出しており、造形的な美しさに思わず唸ってしまう作品もあった。公益社団法人としてのNFDは、アジアのフラワーデザイン団体と交流し、ネットワークを創りながら成長している。そして、グローバル社会の中で、フラワーアレンジメントの多様な造形美を構築しようとしている。花の団体で外国と共に成長しようとしているのは、他にJFTD(一般社団法人 日本花通信配達協会)があるだけだ。

 NFDの素晴らしさをもう一つご紹介しよう。NFDから申し出があり、私が会長を務める一般社団法人 日本花き卸売市場協会が少しお手伝いさせて頂いている事業がある。それは、盲学校の子供たちに花を触ってもらい、花の良さを知ってもらおうというものだ。花を触ったら怒られるかもしれないので、実際花がどうなっているか分からなかった人に、自分の心の中だけではなく、実際に活けてもらうことで楽しんでもらおうという事業である。こういうことを思いつくだけでも、同じ花の仕事をしていて、なんと素晴らしい方々だろうと感ずる。

 団塊ジュニアがフラワーデザイン学校を卒業するようになってから少し経つ。スクールとしては、生徒さん募集をどうしていくか。こういった大変な問題もNFDにはあるだろう。しかし、広島の花満さんがセラピストの方々と一緒に、花活けの体験事業を通して年配者一人一人に喜びを感じてもらっているように、この角度からの「お教室」というものがあるのではないかと思う。昨日、小学校のクラス会で恩師がお住まいの茅ヶ崎へ行ったが、男もリタイアした人たちがほとんどで、何か楽しみを探していた。ちょっとした仕事と、趣味や新しいことに対するチャレンジ。例えば、男の料理教室だけでなく、男性のフラワーアレンジメント、あるいは、華道教室、ガーデニング等もあるのではないかと思った。

投稿者 磯村信夫 : 15:25

2014年11月10日

雨予報が光射す

 東京は昨日、昼前は一時陽の射す時もあり、七五三でおじいちゃん、おばあちゃんに囲まれた子供たちが両親と晴着を着ていた。ちょうどこの世代は、団塊の世代、団塊ジュニア、団塊ジュニアの子供たちと、「友達三世代」といわれる人達である。千歳アメの袋を持っていなかったので少し不思議に思ったが、二か所の神社でそんな微笑ましい姿を見ることが出来た。

 10月、11月、12月の第3四半期に、鉢物類の売上が近年、期待したほどでもなくなってきている。それは、シンビジュームの鉢、ポインセチア、シクラメンの大型商品が、いずれも30年前に登場した商品だからだ。団塊世代の方達は毎年楽しみに買ってくださるが、団塊ジュニアの方々は、シクラメンならガーデンシクラメンで済まし、ポインセチアならピンクのプリンセチアがお好みで、このように、単価の張らないものを買っているのだ。どうすれば、団塊ジュニアの方々に気に入ってもらえる花きを提供出来るかが、今、業界のポイントになってきている。

 ところで、政令指定都市を除く地方自治体では、収入の30%が年金になっている。消費税の増税で、年金者の支出も増えている。消費税が5%から8%に上がり、1%は約3兆円の税収だから、9兆円ほど日本国内で消費税をプラスして集めた。働く年金者も各所多いと思うが、支出が3%分だけ増えた。地方の景気が今一つなのも、光熱費とガソリン代の値上がり、そして消費税UPが効いているのではないか。少なくとも、ムードを悪くしているのではないかと思う。そして、花はムードに影響され荷余り感がある。積極的に打って出ようとする小売店が少なく、平均単価が5~10%下がっているのは生産者にとっても痛い。

 したがって、花の消費動向はこの年金世代の高齢者の方だけに影響されてはならない。日本の人口の次のボリュームゾーンである団塊ジュニアの方々にも買ってもらえる商品を開発しよう。

 三世代そろって七五三をしている姿。いつも街で見る、おじいちゃん、おばあちゃんと遊んでいる子供たちの姿。これを見ていると、我々花き業界も、もっと買ってもらえる花を提供しなければならないと思う。流行が続く多肉植物以外にだ。

