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東京の地価がシンガポール、香港に次いで世界第3位に転落した。
これをどう解釈するか様々な意見があるが、インターネットで小生の話をご覧になる方に理由を2つお話する。1つはコンピューターネットワークが高度になるとムダが無くなり、不用なものが増えて価格が下がるという点である。極端に言うと、例えば図書館をネットワークで結び、貸し出しもネットワークで行う。調べものにしても読みたい本にしても、大きな図書館一つあれば済む。今ある図書館のうちかなりの数は、閉館せざるをえなくなり、そこに努める人、ひいては土地もいらなくなるので売り出さざるをえなくなる。
今起きているコンピューターネットワーク革命は、ムダを省き、価格を下げる。要するに人、もの、そして地価を下げる働きがある。そうなるとあまり広い土地はいらなくなる。東京の土地が下がったのは、不良債権や金融市場の低落、また経済の見通しが立ちにくい点があるが、その地核にはネットワーク革命によるディスインフレ現象が経済の国際化と伴に起きていることを示している。
シンガポールも香港も、富を産み出す力からして少し狭すぎる。東京はこれらと比べてまだゆとりがあるということである。東京の土地、日本の土地はこれからも下がる。2つめの大きな理由は、富を産み出す力に関係するが、法人税率の問題である。シンガポール、香港も確か10%台だったと思う。その点日本は50%と、利益を出す力のある企業にとっては先進国の中でも酷な場所だ。資本主義は適者生存、効率を一義に考え、差があることこそ公正であるとするそうである。民主主義は、差がないこと、平等であることが理念となっている。今共産主義の崩壊以来政治よりも経済に力点を置かれるようになってきた。アジア諸国からの日本の輸入品を見ると、日本企業の現地生産品を除いても日本は圧倒的な貿易黒字になっている。この事が示すとおり、経済おいて日本は国際ルールに打ち解けられないとする見方がこの地価の順位になって現れた。

花のことを少しお話すると、日本のように繁華街の表通りに花店がある国は他にない。OECDのどこの国に行っても花屋さんはちょっと奥まった場所か、道路一本隔てた所にある。日本の花屋さんがなぜ東京のメインストリートに店を出せるかというと、日本は冠婚葬祭の需要が著しく高いからである。ここで得た利益を地価の高い店舗に組み込んでいるからだ。いつしか日本も冠婚葬祭用の花だけが突出して使われることはなくなるから、アメリカやヨーロッパと同様に住宅街を除き表通りから引っ越さざるをえなくなるかもしれない。


1997/04/21 磯村信夫