大田花き 大田花きコーポレートサイトへ
 

2014年9月22日

生産減と運賃高で側道の流通

 本日のセリで最初に売った一輪菊の中に、葉っぱを見なければダリアと見間違えるかのようなものがあった。菊類の生産は、日本の切花の三分の一もある最も重要な品目だが、仏様の花に向かい過ぎており、現在改革が叫ばれている。団塊ジュニアが好みをリードする消費社会において彼らに菊を買ってもらうべく、多彩な花形や、仏花であれば、値ごろ感を訴えることが出来るもの等、育種から生産販売に至るまで、「ここ3年で菊も変わったなぁ」と言ってもらえるよう構造改革を行っていきたい。

 さて、このお彼岸においてもだが、切り花、鉢物とも花きの出荷量は増えない。それどころか、まだ1、2年は減る。減らさないように花き振興法にのっとった販売や生産を頑張るが、しかし、円安基調も手伝って出荷量は減るだろう。果菜類や軟弱野菜で元気な青果物も、煮物や漬物等を食べることが少なくなって、トータルの消費量は減っている。先進国では、農家戸数は全体の1%が平均値であるにもかかわらず、日本は3%あるのだが、高齢化で今後とも減っていく。そして、軒数は少なくなっても規模拡大を図ろうとはしているものの、減少に歯止めがかからない。食生活は絶えず変化し、そのスピードは今年の新米価格の低迷が示す通り、思いのほか早い。日本列島のように縦長の国は、果菜類、軟弱野菜、花き、特産の果物と畜産。この5品目を中心に農業の展開を図っていくべきである。その方向に日本農業は舵を取り、本来の農協の役割である生産部会は真実の組織なので、そこを中心に大規模化した法人と共に農業をやっていく。農業者と農協が自信を持ってその方向に行くまで、しばし、花の生産は減る。

 明るい未来が見えているから、全農県本部や農協は出荷先を限定する。自分たちの未来がどうあるべきかを産地は理解しているので、地政学的に異なった役割の卸売市場で、財務体質は無論のこと、理念を共有する市場に出荷先を絞る。このように市場集約をしている中において、運賃の高騰や運転手不足の話が持ち上がってきたのが今年の冬からであった。系統機関も、どこの卸売市場会社との取引が具体的にいくら利益をもたらしているか、個別の取引先ごとに年度ごとの損益を把握しているし、個別に販売目標を立てている。これは卸売会社も同様で、出荷者だけでなく、販売者ごとに個別の取引収支を出しているのは、経営上当たり前のことだろう。そうなると、距離によって運賃が違うことが明確になってくる。出荷量も増えないどころか減少気味だ。では、どうしたらいいのか。産地は今までその地域に出荷してきた。急にやめるとなると、消費者にも販売店にも迷惑がかかってしまう。しかし、大型車で一定距離以上の所で配送するとなれば、走りっぱなしというわけにはいかず、運転手を二人つけないといけない。鮮度が大切なのは分かるが、コストがかかり過ぎてしまうのだ。こう考えた全農県本部や大手農協は多い。今年は夏の異常天候で作柄が悪い上、遠距離で荷物の出荷を取りやめる県連が多くあったが、その県連と協業して出荷を代行した青果、花き業者もいくつか出てきた。かつては、産地市場の役割として、弘果弘前中央青果(株)のリンゴに代表されるように、卸売市場がJAの機能を代行することがあった。それに加えて、財務的にも信用がおけ、その系統組織と理念を同じくするものが、系統組織としてはペイしないエリアで機能を代行することを、今年から取り組み始めている。その品目は、果菜類や軟弱野菜だけでなく、切花では、菊やアルストロメリア、リンドウ、小菊等、量のまとまる品目において出てきたのが新しい補完的な流通だ。流通業者として、系統共販と、卸や流通業者が取り組むスタイルの流通が出てきたのである。今後とも増えていく可能性がある。