投稿者 磯村信夫 : 16:49

2014年11月 3日

地域独特の園芸農業に貢献する

 皆様方の地域では、ハロウィーンのイベントは如何だっただろうか。昨日、日本橋高島屋で開催されている生け花草月流の展覧会へ足を運んだが、その会場でとある先生とハロウィーンのイベントの話題になった。その方はマンションにお住まいだが、近くの幼稚園から子供たちが来たという。また、近くの渋谷の交差点でも、コスプレ姿の若者たちが朝まで騒いで楽しそうだったので見に行った、ともおっしゃっていた。やはり、若い人たちの力は凄いものだと思う。そして、ハロウィーンのイベントで盛り上がった後、街は急にクリスマスの装いになっていく。しかし実際は、紅葉の秋本番であるから、アメリカと同様、日本でも、勤労感謝の日までは十二分に秋を楽しむ様相が必要だ。年末商品の生産が多い鉢物類は、クリスマスを早めに演出することもあるかもしれないが、切花類・食べ物も秋本番の演出をして楽しみたい。

 28日の火曜日、国賓として、オランダ王国国王ウィレム・アレキサンダー陛下及び同王妃陛下がいらっしゃった。歓迎会場では、大田市場でオランダから輸入された花と、日本の花を調達し装飾がなされた。総理ご夫妻主催の迎賓館での歓迎晩餐会では、オランダの象徴であるチューリップやアマリリス、ライラック等を中心とした花が、大きなオブジェとして飾られていたが、テーブルの上では、オレンジ、赤を中心にチューリップ、ダリアやアルストロメリア等のテーブル花が活けられていた。返礼として、ホテルオークラで開催された国王陛下主催のコンサート・レセプションでは、ドーダンツツジとアマリリス、アルストロメリア、そして、オランダから持ってこられた赤芍薬等、大きな正面のオブジェだけでなく、コンサート会場外の通路までスタンド花の形で花が活けられていた。また、会場では参加した多くの日本人が花の前で写真を撮っていた。オランダに関係する仕事をしている方々だから、ことさら「オランダ=花」のイメージを持っている所為かもしれない。その期待を裏切らないだけの花のおもてなしがあって、私も流石、と感じた。

 オランダは独立以来、歴史的に各州で独特の花の特産がある。確かに、オランダには大学、研究所、農業関連会社等、農業を進化させるための先端的なモデル地域があるが、それ以外にも、北からベルギー近く、また、ドイツに近い2012年に花博が開催されたフェンローまで、地方には独特の園芸生産がある。オランダの面積は九州とほぼ同じだが、それでも地方分権は行き届いており、産業もそれぞれの地域でバランスよく配分されている。文化・文明を宗教の観点からみると、確かに日本とヨーロッパは異なっているが、土地と民衆の統治の仕方によって形成された文化・文明の観点からみれば、中国やロシアのような公地公民の中央集権制ではなく、トップが間接的に土地と人民を統治する間接統治の封建制を近代までとってきたので、地方分権が最も好ましいようにヨーロッパと日本では考えられている部分は同じである。そこで、日本では東京一極集中から地方再生となる。オランダは、国土は決して広くはないが、その意味で、花き園芸ひとつとってみても大変優れた農業がオランダ各地にある。花市場は、企業体としてはフローラホランドとなり一つになっているが、支所の形で、花市場としては四カ所が元気に活動している。EUが大きくなり、量販店で花の扱う率が高まった為、分割して統治されないように会社としては一つになったのだ。しかし、地域色、あるいは、それぞれの役割を明確にした花市場は、残すべきところは残すと健在である。日本もそうしなければならない。

 封建制度というと、古臭く、全て価値がないように思われるかもしれないが、封建制度が布かれた平安期、また、封建制度によって如実に栄華がもたらされた江戸期を見てみれば、現在の政治体制通り、間接統治の在り方は素晴らしいことではないだろうか。グローバリゼーションに耐えうる日本の園芸農業を、今まで以上にどう発展させていくか。その中で、私ども卸売市場がどんな仕事を通じて園芸農業と地域の消費者に貢献できるか。これを真剣に考えなければならない。オランダ農業が成功しているのは、農家の子弟が企業家農業を行っているからである。植物工場を除いては、企業が園芸農業を行って成功したとする事例を私は知らない。一方で、農家が事業家になり、事業家農業を行って成功している所は、オランダをはじめ、日本でも多く知っている。農業は、難しいが先端的なやりがいのあるカッコいい商売であること。花屋さんや我々市場は、生き物相手で大変だがやりがいがあり、素敵な商売であること。このように、自分の仕事を自慢することからやっていきたいと、オランダ国王主催のパーティーで友人に語った。

