売れるようになった時、商品は成熟化している。


どんな商品もそうであるが、売るのが大変な時はこれから売れ始まるか、需要が衰退期に入っているかという段階である。
誰もが欲しいと思い出した時、量が出回っても単価は下がらず売上に貢献するかのように思えるが、実際は商品の善し悪しを消費者は知るようになり、販売競争が激しくなって結局小売店は歩留まりが悪くなる。ガーデニングやコンテナガーデンに使われる苗物がこの事例にあたる。
今年の母の日は、テレビを見てもラジオを聞いてもカーネーションがよく出てきた。昨日の日曜日、店頭では良く売れていたが、品質の良くないものは売れ残っていた。流通では川中に位置する卸売市場の価格は、市場によってバラついており、東高西低であった。カーネーションに添える花々は、母の日が終わると価格がぐっと下がるのを見越し、多量の荷が市場に溢れた。大田花きでは通信配達協会に加盟している花屋さんが多く、アレンジメントとしてお届しているので、仕入は切花の場合水曜日までに、鉢物なら木曜日までに買いが集中した。新聞のミニコラムで、届けた花の善し悪しが記事に良く取り上げられていたが、母の日は彼らにとってお届けサービスが基本となるので、金曜、土曜と価格は急落した。来年度以降も早い人でゴールデンウィーク中の金曜日から仕入れが本格化し、木曜日にあらかた仕入れを終えてしまうパターンが続くものと思われる。
さて、カーネーションは一般に広く認知され、需要が高まったが、クレーム等も多く発生し、結果的に業者が潤ったとは言い難い。今後、物日はやはり量が動くことを喜びとすべきであって、競争激化の中で忙しい割には儲からないということに、残念ながら落ち着きそうだ。


1997/05/12 磯村信夫