ハイテクノロジー・ハイタッチ


その1これは5年以上も前によく言われていた言葉で、C&C(コンピューター&コミュニケーション)が実現すると人とあまり会わなくてもコミュニケーション出来るようになる、それゆえハイタッチ“心に響く何か”が欠かせないというものだ。
日本では2年ほど前から金曜日にノーネクタイで出社するサラリーマンが増えたが、これはコンピューターネットワーク化が進んであまり人と会う必要が無くなったアメリカ社会の影響を受けてのことだ。もっとも欧州ではコンピューターネットワークが進む前から銀行員も私服で仕事していたが、、、。
PC上でコミュニケーションしていく上で、会話のリズムと文章の組み立てが欠かせない。日本人は今まで文章を書く時、構えて書いていたが、会話調で用件を言ったりするのがポイントとなる。ほのぼのとした内容の本が必ずベストセラーになっていることで判るとおり、如何に現代が自分自身と特定な仲間だけに安らぎを感じ、それ以外の人とコミュニケーションするとストレスを感じている人々が多いということであろう。
その背後には(ほのぼのとした話題を集めた本がベストセラーになる理由もそうだが)、自己の損得勘定のみでことを処すことが多い社会があるのではないか。それだから家族、友達など気の合った仲間同士でする旅行、花を飾ってクリスマスパーティーを開く等、サービス経済の範疇に属する商品が売れているのである。

その2昨日の日曜日、スキー板を新調しようと鶴見のスポーツ店に行った。
3年振りなのでどの板にしようかと迷った。今はモノコックのものが多く、曲がりやすくするため、オーバーに言えば瓢箪型(ちょうど足の部分が細くなったもの)が主流になっており、ビンディングも外れにくくより安全な設計になっている。
高速でターンする人には不向きだが、ゲレンデで滑る分にはエッジにプレッシャーを与えるだけで板自体が切れるように曲がってくれるので、あまり経験を積んでいなくても楽しく滑れる構造となってきた。
一眼レフもオートフォーカスが主流のように、ゴルフのクラブもキャビティーが主流。そしてスキーもこの瓢箪型が表す意味は、やさしく使い易いものしか売れなくなっているということであろう。所有することではなく、使うことに意味があるのだ。これがサービス経済である。
びっくりしたのは価格で、昔はメーカー希望価格としてわざわざそれを線で消し、下にその小売店の販売価格が書いてあった。それをまた値切るというのが買物の楽しみだったのだが、今では何割引という表示さえないのである。
これはおそらくスポーツ用具を買う年齢層の主流である段階ジュニア達が、えらく堅実だからだ。しかも価格は調査しているから一人一人の需要に合わせて、また一人一人の顧客の値段に合わせて相対で交渉するのだろう。その店では店員が4割引きますと言っていたところを見ると、5割までは引くのだろう。
板ではほとんど利益が出せない状態であろうから、その店が困るかというと決してそうではない。ビンディングは何と2割ほどしか引いていなかったし、靴も上限3割くらいしか引いていない。昨年のモデルの靴が4〜5割だから、結局ビンディングと靴で儲けているのだ。
この状況を花と比べてみた。
さすがに商札が付いていない花店はほとんど無くなったが、メインの商品で利益が出せないという状況には至っていない。出しにくくなっているのは、スーパーマーケットやらで同じ様なものを売っているからだ。しかしこれとて農産物ゆえ品質にピンからキリまであり、しかも技術によってより美しく見せることが可能だから、専門店は寄り利益が取りやすくなっている。
今後も花き小売業は、勘所さえ外さなければ充分利益の出る業種であり、現時点の競争状態を見ても、他業界と比べればそのレベルは低いといえるのではないだろうか。


1996/12/16 磯村信夫