相対セリの必要性


このところ産地からお声のかかることが多くなった。
以前にも触れたが、今日本の花き業界は1985年のオランダの状況と似てきた。当時のオランダは、EEC(今のEU)を睨み、農業の品目を果菜類、軟弱野菜、花の3つに絞り込み、極端に言うと他を捨てたのだ。それまでの花の産地は、アルスメーアとラインズブルグ(フローラ花市場周辺)に限定されていたが、本格的にウエストランド地域(野菜、果樹の産地)を作り出したのだ。スプレーギクやガーベラの生産が増え、国内消費を充たしきって、輸出を本格化せざるを得なかった時期だ。生産増に合わせ、花市場の大型化や統廃合を同時期に積極的に行なった。産地は市場の数が少なくなったので、ライバルが増えたことになり、結局競争が激化して価格が下がっていった。残念ながら価格が下がってから需要は拡大するのが現実で、温室の身売りが各産地で見られたのもこの時期だ。
ではオランダではどうやってこの時期を過ごしたのか...というと、1つは受け皿としてアールスメーア、ウエストランド、フローラ花市場の3つを集散位置付け、業界上げて輸出業者の育成をした。次に物流上の整備をする為、トラック業者や飛行機会社をも巻き込み、理想的な物流網の構築を急いだ。3番目は生産規模を拡大し、「いいもの安く」を工業の手法を取入れて可能にした。4番目は育種に力を入れ、花保ちの良いもの、手のかからないものなど、「良いもの安く」の視点で育種がなされ、競争力を強めた。この4つが主立ったポイントであろう。
日本では3番目、4番目の動きが活発化しつつあるが、どうも物流の発想が欠けており、ここで目詰まりを起こしてしまう可能性が大いにある。ロジスティックスは橋本内閣が掲げる我が国のローコストオペレーションの要だが、今まで市場流通というとどうしても商流、特に相場にのみ目が行きがちであった。価格が上がることを当面期待できない以上、ロジスティックスの視点でそれぞれの収益を確保する必要がある。
今月号の「農耕と園芸」の小生のコラムで、本文に間違えがあったのでここで訂正しておきたい。「卸売会社の役割について」であるが、①神聖な市場(東京証券取引所のようなマーケット)②商品化活動(産地アドバイス等も含める)③物流。
②と③がどこの卸売会社も持つべき機能であり、これが欠けるとその会社は社会の中で存続し得なくなる。①は証券取引所と同様、地域を代表する卸売会社のみ持つ機能となる。すなわち、様々な産地の荷物といろいろな業態の多数の買参人との出会いによる相場形成である。オランダは3つの市場に修練させていったが、現状他の5つの市場は何をしているかと言うと、地場の物をセることと、地域の小売店のために商品を調達し、物流機能を持った問屋として社会的役割を果たしているのである。これは消費者にとっての損得、すなわちローコストオペレーションを考えた時の法則のような物である。その他のオランダの5社は、今セリをやめて相対に徹しようと準備中であると聞く。既にオランダの青果市場でもセリをやっている所が一ヶ所になったように、その後を追っている。我が国の花き流通において、この課題をどのように解決しようとしているのか。当面一定規模未満の卸売会社は、相対も可能な人間がセル方式を採用することが、来世紀を睨み合わせたスムーズな業態変革に繋がるのである。




1998/01/26 磯村信夫