卸売業者の歩むべき方向


現在の流通の中で、生鮮食料品等を扱う卸売会社は2つの役割を持つ。①証券で言えば、東京証券取引所のような神聖なマーケット(セリ・入札を行う)を保有する事業体、②証券会社と同様、問屋的機能を果たす、この問屋的機能の中に、物流の鮮度管理の効いた集配センターとしての機能が現在最も重要になってきている。①で問題なのは、花以外の生鮮品ではセリ入札以外の取引が、現在の需給バランス上、そして小売店が大型化するとともに増えてきているという点と、決裁の機能を果たすことによって公的な場としての役割が首の皮一枚で繋がっているという点である。
②についてはマーケットメイクを行うという視点が卸売会社の中で忘れられていた点である。マーケットメイクとは、膨大な取引データから得た仮説に基づき今後消費者に好まれるであろうものを次期を経て供給できるよう、生産者に作ってもらう作業である。これはほとんど手が着けられていないのではないか。物流については商物分離案など、真剣なる議論がなされており、読者諸氏も明確なイメージを持たれているのでここでは記さない。
21世紀を睨み合わせると、高度に経済成長したこの日本で必要とされているのは、新たな提案をし、商品化出来る人達と、他人の嫌がることでも喜んでやり続けられる人達や企業である。現代の風潮からすると、農業者や在庫を持たない倉庫業という物流業者である卸売会社は、「他人の嫌がる・・・」とまではいかないが、家業として仕事をしてきた人達が多かったのではなかろうか。
これからは②のポイントである「提案する営業」と、ロジスティックスで市場流通のコストパフォーマンスを上げていくよう、同業者間で競争を激化させる必要がある。
これが消費者のためであり、出荷者のためである。




1998/05/25 磯村信夫