投稿者 磯村信夫 : 14:19

2014年9月15日

経営者不足と経営理念

 13日の土曜日、イオンモール幕張新都心にて、日本花き卸売市場協会 青年部会が、東北花き産地復興支援のイベントとして模擬ゼリを行った。セリは参加型の双方向コミュニケーションであるから、会場に立ち寄られた方々も目的外で参加し、花を買って頂いた。市場の大切さを知ってもらおうと、市場協会の青年部会が積極的に模擬ゼリでジョイントさせてもらっているが、いつも人気で市場という所はわくわくする所という印象を、今回も与えることが出来たと思う。

 花のイベントを積極的に行おうと花き業界が考えているのは、プロモーション活動をしなければ花の消費が下がってしまう、という危機感からである。花き振興法が国会で可決され、花き業界が元気を取り戻そうとしているが、生産者と花き専門店の高齢化、生産資材や油代の高騰、運送費の値上がりやトラック運転手の不足、さらには消費地における流通業者の人手不足等、目の前には困ったことだらけだ。そして、一番困っているのは、需給とも変動期にある花き業界の中での経営者不足だろう。「経営者」と名のつく人は、リーダーと代表者、そして設計者の、三つの役割を果たさなければならない。また、経営とは「人にしてもらう」ことであるので、取引先を含めた「巻き込む力」が必要である。20世紀の間はずっと良かったので何も変える必要がなかったが、21世紀に入って徐々に悪くなり、変えるきっかけを失ってしまった。従って、次世代の経営者を育てる環境に花き業界がなかったと言ってよい。このような状況の中で、入社10年以降の社員で、高い志を持ち、大きな仕事を任されて結果を出し、人間的にも磨かれた人は、どの業界にもそうはいないが、花き業界には、花を扱うゆえに大きな野望もあるわけではなく、「あの人についていきたい」という、経営者として出来る人を見つけるのが難しくなった。しかし、創業者が多い仲卸の中には、魅力的な経営人がいる。しかし、全体を見てみると決して経営者の人数は多くない。

 産地が市場集約し、卸売市場の役割が地政学的な条件により何通りかに分かれ、家庭消費は量販店の花となっていく中で、花き業界の生産から小売りまでの各社は、何を目指して仕事をしていくのか。このことが今、求められている。解は、社会は広いからたくさんある。ただ一途に、その会社がそこへ向かって努力を積み重ねることが出来るのか、である。結局、その花会社の経営理念を心底信じ、社員に理念実現の為、日々仕事をしてもらうことが重要だ。そのためには経営理念を作り、それを唱えて仕事をしていくことを進めたい。変動期には、都合不都合で言えば、不都合なことが多くある時だからである。以上のことは、年下だが師であるBE WEフラワー'Sの佐藤社長から教わったことである。

投稿者 磯村信夫 : 11:57

2014年9月 8日

水面下では再編が始まっている

 今日は中秋の名月。天気予報によると、東京では月が見えないようだが、日本各地ではお月見を楽しめるところも多いようだ。花屋さんでピンポン菊とススキのセットを是非とも買ってもらいたいものである。また、明日は重陽の節句だ。今年はお彼岸の小菊や菊、リンドウ等も前進開花しており、早めに量がまとまってきた。しかし、年末の出荷物まで、天候不順で不作気味であるのはお分かりの通り。7、8月と、個人消費が振るわなかったのも、増税が一因として挙げられるが、やはり異常気象の影響も大きいだろう。消費地だけでなく、産地ももろに影響を受けているので、小売店の皆様は消費者に上手く説明をしながら販売をして頂きたい。

