オランダ出張


今年はエルニーニョの影響で、ヨーローッパは暖かい。
気温の関係から花が良く売れており、バレンタインデー前、嵐の前の静けさの相場でも、価格は昨年より良い。また、バレンタインデーの週の月曜日は、史上最高の売上をオランダ市場は記録した。数量も昨年より多く、単価は例年より3〜4割高くなった。その理由として、①景気が良い、②ケニアやジンバブエなどアフリカの天候が悪く絶対量が細り、集荷力の強いオランダが吸い上げた分、他のヨーロッパ各国に行かなくなった。主だった原因はこの2つである。アルスメーアのセリをみていると、トップクラスの品質はロシア輸出をしている仲卸が買い、次のグレードはスカンジナビアとイギリスへ輸出している仲卸。次の品質はフランス向け。そして最後の一般的なものが、経済が振るわないドイツ向けとなっていた。高値が抑えられ、量的に出回っている中級品が売れていた2年前とは雲泥の差だ。ロシアで花が多く使われ出したと聞いていたが、経済力からいっても中級品から中の上だと思っていたが、トップクラスを軒並み買っているのにはびっくりさせられた。90年代のはじめ、命を賭してガンを持ち、運転手2人で輸出をしていたズーレルのことを思い起こすと隔世の感がある。アルスメーアでは新しく「スーパーキャッシュ&キャリー」というのが出てきた。「キャッシュ&キャリー」はご存じの通り大田の仲卸が店頭で販売するような方式で、1束ずつ買える。アルスメーアではコートラ、オランダ花市場ではピラミッドというニックネームで呼ばれている。スーパーキャッシュ&キャリーは輸出会社向けの仲卸で、販売単位は1バケツである。セリだと2バケツ〜4バケツ買わなければならず、ロスが出る。そのロスを軽減させようという作戦である。1月に出来たが、まぁまぁの滑り出しである。市場でもう一つ目を惹いた新しいシステムがある。アルスメーアのすぐ側にフローラアフリカができ、ケニアの花をコンピュータを通してセリ参加し販売しているが、それと同じ様に大口のバイヤーのオフィスでアルスメーアの専用端末、フローラの専用端末、オランダ花市場の専用端末も置かれている。いわゆる在宅ゼリをオランダ花市場協会のビッグ3は可能にしたが、その目的は「物流を合理化する」ことにウェイトが掛かっている。その理由とは...例えば私がオランダ花市場のバラをセリ落したとする。そのコンピューターは自社のコンピューターに繋がっているから、アルスメーアからの荷物が到着した時、自社の入荷シールを1バケツずつ貼る。それによって自社内の物流がスムーズに行き、在庫管理も適切になる。在宅ゼリといっても小売店が買うような量ではコスト的にペイしない。運賃やコンピューターの使用料が高くなってしまうからだ。オランダは、買参人をあくまでも輸出会社と大口のバイヤーだけに限っている。またそれに向けての生産指導を組合員にしている。具体的な例では、伝票1行につき8ギルダー取る。例えばバラのブラックマジック80cm○○本...これで8ギルダー。バラのブラックマジック70cm○○本...また8ギルダー。これでは品種を絞り、一つの等階級毎に量を出荷しないと経費が余分にかかることになる。この考え方からしたら、日本はなんとちまちましたものか。このような方式を貫いて行こうとする背景には、スケールメリットをあくまでも追求しようとする商人国家オランダのしたたかな計算がある。




1998/03/09 磯村信夫