市場法(セリ原則)の是非


現在の卸売市場法の骨子を明文化したのが、徳川家康である。彼は取引方法として、セリ、または入札を義務づけた。フェアーに取引されることこそ欠かせないと考え、オランダ人の按針(アンジン)に聞いたかどうか判らないが、とにかくセリを施行したのである。
400年来このかたセリが十分機能してきた前提には、需要が多く供給が少ない、という需給バランスが有った。よって量を多く買う人は高値で買ってしかるべしだし、相場を読み安いところで杓うという仲卸も充分に生活できたのである。
しかしここにきて日本はデフレになりつつある。また、同業者間の競争も一層激しくなってきた。物を買うときに量をまとめたら安くなるのが普通であるし、サービスを受けるにも頻繁にそこを使えば特典が与えられるのが普通の世の中になってきた。そうなるとフェアーだけでは顧客を、その背後に居る消費者を満足させることができなくなってきているのだ。一般的なメーカーを例に取ると、既存流通の一次問屋に卸す価格と、量販店に卸す価格は同じである。セリ、そしてボリュームディスカウントを伴った相対併用型は、卸売市場制度を現代に併せていく手法なのである。しかしその時忘れてはならないのが、第3者による取引のチェックである。先程述べたメーカーなら自分のものを売っているわけだからそれでいいが、卸売会社が取扱っているのは生産者から委託されたものだから特に不当な価格や不正があってはならない。取引を説明し、アカウンタビリティーを利かせることが絶対条件になる。
卸売市場では今、相対の議論がなされているが、それがほとんどの価格決定手段である他の商取引においては、コンピューターネットワークの発達において情報が広く共有され、セリ、入札(一般的にはオークション)が盛んになってきた。中古車だけでなく、中古住宅、あるいはゴルフ会員権も広い意味ではそのようになってきている。今後、花の卸売市場でもセリを中心に相対も併用していくことであろうが、情報を開示し、セリを行っていくことが、先を見た取引方法であろう。




1998/07/06 磯村信夫