 さて、2015年から横浜市中央卸売市場南部市場は、横浜駅そばの本場に事業を集約し、市場関連用地となる。ただし、花き市場は横浜市唯一の中央卸売市場であったので、地方卸売市場として残すことが決まっている。主として青果流通を扱う農経新聞によると、産地が出荷する市場を絞り込む時、中央市場から地方市場になった市場には出荷を控える傾向があるとしている。そうあってはならないと、秋田市の中央市場花き部は、青果部が取引の自由を求めて地方卸売市場になったのに対して、中央市場のままで実績を残している。しかし、横浜では当初の取扱計画を大幅に下回ってしまい、農水省の指導により、このまま市場を続けるのであれば、市ではなく県が認可する地方卸売市場に、ということになった。地方の市場の場合、その役割を果たせるのは地産地消型の地元市場で対象人口が30万~50万人の市場である。そして、やっかいなことに卸が仲卸業務も行うので、既にある仲卸と共存できればいいが、現実には競争する。それより大きい道州制の中心にある地域拠点市場は、公設や第三セクターの地方卸売市場であることが多いが、この規模の場合、仲卸と協業する。

 東京の中央卸売市場五つの花き部は、いずれも県境にあり、一都六県を広域首都圏と考えた時、東西南北に延びる交通の要所にあり、東京以外の県の花き市場にここ20年、甚大な影響を及ぼしてきた。道路網が発達した上に、運賃高、そして今後とも続くと思われる運転手不足。また、トラックの平均積載稼働率は往復の2WAYで38%弱という事実を考えても、帰り荷がとれ、交通に便利で、量を多く取り扱い、そして顧客が多く相場が安定する市場に、産地は出荷してくる。横浜は、大阪市よりも人口が多く、国内第二位の"市"であるにも関わらず、花市場の場合、海側が大田市場、東名側は世田谷・砧市場、そして、川崎北部市場があり、もはや、中核市場としてはやっていけない所まで追い込まれた。これを、どう地産地消型の地元市場として、産地と買参人に喜んでもらえる市場にしていくのか。もうあと半年。南部市場の花き業者の英知が求められている所である。

 人口が減少し、市場再編が余儀なくされる花き市場は多い。可能な限り、産地も買参も共通する青果市場に隣接し合併をしながら、規模を拡大し、人材を揃え、人件費も含めランニングコストを削減し、地域の為、消費者の為、地元の生産者の為に、今まで以上に役立つ市場になってもらいたい。それを決断するのは、本年度と来年度であるように思われる。

投稿者 磯村信夫 : 12:04

2014年9月 1日

輸入花は増えそうにない

 新学期の9月に入り、ススキがたくさん出荷されるようになってきた。待ちに待っていた秋だ。今年は9月8日がお月見で、9日が重陽の節句、翌週が敬老の日と、いよいよ本格的な需要期になってきた。8月の盆と同様、小菊・菊の前進開花で菊生産者共々、市場は頭を抱えている。西日本はもちろんのこと、高冷地の産地は日射量が足りず、秋菊は日長で開花するから早く咲いてしまうのはやむを得ない。どういう風に上手に使ってもらうか。定温庫があり、しっかりとした処理が出来る業者の人に、前から仕入れてもらえるようお願いをしている所である。菊類はそういうわけだが、2月の2回の大雪で被災し、ハウスの再建をしようとしている産地は、まだ生産は軌道に乗らない。そうなると、主にカーネーション、ユリ、トルコキキョウ、バラやスプレー菊等の主要品目が不足することになる。

 輸入品が少ないのは、1ドル80円の時代からすると円安で、3割もコストが上がり、輸入花の単価が横ばいなので、採算が合いにくいからだろうと思っていた。しかし、それも一因だが、実態はもっと根源的なものであった。先月、安倍総理は外遊でコロンビアを訪問した。コロンビアは政治的にも安定してきており、経済成長が著しい。首都ボゴタ周辺のカーネーションの面積はピークの3分の1になっている。それは、一次産業以外での経済成長が著しいためである。お隣のヒペリカムやバラの産地であるエクアドルも、花の生産面積はピークの半分になっている。アフリカのケニアでも、ヨーロッパ資本や、ヨーロッパ人が大農場をつくっていたが、どんどん現地化してきている。この地球で貧しい国があり、そこで花をつくってもらい、日本に輸入して販売する。その差益を輸入商社の方が得る。こういう時代ではなくなってきているということだ。一国の中で、貧しい人と富める人がいる。その比率の差はあるものの、世界中同じように経済的に発展しつつある。そうなると、日本に輸出してくれる国で増えていく可能性が高いのは花き生産の適地があるベトナムだけになってしまう。国内で今後とも花き生産量が減らない、増えていく可能性があるのは沖縄県、長崎県、そして秋田県である。また、道州制のエリアで見た時、地域で果樹をつくっている産地に花きが導入されると、新しい産地になってゆく。