投稿者 磯村信夫 : 16:22

2014年10月27日

横浜に似合う花

 横浜の大桟橋で行われた、創業125年の横浜花松さん主催・フラワーデザイン発表会へ足を運んだ。大桟橋の橋のふもとにはシルクセンターがあり、明治時代から絹を輸出していた歴史的な建物がある。その前にはユリの碑があって、生糸と同じように、鉄砲百合・カノコユリの球根を欧米に輸出し外貨を稼いでいた。鹿児島の沖永良部島は、花松さんの歴史と同じく、球根の輸出を始めてもう120年以上経つ。また、ユリの輸出を手掛け、ヨーロッパ、アメリカから種苗を導入して来たのが、横浜の(株)新井清太郎商店や、横浜植木(株)等である。(株)サカタのタネとともに、この二社は現在に至るまで、日本の花き園芸に貢献している。この大桟橋でフラワーデザインの発表会をすることは、江戸時代の園芸とまさに明治から始まった西洋の園芸のハイブリットの地・横浜にふさわしいものだろう。

 横浜の地は不平等条約で、治外法権の居留地であった。そこでは、イギリスやフランス、アメリカの商館や住宅地に庭園が造られ、富岡や鶴見の農家の方たちが庭師として働いた。東京であれば、三田の育種所から大森、山王、荏原にかけて、カスミソウやシクラメン等、当時はまだ目新しい花々が導入された。それと同時に、横浜の園丁たちが自分でも花を作り、切花や鉢物にして出荷していった。そうして、横浜は洋花の一大花き産地となったのである。また、バラを横浜の地に導入し、ガーデン・切花とも着手したのは、自由民主党・フラワー産業議連の顧問、山東昭子先生の曽祖父様だ。

 花松さんのフラワーデザインの他に、新しい横浜の顔・みなとみらいのクイーンズスクエアで、JFTD神奈川支部の花の祭典が行われていた。こちらも素晴らしい力作ぞろいで通行人の足を止めさせていたし、このイベントを目的に来場している方も多かった。横浜は、ウォーターフロントとしての一面と、桜木町、伊勢佐木町から野毛にかけての港町としての一面がある。港町の顔としての都橋周辺では、夜の街に向けて花の需要が盛んであったが、今はその需要は往事の三分の一にも満たないという。花の使われ方は、港・横浜も確実に家庭需要中心になっている。

 新しく綺麗になったハマのウォーターフロントでは、切花・鉢物とも必要不可欠である。しかし、人の生活の匂いのする街や、まさに家庭の中では、花はどのように生活を支えるのか。そこを見出して花を提案し、花のサプライチェーンを再構築していく必要性を横浜で強く感じた。野毛にある私の好きな店では、いつも綺麗に赤バラを飾ってある。こういう装いがこの街に合う。是非とも、その地に合った街や生活のシーンに似合う花を確実に提案し、流通させることが必要だと感じて帰ってきた。

投稿者 磯村信夫 : 16:48

2014年10月20日

お見舞いの花は何ら問題なし

 残り十日となったのに、ハロウィーンのカボチャはまだよく売れている。団塊ジュニアとその子供たちが中心になって、ハロウィーンは盛り上がりを見せているようだ。また、大人の部でも、六本木だけでなく鉄道会社もハロウィーンの仮装をしたイベントを開くという。ハロウィーンでカボチャと似合うのは、黒の花だ。チョコレートコスモスや、色の濃い紫のササ系リンドウ等、紅葉の花に合わせて生けるとハロウィーンのムードが盛り上がる。来年のこの時期は、さらに多くの黒系の花を流通させたいと思う。

