下げ圧力に抗する


メーカーのコスト削減が卸売価格の下落と見合ってきた。
上半期決算が一部報じられているが、メーカーはどこも生産性アップで収益改善されている。アメリカの好景気を支えている要因の一つに、労働生産性の向上がある。日本は主に間接費の削減と生産行程の洗い直しによって、コストを8%弱低減させたようだ。花も大きなトレンドは、毎年5%ずつ卸売価格が下がることであるから、5%を上回ってコストを削減出来れば良いことになる。
赤羽根町農協の特選ギク部会に始まった“直挿し”は、まさにビジネスプロセスを見直したものであったし、現在八女花き組合や島原で行われている“点滴潅水”を使った直挿し(特に葉の半分位まで地中に埋め、葉からも水を吸わせる)など、技術の進歩が目覚ましい。花き業界の分野は生産性の向上を念頭に入れ、価格の下げ圧力に抗して行こうという動きがある。努力を始めてまだ2年余り、来年からが楽しみである。
労働生産性の向上は、私生活での自分の磨き方と同様、昔学校の先生から言われた予習、授業、復習しかない。私は個人的にドイツ人から教わった。我が家には2人の子供がいるが、ベビーシッター(子供のお守)を近くのドイツ学園の生徒に頼んでいた。何等かの都合で来れない時は、1学年下の生徒を連れてきて、家内のお眼鏡に叶うか面接させた。新しく決まったベビーシッターは、「事前に一度来ます」というのが常であった。それは子供と仲良くなるため、また家のどこに何があるか学習するためである。ベビーシッターでお金をもらうのだから、事前にそれだけの知識や人間関係を作っておかなければならないというのである。仕事が終わり家内に引き継ぐ時、どんなことがあったか報告し、次回からこういうふうに遊びたいという計画を語る。EU各国からドイツ人は尊敬され、恐れられているが、この律義ともいえる生産性の高さが、国民の隅々まで行き渡っていることには驚かされた。もっともドイツ学園の生徒達は教育レベルの高い家庭の子供であろうけれども...。
時間をマネージすることが、まず花き業界労働生産性向上の第一歩であろう。


1997/11/03 磯村信夫