 海外の産地に目をやって、ベトナムが増える可能性があるといっても、一朝一夕に質の高い菊やカーネーション、トルコキキョウ、バラをつくれるというわけではない。ここベトナムでも経済的に伸びていった時、いつまで農業に人手が回ってくるのか疑問でもある。もう一度、新しく出来た日本花輸出入協会の方たちと、国内需要を満たし、消費を拡大する為、実際に検討を重ね、卸売市場は協業する必要がある。実際、スプレー菊やカーネーションは、高品質の物を輸入商社の方々が市場に出荷することにより、市場の中では国産と輸入品が激しく競合したことは事実だ。しかし、買参人や消費者からすれば、競争の中でますます良くなるスプレー菊やカーネーションを見て、欲しいと思い、消費が拡大しているのだ。日本の消費者の懐は深くて広い。国産も輸入品も、消費者は良いものを待ち望んでいるのである。しかし、当面の間、輸入花の増加も厳しいものがある。

投稿者 磯村信夫 : 14:02

2014年8月25日

この夏、学んだ事二つ

 藤島先生を囲んで、水産・青果・花の市場業者が「市場流通ビジョンを考える会」をつくっている。この夏の研究会では、消費税と軽減税率について、また、出荷市場の集約をし、農家所得の向上を目指さざるを得ない産地の現状と今後について研究し、卸売市場は今後どうあるべきかを考えた。

 秋が近くなり、マスメディアでも12月に安倍総理が決断する、消費税を10%にするか、このまま据え置きかの判断の是非が取り上げられているが、国の財政を預かる財務省としては、社会保障費の伸びに対して税収が追い付いていないこともあり、政治判断としながらも、また、国債の市場相場を勘案しながらも、上げるべきだとの判断を当然だが示した。しかし、BtoB企業の消費税転嫁は90%の企業でなされているが、サービス業と小売業においては70%近い企業が転嫁されていないという事実がある。青果・水産を扱っているのは、既に小売業でも、パパママストア以外のスーパーマーケット等がほとんどで消費税転嫁が進んだが、花は専門店の比率が多く、とりわけ結婚式場や葬儀場で飾る花はリベート方式をとっている所が多いので、税率UPの転嫁が進んでいなかった。また、現在団塊世代が65歳以上から年金が支給されることから、60歳以降もその企業で働くことが出来るが、所得が下がるのが日本の慣行となっており、アメリカのように定年の年齢を引き上げるか、あるいは無くさないと実質賃金は下がってくる。これが4月以降、花の低迷相場を招いた。青果・水産の相場があまり下がらず済んだのは、生活必需品であったことと、小売業者の消費税UPの転嫁がスムーズだった為だ。花の場合、2015年10月にこのまま消費税が10%になるとすると、業績が悪化することが予想される。

 EU28か国中13か国では、たとえ消費税が20%近くても、生鮮食料品・花きは7、8%の軽減税率適用品目になっている。そして、その方式は「送り状方式」と言って、送り状(インボイス)に自分の登録番号、免税業者であるか、課税業者であるかが分かる国から指定される会社番号が記載され、消費税を〇〇%支払うまたは請求する旨等を書いて取引先に送付する。ちょっとややこしいように思われるかもしれないが、軽減税率を適用しているヨーロッパ等では普通に行われていることなので、慣れが問題を解決するだろう。しかし、生のサンマは軽減税率が適用されるが、焼いたサンマは適用されないとなると、他の物についてもどこをどのように線引きするかが問題である。この、よく言われる線引き問題については、学識経験者の意見を聞くが、基本的には法律だから国会が決定する事になる。

