鮮度


今日は晴れで真夏日になると言う。
中旬からどうも日本は台湾に引っ越したような亜熱帯の天気になった。ハイシーズンの園芸ものも暴落市況になり、12月に続いていざとなった時安くなる。12月は景気に影響されたが、今度は苗物中心に、天気に影響された。
花は“3気商売”といわれる。一に天気、二に景気、三にやる気である。天気は食べ物類と異なり、野菜なら作る方に影響するが、1日3回腹が減るから需要動向はステディーである。アイスクリームやビールは工業製品だから作る上では問題ないが、天気は消費に影響してくる。花は咲き具合がポイントになる。よって作る上で天気が影響し、雨の日は傘をささなければならないから一般の小売店では切り、鉢とも消費は減退する。余談だが、昨年末30日に雨が降ったが、小売店は売上が半分に落ちたものの、量販店は前年並であった。
花は作るに天候、売るに天候だから、雨なら相場は下がる。売れなければ小売店はストッカーに入れておく。ロスを出さないことが経営上大切なので、出来るだけ売切ろうとする。かっては天気が回復した後に売れば良かったが、今は生産量が増え、押せ押せに荷物が到着する。だから古いものを売ろうとしても、店に入りきらなくなってしまうのだ。そして古いものから売っていったのでは、結局消費者に見放されることになる。食べ物なら料理して食べてしまえばそれでおしまい。しかし花は1度買った翌日も、またその次もとしばらく消費者とお付きあいしなければならない。その意味では、持てば花は本当に安い。しかし持たなければ高くつく。
消費者の一般の関心事は花保ち。いわゆる鮮度だ。一日おきに出荷されるバラを考えてみよう。金曜日の午前中収穫した切りバラは、金、土、日となんと3日間も冷蔵庫でストックされる。なんのことはない、オランダ、インド、ベトナム、そして韓国から入荷するものと鮮度は変わらない。これでは国内の優位性はない。卸や仲卸でもそうだ。ちゃんと傷みやすいものは保冷庫で品質管理してるだろうか?小売店も同様で、暖かくなった時に後入れ先出しの原則を守っているだろうか?お刺し身と同じくらい鮮度が欠かせない花なのに、自分の都合で商売をしていないだろうか?もう一度チェックする必要がある。小売の繁盛店は、鮮度重視で毎日仕入にきて、閉店後には桶の水を取り替えたり、鉢物の黄ばんだ葉を取ったりとケアを欠かさない。品質のため捨てることを厭わない店である。




1998/04/20 磯村信夫