何でもより具体的に


先週14日、労働党政権に換わったイギリス議会の開会式が行われた。たまたま帰宅後CNNをつけると、ライブで放送されていた。エリザベス女王が約15分位今国会での施政方針演説をしている。非常にきれいなわかりやすい英語で、まさにクイーンズイングリッシュそのものであった。それより驚いたのは、日本の国会でも首相がこれほどまで具体的な方針を打ち出すことはないと思われるような内容を、女王陛下自ら発表していたことである。ハイテク産業を誘致し、イギリスの失業率(特に若者層)を下げることや、ブレアが勝利した理由の一つ、EUに積極的に関っていくことなどである。そのことを翌日磯村副社長に話すと、今回のマジェスティーの方針演説は、具体性に欠けるとイギリス国内で評判だという。小生は日本のなにやらわからない施政方針演説に比べて女王のそれはたいへんわかりやすく感動していたが、資本主義の発祥の地、イギリスでは、もっと明確な発言を要求しているのであろう。
我々の仕事は資本主義経済下で商売しているにもかかわらず、「交換価値」のみに焦点を合わせた本来あるべき商売ができていない。つながりや力関係等、他の要素が多く入り込み、経済のみならずあらゆることを不透明にしている。今後、我々の商売でも具体的な提案、そして具体的な討議を経て、たとえ契約書を交わさないまでもリスクを犯してでも約束を守る。このような生き方が必要であろう。それでなければあまりにも世界水準からかけ離れてしまう。蚊帳の外に置かれた業界は、結局衰退が待っているだけだ。


1997/05/19 磯村信夫