 紙面の都合上、市場集約については簡単に記すが、生産者減と生産費の高騰、運送費高及び運転手不足から、出荷団体としては取らざるを得ない方策であり、私ども卸売市場からすると、どうネットワーク化をするか、どのように合併や業務提携をするかでこれに対応する以外にないと思われる。その為にももう一度、各市場が持っている機能や得意技、理念等を再確認する必要があると感じた。

投稿者 磯村信夫 : 14:00

2014年8月18日

ホームユース主体の鍵は小売店社員の質

 8月18日、今日も荷が少ない状態が続いている。生産者もお盆休みをしていたので荷が少ないのは致し方ないが、ようやく消費税UPによる買い控えの傷も癒え、普段の買い気が戻ってきた所なのに荷が少ないとなると、小売店での販売は会社や社員の質によって変わってきてしまう。ここが家庭消費中心になりつつある花き業界の泣き所である。

 8月16日の日経新聞によると、消費税UPを消費者に転嫁出来なかった小さな企業は多いという。そしてセリ相場を見ていると、まさにその通りだと実感する。今後、財政の健全化の為にもう一段消費税が上がっても良いよう、我々花き業界、特に小売店の皆様方は現場でより人間力を発揮し、しっかりと消費税を転嫁し買い控えがおこらぬ接客や商品作りの工夫をしてもらいたいと思う。その工夫の一つに、アメリカやEUの専門店がやっているように、ドルやユーロのマークを金額の前につけない金額提示がある。ファッション衣料の店では、セレクトショップの店が最初から金額を全面に出さず、質を前面に出し、金額タグを胸元などに入れて展示してある。お客さんは質を吟味し、最後に金額を見て自分の予算内であればその商品を買う。そういう風に、まずブーケや一鉢そのものの品質を見てもらい、すなわち右脳で判断してもらい、最後にyenがない数値、これが金額だというのは何となく分かるので、予算内だったら買ってもらう。もう一つのやり方は、プロの小売店として、そして、プロの花屋さんの従業員としての接客である。

 日本では大学に進学する人が50%を切るなど、OECD加盟国の中で半分より下の教育投資の国になってしまっている。花き業界も半分位は高卒の人で占められているのではないか。私ども大田花きでは、学歴は問わないが学力は問う。特に高卒の人には、植物、政治経済、マーケティングの三つと、NHKラジオの続基礎英語レベルの英語は必須と言い渡しているが、入社10年もすると、自分自身に引け目が薄れてきて勉強をしない社員も出てくる。もう一度研修を受けさせ、仕事は取引先に役立つためにあることを教え自分を発展させる。

 セリ場を見ていると、ドレスダウンなら良いのだがあまりにもだらしない格好で仕入れに来ている小売店がいる。これでは駄目で、もう一度しっかり社会人として普通に仕事人生が送れるようにしなければならない。花き振興法が国会を通り国産の花が増えてくるようになるには、まだ数年かかる。それまでの間、天候により生産は大きく影響を受ける可能性があるだろう。トラックの運転手さんも不足しているから、市場により荷の偏在も目立つ。そういった中で、実質所得が上がっていない消費者を相手に花を買ってもらう努力をする。結局、人間的にも好かれる花屋さんの店員さんになってもらわないと花は売れてこない。もう一度、JFMAやJFTD学園、あるいは、フローレンスカレッジなど、社会に出てから再度学び直す。また、自分でも自習する。このことが必要ではないか。やはり、何をするにもまず教育。そこからもう一度始めなければならない。

投稿者 磯村信夫 : 10:42

2014年8月11日

2025年の市場像

 7月に入り街角景気は大分持ち直してきたが、花の場合まだ前年に戻ったと言えず、過去5年でも平均値より下の単価水準で推移している。しかし、8月のお盆の需要期を境に回復基調になりつつあり、上半期の締めとして9月の堅調相場を維持したい。

