平成9年度決算発表


このところ、決算発表が相次いでいる。
まさに勝組と負組がはっきり分かれた格好である。勝組は商品力やサービス力において優れている。そしてまた、ハードからソフトへの、そのソフトの力が秀でている。
卸売市場業界でも同様で、親切だったり品物が良かったりするだけではだめで、先の見通しや、新商品を産み出す力が必要不可欠になっているのは、世の中の流れであろう。花の場合、量販店の販売力に見合った商品量を確保することはまだ不可能という段階で、その意味で供給過剰とは言えない。需給バランスが取れているというのに、ソフトの力が収益に及ぼす影響が大きくなってきたのはデフレの影響であろう。
日銀総裁が「デフレ経済ではない」と言わなければならないほど、現在はデフレなのである。これは当然のことで、アジアやロシアの通貨危機を見ても判るし、あらゆる物材の価格を見ても充分体感できる。
それでは我々花き業界の人間はどうすればいいかというと、縦横の連帯を深め、ともに新しい商品を産み出していくことが必要だ。新しい商品が人気になると、今まで人気だったものは価格が下落するから、売上は今までより増えてこない。これがデフレの由縁である。しかしなにもせずにいればますます売上は下がっていく。均衡縮小路線を選び、人件費まで含めた販管費を下げれば、それだけで済むのかというと、決してそうではない。リストラで販管費を下げるだけでなく、有能な社員に①商品力強化、②サービス力強化、③見通し、相場の読み等、新しい商売を取り込む相反することを同時にしていく必要がある。
我々卸売会社は在庫を持たない倉庫業であるが、これまで述べてきた競争力優位のための努力を惜しんでは、結局規模の経済の中で生きていけなくなる。そうなると収益を落とすことになるが、そのままでは赤字に転落してしまう。
では一定規模未満の卸は何をすればいいかというと、結局商売の基本である“御用聞き”すなわち注文を取って配達するという顧客密着で、地域社会に役立つ機能を高めていく必要がある。青果、水産、花きまで含め、日本中の卸売会社に①広域集散市場、②地域密着市場、この2つに分かれ、機能特化していく。ロジスティックスと情報化が以上述べてきたことの前提になることは言うまでもない。現在過渡期であるが、リストラせず今まで通りの経営を行なっていると、世の中から不要の烙印を押されてしまうことが、今期の決算をみてつくづく感じたことであった。




1998/06/01 磯村信夫