 さて、九月の下旬から十月に入り、新聞やテレビ、ラジオ等で話題になったのが、お見舞いの花についてである。病院で切花や鉢植えの植物を禁止にしている所があるのだ。一般社団法人日本花き卸売市場協会の会員である(株)なにわ花いちばの大西社長は、どの位受け入れ拒否を行っている病院があるか調査し、その実態をまとめて公表したのだった。それによると、2005年の大阪の新聞で、切花の花瓶の中の細菌が感染源になるリスクがあるとの記事から、特に大阪では四割もの病院がお見舞いの花を院内に持ち込みさせないようになっているそうだ。私は、某ラジオ番組で、切花や鉢物を病院で飾ってよいか、飾らないべきかのトピックスを聴いたが、何かリスクがあるような事でその話題は終わっていた。患者さんの気持ちに対して、もちろん花き業界の私からしても、何か私たちの気持ちに反しての終わり方だったように思う。そこで、正式に大田花き花の生活研究所が出している見解をここでお話ししたい。

 大田花き花の生活研究所の見解として、大阪で新聞の記事になる前の2003年、アメリカ疾病予防管理センターの≪医療施設における環境感染制御の為のガイドライン≫によると、「移植患者や重症エイズ患者の病棟以外であれば、制限は不要です。」「免疫不全が無ければ、花瓶の水や鉢植え植物は感染源にはなりません。」という正式コメントがある。医学は絶えず発展途上だが、その後、花瓶の水や鉢植えの中の土に存在する菌が原因で疾病を招いたという事実は、2003年以降も、現在もない。

 心身共に病んでしまった時、花はその人を見舞う。水の取り換えや水やり等、あるいは、枯れてしまった花の処分や手入れ等、切花も鉢物も生き物だから、面倒なことはあるだろう。しかし、安房鴨川の亀田病院では、青山フラワーマーケットさんに是非とも院内にショップを開いて欲しいとお願いし、井上社長はショップを作った。買わなくても、院内にある青山フラワーマーケットさんのショップの前を通るだけで、見ていて気持ちが和み、素直な気持ちになる。病気を良くしようとする意欲がわく。ぜひとも、特別な病棟を除いて、お見舞いの花やロビーでの観葉植物等、日本中どこの病院もホスピタリティをもって、花を受け入れて欲しいものである。

投稿者 磯村信夫 : 10:56

2014年10月13日

失望させないプロの目

 今年の6月末、花き振興法が国会を通ったが、花き振興法の前に民主党政権時代、お茶の振興法が制定され、ペットボトルのお茶にも抹茶が入ったり、日本各地のお茶の産地では地元の銘柄で打って出たりと、お茶の産業が消費者の心を捉えて事業が拡大していることがわかる。

 ヨーロッパでは、フランスから広まってきた日本茶のブームが、お茶や抹茶のお菓子だけでなく、日本と同様、ほうじ茶にも及んできた。ほうじ茶を飲みながら、ほうじ茶のエキスが入ったケーキを食べるなど、健康も兼ねたおいしいお茶の楽しみ方など新しい提案がどんどん出てきている。天ぷら屋でも塩だけでなく、店独自で作った抹茶を混ぜた塩を出す所が増えてきている。

 花き業界は、お茶に関わる加工食品飲食産業と異なり、業界に大手がいるわけではないので、方向性を決め、引っ張っていく力に欠けるきらいがある。一丸とならなければならないので、全国花き振興協議会や花の国日本が中心になり、仕掛けを行っていく必要がある。農林水産省花き室や都道府県にも是非ご指導いただきたいところだ。

 さて、第十次卸売市場整備計画の議論を農水省で行っているが、委員の中から、「目利き」の話が出た。確かに花き業界でも目利きは少なくなっている。

 卸売市場でも、セリ前取引の割合が高くなりつつあり、情報取引で、現物を見ないで取引する。目利きからすると恐ろしいことだが、慣れてしまうと何でもなくなる。こうして、品物の見立てが出来ない卸の社員が増えていく。先日、社内で名古屋・松原地区の卸・仲卸さんの目利き度について、何故あんなに商品知識が優れているのかと話題になった。結局、激しい競争の中で、知識と感性が磨かれていったので、あれだけ素晴らしい人々が育っていったのであろう。現在では、箱でそのまま買う人だけでなく、束で品揃えをする人達も出てきたから、特に仲卸は目利き度が上がっている。この教育をどのように行っていくかだが、やはり、生産地と小売店での研修、そして、卸・仲卸とも、市場で出来るだけ現物を触り、価格をチェックする。これしかないのだろう。目利きとは外観だけでなく、中身の品質と生産者の根性を見極める目を持つことだ。