 8月のお盆の需要期を見ても、輸送コストの高止まりや長距離運転手の不足などにより、市場間で荷が随分と偏ってきている。大田花きは東京の大田市場にあり、横浜から成田までの特に湾岸エリアは日本で最も物流施設が並んでいる所だから、帰り荷の心配はない。また、大田の青果市場は世界でも有数の青果市場であり、園芸地帯として青果が盛んな地帯は花の産地であるので、私ども大田市場花き部は実力以上の集荷が出来ていると言えるだろう。これから10年、2025年を考えると日本の人口は減る。日本では、首都圏のようにグローバルビジネスを標榜し、効率を追いかける商売を行うエリアがある。このような所は国内では3割の大都市圏でしかない。7割の地方都市は、もちろん食べていかなければならないので、目的を持った事業体として同じように優勝劣敗の効率を重んじているかというとそうとは限らない。存続することが目的で、何やら地縁、血縁の家族のような、ゲマインシャフト(共同体)の仕事場や仕事上のつながりであることが多い。こういう所には、一年で一回のお祭りのために生きていているといった人もいて文化が伝承される。花市場も、2025年までにこの地産地消、地域の繋がりを中心にした地場の花、地場の消費を介在する市場という形に持っていかなければならない。

 花市場が相手にする消費者の対象は30万~50万の人口になり、スモールシティ構想を元に自治体が合併しながら、その中で花き流通は花市場が核となって働く必要がある。出来ればその時、青果市場と隣接しているか、青果市場と合併して一つの会社になっているか、そんな姿が望ましい。また、こうした公設市場が少なくとも各県に一つ、物流網を考えて少子化の中で機能することが望ましい。大都市圏は、地方で養育してもらい、働ける年代になったら若い働き手を吸収しているので少子化の中でも人口が減らない。すなわち、東京に来て働いてもらっているという実態がある。だからこそ、地元の花市場をサポートする。地元の花市場が中心となり地産地消する中で、地元の産地が早く咲いたりして足りなくなったら大都市圏の市場が足りない分を補う。大都市圏の花市場は、そういった機関に徹することが必要だ。

 花の価格相場をつくる、新しく需要を生み出す新商品の開発、リテイル・サポート。これらを人、モノ、金、情報で効率よく行っていく。ビジネスとしての効率重視のグローバル卸売市場の姿はすでにオランダのフローラホランドにある。国産のみならず、輸出入品を取り扱う業者として、大都市圏の市場は今から機能に磨きをかけていくことだろう。

投稿者 磯村信夫 : 14:18

2014年8月 4日

あぶくまカットフラワー、生産開始

 台風12号の大雨で九州・四国ではお盆の花が前進開花しているので早めに買ってもらいたいとする生産者や市場に打撃を与えている。

 ここ2年ほど円安や中東のイスラム原理主義者との問題・ウクライナ問題等から、アメリカでシェールガスが本格的に採掘が始まったというのに、油代が高止まりし、生産者は経費増にあえいでいる。油の要らない時期に出荷して油代を稼ごうと、葬儀や盆に必要とされている白菊を中心に特に九州で生産が増えた。一輪菊の周年産地は、いずれも油の要らない時期に生産を増やしたが、結果として日本中で供給過剰となり安値が続いていた。いよいよ需要期も間近の8月となり、持ちの良い菊や小菊は常温でも一か月近く持つので、早めに仕入れをして定温庫の中でストックしておこうという時期が、今週の8月8日前までである。そこで台風の11号の動きが気になるところだが、天候のことなので仕方がない。早く走り去ってくれて、花店の仕入れの時は悪天候でもお盆の時には店頭が賑わうよう、すっきり晴れて欲しいものだ。

