オーバーストア


昨日は大田市場の市場まつり、通称「イチコン」があり、お天気にも恵まれてバザーに出した花も飛ぶように売れた。切花よりも鉢物が先に完売したのは、時代の流れであろうか。
バブル崩壊後も花の卸売価格がほとんど下がらなかったのは、新規に花店を出店するところが多かったためだ。本家筋の店は業務需要が落ち、周りに出来た新しい花屋さんに顧客を奪われ苦戦した。新しくできた花屋さんはそれなりに顧客を確保していった。この傾向が3年ほど続き、1995年頃から街のあちこちで花店が過剰になってきた。すなわちオーバーストアである。それでもまだ花店の新規開店は行われ、スーパーマーケットでも花を売出し、洋服屋さんや雑貨屋さんでも花を置くようになり、専門店では店舗当りの売上は5〜10%位落ちてきた。オーバーストアだから安くないと売れない。昔は安く売ったらロスが減ったが、今は減らない。このようにしてセリに参加する小売店は元気がなくなり、安く買わざるを得なくなってきた。切花では時々絶対量が不足すると高値が続くことがある。絶対量がなくなればオーバーストアの悩みを抱えている花屋さんが、逆に利益が確保できるものと判断し、大切に売っていくからだ。これほどまでに需要は拡大してきたのである。
現在、花苗など園芸品が好調だが、これは今まで花店ではあまり力を入れなかったが、ガーデニングブームで力を入れ始め、また雑貨屋さんなどでも置かれるようになり、扱い店舗が増えてきているためである。花苗の単価が確実に下がっているのを見てもわかるように、小売店間の競争は激しいものがありそうだ。理想的な店舗数は、需要に合わせ次のようになっていくであろう。1日3回腹が減り、買い替え需要が起きる。仮に一家で3人として1日9回、1週間で63回の買い替え需要。花好きは1週間で1回だし、1ヵ月に1回苗や鉢を買う。客単価や数量を無視すると、頻度だけで1週間で1.25という比率になる。すなわち食品売場が63軒あったら、花屋さんは多くて2軒ということであろう。
現状はここまで花の買い替え需要は起きていないから店舗は少なくて良いのだが、もう既に密集しているところではこの数値に近づいているのではないか。現状を打破するためには気さくな親父さんや奥さんが積極的に客の呼びこみをするところから始めなくてはならない。


1997/09/29 磯村信夫