 花き業界も、生産から小売りまで、同業者間だけで競争しているのではない。サプライチェーンというシステムのセットになっていて、チームを組んで競争しているのだ。そうなると、物流の合理性と、素材の目利き、そして、料理されたアレンジやブーケでの目利き、これらの商品の目利きも含め、花以外の商品とも競争し合っている。お金で評価される価値に対して、我々は目利きになって、消費者をリードしていかなければならない。現在の所、花き業界では名古屋が東西から攻め込まれているが、このプロの目は「さすが名古屋」であり、大したものである。名古屋を手本に。花き業界は、目利きを育てていかなければならない。

投稿者 磯村信夫 : 10:40

2014年10月 6日

花の輸出

 近頃農産物輸出の話が多くなってきた。花の場合、私自身が覚えているのは、鉄砲百合などの球根の輸出で有名な横浜の新井清太郎商店殿が、大森園芸でセリ買いし、香港を中心に長い間輸出をしていた。日中国交が図られ、台湾との正式な国交はなくなってしまったので、国際線が成田に移った後も、中華航空は羽田から出ていた。私の母は台湾からの引き揚げ者なので、台湾の方達と心情的にもかなり近い。そんな関係から、台湾の生産者は父を頼って輸出の話を持ってきていたし、大森で開校されたマミフラワーデザインスクールに勉強に来た台湾女性の方々は、仲卸から荷を買って手荷物で台湾に持ち込む方が数人いた。また、クリスマスの時期になると、羽田の側の花屋さんが、セリ買いしたクリスマスツリーを日本からアジアや中東に輸出していた。米軍のベースに送るのだという。そして、もう四半世紀前頃だが、岩手県は長野県を抜いてリンドウの切花日本一になった。しかし、8月のお盆が終わった20日頃に、当時の品種はピークがきてしまって、タダ同然となる年が続いた。岩手県でも№1の産地・安代は輸出を計画し、伝手を使ってアルスメール花市場に輸出した。オランダでは、「リンドウといえば岩手県安代のリンドウ」と言われるような一流の銘柄になった。そして20世紀後半、中国のお正月に向けて、シンビジュームの鉢物が旧正月の前の贈答用に使われるようになった。日本のシンビジュームの種苗会社が、直接中国で生産を始めるようになる前の話である。2010年までは、船便でコンテナを利用し、いくつもの花市場が要請を受けてシンビジュームの鉢物を輸出した。そして、2010年以降、魚貝類、果菜類、軟弱野菜、そして花を輸出しようとする機運が盛り上がってきた。花の場合は、日本の生産技術の高さが売り物だ。代表的なものとして、グロリオサとスイトピーがある。両方ともツル性のもので、ステムの長さをとるためには、しっかりした固い茎を作る等、高い技術と手間暇がかかる。後から続くラナンキュラスやダリアなど、いずれも海外にもあるので、こちらは生産者の技術に加え、世にないものを生み出す育種の力がある。今後とも、冬場を中心に切花の輸出は増大していくだろう。

 大田花きの場合、輸出は仲卸の仕事と位置づけ、輸入国の仲卸と大田市場の仲卸が連絡を取り合い、理想的には週2、3回、コンスタントに先方が捌けるだけの量を送っていく。そして、いつも日本の花があることによって、安心して使ってもらえるようにする。価格の問題もあるが、化粧品の資生堂が活躍しているエリア、ミキモトが活躍しているエリアには、きちんと取り組めば、日本の花のマーケットは確実にあると思われる。現地の優秀な仲卸と大田市場の仲卸をどう良い関係になってもらうか。そこが鍵である。日本中の飛行場の側の卸売市場は、場内、場外の仲卸と組んで、ぜひとも輸出を試みてほしい。これにより、病虫害などの駆除の問題で、国内の生産レベルは必ず上がり、その国の催事や価値観が微妙に違っていることで、一国一文明の日本が多様な価値観を持つ国々を勉強し、認めることに繋がっていく。ビジネスとして成り立たせる為にはやはり経験を積まなければならないが、花き市場として是非とも取り組んでいきたいのが、切花の輸出である。取引のある輸入商の方と取り組むという手もある。

投稿者 磯村信夫 : 13:09

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