 福島市から一時間弱の所にある川俣町の山木屋地区。先日3日、道の駅川俣でトルコギキョウの産地として有名なあぶくまカットフラワーの出発式が行われた。日中は30度以上あっても、夜は20度以下に下がる。桜の開花も札幌地区と同じ時期だそうだ。また、福島原発被害により避難地域に指定されている。除染も終わり、あぶくまカットフラワーメンバー全員で、今年から以前と変わらぬ自主共撰共販での出荷が始まった。通勤農業をしながら山木屋地区で花を作る。一人もかける事なくもう一度農業をやろうと決意した方たちは、福島の農業者だけでなく、広く花き生産者たちに勇気を与えてくれている。復興庁としても、先陣を切って農業を始めたあぶくまカットフラワーの方たちの後に続いて欲しいと願っているだろう。

 この川俣町でも、小菊を新ふくしま農協花卉部会のススメに従って生産する方たちがいる。2011年、食べるものは風評被害で買い手がつかない物が多く、このままでは農業が出来ない所までいった。しかし、小菊は東北と都内の市場が中心に受け入れ態勢を敷き、それなりにお金にする事が出来た。こうして新ふくしま農協は、岩手や秋田県同様、夏の小菊の日本を代表する産地となっていった。余談だが、今年は前進開花して川俣町の生産者もお盆用のものが出てしまった人もいる。

 花の復興事業はまだまだ続く。あぶくまカットフラワーの方々はその場所に住めない為、パートさん達を雇えないからだ。小さなお子さんのいるご家庭の不安がある。その地域が子供たちへ、また孫たちへと、持続的に発展し続けて行かないと農業の発展は有り得ない。今後、あぶくまカットフラワーの皆様方と、どのようにすれば最も生産歩留まりのよいトルコギキョウを生産出荷出来るのか考えていきたいと思う。まだ数年は家族労働でやって行かざるを得ないだろう。その時、労力配分等からどのようにしていけばいいのか。限られた労働力の中で、ニーズやウォンツにフィットさせる花き生産をしないといけない。お金を取らないといけない。これを一緒に解決するのが、私たち市場の役目である。

投稿者 磯村信夫 : 16:35

2014年7月28日

「バトンタッチをお手伝い致します!」

 先週末の26・27日に、アジアフローリスト協会主催、静岡県・沼津市・花キューピッド協同組合共催、JFTD主管のアジアカップ2014が沼津市で開催された。

 花は平和産業。平和産業に相応しく、中国や韓国からも一流デザイナーがコンテストに参加した。土曜日のパーティーには食だけでなく、花の国を目指す静岡県の川勝知事も出席され、花き産業の振興にエールを送った。また、夜のパーティーの前には生産、川中流通、小売の意見交換会が催されたが、ここで花の専門店の活性化が望ましいと意見交換がなされたと聞いた。

 団塊の世代が早い人で65歳を過ぎ、後継者がいない所は店をたたむことを考えている。大田花きでは、とあるお花屋さんのアドバイスからこのような方の仲介の窓口をしようと品質カイゼン室がサポートを始めた。それは「バトンタッチをお手伝い致します!」というものだ。

 これは、花店を他の人に譲りたいという人がいたら、品質カイゼン室が可能性のあるお花屋さんにお聞きし、その花店を継承してもらおうというものだ。品質カイゼン室はお花屋さんに花持ち保証販売のお手伝いなどもしており、営業とは違った角度からお花屋さんをサポートしている。その部署では専門店の必要性を痛感し、もうこれ以上街のお花屋さんが減ってしまっては新しい花の提案をしてもらえる花売り場が少なくなって、価格競争主体の売り場が多くなってしまうという危機感の下に取り組んでいる。この危機感は、日本中の花市場が感じていることだ。

 駅中や駅周辺の店が得意な花の会社と、商店街やスーパーのテナントが得意な花の会社がある。後者に店を譲って経営してもらうことが出来るだろう。仲卸さんたちに聞いて、資本はまだあまりないがやってみたいとする若い人たちも必ずいよう。花屋さんはアレンジの腕とセンスさえあれば、その店独特のアレンジが作れて必ずお客さんがつく。まずは、外営業も含め、年間の売り上げで三千万円を目指してやっていける売り場を作ってもらいたいと思う。

