消費者の進化と伴に


春の需要期である。
売れ筋を見ていると、「花時間」や「ビズ」が消費者に大きな影響を与えているのがわかる。チューリップとコンテナガーデンの現在の人気は、この2つの雑誌がセールスプロモーションしてくれている。
かつては業界紙と一般誌との間には隔たりがあったが、今では知識やテクニック享受において、ほとんど変わらないレベルになってきている。ややもすると一般誌の方が業界紙より先行しており、消費者のマニア化が進んでいることが判る。
我々プロの業者はほとんど決められた行動パターンで、例えば小生など、車で自宅と会社の間を行き来し、出張の時には飛行機で点から点へ飛んでいる。これでは世の中の風潮である時間消費型のガーデニングや、手作りアレンジメントを好む消費者と、ギャップが生まれてしまう。インターネットから花の知識がまだ十分に取り入れることが出来ないので、我々プロと消費者との知識の差はあるが、これが近い将来他の消費材と同様、お客さんの方が売っている方より良く知っているということが起こってくる可能性があり、ちょっと恐ろしい気がする。
このように一般消費者、特にマニアが普通の小売店より知識が多くなってくると、このタイミングで①小売店も得意分野への専門化が必要とされ、②選ばれた2割と、選ばれなかったその他で、格差が広がってくる。大田花きの買参人を見ていると、着実に自分の得意分野へ特化している人達、すなわち①のグループの人達が業績を上げているのが目立つ。アレンジメントに強い店は、花鉢、花苗のアレンジ(コンテナガーデン)にも強いようだ。選ばれなかった2割の花店は、量販店にシェアを奪われるかもしれない。この2つの傾向の中で、特に②の選ばれなかった花屋さんに、今後量販店の花売場が取って代わるかもしれないと思っている。現在、電鉄系のスーパーマーケットの2社は、セリ買いを中心に仕入を起こし、買った品物を自分達で店別に分け、各店のマネージャーが配送をしている。量販店というと、取引形態として“予約相対”、または時間前に揃えなければならないので“先取り”と考える人も多いだろうが、商品知識と相場の流れを会得する目的でセリ買いをしているのだ。商品知識がないまま仲卸さんに発注するわけにいかないというのがこの2社の考えである。まず花の仕入のプロを社内に多く持つ。その人達が各店舗の指導をする、というのである。こうなると街の小売屋さんもうかうかしていられない。自分と同じ知識レベルの人達が、同じエリアで競合しているのだから。


1997/03/10 磯村信夫