 大田花きが今月から始めた新たな仕事「バトンタッチをお手伝い致します!」は、このような内容である。全国の花市場のみなさんも、仲卸のみなさんも、是非ともそのようなお店があったら花店を継承してもらえるようにして欲しい。

投稿者 磯村信夫 : 15:46

2014年7月21日

一輪菊改善策

 先週、一輪菊の大産地の方々が、相場が安い日が続くので心配になっていらっしゃった。その時、このように現在の状況をお話しした。

 一輪菊が葬儀と仏花に限定されて使われるようになったのは残念なことだ。だから、輪菊でもアナスタシアやピンポン菊など、若い人たちが好む一輪菊を今の一輪菊の作付けの10%位作付けて欲しい。二つ目は、確かに一輪菊の白は、葬儀の祭壇に使われたり籠花に使われたりしている。しかし、一輪菊は大きな祭壇の時には俄然引き立つが、家族葬などの小さな祭壇の時は洋花の方が綺麗なので、今の葬儀の動向からして、白一輪を使う比率が一時の半分以下になった。また、供花・籠花も、いくつも出るということではなくて、喪主や兄弟一同など、二つやせいぜい四つの場合が多いので、この分野でも籠花が少なくなった分、一輪菊が使われなくなった。三つ目に、仏花の需要は決して少なくなっていない。むしろ、亡くなる方が多いわけだから確実に増えている。しかし、露地菊の産地が少なくなって周年作型の産地が菊を供給しているが、ほとんどが白だから、仏花に必要な白・黄色・赤のバランスが崩れてしまって白だけが多くなっている。また、仏花はMSの等級が中心で、2Lのような立派なものはあまり使わない。このように、長さや太さ、色等の需要に対して偏ってしまっているのが問題ではないか。そして四つ目に、今年は物日の時にいつも需要より早く咲いている。この8月のお盆も10日から一週間、一番ぴったりな時期に出荷する産地も3日は早く咲いている。そういう風に、必要とされる前に荷があふれるので、'前進開花に高値なし'の定説の通り、安くなってしまっているわけである。

 家族のイベントの中で、唯一出費が伸びているのは葬儀や仏事なのに白菊が安いのは、こういう理由が背景にある。これを来年は、周年栽培の菊の産地も、かつての菊全体の作付け割合を参考にし、立派なものよりも、よりお手軽なものを。すなわち葬儀関係、一本売りのL、仏花関係のMSなどを中心に作付けてもらえば、必ず生産者は利益がでる。なにわ花いちばさんがいう「アジャストマム」だ。そして、新しい一輪菊のピンポン菊等をたくさん作ってもらえば、菊類全体が活気づく。そう思われるので、菊の産地は、あまり心配しなくても良いと思われる。また、小菊は仏花としての小菊だけでは駄目で、可愛らしい雛菊のイメージの小菊を必ず作付けて欲しい。特に露地の季節は、開花がずれることが多々ある。その時に、仏花用だけでは買い手がつかないことになってしまう。

 最後にもう一つ。小売りの皆さん方は、是非とも榊について原産地表示をしてほしい。中国で束ねられた榊を、何も表示せず売っている店があまりにも多い。人によっては、神棚に捧げるのに、「国産の物でなければ嫌だ」という人もいよう。一方、「神様は心が広いから、国産のものでなくても構わないでいてくれる」と思う人もいるだろう。現在、「国産の榊をもう一度消費者に届けたい」という生産者の会もある。もし何も表示していないとすると、日本の神様の神棚に、かなり多くの輸入ものの榊が飾られているのは少し問題ではないかと考える。ぜひとも店では、原産地表示をお願いしたいと思う。

投稿者 磯村信夫 : 11:24

Copyright(C) Ota Floriculture Auction Co.,Ltd.